今までで一番大変でした。もしかしたら修正するかもしれません。
それでは本編です!
≪≪
エイヴァーシャー大森林の奥深く。普段は動物達が暮らす、静かで平和な場所。時にエルフたちが森の恵みを求めて踏み入る事はあれど、それ以外は人もあまり踏み入らない、風が囁く静かな森の中。
そんないつもは無関心な森が、今は大勢の人々によっていつもとは違う様相を呈していた。
その原因は、人々の輪の中心にある。
その中心では、ある戦いが行われていた。
強大な力を持つ巨人と、輝かんばかりの装備に身を包んだ騎士の戦い。大木を砕き岩を裂くその光景は、まるで伝え聞く英雄譚からそのまま飛び出してきたように思える。
ドラゴンに立ち向かう勇者、人々を助ける仁義の戦士、神を打ち滅ぼせし英雄達、そんな数々のおとぎ話。誰もが一度は憧れ、その目に収めたいと願う光景。それが、まさに今ここで起こっていた。
その光景に、人々は目が離せなくなっていた。この時、周りの人々はエルフ、人間関係なく唯一体となっていた。
まるで、素晴らしい芸術が見る人全てを魅了するのにも似ていた。
素晴らしい絵画は絵の中に人々を引き込み、美しい音楽は人々の息遣い、身体の揺れ動きすら音に変えて調和する。
その芸術に魅了される人々の姿は、この場所と同じように自然な光景に思えた。
そして、それは戦っている芸術の片割れも例外では無かった。
「…素晴らしい、」
そうポツリと呟く。小さな声だったが、そこには込められた万感の思いを感じさせた。その声を出したのは、エルフの王にしてこの世界でも指折りの強者であるデケム・ホウガン。
そのデケムの声の先には、盾と剣を持つ一人の男がいた。
デケムはその冷たい表情の内で、先程ヤマトと名乗ったその男の強さに感嘆していた。
その男、ヤマトは自身のみが使役できる最強の存在であるベヒーモスと互角に打ち合っている。その迫る拳を避け、躱し、いなしている。
時々ベヒーモスの拳が命中してはいるが、それも全て盾によって防がれる。その事が信じられないが、今目の前で起こっている事が事実だ。
失敗作とはいえ、あの娘をああも簡単に無力化した時点でかなりの強者という事はわかっていた。しかし、
(まさかベヒーモスとここまで戦えるとは)
その事に内心しきりに感心する。もう何回したかは忘れたが、20回以上はしているはずだ。それも仕方がない。
それだけこのことが驚きだった。
ベヒーモスは自身が知る中でも最強に近い存在だ。
その力は、昔に戦った
その
そのベヒーモスに勝てる存在は我が父ぐらいのものだろうとも思っている。
だが、その偉大なる父はすでに死んだ身であり、すなわち倒せる存在などはいないと断言できる。
事実、かつて法国で最強などと言われていた女もベヒーモスの敵ではなかった。
(我が部下たちの鍛錬の相手にしようかと思っていたが、惜しいな)
デケムは、自分に匹敵する者がいない為に、こういう雑事まで自分がしなくてはならない事に苛立ちを覚えていた。
その為、当初は自分に匹敵するであろうヤマトを城に迎え入れ、自分の代わりに面倒な仕事をさせようと考えていた。
特に兵達の戦いの相手を熱心にさせようと考えていた。強者との戦いは、強くなる事への近道だからだ。
しかし、
(これほどの強さならば、他にも役目がありそうだ)
そう。自分に匹敵する強さならば話は変わる。
ベヒーモスを相手にここまで戦えるという事は、この世界でも有数の強者という事だ。それほどの強者を唯の訓練官にしておくのはあまりに惜しい。
(女では無いのが惜しいが、そこはまぁ良しとしよう)
女であるならば、自分の子を孕ませていた所だ。あれほどの強者の母体であれば、子はさぞ素晴らしい強さを持って産まれてくる筈。しかしヤマトは男だ。側から見れば女に見えなくも無いが、男である事に間違いはない。
(それよりもヤマトが人間というのが良い。ヤツが異形だったならば、エルフとの間に子は望めない。だが、同じ人間種であれば種は芽吹く)
本来、違う種族間では子は望めないのが一般的だ。ただ例外も勿論ある。
人間種と呼ばれる種属間では、子が産まれるのだ。
人間種には、人間、エルフ、そして
(ドワーフは論外だが、運が良いことにヤマトは人間だ。エルフとの間にも子は望める)
純粋なエルフでない事が少し気になるが、いつまで経っても強くならない
