死と神と番外の旅   作:眠りこけ布団

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めっちゃくちゃ悩みました!

学校が忙しかったのもありますが、構想が沢山ありすぎて纏まらなかったのが大きかったです。
それとタイトルの通りにアイツが出てきます。

それでは本編です!


第四話 エルフの王

≪≪ヤマト

ゆっくりと木の陰から男が姿を現した。

男はエルフだった。歳の頃は、エルフだから当てになるかはわからないけど多分20歳ぐらい。

 

白髪で体付きは細く、とても戦場には似つかわしくない。その頭の王冠みたいな髪飾りと、汚れひとつない純白の鎧がその印象に更に拍車をかけている。まるで王のような出立ちだ。しかし彼がこの戦場で1番強いのは間違いない。

 

(この人、装備が他のエルフとは段違いだ)

 

このエルフの装備は、僕から見ても結構な代物だ。周りの他エルフとは比べ物にならない。

それに、、

 

(装備がやっぱりユグドラシルのもの。しかもレアリティがあの時見たロンギヌスの男よりも上だ)

 

そう。やはりこのエルフの装備もユグドラシルのものだった。

それにエルフが付けているあの髪飾り。あれはユグドラシルのイベントの目玉枠だった神話級アイテム。

普通のプレイヤーではまず手に入らないやつだ。そんな物を持っているとは、

 

(やっぱりプレイヤーは来てたんだな!それならモモンガさんも来ているに違いない。早く誰かから情報を得ないとな!)

 

見えてきた光明につい胸を弾ませてしまった。友人に会えるかも知れないという可能性は僕を興奮させるには充分だった。だからこそ思考も傍にそれた。

 

(それにしても出会う人達の強さにかなりばらつきがある、この世界の普通っていうのいはどのくらいなんだろ?)

 

ふと前々からの疑問を考える。この世界の強さがピンキリすぎて、基準がいまいち掴めない。

それも10や20とかじゃない。40や50、下手をしたらもっと差がある。

 

ユグドラシルではPvPに於いてレベル差が10あればほぼ確実に、20もあれば絶対にレベルが高い方が勝つ。一部のスキルなどに例外はあるけど、それほどレベルの差は重要だ。

 

そんなレベルにこれだけの差があるのは凄く不思議だ。まずこの兵士たちやエルフ達のレベルは10〜20ぐらいで、この指揮官らしき男の人とさっきのエルフの少女が比較的強くレベルは30前後だった。ユグドラシルと比べたらすごく低いけど、この世界ではこれが普通なのかもしれない。

 

 

それに対して少し前にクレーターにきた3人組。あの三人はおそらくかなり強かったんだろう。二人はレベル30〜40だったし、あのロンギヌスの男に至っては80ほどもあった。

 

(結局あの人たちは何者だったんだ?あの法国とかいう国の特殊工作部隊とかが1番有り得そうだ。まぁ結局は分からずじまいだけど)

 

流石にあのレベルがそう易々といる事は無いとここを見て思ったが、それでも可能性は無いわけじゃない。もう少し詳しく調べるべきだったかな。

そう悔しがっても過去には戻れない。

 

気を切り替えなければ。

そして装備から考えるに、このエルフもレベルは80前後だろうと推察できる。そしてスキルでもう少し詳しく調べる。

 

(HPは80レベル台。今まで見た中だと1番多いな。そして、、MPがかなり多い。今の僕(・・・)ぐらいある。間違いなく魔法職、エルフだから多分森祭司(ドルイド)だな)

 

一通り調べたが、予想は概ね当たっていた。ただ少し予想外だったのがMPが想像よりもかなり多かった。僕は戦士職とはいえ天使だ。天使は魔法を主体に戦うことが多いから元々のMPはかなり多い種族だ。

 

しかも僕は天使の中で最高位の熾天使。

今の姿とはいえその僕に匹敵する量というのはユグドラシルの80レベルプレイヤーの中でもそう数は多くなかった。

 

