死と神と番外の旅   作:眠りこけ布団

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やっと投稿できる。
学校の課題と考査がすごく大変でして更新できませんでした。
何で忙しいお正月に課題を出すのか?不思議でなりません。

それでは本編です!


第三話 現れた神

≪≪

あれほど煩かった戦場が。剣戟(斬り合い)の応酬や魔法、怒号や悲鳴が響いていた場所が、先程の光景が嘘だったかのように静まり返っていた。

誰も声を出す事ができなかった。

"ソレ"は、唐突に現れた。まるで初めからそこにいたかのように、いつの間にか佇んでいた。

"ソレ"は男だった。腰まで届くほど長い深みのある黒髪とどこか優しげに感じる金色の瞳。

顔には微笑みが浮かんでおり、その肌は傷一つ無く白く肉体は引き締まっている。

腰には緑色に煌めく刀が腰に揺れていて、左手には同じ色の盾を装備している。その首からはこれまた同じ色の勾玉が吊り下がっていて、彼の纏う金緑色の鎧とぶつかって高い音を奏でていた。

 

その身に纏う装備は、武器に深い造形がないものでも一目で素晴らしいもの分かるほどに見事な造りをしている。

万物を断つほどの鋭さを感じさせる、煌めく宝刀。

山脈のような重厚感と頑強さを感じる盾と鎧。

そして、まるで神の花園を思わせるほど見事な細工が施された勾玉。

装備は全てが同じ色をしており、高い一体感を醸し出している。これそのものが芸術として完成している。

しかしこれらの装備が唯の観賞用なわけがない事もまた分かっている。

その全てが人智を超越したような果てしない力を感じさせていた。

しかし、この場にいる全員の意識の先は、その神の如き装備ではなかった。

その先は男本人に向いていた。

その男から感じる力に皆目を奪われていた。

それはまるで果てしない空を思わせる力。

世界の全てを見つめる、決して理解する事など決してできない存在(もの)である空。全てを見守る、まさに自然そのもの。世界の超越者。

その男から感じる力は、それほど雄大で圧倒的なものだった。

 

【まさに神の降臨である】

 

おもわず人々はそう考えた。それほど男から感じる力は、まさに別格だった。

 

男は法国の総指揮官の前に立ち、その右手には矢を掴んでいた(・・・・・)

エルフや法国の兵士に関わらず、その場にいる誰もが男を見ていた。

しかしその瞳に浮かぶ感情は正反対のものだった。

法国の兵士に浮かぶのは助かった事への安堵や歓喜、幸福、そして神への信仰心。

それに対してエルフ達に浮かんでいたのは、まさに正反対の感情。

恐怖や絶望、後悔、そして神への赦しを乞う懺悔(ざんげ)の心持ち。

 

その原因は男の行動と言葉にあった。

男は先ほど、殺されそうになっていた総指揮官を助けた。

そして『後はまかせて』と、そう言ったのだ。つまり男は法国に味方し、エルフの敵となってくれるという事。これほどの力を感じさせる存在が力を貸してくれる。その事は法国兵の士気をこれ以上ないほど高揚させ、逆に敵となったエルフ達には著しい士気の低下を与えた。

法国の兵士達は、自分達を救ってくれる存在に対して祈りを捧げながらその振る舞いを見ていた。

 

≪≪

(やっべぇぇぇ!やっちまったぁぁ!)

 

そしてその信仰を一身に受ける存在は、その柔らかな笑みの下で、かつてないほど焦っていた。

時は少し遡る。

 

 

 

ヤマトは、謎の煙の出所を確かめに飛んで向かっていた。

そしてその謎の煙が出ている場所に到着した。

 

(何だ。人間の兵士とエルフが戦ってる?)