そうしてひとまず納得するデケム。
(しかしどうするか。幾らヤマトが強者とはいえ、相手の女共が貧弱すぎる)
種がいくら優れていようとも、土が貧しければ意味がない。片方のみが優れていても、それでは駄目なのだ。
(最低限の強さを持った母体か、。そういえば、かなり昔に、ファーインとか言う法国の女を騙して孕ませた事があったな)
あの女も中々に強かった。人間の中では飛び抜けた強さだった事を覚えている。であるからして子供も強くなる筈だったのだが、結局は女諸共その子供は産まれるのを待たずして法国に奪われてしまった。
(せっかく、孕んだのだがな。もし、その子供が女だったならば文句は無かったのだが。まぁ、仕方がない)
今無いものを考えても意味はない。少しの後悔を讃えながら、さてどうするかと悩む。
(やはり優れた母体が居ないな。そうなると、そこにいる
そうしてデケムは先程、エルフの軍に預けられた少女に目を向ける。
(アレも私の血を引いているだけの事はある。可能性としては充分か)
アレは失敗作の中ではまだマシな方だ。自分の強さの半分も無いが、他の女共に比べれば遥かに良い。それに相手があのヤマトなら、生まれてくる子供はかなりの強さは持って産まれるだろう。ならばアレとの間に子を為すのが最適か。
(しかし、可能性は多いほど良い。アレの他にも何人かと子を作ってもらおう。女ならば次を作るのに時間がかかるが、男ならばそんな心配もあるまい)
そうしてひとまず納得するデケム。ちなみにこの事をヤマトが聞けばブチギレ待ったなしになるのは確実だ。ヤマトは子供に対して酷い扱いをする人が嫌いなのだ。その上、この内容は、今のデケムの考えはヤマトにとって100%アウトだ。
しかしそうとは知らないデケムの考えは止まらない。
(しかしこのままでは連れ帰るのは無理だ。一体どうする?)
そうしてヤマトを連れ帰る方法について思案する。
ヤマトの強さは規格外で、連れ帰るのは難しい。
自分も身体能力にかなり自信はあるが、あの戦いの中に割って入るには危険が付きまとう。
ならばアイテムや魔法を使うか?
(いや、先程私の魔法が通じてはいなかった。下手に使っては魔力の無駄だ)
先程、デケムが使った魔法【
第八位階魔法の一つであり、相手の動きを封じる効果があるのだが、拘束する寸前に弾かれてしまった。
この世界に於いて第八位階は普通の、いや天才と呼ばれる
その
だがデケムは、更にその上の魔法、限られた者のみ立ち入る事を許される絶対の領域の魔法である第十位階魔法を扱える。召喚に特化している為決して得意ではなく、なんとか使える程度ではあるが、しかしそれでも第十位階魔法だ。この魔法が効かないなどという事は無いだろう。
そう思い発動させようとする、が。
(いや待て、もしこれも大した効果がなければどうなる?)
そう思い発動を取りやめる。確かに第十位階の力は絶大だ。
しかし、その
さらにその上ベヒーモスの維持に魔力を使う。
私は自身よりも強い精霊を支配し、命令を下すことが出来る。
本来なら自身よりも強いものを支配したり、召喚する事は不可能だ。
だが、自身の修めている
つまり魔力は限られており、その上消費し続けている。下手に使うことは出来ない。
(しかしこのままではどうにも出来ん。どうするか、、、宝物庫の
そうして五里霧中の中、あるアイテムを思い返す。それは、我が父が残した神代の宝具達。その中でもそれはさらに別格なチカラを持つ。
そのアイテムを使えば、例え相手が真なる竜王だろうと自分の敵ではなくなるだろう。
(しかし、あのアイテムは一度使えば次使うまでにかなりの時間を要する。その間を狙われれば面倒だ)
仮にそれでヤマトを封じられたとしても、結局は他の法国の兵達の相手をしなければならない。それは面倒だ。
だがそれ以外にヤマトを捕えられそうな方法など知らない。ベヒーモスで抑え込めない時点でそんなもの無いのだ。
(どの道一度城に戻らなくてはならないか。魔力もかなり使ってしまった、このままでは奴に勝つのは無理だ)
どちらにしろアイテムはここには無い。使うのならば一度城に取りに帰る必要がある。それにベヒーモスの維持、魔法の発動などで魔力を使いすぎた。今の状態では長時間ベヒーモスを動かすのは難しい。その状態でヤマトと相対するのは危険だ。