(正直勝てるな。ただ、相手が特殊なスキルがあったら面倒だ。もし危ない場合は次元断切(ワールドブレイク)を使ってなんとかするか。あれは今のままで使える最終奥義だし余程の方がないと通じるはずだ)

 

どちらにしろ、もしこれだけやっても勝てないのなら奥の手を使うしかない。多分そんな事にはならないと思うけど。

僕の本当の奥の手(・・・・・・)を使えばこのエルフだって問題じゃない。それどころか普通の100レベルプレイヤーが相手なら、仮に百万回戦ったとしても絶対に僕が勝つ。それほどにその力は強い。

 

けど、勿論その分デメリットもあるし、何よりそれを使うと周りの人たちに被害が出るかも知れない。いや、絶対にまずい事になる。技の余波だけで死んでしまうかも知れない。

せっかく争いを止めたのだからもう被害を出したくはない。

 

(できるだけ穏便に行こう)

そう決めている時に、エルフの男が話しかけてきた。

 

「知っているか、人間。通常の鍛錬よりもより早く、そして強くなる方法とは何かを?」

 

最初の言葉がこれだった。(いきなりなんだ、強くなる方法?どういう事だ)

 

通常の鍛錬よりも強くなる方法?正直意味がわからない。だが態々尋ねてきたのだから恐らく答えた方がいいんだろう。

通常の鍛錬よりも早く強くなる。多分魔法やスキルの事を聞いているわけじゃないだろう。

なら、、、

 

「実践形式の戦闘、か?」

 

そう答えた。正直言って早く強くなれるかは疑問が残るが、すぐに思いつくのはこれだった。実戦に勝る経験なしと云う言葉があるくらいだ。当たらずとも遠からずと言ったところだろう。やはり疑問は残るが。

そもそも強さと言っても様々なのだ。肉体的な強さはもちろんのこと精神的な強さや実践的な強さ、または多対一的な強さなどその種類はとても多い。

 

そしてそれを全て実践経験で賄えるかというと、僕はそうではないと思う。勿論実戦を経験する事で動きが良くなることはある。場合によってはそれは強みにもなるはずだ。

だが、そもそもの鍛錬をしていない場合は別だ。

 

強さの元は、資本は肉体なのだ。それを鍛えていない場合にいくら経験を積んでも強くなれるわけがない。土台となる地面がないのにビルが立つわけがないのと一緒だ。

 

話が長くなったが、つまり何が言いたいのかというと

(強くなるのに近道は無い!)これに限る。

 

当たり前だ。強くなるには努力が欠かせない物だ。楽して強くなる道はない。事実僕だって大会で優勝してワールドチャンピオンになる前には、とんでもない努力をした。

職業を厳選してアイテムを揃えてプレイスキルを磨き、経験を積んだ。

どのくらいかというと、大会の2週間前から仕事を休んで毎日ユグドラシルをしていたぐらいだ。その2週間の休みを取ったせいでそこから4ヶ月間と少しの間休みなしになったが、努力の甲斐あって無事優勝したのだから後悔はしていない。

 

「ほう、人間にしてはなかなか本質的なものの見方をする。やはり人間であっても強者は特別なようだ」

 

そう言ってエルフは少し感心したような気配を見せた。まるで久しぶりに話がわかるやつを見つけたような反応だ。

 

「しかしそれは全てではないのだよ。〔命のかかった極限状態で強者と戦う〕。これこそが最も早く強くなれる手段なのだ」

 

そう言うと男は僕から視線を移した。その視線の先は先ほどのエルフの少女に止まった。

 

「そう言う意味ではそいつは最も良い機会を得たのだ。それなのにまるで変わってはいない。無能め。私に手間暇をかけさせた分だけ他の失敗作に劣るな。やはり王の相が出ていない者はゴミに過ぎないということか」

 

先程より低い声で、その色の違う瞳に冷たい光を漂わせてそう言った。

 

「だが、まだ生きているのであれば機会もあるだろう。殺すのも手間だ。

もしかすればまた別の場で開花するやも知れんしな」

 

そう言って興味を失ったのか視線を僕に戻した。

 