 

視線の先には、人間の兵士とエルフが激しい戦いを繰り広げていた。

人間側は武装が統一されているところを見ると軍隊だと思う。対してエルフの方は武装はしているが統一性がない。例えるならゲリラみたいな感じ。見た感じ戦局はどうやらエルフの方が優勢みたいだ。

木をうまく使って戦っている。まさに神出鬼没だ。こうして今も人間の兵士がどんどんやられていく。そしてここを見つけた煙の原因だが、人間のマジックキャスターが使う火球(ファイヤーボール)によって木が燃えていたのが原因だった。

 

(嘘だろ。火球(ファイヤーボール)だと)

 

ファイヤーボールは第3位階の魔法だ。ユグドラシルでは初期中の初期でしか使用されないレベルの魔法。

しかし今気になっているのはそんなことでは無い。

ここで大事なのは、この世界の人々がユグドラシルの魔法を使っている(・・・・・・・・・・・・・・・)という事だ。

僕はユグドラシルから来たからユグドラシルの魔法が扱えるのは、一応当たり前だ。でもこの世界の人々は、当たり前だがユグドラシルから来たわけではない。では何故ユグドラシルの魔法が使えるのか。

 

(誰かがこの世界にユグドラシルの魔法を伝えた?いったい何のために?そもそもなぜこの世界でユグドラシルの魔法がそのまま使えるんだ?)

考えを巡らせるが、さらに疑問が増殖しただけだった。

 

(この世界は僕の知らないことが多すぎる。情報収集をもっとしなければ。誰かに聞くのが一番良いんだろうけど、)

 

そう考えている間にも戦いはどんどん激しさを増していく。

不利だった人間の軍がさらに厳しい状況な陥っている。今すぐ壊滅しないのが不思議なほどだ。

 

(このままだと壊滅する。彼らを助けるべきだ、、)

 

そう思い、行動しようとした。だが、

 

(助けた時のリスクが不明だ。それに争っているという事は両者の間で何かがあったはず。その原因が分からない以上、そこに僕が介入してしまったらそれこそ取り返しがつかなくなってしまう可能性がある)

 

そう思い、体の動きが止まる。

そうなのだ。僕はこの世界について何も知らない。

だからここで助けるのが正解とは言い切れないし、もしかしたら悪いのは人間の方かもしれないのだ。でも、このまま見捨てるのは凄く嫌だ。

後になってこの選択を後悔するかもしれない。

しかし、今はこの世界で下手な問題を起こさないことが先決だ。この事が原因で法国と敵対するかもしれない。それだけは絶対に避けなければならない。

そう考え、移動しようとしたその時、僕の目がある男を捉えた。

その男は人間の軍の陣地の後方から飛び出してきた。周りの兵士より1段階レベルが高そうな装備に身を包んだ男。後方に居たという事から、恐らく指揮官に近い立場のものの筈だ。その指揮官と思われる男は、兵士たちが戦っている最前線に突っ込むとその手に持つ剣を振るいエルフ達を斬り捨てていく。その姿に兵士達も鼓舞されているようだ。バラバラになりかけていた軍が再び一つに纏まった。僕はその光景から目が離せないでいた。なぜか懐かしさを感じていた。その光景は、僕がリアルでもゲームでも最も尊敬する人物であり、親友でもあった男を思い起こさせた。

その男の名前は、たっち・みー。

 

その光景を見て、僕の意識は過去へと飛び立っていった。

 

 

≪≪

たっち・みー。

リアルで彼は警察官として、そして父親としての責務を立派に果たしていた。

別にしなくてもいい仕事を、困っている部下の為に残業してまで一緒にやっていたこともあった。そのせいで娘が父の日の為に用意していたサプライズに遅れてしまい、一週間話をして貰えなかったと悲しそうに話していたが。

 

そしてゲームでは、PKギルド【アインズ・ウール・ゴウン】最強にして数少ない常識人の1人だった。他のギルドから『なんであんな良い人がPKばかりのDQNギルド(アインズ・ウール・ゴウン)に入ってるんだろう?』と不思議がられていた。

