七日目
今日は勇者を追放した。信頼出来る部下達にはある程度の事情を説明していたので大丈夫だ。さて残った奴らの処遇についてだが、聖騎士共に相手をさせておくことにした。奴らは脳筋の金食い虫だ。一人前に仕事も果たせないのならガキのお守りでもやっておけ。
騎士団長だけは追放した勇者のフォローに行かせた。世界や国の事情の説明、ある程度の餞別を送らせることで好感度アップだ。どうだ?騎士団長は美人だろう?俺も元日本人だから分かる。まあ筋肉美女が嫌いなら諦めるしかない。俺としては騎士団長ぐらいは生き延びて欲しいのだ。
勿論王としての対応も完璧だ。完全に無能で何も分かってないゴミを演じた。他の貴族も笑っていたし追放勇者にとっては最悪の印象だろう。他の勇者もあっさりと追放勇者を見棄てたので良い感触だ。これならこいつらはクズ確定。一線を越えたらこの国と共に灰になってもらう予定である。
追放勇者がこれからどのようにして進んでいくのか楽しみだ。干渉し過ぎも悪そうだからそこら辺込みでやってもらいたい。クソ女神としてもある程度考慮してる、もしくはそうなるであろうことを見越して寄越した勇者なのかもしれない。あれで未来予知なんかが出来るのは気に食わない所だ。
だったら俺を犠牲にするなよと言いたいがそれしか道が無かったんだろう。わざわざ手違いという体で俺を地獄に落としたんだ。クソ女神としても大詰めなのだろう。
取り敢えず明日からは普通の業務だ。信頼出来る部下達に追放勇者の動向を監視させつつやっていく。他の勇者は邪魔しないように城で訓練と称したおままごとをやってもらう。
この国の破滅と世界の救済に一歩近づいたのだ。久々に酒を飲んで寝る。
八日目
やっぱりあのクソ女神らしく全て込みで考えていたらしい。今更しおらしく謝ったところで意味もない。こちらとしてももう腹は決めた。ただ俺があのクソ女が嫌いなだけだ。何をしても意味など無いし、もし殺しでもしたらこの世界が成り立たない可能性がある。精神年齢で言えば俺もそれなりに長いからな。文句は言わない。そもそも自分の為に国を破滅に導いてるんだから、俺も同じことやってるんだよな。ま、自分が何も苦しまないあいつとは違うけどな。こっちはせっかくの二回目の人生を全て棒に振ってるんだし、まだマシだろう。
さて、今日は特に何も無かった。追放は完了して後は待つだけなのだから当然ではあるが。せっかくだから転生者の奴らと話をしてみたら案外話が合った。チートがあって少し浮かれてるみたいだが、元が日本人だからな。それなりに情や正義感もあるらしい。追放勇者のことを含めてこの国に疑問を持ったようだ。鋭いじゃないか。これなら生かしてやった方が良いかもな。一度腹を割って話をするのも良いかもしれない。
追放勇者の方は上手くやっているらしい。まだ無双とは言えないが一般人からしたら破格の強さだろう。これならどっかの奴隷とか村を救ってヒロインを増やすかもな。同じ転生者と言えど、俺とは違うらしい。まあ、取り敢えず騎士団長と共にファンタジーを楽しんでるようだから、それで良いのだろう。
◆◆◆
「はぁ……」
「どうしましたか王よ」
「黙っとれヴァイズ。上辺だけの心配なぞお前にされたくもない。さっさとハートレス家に戻れ」
「それは出来ない相談です。私はあなたの秘書ですので」
「裏切りと権力にしか興味が無いクソ野郎の間違いだな。ロクに仕事しねえくせに秘書とは聞いて呆れる」
目の前にいる男か女か未だに分からない麗人、ハートレス·うんちゃかんちゃら·ヴァイズ。青みのかかった綺麗な髪をしたこいつは俺の秘書だ。俺が王になった当時、ハートレス家とかいう大貴族の所から送られてきた監視役。
まあ、今じゃハートレス家と俺の立場は圧倒的に逆転しているが。気に食わなかったから弱味をこれでもかとちらつかせて黙らせたのだ。三大貴族とかいうやつの一角だから最高だぜ。
最初の頃はこいつもある程度仕事をしていたがそれも全部が汚職関係。自分とお家の為にどんどん私腹を肥やしやがるもんだから頭が痛いのなんの。まともな業務は一つもしない。更に俺とハートレスの立場が逆転した辺りでこいつは何もしなくなった。
さっさと追い出してしまえば良いのだがそうもいかない。こいつの強さがヤバいのだ。こいつを捕らえようと思ったら我が国の戦力の半分が消し飛ぶ。つまり騎士団長レベルでこいつが強いのだ。今のところ目立った害は無いのでそのまま放置しているのが現状。俺の私情で国を左右させたくもないから仕方ない。
こいつのような金食い虫はさっさと居なくなって欲しいところだ。ストレスで胃に穴が開く。というか今も開いているかもしれない。現に何日も食事が喉を通らなかったりする。年に何度もこうなっているのだから笑えないな。
「ま、それももうすぐ終わりか…」
「どうかなさいましたか?」
「何でもない」
いずれ勇者と騎士団長は大きな力を得るだろう。神器関係もそうだがスキルとかチートが覚醒してくれる筈だ。そうなったらこのクソッタレもきっと倒してくれるに違いない。もし無理そうなら、こいつをどうにか殺すのが俺の最後の仕事かもな。
「王よ、最近よく嬉しそうに笑いますが、そんなに私の顔は変でしょうか?」
「……お前の顔なんぞどうでもいい。それより、そうだな。なんだ。そろそろ仕事でもしないか?」