「それに比べてお前は素晴らしいな。それほどの強さを持つ者に会うのは何時振りか。あぁそうだ、まだ名を聞いていなかったな。これは失敗だな。知っているとは思うが、名乗っておこう。私はこのエルフ王国を治める王、デケム・ホウガン。お前の名はなんと言うか?」

 

そう言ってデケムと名乗った男は先程の少女に向けた態度とはまるで別人のように僕の名を聞いてきた。

 

(なるほど、王なのか。通りであの態度なわけだ)

 

正直かなり偉そうなやつだと思っていたが、本当に偉いやつだったのか。

それにしても人によってかなり態度が変わるやつだな。しかし向こうから名乗ってきたならこちらも返すのが礼儀だ。

 

「僕の名前はヤマトと言う」

 

そう言って最低限の言葉だけを返した。

 

「ヤマトか。覚えておこう」

 

随分と他者を見下すようなな奴だな。こういう奴は嫌いだ。

 

「ところで、」

 

そう言って先ほどから気になっている事を聞く。

 

「さっきこの少女を失敗作とか言っていたけど、どう言う意味だ?」

 

デケムはこの少女の事を失敗作、ゴミに過ぎないなど散々言っていた。僕はその事について実はかなり頭にきていた。

 

(この子や他のエルフ達は国のために戦っていた。その部下を言うに事欠いて失敗作、ましてやゴミだと?)

 

「この少女やエルフ達はお前の部下、そして守るべき民じゃないのか?なぜ助けようとしなかった?」

 

そしてこの事にも怒りがゆらゆらとロウソクのように揺らめいていた。

デケムほどの力があれば被害はもっと少なかったはずだ。事実デケムが戦っていればエルフ達の被害は限りなくゼロに近くなっていた。それなのにデケムは動こうとしなかった。

 

もしかしたらこの世界ではそのようにするのが正解なのかも知れない。そもそもこの考え自体が理想論であり、夢物語なのだ。

 

守らないからと言って糾弾される事ではない。それが王であれば尚更だろう。王は国の代表であり象徴なのだから。

しかし、

 

(それはリアルの話だ。この世界ではそんな事ができるかも知れないじゃないか。それを可能にする力が有るのなら使うべきじゃないのか?)

 

そう思ってデケムに聞いた。

しかし、返ってきた言葉は実に馬鹿馬鹿しいものだった。

 

「なぜ、そんな事をしなくてはならない?

ヤマト。お前は紛れもない強者だ。しかし王というものを良く知らないようだ。王とは民が奉仕すべき至高なる存在であって、民の世話をするためにいるのではない。

上の者が下の者に対してする行いは慈悲というのだ。慈悲は乞うものであって、要求するものではない。

下の者は降り注ぐ雨を待つように、たとえ与えられなくてもそれに満足しなければならないのだ」

 

デケムは何を当たり前の事をと言った具合に僕に語った。

冗談かと思ったが、そう話す顔は真面目そのものだった。

 

(何を言ってるんだ、こいつ?)

 

怒りを通り越して呆れてしまった。他の国に対してこんな事を思うのはいけないかも知れないが、こんな奴を王に頂いているエルフ達が可哀想だ。

もしかしたら頭がおかしいのかも知れない。

 

(いまならこの子があんな顔をした理由が分かる気がする)

 

こんな奴にひたすら命令されるがままに戦場に赴いていたのなら、それから解放されるかも知れないというのはまさしく安堵だろう。可哀想に。

 

この名前も知らない少女に憐憫の情を持った。そう思うほどにこの男は酷い奴だった。

 

「それよりも、ヤマト」

 

「何だ?」

 

そうして内心呆れ果てているところに、またコイツは、、

次は何なんだ?

 

「お前には我が城に来てもらうぞ。そこで私の夢のために協力してもらう」

 

「・・・・は?」

 

そうして言われた言葉に一瞬意識がフリーズした。いろいろな考えが脳内を巡る。何で僕がデケムの城に行かなくてはいけないんだ?協力?

それに夢とは一体なんだ?