しかし、何のことは無い。

たっち・みーは、正義漢でお人好しなのだ。本来、富裕層の人間は貧困層の人間なんか気にしないのだ。使い潰す働き蜂程度にしか思っていないのが大半だった。そんな奴らしかいないから、貧困層の人間の不満が溜まっていくのだが。そんな中にあっては、たっち・みーのような人はある意味変わり者であった。

しかし、僕はそんなたっち・みーに憧れていた。

たっち・みーとは高校の時に出会い、紆余曲折を経て、親友になった。

彼は周りを引っ張っていくタイプだったから大変なことも勿論あった。

それはユグドラシルでも変わらなかった。驚くほどにね。

でも、それら全ては僕の大切な思い出に違いない。

そのキラリと輝く思い出の中で、一際記憶に残っている事がある。

それはユグドラシルを始めて暫くした後の事だ。

あの頃にはもう2人とも社会人になっていた。たっち・みーは警察官、僕は巨大複合企業(メガコーポ)に就職した。

そうして社会人になって時間に余裕ができたこともあり、僕たちはユグドラシルに一層熱を入れる事になった。

そしてその頃のユグドラシルでは、異形種狩りと呼ばれる行為が流行っていた。異形種をある一定数PKすることで成れる職業に強いものがあった為、流行っていた行為だったものが次第にエスカレートし、異業種を見つけ次第問答無用でPKするようになっていった。

たっち・みーはそう言う人々を助ける目的と、外の世界を自由に冒険する為に仲間を集めていた。

*当時のユグドラシルでは異形種のプレイヤーは異形種狩りから逃れる為に、自分達に有利なワールドである【ニヴルヘイム、ヘルヘイム、ムスペルヘイム】から外に出ようとしなかった。たっち・みーはそんな狭い世界から外に冒険へ繰り出そうとしていた。*

僕はその時かつてワールド・サーチャーズの原型となったパーティに参加していたが、パーティの活動の合間にたっち・みー達の素材や資金集めを良く手伝っていた。

そんな事をしていたある日のことだった。

その日は確かたっち・みーに誘われて2人で素材集めに行った帰りだった。

 

『いや〜今日は大量だったな!これで暫くは素材集めしなくて良いな!』

 

僕はそう言って素材をアイテムボックスから取り出す。

今日取った素材は魔鱗猛牛(スケイルバイソン)というモンスターのものだ。レベルは60程なのだが防御力が異常に高い上に魔法にも高い耐性を持っているモンスターだ。その為、そのレベルに反して狩場にいるプレイヤーのレベルはかなり高い。そしてこの素材が武器にしても良し、防具にしても良し、換金しても良しといった具合に万能素材なのだ。

 

『そうだな、これを換金して資金にするか。当面は資金問題に悩まされそうに無くて良かった』

 

たっち・みーもそんな事を言う。

 

『それを素材にして装備をを作れば良いんじゃないか?たしか外装のデータクリスタル余ってたよな?』

 

『それを使うのはもっと素材に余裕ができたからだな。取り敢えずはパーティの共同資金に入れておくよ。そっちはどうするんだ?』

 

『こっちも同じく。リーダーや他のメンバーがお金をアイテム関連でかなり使うから入れておかないと無くなるからね。まったく、リーダー達ももう少し考えて使って欲しいな』

 

冒険に使うアイテムだと言うのは分かるんだけど、それにしても買う量と頻度が多すぎる。最近ずっと素材と資金集めばかりしている気がする。

 

『やっぱりそっちも大変なのか?』

 

『あぁ。冒険によく出るから使うアイテムの量が半端じゃないんだわ。

前に会計担当が頭抱えてた』

 

『そんなにか。じゃあもっと資金を貯めておかないとな』

 

『全くだな。ん?おい。たっち、あれって何だ?』

 

素材の使い道の話をしていた時だった。自分達のいるところから少し離れた所にプレイヤー達がいた。普通のプレイヤーなら問題はないんだが、こんな所で何をしているんだ?この辺りにはレアモンスターや特別な素材(ドロップアイテム)なんかないはずだけど。何やら嫌な予感がする。

 

『あれは、、まさか!ヤマト、行くぞ!』

 

