愚王日誌~我は勇者を追放する~   作:I'mあいむ

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続くわけがない


追放

我は愚かな王だ。誠に愚かな王だ。これはそんな我、いや俺の愚痴を書いた日誌である。

 

一日目

 

今日から日誌を書く。前述の通り俺は愚かな王だ。いや日誌というのは誰かに見られる訳では無いのだからこんな書き方をしなくても良いな。

 

今日は俺が転生、もしくは憑依してから30年目だ。赤子の頃からここまで良く頑張ったと自分を褒めたい。王族としての勢力争いに巻き込まれながらも何とか責務をこなしてきたのだ。全く、上の兄弟達がもっとしっかりしていればこうもならなかったのにな。あいつらが共倒れなどしなければ俺は楽にすごせていたかもしれないのに。

 

こっちはスキルもチートも無い血だけ継いだ人間だ。王族としての恥さらしが統治する社会など価値があるものかと思ってしまう。いっそのこと民主制にでもしてやりたいが魔王軍への対応で手一杯なのが現状なのでしょうがない。

 

日本から勇者でも持ってきてくれよクソ女神。

 

 

二日目

 

今日も仕事が激務だ。何処かの村が襲われただの、飢餓にあえいでいるだの。魔王軍は侵攻してきてるし、部下共は全員腐ってやがる。

 

こんな王位誰かに譲って他の国で下働きから始めたいものだ。睡眠時間も日に日に減ってきている。それでも上の王族が死んだ時よりはマシだ。けど俺もどこまで耐えられるだろうか。ここ数年まともに寝ていないのだ。目の隈は取れないし、意識しなければ指が痙攣している。だが倒れる訳にはいかない。

 

王位を任せられる人間がまだ居ないのだ。配偶者もいないから任せることになるのは甥や姪だが……彼らはまだ若い。十かそこらの年齢だ。そこでこの国を任せるなど余りにも過酷だ。いや、彼らも相当ゲスな性格だ。貴族達と一緒になって贅に染まりきっている。王を継ぎたいとも思っているかもな。それなら有り難いが……地獄を見せるには早すぎる。こういうのは大人の仕事だ。もう少しだけ頑張ろう。

 

三日目

 

転機が来た。遂に来たのだ。久しぶりに夢を見たと思ったら何とクソ女神からの連絡だった。何やら異世界からの勇者を何人か送ってくれるらしい。これはもしかするかもしれない!

 

是非早く来て欲しいものだ。しかし問題もある。実は手違いで送ってしまった者がいるようだ。そいつは煮るなり焼くなり好きにして良いらしい。実に見覚えのある展開だ。恐らくこれは追放系の物語では?正直そんな感じにしか思えない。追放したらなんやかんやあって世界救ってくれるやつだろこれ。

 

しかし追放したらしたでこの国は滅ぶよなあとは思う。それに追放扱いだと民衆から酷い目で見られたりするからなあ。ちょっと可哀想だ。仕方ないから今の内に色々準備しておこうと思う。まずは世界会議だ。緊急招集を行い根回しをしなければならない。せめて民衆だけは生き残れるよう頑張ろうと思う。

 

 

四日目

 

疲れた。本当に疲れた。何とか各国のトップ達には納得してもらった。これで追放される勇者は他国では素晴らしい待遇を受けられるだろう。何せあそこまでやったのだ。久し振りだぞあんなにキザったい説得をしたのは。

 

後は自国の心配だ。まず守るべきは民衆からだ。彼らに罪はない。どういう形で我が国が崩壊するのかは分からないが、魔王軍に滅ぼされる、もしくは追放した勇者に滅ぼされるなら民衆だけは逃がしておかなければならない。

 

次に貴族や王族が処刑される場合。これなら簡単だ。正直民衆が助かれば良い。てきとうに善良な奴らだけ死んだことにして逃がせば良いからな。下の兄弟や辺境伯なんかはそういうのが多い。今の内に少し話しておこう。

 