 

「夢?なんだ夢って?」

 

思わずそう聞くほどには疑問だった。

 

「私の血を引く子供達で軍勢を作り、世界を手に入れる。それが私の夢だ」

 

そうデケムは溌剌(はつらつ)と、そして誇らしそうに言ってのけた。

 

(なるほど、やっぱりコイツ頭おかしいわ。自分の子供達で軍勢を作って世界征服?子供でも思いつかないぞ。普通は思い付いても、いや思いつく時点でおかしいか。行動に移すはずないだろ。本気かコイツ?、、、本気なんだろうなぁ。瞳に迷いがないもんな)

 

これ以上呆れることはないと思っていたのに、それを軽く超えてきた。

もはや感心すら覚えてきたように感じる。

 

(それに僕を協力させるだと。絶対に嫌だ)

 

ロクでもない事に巻き込まれるのは間違いない。それがどんな事にしろ、この後に動きにくくなる事間違いなしだ。

 

そのうえ僕のデケムに対する好感度は先程の発言の数々によっていま地の底。協力なんて真っ平御免だ。

 

それに、(コイツは子供や女性をなんだと思ってる。まるで道具みたいに言うじゃないか。そんな奴に従う気はない)

 

「残念だけど、協力する気はない。僕は他にやらなければならない事があるんだ」

 

そう言って断った。モモンガさんを探す事と並行してプレイヤーの情報も探らなければならない。しなければならない事は多いのだ。

もしかしたらデケムは何か知っているかも知れないが、コイツに聞くのは凄く嫌だ。

 

(だがこの兵士達はどうしよう。流石にここで放置は可哀想だし、安全になるまでは僕が護っていようかな。多分アイテムを使えばいけるはずだ)

 

そう兵士達の扱いについて考える。

この兵士達、とくにあの男の人は尊敬に値する人達だ。あの行動がなければ態々助けることも出来なかったかも知れない。だからこの人達は護ろう。

 

「何?」

 

断られると思っていなかったのか、デケムは不思議そうに言った。

 

「なるほどなるほど、確かにいきなり言われても困惑するのは当たり前か」

 

おや、意外と常識もあるのか?

 

「ならば城に連れ帰ってから説得するとしよう」

 

前言撤回コイツに常識なんてものはない。拉致し(さらっ)てからの説得するって、それは説得じゃなくて脅しと言うんだよ!

 

「説得じゃなくて脅しじゃないか」

 

「そうなのか?まぁこの際はどうでも良い。連れ帰ってからだ」

 

本当にこいつは、、

(それにしても、どうやって僕を捕まえる気だ。仮に80レベルだとしても僕とのレベル差は20だぞ。倒すのすら難しいのに捕まえるなんか不可能だろ)

 

そうなのだ。デケムは僕に勝つつもりらしいが、どうやっても僕が負ける気はしない。それは単純にレベル差でもあるし、装備の差でもある。

いくら今の僕が全力を出せないとしても、勝つことは勿論拉致なんて出来っこない。そう思っていたのだが、

 

「力を見せよ。ベヒーモス」

 

デケムのそんな声と共に地中から土が盛り上がった。それは次第に巨大な土塊となり、さらに人の姿を(かたど)った。

 

(嘘だろ?!根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)!?)

 

それはかなりの衝撃だった。なるほど、確かにこれを操れるのならこんな態度になるのも分かる。

 

根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)

ユグドラシルに存在する精霊の中で最上位の精霊でレベルは87。

その最上位の中に於いてもHPと防御能力は群を抜いている。そのうえ攻撃はレベル87以下のほぼ全ての大地に存在する金属の属性を持っているという厄介さも持ち合わせている精霊だ。

 

(しかも強化されてる。HPが90レベル後半並にあるのかよコイツ。倒すのは一苦労になりそうだな)

 

デケムは召喚に特化した森祭司(ドルイド)だった。今召喚した精霊は通常の方法では召喚できない。それを召喚したのだから間違いはない筈。

 