自身の職業が召喚に特化している為、ベヒーモスが消えると強さが激減する。これでも普通の相手ならば身体能力だけで勝てるだろうが、ヤマト相手ではそれも無理だ。仮にベヒーモスが消えた場合勝ち目は完全に消える。
(ならば転移で城に戻り、その後にベヒーモスを回収する。そして城でヤマトを迎え討つ)
ヤマトは法国兵達を助けたことから見て法国側だろう。その内我が城にまで攻め入ってくるはず。それまでに準備を整えて万全の状態で迎え討つのが最適だ。その時に父の宝具を使えば、逆に攻めてきた法国共を殲滅できる。
ヤマトがいない法国など何人いようともベヒーモスの敵ではない。
そして肝心の転移だが、問題はない。
ヤマトは今直ぐにベヒーモスを倒せるほどの力はなさそうだ。
先程からベヒーモスに何度も攻撃を仕掛けてはいるが、ベヒーモスの体力は果てしなく多い。事実、まだまだ体力は有り余っている。
全体を10とした時、8以上は残っているほどだ。
(これならば暫くは大丈夫だろう)
どちらにしろ、あと10分も出してはいられないのだ。ならばベヒーモスと戦っている今のうちに戻った方が良い。
ベヒーモスは土に触れているのならば直ぐに回収できる上、倒されても時間をかければ復活できると父から聞いた覚えがある。
囮には最適だ。今の内に転移すべきだろう。
そう考え転移しようとしたその時、予想外のことが起こった。
とんでもない気配がした。
凄まじい程の力を感じる、莫大な圧力にも似た気配。これほどの威圧感を感じたのは数百年振りだ。、
(何だ?!一体何があった?!)
驚愕のままその気配の出所を見る。
そこには、剣を上段に構えたヤマトがいた。しかし、ただ剣を構えているだけではない事は分かった。その構えられた剣、その剣から凄まじい光と圧力を感じる。
まるで、太陽が剣を模ったように思えるほどに感じた力は膨大だ。その力は、偉大な我が父を彷彿とさせる。
(マズイ!何か分からないが、このままでは!)
それを見て全身が震えた。何かとんでもない事が起こる気がして。
身体中が警鐘を打ち鳴らしている。『早く逃げろ!』と。
その感じた直感のまま発動しかけていた転移魔法を発動した。
もう王の矜持など意味はない。なりふり構わずに発動した。
剣が振り下ろされる。それが随分にゆっくりと見えた。
そうして転移する瞬間に見えた光景、
≪≪
(ヤバい。とんでも無いことになった)
まさかこんな事になるなんて。そうして目の前を見る。
そこには、先ほどまで戦っていたベヒーモスと呼ばれていた
そこにあったのは、凄まじい深さの亀裂と遥か先まで無くなった木々。
亀裂は底が見えないほどの深さがあり、木々はかなりの前方まで消し飛んでいる。その亀裂や木々はその全てが剣で切り裂かれたように綺麗に無くなっていた。
何故こんな事になったのか?理由は単純で、僕の使った
先程僕はベヒーモスを相手に色々な
ユグドラシルでプレイヤーの職業構成には基本的に2パターンあり、一芸に特化するか、平均的に作られたかが基本だ。
平均タイプは大体のステータスが高いが、特化したタイプの一芸には劣る。特化タイプはステータスの平均が平均タイプよりも低い代わりに、特化した部分のパラメータが高くなる。
大体のプレイヤーはこの基本に沿って構成を行う。
だが、この二つに加えて例外があり、僕やたっち・みー、そしてモモンガさんがそこに含まれる。
たっち・みーは全てが異常に強い平均タイプだし、モモンガさんは多様な魔法で幅広い対応が出来る死霊系特化の一芸タイプだ。
そして僕は、平均的に大体の状況に対応できる【悪】特化の魔法剣士だ。
僕の
ただし、相手のカルマ値が悪属性じゃない場合は逆に与えるダメージがかなり低くなってしまう諸刃の剣でもある。どれほどかと言うと、使う位階魔法の威力が場合によっては全て2〜3位階ほど落ち込んでしまうほどだ。これのせいでダメージを与えるのに時間がかかってしまっていた。
その上精霊の中でもタンクの役割である
更にある事により気分がかなり落ち込んでいたのも理由のひとつだ。
その原因が、
(ワールドアイテムをモモンガさんに渡したままだった、、どうしよう)
これだ。戦っている途中に使おうと思ってアイテムボックスを探ると、
ワールドアイテム【
そうして焦りながら記憶を探ると、ナザリックでモモンガさんに見せた時にバタバタしていて返してもらうのを忘れていた。