そう言うが早いかたっちが速攻で駆け出して行った。

僕も急いでそれについて行く。

そうしてプレイヤー達に近づくと、声が聞こえてきた。

 

『よーし後2匹でクラスチェンジだ』『早くやっちまえよ』『キモいんだよ』

 

間違いない。異形種狩りの現場だ。わざわざこの異形種に有利なワールドでそれを狙って行うあたりかなり悪質だ。

被害に遭っているのはスケルトン系のプレイヤー。それに対するパーティの数は四人。数ではこっちが不利か。

 

(『おい、どうする?』)そう声を小さくして問いかける。

 

(『決まってる、困っている人は見捨てられない!』)

そう言って怒りに燃えるたっち・みー

 

(『たっちならそう言うと思ってた。なら僕がデカい魔法を1発叩き込むから、その隙に飛び出して攻撃。これで行くよ』)

 

(『了解!』)

 

そう言って軽い作戦を立てた後に、発動させる魔法を選択する。

 

神炎(ウリエル)!』

 

発動した魔法は第10位階魔法神炎(ウリエル)

この魔法は自分のカルマ値がプラスの最大値、つまり+500なら規定値通りのダメージが出る。しかしそこからカルマ値が下がって行くごとにダメージが減って行くカルマ値依存の魔法だ。カルマ値が低いと下の位階の魔法よりもダメージが低くなってしまう。事実カルマ値が最低値の-500なら第1位階魔法よりも与えるダメージは低い。

しかし僕のカルマ値はプラスの最大値である+500。つまり最大火力だ。

発動したウリエルは相手パーティのど真ん中に命中した。一瞬で視界が遮られるほどの光が相手パーティを包み込んだ。

 

『何だ一体?!』『攻撃?!何処から?!』『落ち着け!この魔法なら敵は近いはずだ!』

 

相手パーティはいきなり発動したウリエルにかなり驚いているみたいだ。

そんな事を言いながら騒いでいる。

たが、そんなに驚いていたら。負けるぞ?

『ザンッ!ドガッ!バスッ!』そんな音と共に相手パーティは全滅した。

魔法に気を取られている隙に背後に回り込んだたっち・みーの仕業だ。

呆気ないほど簡単にやられたなぁ。

まぁたっち(あいつ)の前で隙を見せたらそうなるよね。

そんな事に納得しながら、被害に遭っていたスケルトン系のプレイヤーの方に歩いて行く。

スケルトンのプレイヤーはかなり驚いている様子だ。

それも仕方ないか。PKされそうな状況から一変してそいつらがPKされたんだから。

 

『な、何で私を助けてくれたのですか?』

 

そんな事を聞いてきた。確かに僕がこのプレイヤーの立場だったら全く同じ事を思ったはず。こう言った行動には必ず裏があるからだ。場合によっては更に大変な目に遭うこともあるかも知れない。絶対に警戒する。

だが、

 

『誰かが困っていたのなら、助けるのは当たり前!』

 

たっちにそんな考えは一切ない。だからこうしてド派手な【*正義降臨*】の課金エフェクトと一緒にスッパリ言い切る事ができる。

これがたっちの長所であり、短所であり、美徳であり、欠点である。

とにかく性格が真っ直ぐであり、だからこそここまで愚直に戦ってこれたのだ。その性格のせいで折り合いが悪い人とはずっと仲が悪いままなのだが。僕も人には優しい方だとは思うけど、たっち程真っ直ぐに行動するのは難しい。実際に言われた相手は驚いて固まっている。

それはそうだ。今の社会でここまで真っ直ぐなやつはほぼいないだろう。

 

やっぱりたっちは変わらないなぁ。

 

そんな(たっち)に、僕は憧れていた。

 

 

≪≪

(あぁ、そんな事もあったな)

 

昔を思い返して、何とも懐かしく、悲しく、そして嬉しい気持ちになった。

そうだ、なんで忘れていたんだろう。たっちはこういう時にも前後を考えずに体が先に動くようなやつだったな。まずは助けてから!みたいな感じだった。

そう考えると、リスクがどうとか原因がなんとかと悩んでいたのが馬鹿らしくなってきた。

 

(たっちなら、この状況でどうするか。、決まっている!)