まあどうあったって追放した俺の首は免れん。そりゃ仕方ないから割り切るべきだ。どうせ魔王軍に負けるか、過労死かだ。それが処刑になったところで今更すぎる。世界の危機が無くなるならそれで良いだろう。他国の奴らには小さい頃から世話になったからな。恩返しである。

 

神器なんかもしっかりと他国へ流した。追放される勇者に渡すよう手配はしてある。明日はエルフの里へ行かなければならない。勇者への加護なんかはあそこがうってつけだからな。ドワーフの所へも行っておきたい。もし神器が壊れたらあそこに頼るしかないからな。しばらくは土下座行脚になりそうだ。

 

 

五日目

 

 

何とかエルフの長には頷いてもらえた。あの人怖いから苦手なんだよな。いつの間にか首飛んでてもおかしくないし、けどやっぱり最後には土下座が勝つな。人間嫌いの女王様もこれだけ下手に出ればいけるわけだ。

明日はドワーフか。ドワーフの王はわりかし楽な方だ。あの人は気が良いからな。世界の為となれば協力してくれるだろう。

 

さて次に考えなければならないのが追放しない勇者達の処遇だ。彼等がゲスな行為をするならば一緒に処刑でも問題ない。しかし殺人や強姦などせず普通の性格、あるいはただ性格が悪いだけに納まっていたら処刑は酷い処置だ。勝手に呼び出されてそんなことになるなんて俺だったら嫌だ。

 

騎士団長に何とかしてもらおうかな。あの人ならきっとどうにかなる。頭がきれるし演技も相当だ。もしかしたらあの人あたりが追放する勇者のヒロインだったりしてな。あーあ、そうだったらその勇者は幸せ者だ。不幸の末に対価を得られるんだから。

 

こちとら死んだ後がどうなるか分からないから、そうなったら良いなで準備を進めているんだ。俺もそういう能力が欲しかったな。凡人風情は時間をかけてもこの程度の結果しか産み出せない。この世界に来てからどうにも上手くいかないな。

 

ま、死んだら地獄に行ってまったり出来るんだ。それまでの辛抱か。地獄の業火にはもう慣れてるし、あそこは看守と仲良くなれば楽しいから好きだ。懐かしいなあ地獄。転生する前はずっとあそこにいたもんな。

ああ、閻魔様もこんな感じだったんだろうなあ。だからあんなに疲れてたんだろう。同情するわ。

 

 

六日目

 

ドワーフの王には許可を貰えた。俺のことを喋ってしまうかもしれないのでしっかりと口止めもしておいた。彼は優しいからな。だがあれだけやったら大丈夫だろう。しっかりと試練も出してくれるに違いない。無料で渡される物ほど怖いものはないから。対価って大切。

それに最後の最後で裏に俺がいたなんてバレたら素直に喜びづらいからな。しっかりと無双してハッピーエンドを迎えて貰うのだ。後味悪い展開とか嫌いなのだ。申し訳ないがそこは付き合って貰いたい。なに、その分の謝礼は払っているさ。しっかり悪役として貴族から金をむしり取ったからな。悪政を敷く王としてバッチリである。

 

そして恐らく明日には勇者達が来る。

 

なーんか姪っ子達の行動がキナ臭いなーとか思ってたら呼び出しの儀をやっとったわ。普通に禁忌の魔法やね。これで成功したら継承戦を有利に進めようとか思ってるんだろうな。残念、その前に滅ぶよこの国は。

まあ今回は目を瞑っておく。というか援護もした。バレないように必要な素材流したしね。あれ人の寿命削った素材が必要になるからね。揃えないと術者が死んじゃうから仕方ない。まあ俺は後数年で死ぬから寿命なんて安い物だ。

 

たぶん女神はこれに乗じて自分の選んだ奴らを送り込む気なんだろうな。まあ助けてくれんなら有り難い。ただあれのことだ。何か仕掛けてないか不安だ。まあ流石に無いだろう。職務から解放される日も近い。

 

 

七日目

 

 

追放完了

 

 

番外編は必要ですか?

  • 要るに決まってんだろ舐めとんのか
  • 要る訳ねえだろ調子乗んな
  • どちらかといえば必要
  • どちらかといえば要らん
  • どっちでも良き
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