(マジかよ、やっちまった、、)
あのアイテム達があるのと無いのとでは精神の余裕がかなり違う。それにワールドアイテムを防ぐ手段が一つしかないのも厳しい。
それに今まで持っていたワールドアイテムが無いというのはかなり精神に応えた。
あと、、
(
絶対に
理由は分からないが、何か嫌悪感に近いものが沸々と胸の内に湧き上がってくるようだ。嫌な気分だ、何か方法はないかな。
そうして半ばヤケクソになった結果、早く終わらせるために僕の必殺技である
本来ならここに他のスキルを上乗せしていたのだが、それをする気力もなかった。
今考えると、この選択は間違っていなかったと思う。
*因みに、スキルの発動は魔法と同じように、自身の内側に意識を向けると数多のスキルのイメージが浮かんでくる。それに触れるような感じで発動することができた。リキャストタイムと残りの回数までわかるのには驚いたけどね。
そうしてスキルを発動すると、剣が虹に光り始めた。この演出はユグドラシルそのままだ。
(うわ、凄いな。こんな光り方をするのか)
どんな演出か知っていても、実際に体験するのは新鮮な気分だ。
見方が変われば、まるで別の物を観ている気さえする。
そんな緊張感のない事を考えながら、頭上に構えた輝く剣を振り下ろした。瞬間、
言葉通り、まるで世界そのものを切断したかのように空間が歪んだ。そして剣から衝撃波の様なものが飛び出した。
その衝撃波?を受けたベヒーモスは一撃で消し飛び、その軌道上にいたデケムを巻き込み、そうしてその余波は周りに広がり、、、
そしてその余波によって、この惨状が出来上がったというわけだ。
(まさか
さっきから困惑しっぱなしだ。ユグドラシルと比べて性能が変わりすぎている。魔法に細かい変化があったから別におかしいことでも無いかと思ったけど、
(流石に変わりすぎだろ!面影が無いどころか唯の別物じゃないか!)
流石にこれは許容できない。ユグドラシルでも最強の攻撃スキルだったのが、この世界だともっととんでもなくヤバいものになっている。
単体最強の攻撃スキルから広範囲に同じくらいのダメージを与える性能に。しかも他のスキルや魔法との併用なしでこの有様だ。他のプレイヤーがこのことを知ったら間違いなくブチギレる。
(こんなの絶対に気軽に使えない)
そう心に決める。ついうっかりこんな物を使用してしまったら被害は想像もつかない。
(あとデケムも巻き込んでしまった)
転移するかどうか怪しいタイミングだったけど、もし巻き込んでいたら絶対に酷い目にあっている。
(でもアイツなら別に良いか。・・・いや、何か変だぞ、どうしたんだ?)
何かアイツを巻き込んだことにスカッとした気がする。いつもの僕なら、まず申し訳ないと思うはずなのに、、
(一体どうなってしまったんだ)
そうして悩んでいると、後ろが騒がしくなった。
(ん?なんだ?)
後ろを振り返ると、全員が目を見開いてこちらを観ている。
その瞳には様々な感情が混ざり合って何を考えているのかよくわからない。でも、少なくとも敵意は向けられていない。
両方の間に気まずい空気が流れる。話すのを躊躇っている感じだ。
(こう言う時、何を言えば良いのか分からない。どうすればいい?)
この状況で攻撃はされないと思うけど、下手に話しかけて怖がらせるのは嫌だ。かといってこのままだと気分が良くないまま。
(よし、こう言う時に行くのが頼られる上司だ!)
そうして、リアルでの考えを用いて覚悟を決め、話しかけようとした。
その時だった。兵士達の中から1人の男が歩いてきた。
(あの人は、、さっき僕が助けた人だ)
少し出鼻をくじかれた形だが、向こうから来てくれるのならそれでも構わない。それにあの人とは話してみたかったからむしろこっちの方がいい。
彼は、1人でエルフ達に突っ込んで戦っていたのをよく覚えている。
あの状況で、しかも指揮官に高い立場でああも戦うのには尊敬を覚えた。
まだ怪我が治っていないのか、ぎこちない歩き方だ。
(もう歩いても良いのかな?さっきかなり酷かったけど、)
そうやって心配した。それでもその人はしっかりと歩いて、僕の前まできた。なら多分大丈夫なんだろう。
そうして僕の前まで来ると、彼は地面に両膝をついた。そして両手を組み合わせて、まるで祈るようにして僕の方を見た。
(え?いきなり何?)