「え?」
いっそのこと、こいつを魔王軍との戦いに参戦させられればと。そんな思いからふと言葉が出た。別に期待はしていない。ただの世間話だ。そうでもしないともう、俺の精神は保っていられない。きっと誰も居なくても俺は独り言を言いながら仕事をしているだろうから。
「はは、何、冗談だ。ジョークの一つくらい流せるようになれ、秘書ならな」
確かに、最近の俺は笑うことが多いのだろう。ほら、今も自分ですら分かる程に破顔しているのだ。あと少しできっと解放されるのだから。
「王よ、貴方は本当に、何をしようとしているのですか?」
ここ数年笑顔など浮かべなかったのだから、あまりに気味が悪いのだろう。自分でも自覚はしている。常人からすれば少々気狂いの素質があることも。
「さぁ、きっと楽しいことさ。ヴァイズ」
しかし、こいつが俺の計画を知った所で、もう世界は止まらない。他国への要請、女神の千年の謀略、異界の勇者の存在。渦巻く運命をこいつ一人じゃあ止められやしない。所詮弱小国である我が国の半分の力。他国の大将レベルの実力はあるが魔王程でもない。ずっとずっと前からお前は手遅れなんだよ、ヴァイズ。
「これからも変わらぬ地獄が続くだろう。それだけだ。きっとな」
我が国と共に貴様が死ぬのは決定事項である。決して、決して覆りはしない。
お前はきっと俺よりは幸せに死ねる筈だ。羨ましいよ、本当に。
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17日目
最近は遂に魔王軍との戦争が活発になってきた。だがまだ時間が足りない。魔王討伐にはあと数ヶ月は掛かる筈だ。下手したら数年の可能性も。そうだったとしたら俺はこの計画を最後まで遂行出来ないかもしれない。元々仕事で溜まった疲労やストレスを薬やら魔法やらで誤魔化してきたんだ。時には麻薬にだって手を出している、体はもうボロボロだ。そう長くは持たない。
こんなことならもう少し具体的な道筋を描いて、そうすれば……いや、無理だな。そんなことをしても上手くはいかない。その時に対応できる柔軟さがなければこんな計画は無謀だ。今はまだ、俺の体を信じるしかない。
さて、こんな悲観的な観測は精神衛生上良くないからな。嬉しいニュースの話をしよう。何と魔王軍幹部の一人が倒された。六人の内の一人、というか一番重要な参謀役を落としたのは何を隠そう人類最強。
追放勇者が魔王に対する特攻だとするなら人類最強は正に最強。誰がやっても勝てやしないし、竜王か魔王クラスが出張ってこないと難しいレベル。
ま、今回最強君を動かしたのは俺なんだが。今回の計画において何よりも邪魔だったのが参謀だ。本来ならいつものように魔王軍の本部で後ろから兵を動かしてたんだろうが、今回はいつもと話が違う。前回の世界会議で兵力を一時的にでも纏め上げるのに成功したのだ。
そうして行ったのは初見殺し。実力的には然程でもない参謀を幾重にも掛けた転送魔法で呼び出す。この為に世界各国から名だたる冒険者や魔法使い、賢者が集められた。んで呼び出した瞬間に人類最強が最大出力で滅ぼすというゴリ押し。
魔王を倒したいのなら手段は選べない。早めにやらないと俺が先に死ぬからな。ここまで豪華なメンツを揃えられるのは後にも先にもこの時だけだろう。
これで、連中は瓦解する。この世は知略と謀略にまみれた戦場だ。その一番の核を奴らは失った。しかも死体がしっかりと部屋に残った状態で。魔王軍で一番警備が成されていた奴だ。本来なら転送魔法で呼び出すことなど出来る筈がない。
痕跡も残さず、更にどう殺されたのかすら分からない。ただ死体が転がっている。そう、細工させてもらった。そしてそれで一番に疑われるのは幹部の中でも大将軍と呼ばれる魔王軍の英雄だ。この騒動でそこまで巻き込めれば、自然と奴らの一部は疑心によって崩れる。
いやー、気持ちが良いったらありゃしないなあ!ここまでお膳立てしてるんだ。きっと追放勇者が何とかしてくれるだろう。それまではまだ、耐えるしかないのだ。………思い出してきたら頭が痛くなってきた。最近は支出が酷いせいで国庫が底を尽きそう。ここらで一回貴族共を締め上げよう。何、もうじき滅びる国なんだ。多少は大盤振る舞いも悪くないだろう。
本格的に頭が痛くなる前に今日は寝る。
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32日目
突然エルフの長が乗り込んできた。なんで!?
番外編は必要ですか?
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要るに決まってんだろ舐めとんのか
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要る訳ねえだろ調子乗んな
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どちらかといえば必要
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どちらかといえば要らん
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どっちでも良き