人の心景描写を書くのは難しいです。
それでは本編です。どうぞ!
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あれから94時間26分43秒経った。なんでこんなに細かく覚えているのかと言うと、
あの後リアルでのナノマシン不足による強制排出を待ったが、結局排出される事はなかった。
この間、僕は現状の整理と自分にできる事を考えた。
まず現状だ。結論から言うと、ここは
現状として、ユグドラシル2が始まった、と最初は考えていたがおそらくその可能性は限りなく低い。
まず、現実世界の電脳法ではDMMO-RPGでの嗅覚や味覚の再現は禁じられていて触覚にも大幅な制限が課せられている。でも、この場所はその制限全てが無くなっている。
呼吸をすれば青々とした木々の香りがするし、森の探索中に見つけた林檎みたいな果実を齧ってみたら、少し酸っぱかったが確かに味を感じた。
それに触覚だが,これはこの体になってからかなり鋭くなった。味覚や嗅覚、五感が全て鋭敏になったみたいだ。
それに何より不思議なのは、いきなりこんなことになれば混乱する筈なのに、違和感をまるで感じない。"生まれた時からこうだった"と思えるほどで、羽を使った飛行も問題無くできた。そして僕の転移した場所だが森というよりは樹海のように木々が生い茂っている場所だった。上空から見てもクレーター以外の何物も見つける事はできず、周りは森が広がっているだけだった。
そして自分にできることだが、ここである事が発覚した。この場所に初めて来た時に見た謎の爆発。
恐らくあれは僕がナザリックで発動した
超位魔法
そう、ここでもユグドラシルの魔法及びスキルは問題無く使用できた。
そして魔法は基本的には恐らくユグドラシルと変わらない。
「でも不思議だ。ユグドラシルと同じなら
そう。ユグドラシルの魔法やスキルが使用できる事はわかったがその効果の細かいところが変わっている可能性が高い。
「大まかには一緒だとは思うんだが、これは試してみないと分からないな」
実際、あの後にスキル[
(まるで
そう考えてしまうほど今置かれている現状は不可思議なものだった。そして切り札の
(多分大丈夫だと思うけど、マジにワールドをブレイクなんかしようものなら目も当てられない)
それに効果の変容が不明な状態で究極攻撃系のスキルの使用はやめた方がいいのは事実だ。
それと森での探索中にウサギによく似たモンスターを見つけた。
最初は警戒していたが、僕の姿を見るなり
ユグドラシルでは良く使っていた。そして鑑定の結果だが、【HPはレベル1〜3相当で、MPに至っては0】だった。これには苦笑い。
『周りの情報が不足している内は常に警戒を怠る事勿れ』
とかつてアインズ・ウール・ゴウンの
(これじゃ僕の敵はいないんじゃ無いか?)
ふとそう思うほどにこの世界の強さは拍子抜けだった。
僕はワールドチャンピオンで、全盛期のユグドラシルでも5本の指に入る強さだった。正直ワールドアイテムを使えば100レベルプレイヤーの集団に襲われても余裕を持って撃退できると考えているし、それは慢心でも驕りでもない。それなら情報収集はここでおしまいにしてさっさと楽しみにしている冒険に繰り出しても良い。
そう、冒険。僕がリアルで憧れ、ユグドラシルで仲間達と一緒に繰り出したあの冒険。理由はどうあれこんな現実味のある場所で冒険が出来るなんて、楽しみにしない方がおかしい。
(よし、じゃあ早速準備を整えて、、、いや油断は禁物だ)
頭を振って冒険の旅から戻ってきた。
(幾ら僕が強くても、もしワールドエネミーみたいなボスキャラがいたらその限りでは無い。それにもしかしたらこのモンスターが飛び抜けて弱いだけかもしれない。取り敢えず警戒は続けよう)とそう誓った。
渋々だが。【まぁ警戒して損はないし】と納得した。
それにもう一つ、この体になってから空腹を感じなくなった。
食事を最初の林檎みたいな果実からとっていないが全くお腹が減る感じがない。これは多分天使の基本スキルの[飲食不要]が発動しているからだと思う。この世界でも種族特性は問題なく発揮されているみたいだ。不要なだけであって食事はできるようで少し安心した。
どう言うことかと言うと、先程齧った林檎。[天使の眼]で見た結果毒はないが食用ではないと結果が出た。しかし食べてみたら、確かに少し酸っぱいものの食べられないほどでは無かった。
食用ではないのにあの味。本当の食事とはどれほど美味しいのだろうか?