歩いてきたと思ったら、いきなり跪かれた。しかも両膝をついてまで。
(気まずい空気が変わるのは大歓迎だけど、今どういう状況なんだ。もしかして、彼も同じなのか?)
不安が一気に広がる。
先程兵士達が向けてくる視線の中には、信仰心や崇拝者のような気配が感じられた。神を信じる人のそれだ。もし彼もそうだったら少し嫌だ。
尊敬している人から崇拝されるなんて凄く居心地が悪い。しかし、ここからみても彼の考えている事はわからない。
(もしかしたら彼は違うのか?いや、きっとそうだ!そうに違いない!)
ある程度予想はできているが、結果を見るまで答えは分からないんだ!
きっと立つのが辛いからこうしているだけだ!
そんな事はないだろうと思いながら、半分現実逃避をする。
そして彼がまともである事を祈っていると、彼が話し始めた。
「神よ。この世に降臨なされ、私達を御救いくださった御方よ。貴方に拝謁が叶い、このライズハート。歓喜の念に耐えません。貴方様の御名をお聞かせ願えないでしょうか?
そう言う彼の瞳は透き通っており、その言葉には一切の嘘がない事がわかった。だからこそ余計にタチが悪い。
(…………この人もか〜)
兵士達が『あぁ神よ』とか言ってた時点でこうなる事は予想していた。
でもこの指揮官らしき人なら、もしかしたら、もしかしたら大丈夫かと思ったけど、やっぱり今回も駄目だったよ。僕は他の人と対等に過ごしたいんだ。一方的に崇められるのにいい気分はしない。
(正直敵意を向けられていないだけ良いんだけど、なんか違うんだよね)
少し複雑な気持ちだ。
「僕の名前はヤマト。君の名前は?」
「ヤマト様。しかと御尊名承りました。私めはライズハート・フォシーユ・ラサンセリテと申します」
大仰にそう返すライズハート。
(一々反応が大袈裟だな。もう少し気楽に接してくれた方が僕も楽なんだけど。それにしても名前が長い。苗字と名前だけじゃないのか?)
「ヤマト様。少し、よろしいでしょうか?」
そう考えていると、彼が話し掛けてきた。
「何?」
「貴方様は、ぷれいやー様で有らせられるのでしょうか?」
いきなりそんな事を聞かれた。いきなりプレイヤーという単語が出てきた。
(びっくりした!けど、それを聞いてくるって事は、プレイヤーを知っているのか!)
この世界で初めてじゃないのか?どちらにしろこれはかなり嬉しい。モモンガさんの情報を持っているかもしれないのだ。
そうして舞い上がってしまったが、今は質問に答えよう。
「そうだね、僕はプレイヤーだよ。それと、君は他のプレイヤーについて何か知ってる?もし知ってたら、教えてくれないか?」
そう答えた。するとライズハートは『やはり、』と言ったように頷いた。
しかし他の兵士やエルフ達は全員が『プレイヤー?』と頭上にハテナを浮かべている。
随分反応が違う、エルフはまだ分かるとしても同じ軍の間でもこれだけ差があるのか。
(もしかして、プレイヤーの存在はトップシークレットなのか?)