さらにデケムが召喚した根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)は通常よりも強くなっていた。HPの量がとても多い。切り札の次元断切(ワールドブレイク)でギリ削り切れないぐらいの量だ。

 

(正直舐めてた。だけど、これはチャンスじゃないのか?こんなのユグドラシルにもあまり居なかったぞ)

 

少し予想外だったが、前向きに考えよう。まず、これはこの世界での僕の強さの確認に使えそうだ。

 

僕の使うスキルは納めている職業柄、大体が戦闘用のスキル。それ故にスキルの確認が殆ど出来ていなかった。下手に使ってこの世界の自然を傷つけたくなかったから使用をためらってしまったのだ。

 

だが、相手がHPがめちゃくちゃ多い精霊なら試すの(サンドバック)に最適だ。それに罪悪感をまるで感じないのも良いポイントだ。

そうと決まれば行動は早い。

 

まずは倒れているエルフの少女を近くにいた他のエルフに預ける。

ここにいたら戦いに巻き込まれてしまうからね。

預けたエルフは、預けた時に何か呆けたような表情をしていたが心配はないだろう。

 

「待たせたね」

 

そう言って一言詫びを入れる。

 

「構わない。そのゴミが邪魔だったのは私も同じこと」

 

(本当にコイツは人のことを考えない奴だな。駄目だ。頭を切り替えろ)

 

浮かんだ考えを振り払うように、素早く腰の剣を引き抜いて盾を構える。

 

(あれ?何でこんなに自然に構えられるんだ?)

 

またひとつ不思議が増えた。僕はリアルでは剣と盾を持ったことは勿論のこと無い。それなのにまるで呼吸するみたいに直ぐに構えることができた。

 

(この世界に来て(アバター)を自然に動かせるようになったのと同じなのか?まぁ、それもこれから確かめればいいか。あ、そうだ。魔法を使っておかないと)

 

PvPをするのが久しぶりでつい忘れていた。

戦う前に魔法でバフを盛るのはユグドラシルプレイヤーの常識だ。

特にモモンガさんはPvPの前は滅茶苦茶バフを盛っていた。

慎重派の彼から学んだ魔法も多い。それらを思い出すようにバフを掛けていく。

 

(【超常直感(パラノーマル・イントゥイション)天界の気(ヘブンリーオーラ)光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジエントベリル)

上位全能力強化(グレーターフルポテンシャル)天使の慈悲(マーシー・オブ・エンジェル)、………】このぐらいで良いかな)

 

一通りのバフを掛け終えた。流石にモモンガさんと同じ位の魔法は使えないがこれでも充分だ。それを見計らったようにデケムが声を掛けてきた。こういう所は空気を読めるのか。

 

「ほぅ、ベヒーモスを前にして逃げないとは、やはりお前は良いな」

 

「それははどうも。それよりもデケム。お前は準備はもう良いのか?」

 

軽く返答を返す。

 

「ほぅ、敵に忠告するとは。敵ながら甘い奴だ。ならば強者に敬意を示そう。【沙羅双樹の慈悲(マーシー・オブ・ショレア・ロブスタ)

 

どうやらデケムも魔法を使ったようだ。

 

(やっぱり森司祭(ドルイド)ならその魔法だよな)

 

ある程度予想していたが予想のど真ん中だ。

沙羅双樹の慈悲(マーシー・オブ・ショレア・ロブスタ)

全ての魔法の中でもトップクラスの魔力使用量を誇る魔法。

 

しかし、ユグドラシルのドルイドを収めているプレイヤーは大体その魔法を使っていた。

その理由として、この魔法は効果が3つある。

1つ目がHPの回復、2つ目が即死に対する完全耐性の付与、正直この2つはそこまで重要では無い。

 

そして最後の3つ目、これがこの魔法が頻繁に使用される最たる理由【死亡時にレベルダウンを引き起こさず即座に復活できる】である。この効果は戦闘においても探索においても重宝する効果だ。

 

例えば戦闘中に死亡した場合、即座にその場を離脱もしくは即戦線復帰可能にしてくれる。

また、即死系の魔法にも高い効果を発揮する。仮に即死魔法で死亡したとしても即座に復活するため実質的に無効化されてしまう。

 