こんな時に考えるべき事ではないんだけど、考えが止まらない。
自分はあまり食欲がある方ではなかったと思うんだが、これも天使になった事で変わったのか?それにしても、飲食不要になった後に食事に関心を持つとは。どんな皮肉だ笑。
それはさておき
あれから僕はクレーターに仮の拠点を作り,そこを中心に情報を集めて行った。
「今日は特に発見したものは無しっと」
そう言いながら拠点の入り口をくぐる。周りから見れば空間にいきなり僕が消えたように見えただろう。この拠点はグリーンシークレットハウス。周りからは見えず、逆に中からは外が見える。僕が持っているアイテムの一つだ。
(取り敢えず仮眠でもとって、また明日探索を続けよう)
正直、天使の種族特性で[睡眠不要]があるから睡眠を取る必要はない。だからかもしれないが、この体になってから睡眠欲や他の欲求があまりなくなった気がする。いや、睡眠欲求やその他の欲求そのものがなくなったと言うより、それを満たす行動をする必要がなくなったと言う感じだ。
別に寝る必要がある訳ではないが、人間の時と同じで眠らないと落ち着かない。別に眠れないわけじゃ無いのが有り難い。
(これは自分が完全には天使ではない証拠なのか?そうだったなら嬉しい事だ)
この体になった時に違和感をまるで感じなかったせいで"自分という存在全てが天使アバターになってしまったのではないか"、という考えが常に頭のどこかにあった。
別に人間でいたい訳じゃないが、それでも自分がいつの間にか変わっている。そんな事は考えるだけでゾッとする。だから少し安心した。
(それに食欲もある訳じゃ無いが食事は出来る。性欲のほうは、、、うん。無い訳じゃ無いっぽいし、なんなら
そう。
(よし、このことはまた今度考えよう)
そう思い自分の中からこの考えを放り投げた。
(それにしても、ここに来たのは僕だけなのかな?モモンガさんはどうなったんだろう?)
ここ数日、モモンガさんを探していたがそれらしい気配は全く無かった。
(僕がここに来たんだから、すぐ近くにいたモモンガさんも来てる筈なんだけど。条件か何かがあったのかな?)
考えても答えは出ない。しかしあの状況で転移したのが自分だけとは考えにくい。もしかしたらあの時いたユグドラシルプレイヤー全員が来ている可能性だってある。それは流石にないとは思うけど、あの時一緒にいたモモンガさんが来ている可能性は高い。
(当面はモモンガさんの捜索を第一に考えて動こうかな。
そういえば、モモンガさんリアルに帰りたいって思うかな?散々会社がブラックで〜とか言ってたからそう言う確率は低いとは思うけど)
正直、ここはリアルなんかよりもよっぽどいい場所に思える。ここには美しい太陽があり、美しい自然があり、虫や動物たちが沢山いた。この世界は未知で満ちていた。もしブループラネットさんがここに居たらきっと喜んで飛び跳ねるよ。
「あ〜。早くこの世界を冒険したい!」
正直今すぐにでもここを飛び出して未知に飛び込みたい。そんな気持ちを意思で何とか押さえ込んで先ほどの続きを考える。
(リアルに全く未練が無いと聞かれれば嘘にはなるけど、家族はもう居らず、特に人に見られて困る事もない)
故に心配事が殆どない僕にとっては今のこの世界が只々心地よかった。
(唯一の心残りは同僚達に迷惑をかける事と、たっちやギルメン達にもう多分会えない事か)
別れを告げることも無くいきなりいなくなったせいで迷惑をかけてしまう同僚には心苦しいし、彼らともう会えないと言うのはとても寂しいし悲しい。でも、ここでどれだけ考えてもその事は解決しないし、いまはここで自分にできる事を精一杯考えなければ。
(それにもしかしたらたっちやギルメン達はここに来ているかもしれない)
正直可能性は低いが僕が来たんだからゼロじゃない筈だ。
(ならばひとまずの行動方針は、①が来ているかもしれないプレイヤー(特にモモンガさん)を探す②に現地に知的生命体がいるのなら、関わりを持つ③は現地で冒険をする④が食事を楽しむ。こんな感じか)
(正直①と②以外はやりたい事だし、最悪③と④はしなくても良いかな。
でも③は是非ともやりたい。後は②の知的生命体と関わりを持つ。とりあえず人間だと仮定して、この姿はちょっとまずいな)
そう言って自分の姿を
(翼は最悪隠せるとして、この輪は厳しいかな。アイテムで何とかなるか?)