あり得そうだ。それならこの状況にも納得できる。
この世界ではレベル30で強い部類だと思う。そんな世界でほぼほぼ全員が100レベルだったプレイヤーはまさに過剰戦力だろう。
そんな存在が一般人の中に紛れているとは考えづらい。それにそんな存在を一般の市民が知れば混乱するはずだ。
ならば普通の人には秘密にして、上の立場の人だけが知っている。そうすれば辻褄が合う。
(僕が
結局のところ唯の操り人形でしか無かった。そのことは当時かなりの衝撃だった。国を支配しているのは企業という噂がまさか本当とは思っていなかった。でもこの事を知っているだけ僕はまだマシで、下の立場の人は、政治家や総理大臣などが変われば、きっと待遇が良くなると思っていた。
実際はまた新しい人形に首がすげ替わるだけだった。そして人々はその事を知らないからまた同じ事を繰り返す。そして結局は何も変わらない。
(、、、違う、今はそんな事を考えている暇はない)
嫌な記憶を思い出してしまった。この世界に少し慣れた分、元の世界がどれだけ酷かったかよく分かった。
「ヤマト様。話の続きは、場所を替えてもよろしいでしょうか?」
「・・・・うん。大丈夫だよ」
場所を替えないかと言われた。僕も気を紛らわしかったし、何よりこの話はあまり人前でしない方が良さそうだ。
「有難うございます。おい、お前達!私は少し場を外す。その間警戒を怠るな!」
「「「ハッッ!より一層警戒を強めます!」」」
その一声で固まっていた兵士たちが動き始めた。素早い行動で、この兵士達が経験を積んできたことが良くわかる。
(へぇ、忠誠心が高い。やっぱり良い人だ)
それに何より全員が
そのことに深く感心した。だけど、
(全員傷だらけだ。さっきの戦いで酷くやられてる)
まだ戦いの傷が癒えていない。今直ぐに死ぬような傷じゃないが、このまま無理をさせるのは心配だ。
「少し良い?」
ライズハートに声を掛ける。
「はい、何でしょうか」
「兵士達が傷ついてるけど、回復魔法は使わないの?」
傷が酷くても、回復魔法を使えば大分マシになるはずだ。そう思って聞いたのだが、
「申し訳ありません。神官はおりますが、流石にこの人数全員を回復させるのは難しいかと思います」
逆に謝られた。だが、彼は全く悪くない。冷静に考えたらわかる事で、第三位階が実戦で使われる世界で、傷を負った全員を回復するなんて事できない筈だ。
「いや、謝らなくて良いよ。変な事を聞いた僕が悪い」
「いえ!そんな事は決して有りません!」
そう思って言ったのに、随分過剰な反応だ。僕としてはもう少し気楽に接して欲しいんだけど、今は難しそうだ。
「そうだ。兵士たちを集めてくれないか?」
気を切り替えるつもりで、彼にお願いする。ライズハートは「かしこまりました」といって直ぐに兵士たちを集めてくれた。
ここで何をするか聞かないのは、僕を信頼しているのか、もしくは油断しているからなのか。
十中八九前者だとは思うけど、少し緊張する。
そうして僕の前に兵士達が集まった。800人ぐらいだと思う。兵士達は不思議そうにこちらを見ている。
(さて、やるか)
そうして魔法を発動する。
「【
発動したのは、回復魔法の一つ
体力を大きく回復させ、なおかつ病気などのバッドステータスをあらかた治癒するかなり便利な魔法だ。これなら大抵の負傷も治る筈。
出現した魔法陣が兵士たちを包み込む。範囲はかなり広く、直径は200メートルぐらいありそうだ。その中にいる人たちの傷が見る間に治っていく。
(すご、効果覿面だ。こう見ると魔法って偉大だな)
擦り傷から裂傷、果ては四肢の欠損まで治っている。こんなのはリアルの最新医療を駆使しても難しいんじゃないか?擦り傷や裂傷はともかく四肢の再生はかなりの難題だろう。
そうして魔法が終わる。それと同時に騒がしくなった。
まぁ、いきなり傷が治ったらびっくりもするか。
「静まれ!」
しかしライズハートの一声でそれは静かになった。
こう言うところが指揮官として大事なんだろうな。
「ヤマト様、有難う御座います。我々を助けられるどころか傷までを治していただいて、この事を私は生涯忘れ、、」
「あぁー!もう良いから!大丈夫だから!」
心配だから回復させただけなのに本当に反応が大袈裟だ。
ここまでされると逆に変な気分だ。兵士たちからも感謝の声が聞こえてくる。一人一人の声は大きくないが、それが何百人ともなれば別だ。
「僕だって守ってもらうんだからこれぐらいは当然だよ。それより話の続きをするんだろ?」
早くこの場から離れたかった。その思いのため話を逸らした。
「そうでした。それでは此方にどうぞ」
そう言って兵士たちに軽く別れを告げて、連れられていく。
後に、この時
独自設定
・宝物庫のアイテム
デケムの父親から受け継いだアイテム。その中でも群を抜いて強い力を持つ。今のヤマトにも通用するらしい。
・緑の鎖の位階
原作では位階は書かれていませんでしたが、この話では第八位階とします。
・ヤマトの職業の設定
本人の性格上これが一番良いと思いました。因みに本人もはっきりと自覚していないデメリットがあります。
・世界断切のエフェクト
他にも何かありましたらコメントで教えて頂けると嬉しいです。
次の話までに入れたかったのでかなり内容が多くなってしまいました。
これからの話はもう少しテンポ良く進みます。進むよ!進むのかな?
そうなるように頑張ります!
評価や感想等お待ちしております!
新しく書くか否か
-
新しく書く
-
新しく書かずに続ける