モモンガさんの切り札の

The goal of all life is death(あらゆる生ある者の目指すところは死である)】、通称イズデスでもこの魔法の前ではその効果を十全に発揮できない。

 

(正直殺す気は無いからあまり意味はないんだけど、まぁ良いか)

 

魔法選びを失敗した感は否めないが、それは相手の失敗なので気にすることじゃない。

 

そうして向かい合っていると、徐にデケムが右手を構えた。

 

「行け、ベヒーモス」

 

その言葉と同時に根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)がその巨体に見合わない速度で突進してきた。

 

(早い。やはり強化の影響か。ならばどう戦うか)

 

元々根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)防御役(タンク)的な立ち位置だ。そのため防御力とHPはとても多い。

 

特殊能力は持っていないが、その分倒しにくい相手だ。特にその巨体から繰り出される拳の威力はかなりのもの。受けるべきではない。

 

(取り敢えず攻撃を避けつつスキルを試していく方向にしよう。そして、折角だし僕の必殺技(・・・・・)を隙を見てを使って終わりにしよう)

 

目の前に巨大な拳が迫る中、そんな事を考える。

僕は向かってくる拳を掻い潜り、その勢いのまま通り抜ける隙に剣を一閃した。金属がぶつかるような音と共に剣に振動が返ってくる。

そこそこの手応えを感じたが、HPを見るとあまり減ってはいない。

 

(スキルなしとはいえ僕の一撃が全然効いてない。これは期待できそうだ)

 

まるでただの実験みたいだが、これは必要な事なので許して欲しい。

 

(今度はこっちから行くか)

 

地面を蹴って根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)に突撃し、そのまま剣で斬りつけた。体の胴の部分を深く切り裂く。

しかし流石は防御役(タンク)。僕の攻撃が終わるやいなや攻撃を返してきた。盾で受ける。拳と盾がぶつかり、かなりの衝撃が体を通り抜けた。

 

(重っも!これは直に受けたら駄目だ。要警戒)

 

思ったよりダメージを受けた。その事に警戒しつつ戦闘を続ける。

 

(このタイプは小回りが効かない分、あまり離れずに近接戦をするのが有効。距離を一定に保ったまま攻撃を続ける)

 

至近距離で攻撃を躱し、受け流し、時に受け止めそのままカウンター。

スキルも使用した。

 

【天使の位相〔天罰の對撃(ついげき)〕】。

ノックバック効果のある衝撃波を発生させ、相手を吹き飛ばすスキルだ。

これを使って距離を調整しながら戦う。根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)は衝撃波系統に弱いため、効果がよく通った。

 

(時間はかかるだろうけど、暫くはこのまま戦おう)

 

時々デケムから魔法が飛んでくるが、僕の鎧の効果で全て無効化されてしまっている。僕の鎧は第8位階位下の魔法は無効化してしまう。

そのため全く脅威にはならず、根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)との戦いに集中できる。

 

そうした状況のまま、僕と根源の土精霊(プライマル・アース・エレメンタル)の戦いは続いていった。

 

 

後にこの戦いは、周りで観ていた法国兵によって広められ【神々の戦い】などと崇められる事になる。ヤマトからして見れば恥ずかしい事この上無いが、ヤマトがこの事を知るのはまだまだ先である。

 

 




独自設定
・天使の位相〔天罰の對撃〕衝撃波系で何か使いたかったので新しく入れました。
・天使の慈悲。オリジナル魔法。効果はHPの持続回復とデバフ解除です。
・エルフ王の設定。弱者には原作通り酷い扱いですが、自分に近い実力を持つ強者には一定の敬意を持っています。
・根源の土精霊の強さ。原作より少し強くしました。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!
感想や評価もよろしくお願いします!

そして次回はモモンガ様の回の予定だったのですが、この話が少し伸びそうですのでまた次の次にさせていただきます。
今度こそは書きます!

それではまたの機会に!

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