そう言ってアイテムボックスを漁る。
暫くしてそこには姿が変わったヤマトがいた。姿はそのままに天使の輪と翼が消えていた。
「結構良い感じじゃないかな。いや、こうして見ると我ながらかなりイケメンだな」
腰まで届く流れるような黒髪と切れ長の金色の瞳に色白の肌。
引き締まった肉体はそのままに腰には緑色に煌めく刀が揺れていて、左手にも同じ色の盾を装備している。その首からはこれまた同じ色の勾玉が吊り下がっていて、彼の纏う金緑色の鎧とぶつかって高い音を奏でていた。
(正直な話絶世の美女ならぬ絶世の美男子と言ったとこか)
※天使の輪は体のエフェクトを装備中見えなくする指輪のアイテムで、翼は自力で収納できた。
かなり良い感じと内心満足。
僕の本気装備達は全部たっち・みーの鎧と同じで、大会で優勝した時に運営にお願いして貰った物だ。全てが破格の性能を秘めておりレアリティ自体は神話級ゴッズだが、その実態はギルド武器に匹敵するシロモノになっている。
そのせいでたっちやギルメンから
『お前流石にズルすぎないか?』
なんて言われて暫くあだ名が【ズル天使】だった事もある。
そんな事もあったと、昔を思い出して懐かしい気分になった。
でも、
「少し派手すぎないかこれ?」
そう、効果面は全く問題ではない。
しかし、、ヤマトはそう言って取り出した鏡を見る。
そこに居たのは、全身をほぼ全て金緑色で統一された男だ。全身鎧や剣に盾、それに装飾品まで同じ色という力の入りようだ。
因みに顔には何も装備していない。理由は顔を覆っていたら周りが見にくい気がするから。このこだわりはユグドラシル時代からの筋金入りだ。
「こんなの側から見たら成金と変わらないな、、orz」
今更ながら恥ずかしくなってきた。やっぱり装備変えようかな。
取り敢えず今日はもう寝よう。うん、そうだそれが良い。現実逃避で装備を外して寝ようとしたその時だった。僕の探知に反応があった。
「何だ?誰かがこっちに来る」
最初は違うかと思ったが、迷いなくこっちに向かってくる。こんな森の中で一直線に向かってくるなんて、絶対に目的地はここだ。
「よく考えたら、いきなり森の中で爆発が起こったら何事かと見に来るよな」
当たり前なことに今更気づいた。
「人数は3人か。あまり強くはなさそうだな」
この気配察知は僕の取得しているクラス
この【全域把握】は一定距離内に入ったモンスターやプレイヤーの位置を把握できるスキルで、これだけ聞いたら便利そうだけど実際は探知阻害の魔法一発で欺かれるからユグドラシルではあまり信用はされない残念スキルでもある。
逆に探知阻害をしていなければ位置を確実に割り出せるのは強い。
(まぁ、僕と戦うような奴は全員が探知阻害なんて当たり前に発動してたから本当に意味なかったんだけど)
少し話が逸れた。つまりこのスキルに反応しているって事は実力は大した事ない筈。
(さて、どうしようか)
選択肢は主に3つ。1つ目は仲良く話しかけて関わりをつくる、2つ目は監視して情報収集に徹する、3つ目は面倒くさいから追い返す。
「普通に考えたら2つ目が一番なんだろうけど、個人的には1つ目がいいな。3つ目は論外、でも相手が関わりたくない奴らだったら良いかも。ん〜どうしよ」
かなり悩む。これが恐らく現地の人とのファーストコンタクトになるかもしれないのだ。嫌な印象を与えたくはないし、、、
そうして僕は悩みに悩んで結論を出した。
独自設定【天使の位相】
悪魔のデミウルゴスが【悪魔の諸相】を使っていたので、対になるスキルを入れたいと思い入れました。
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