 

そう思っている間に、指揮官の男がピンチになっていた。

目の前で弓矢を構えた少女が、彼を狙っている。

先ほどまでの僕なら、いろんな事を考えて結局助ける事ができなかっただろう。

しかし、今の僕なら、あいつとの会話を思い出した今ならば!

 

(迷ったら行動するな、だ。だが!)

 

「もう迷いはない!」

 

そう決心した僕は早かった。

そのまま空中から飛び込んで少女と指揮官の間に割って入ると、放たれた矢を右手で掴み取った(・・・・・)

 

「素晴らしかったよ。もう大丈夫、後は任せて」

 

 

≪≪そうして現在に戻る。

(やっべぇぇぇ!やっちまったぁぁ!)

 

カッコつけて『もう迷いはない!』とか言ってしまった。

やった事に後悔は全くないが、これから先の展開に不安がとてもある。

ここでの選択が後々命取りに化けるかもしれない。

でもこの状況はもう戻らない。ならば、

 

(ここまできたらもう後は突っ走るだけだ!)

 

まずするべき事を考える。状況整理は大切だとギルメンから教えられた。

①は彼を助ける。②はこの戦いを止める。③はその後に情報を聞く。

①はひとまず大丈夫だ。今は気絶しているようだが、命に別状はなさそうだ。②は全滅させれば全て解決だが、そんな事僕は望んではいないし③の情報収取に支障が出る。だからどうするか。全滅させずに戦いを終わらせるには。その方法は、相手を降伏させる事。降伏させてしまえば、戦いは終わり、そこから被害が出る事もほぼない。まさに今の僕の目的にぴったりな方法だ。しかし戦いで相手が簡単に降伏するわけが無い。ならばどうするか?その答えは、相手側の強者または指揮官を無力化して戦意を削ぐ。これに限る。相手の心の支えを無くして戦う気を奪うのだ。かつてアインズ・ウール・ゴウンの作戦担当だった、ぷにっと萌えさんに{誰でも楽々PK術}として教えてもらった作戦だ。

 

(やっぱり結構エグい作戦だよな。さすがギルド一のえげつないさんだ)

 

そう言ってかつての知り合いに貶しているとも取れる賛辞を送る。

今回、僕は指揮官の彼がいる兵士側について戦う。なら無力化するべきはエルフ側の強者。

 

(エルフ側で1番強そうなのはあの女の子。

いや、あの人(・・・)だな)

 

あの少女もこの戦いの場なら三本の指に入る強さだが、あの人の方が遥かに強い。

 

(あの強さで何で戦闘に参加していないんだ?多分ここにいる全員よりあの人の方が強いのに)

 

不思議に思ったが、戦闘に関与していないのなら今はあの子を無力化するのが先決だ。

あの子だって放置していたら大変なことにになってしまう。

そう決めたのとほぼ同時だった。

エルフの少女が再び引き絞った矢を放ってきた。矢は僕の頭を目掛けて一直線に飛んで来る。正確な一撃だ。相当の修練を積んだことが良く分かる一矢。

ただ、

 

「スピードが足りない。もっと強く引き絞った方がいいよ」

 

そう言ってもう一度右手で矢を掴み取った。

エルフの少女の顔が驚きに変わる。何処からか感心したような視線を感じた。周りからは驚愕の気配が漏れ出ている。それは当たり前の反応だ。

至近距離からの矢の一撃。普通なら間違い無く命中しているはず。

だが、僕は伊達にワールドチャンピオンではない。反射神経には自信がある。

それに、

 

(弓の相手はペロロンチーノさんとのPvPで鍛えられたからな!)

