箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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シエスタ④/72日目

 

 

『………………』

 

『……あれ? ミヅキさん?』

 

『────オーナーはシーボーンって言葉、聞いたことはあるかな?』

 

『シーボーン……? いや、初めて聞く言葉ですね。それが私と何か関係があるんですか?』

 

『ううん、知らないならいいんだ。僕が聞きたかったことはこれでおしまい。さあ、ゲームの続きをしよう!』

 

『えーと、私は凄く気になるんですが……』

 

 

 

『ごめんね? でもよく考えてみたら、確かめたところで意味が無いなって思っちゃってさ』

 

『僕はこのシエスタに来て、他の何者でもない君に──オーナーに出会ったんだ』

 

『オーナーはこれからも、何があっても、心地良い善人のままでいてね?』

 

 

 

 思い出すのは、昨日のミヅキさんとの会話。

 その後は結局どういうことなのかを聞いてものらりくらりと躱されるばかりで、ゲームでもボコボコにされた。

 

 会話の流れから察するに、『シーボーン』とやらが俺の身体と関係あることは間違いない。

 インターネットなどの便利な検索ツールが無いこの世界では、『シーボーン』という言葉が何を表しているのかを知る術が無かった。

 

 だから、何気なくモスティマに聞いたつもりだったんだけど。

 

 

「────大まかな説明は以上よ。何か質問は?」

 

「……自分なりに嚙み砕きたいので、少し時間を下さい」

 

 

 俺がモスティマに聞いた直後、その場に別の声が発生した。

 無線機から響いたその声はフィアメッタのもので、その内容は『今からそっちに行く』というもの。

 

 今になって気付いたが、もしかしたらモスティマとの会話を最初からずっと聞かれていたかもしれない。

 想定していない展開に戸惑って、気付くのが遅れてしまった。変なことは言っていない……はず。

 

 そして少し待って現れたフィアメッタは、俺との再会の挨拶を簡単に済ませた後、椅子を引っ張って来てモスティマの隣へと座った。

 一応後方を確認してみたのだが、レミュアンは道路向かいのスイーツショップから動いてはいないようだった。

 

 そこからフィアメッタによる『シーボーン』の説明が始まる。

 

 

 ・『シーボーン』は『海の怪物』とも呼ばれており、一種の生物群を指す。

 

 ・名前の通り海に生息しているが陸での活動も可能であるようで、『イベリア』という国と関わりが深いらしい。

 

 ・その『イベリア』と『ラテラーノ』は隣国ということもあり、かつては結びつきが強かったのだが、今現在は疎遠となっている。

 

 ・疎遠の理由はいくつかあるがその結果として『イベリア』には『深海教会』という勢力が生まれ、その教会の教義には『シーボーン』が関わっているとのこと。

 

 

 説明に付随して知らない単語がいくつか出て来たが、認識としてはこれで合っていると思いたい。

 ちなみにフィアメッタがわざわざ説明しに来てくれた訳としては、モスティマより詳しいかららしい。

 彼女の種族である『リーベリ』が『イベリア』に多いということも有り、同種族から情報を得る機会が多いと彼女は言っていた。

 

 何となくだけど、この理由は本当のものでは無い気がする。

 どちらかと言えばモスティマが余計な事を喋らないように、フィアメッタが出て来た感じだ。

 

 ……とは言え、追及しようにもその糸口が俺には無かった。

 

 

「それじゃあ先に質問させてもらうわ。急に『シーボーン』のことを聞いてきたのはどうして?」

 

「……偶然耳にすることがあって、知らない言葉で気になったので」

 

「誤魔化すならせめてモスティマくらい腹芸が上手くなりなさい」

 

「ねぇフィアメッタ、もしかして今私のこと褒めてくれた?」

 

「オーナーに助け船を出すつもり? モスティマ、アンタは黙ってて」

 

 

 モスティマから、諦めと謝罪の感情が伝わってくる。

 『どうにも出来なさそうだから頑張って』という声が聞こえた気がした。

 

 自分の身体と関係が有るかもしれないんです。

 どう考えても悪手である。正直に言えば良いというものではない。

 

 ミヅキさんからその言葉を聞きました。

 彼女達がミヅキさんと面識があるかどうかに関わらず、彼に迷惑がかかる。それに友達を売るような真似はしたくない。

 

 さて、どうしようもない事だけは判明した。

 ……良い案が浮かばない。考え過ぎて頭が痛くなってくる。

 

 でもそれが、どういう訳か功を奏したらしい。

 

 

「……ごめんなさい、少し詰め過ぎたわね。体調は大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です……」

 

「…………今回は聞かないであげるけど、『シーボーン』に関することは一般人には知らされていない情報も多いわ。相手によってはこうやって探るだけでも警戒されることになるから気を付けなさい」

 

「……ありがとうございます、フィアメッタさん」

 

「礼は不要よ」

 

 

 どうやら俺が悩んでいる様子やその表情が、倒れる前兆かもしれないと勘違いされたようだ。

 フィアメッタだけでなく、隣のモスティマからも強い心配を感じた。

 

 真相は違うのだが、おかげで助かった。

 とりあえず『シーボーン』のことを口に出すのはしばらく控えることにしよう。

 

 本当は午後のミュルジスにも尋ねるつもりだった。

 聞けば『ライン生命』という組織の『生態課主任』らしい。

 今フィアメッタから聞いた情報も合わせると、『シーボーン』も生物関係だからより適しているとも思ったのだが……。

 

 今回の反省をちゃんと活かすべきだろう。

 午後のミュルジスとの予定は、余計なことはしないようにしないと。

 

 

 

 

 

 ────────

 ────────

 

 

 

 

 

「オーナー、『シーボーン』って聞いたことはあるかしら?」

 

 

 ミュルジスから聞かれるパターンは想定していなかったよ。

 

 

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