 

ペロロンチーノ。アインズ・ウール・ゴウンのギルメンで、弓を使うバードマンだ。

彼は弓を使った戦いがとても(うま)かった。

その遠距離からの射撃を恐れて【爆撃の翼王】なんて異名までつけられていた。僕もあの弓には散々苦しめられたな。

ここでその経験が生きてくるとは、人生何があるかなんてわからないな!

 

そんな事を考えながら、放たれる矢を全てを掴み、躱し、弾いた。

少女の顔に焦りが浮かぶ。そうこうしている内に、1発づつではキリがないと思ったのか、少女は矢を纏めて放ってきた。

その数は20本を優に超え、もはやどうやって放ったのか分からない程だ。

 

(一発づつが効かないのなら数を増やす。なるほど、確かに有効な手だ。この場合、後ろに引くと矢が広がって余計にダメージを負う。なら、)

 

脚に力を込め、地面を踏み締めた。

 

(前に出て距離を詰める!)

 

そのまま地面を蹴って少女に接近する。

向かって来る矢を全て打ち落としながら、少女に肉薄する距離にまで近づくと、そのままの勢いで右手で手刀を形作り振り上げる。

 

「ごめんね」 

 

そう言って右手を振るう。一息で振るわれた手刀は、首元に吸い込まれるようにして少女を捉えた。反応できなかった少女は、そのまま意識を手放し後ろに倒れる。

 

(取り敢えずこれで無力化は成功。大変な怪我にならなくてよかった)

 

そう思い心の中で安堵の息を吐く。

この世界での僕の身体能力がどの程度なのかまだわからない。

でも取得している職業からして戦闘職なのは間違いないはずだ。

この世界ではもしかしたら僕の手刀1発で死んでしまう事があるかも知れないのだ。だから彼女が死ぬような事がなくて本当に良かった、。

そう思って少し気が緩む。

 

(しかし手加減したとはいえ、かなりの至近距離での手刀。少なからず痛みはあったはず。大丈夫かな?)

 

そう思い、倒れた少女の顔を見た。僕の考えは否定された。

その顔は、まるで笑っているようだった。

何かから解放されたかのように見える、とても安らかな顔だった。

何でこんな顔をしているんだ。そう不思議でならなかった。

 

「「「ウオオォォォォ!」」」

 

そんな事を考えていると、後ろから声が聞こえた。

見ると兵士たちが歓声を上げている。

それぞれが口々に『我らの勝利だ!』『ああ神よ、、』『我らが神が再び降臨なされたのだ!!』とか叫んでいる。

 

(神?もしかして僕のこと?)

 

この状況で他に当てはまる人物もいないため、十中八九僕の事だろう。

 

(確かに今の装備は凄く派手なものだけど、神様と間違えるほどかな。

天使の姿ならまだしも、今の僕はただの人間の姿のはずなんだけど)

 

そうして少し変な気分のまま周りを見渡す。

兵士たちは全員が明るい表情を浮かべている。

逆にエルフ側は全員が絶望したような、諦めきった顔をしている。

少しエルフ達が可哀想だと思った。

しかし、僕はその事からすぐに意識を別に向けた。

まだやるべき事が残っている(・・・・・・・・・・・)

 

そこにいる人(・・・・・・)、出てきなよ。何で隠れてるかは知らないけど、バレてるんだから意味ないと思うよ」

 

そう声を少し離れた木に投げかける。その声に周りが再び静かになった。

そうして暫くすると、

 

「私の存在に気づくとは、な。やはりお前は只者ではないようだ」

 

そんな声と共に木の後ろから一人の男が出てきた。

 

 

 

 

 

 




やっとここまで書けた。
プロットはまだまだ先まで書いてあるのに、文章に起こすとなると筆の進みが遅くなってしまいますね。
そして最後に出てきた男。勘のいい人はもう分かっているでしょう。
そう、次はオリ主とアイツのお話です。
そしてモモンガ様のお話は、次の次を予定しています。
頑張って書くので応援お願いします!

【独自設定】
モモンガとたっち・みーの出会い。
通りかかって困っている人を颯爽と助ける。これぞ本当のヒーロー!

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