箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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ノア 2/3

 

 

「──アスベストス、オーナーはっ!?」

 

「落ち着け、テレジア。オーナーが帰ってきたことに勘付いた奴が一人、会いに来ただけだ」

 

 

 オーナーとケオベ、二人の再会を見たアスベストスは、問題は起き無さそうだと判断してテントの外へと退散した。

 そこに慌てた様子で駆け付けてきたテレジア達三人に、アスベストスは落ち着くよう声を掛ける。

 

 本当に大丈夫かどうか気になるのか、オーナー達が居るテントの方へ視線を何度も彷徨わせるテレジアを他所に、Aceはアスベストスへと問い掛けた。

 

 

「来たのはどんな奴だ?」

 

「茶髪のペッロー」

 

 

 その返答に、Aceはふむ、と顎に手をやった。

 

 

「……恐らくケオベだな。Scout、どう思う? 何度か作戦を共にした仲だろう?」

 

「そうだな……彼女なら問題無いんじゃないか? 少なくとも悪意を持って何かするような子じゃないからな」

 

「そうか。……だが落ち着いたら口止めくらいはした方が良い。説明は任せていいか?」

 

「……この中だと適任は俺だけか。分かったよ」

 

 

 そわそわと落ち着かないテレジアを置いて、エリートオペレーターの二人は状況を飲み込み、次にどうすべきかを考える。

 そんな落ち着いた様子の彼等を見て、テレジアは大きく息を吐く。そうしてようやく彼女は、普段の平静を取り戻した。

 

 テントから時折漏れてくる楽しそうな声を聞きながら、待つこと十数分。

 

 

「ケオベさん、やっぱり一旦離れて貰うことは出来ませんか?」

 

「やだ!」

 

 

 その背にしがみつくケオベを若干引き摺りながら、テントからオーナーが姿を現した。

 

 

 

 

 

 ────────

 ────────

 

 

 

 

 

「なるほど。シャイニングさんとフロストリーフさんはロドスでお仕事ですか……」

 

「うん。二人とも、お仕事ホーキ? してもオーナーはよろこばない、って言ってたよ! ……やっぱり会いたかった?」

 

「そうですね。でもとりあえず、ケオベさんには会えましたから」

 

「オーナー、嬉しい?」

 

「はい、嬉しいですよ」

 

「えへへ、おいらも!」

 

 

 そう言ってケオベの両腕の力は強まり、俺の身体には更なる圧力が加わった。

 

 ケオベがテントに突入してきて、彼女が落ち着くまで抱き締めてあげた後。

 何度か諭しても全く離れる様子が無かったので、俺はいろいろと諦めてそのまま対話を始めることにした。

 

 それから数分後の今。

 

 木箱に乗り上げた彼女は、背を起こして木箱に座り直した俺の背中へ、しなだれかかるような体勢を取っており、その両腕は俺の腹部へと回され、その顎は俺の肩へと乗せられている。

 彼女が何かを喋る度、熱い吐息が首元にかかるのだが、それを気にしている場合じゃないくらい、『共感』による継続ダメージのようなものを俺は受けていた。

 

 そんなコンディションが悪い中で、何とかケオベから聞き出せたことがいくつかある。

 

 まず今回の彼女の来襲についてだが、『何となくオーナーが居るような気がして、探していたら見付けた』らしい。

 ……予想出来るかこんなもん。勘が良い、で済ませられないレベルだぞ。

 

 数日ほど前から俺が戻って来るような予感がしていたらしく、今日は特にその予感が強かったとか。

 そしてその予感について誰か他の人に話したかどうかも聞いてみたのだが、シャイニングとフロストリーフの二人には話してしまった、とのことだった。

 

 ロドスとノアは協力関係にあり、シャイニング達がロドスの臨時オペレーターとして働いているということは、シエスタに居た頃にサガから聞いている。

 社会人経験のある俺としては、先方──ロドスに迷惑を掛けるのは忍びないので、仕事を優先してくれて何よりであった。

 

 そして、現在のノアのこと。

 

 と言ってもサガから事前に聞いていた、サガ達がシエスタへ出発した数ヶ月前の頃と、ほとんど状況は変わっていないらしい。

 ノアは相変わらず停止したままで、もしかしたら何か有ったかもしれないが、ケオベは何も知らされていないとのこと。

 ……まあケオベは難しい話の場には呼ばれなさそうだし、この辺りは他の人に聞いた方が良いのだろう。

 

 そんなことを考えながら情報を脳内で整理していると、耳元でケオベが声を出した。

 

 

「……ねぇ、オーナー?」

 

「どうかしましたか、ケオベさん?」

 

 

 「ケーちゃんでいいって言ってるのに……」とぼやきながら、ケオベは言葉を続けた。

 その声音は先程までと違って元気が無く、感情には何時の間にか不安と寂しさが混じっている。

 

 

「もう勝手にいなくなったりしないでね……?」

 

「…………」

 

「……どうしても、って時はちゃんと教えてね。ずっと、ずーっと待ってるから」

 

「……分かりました。ケオベさんが悲しまないように頑張ります」

 

「シャイニングとかフロストリーフとかサガとか、他の皆にもだよっ」

 

「はい。もしもの時はちゃんと伝えます」

 

 

 俺がノアまでやって来た目的の一つは、元の世界に帰る方法が無いか調べるため。

 その結果によっては、ケオベに嘘を吐くことになるかもしれない。

 

 それでも今、この時だけは。

 

 心の底から、嘘偽りなく、ノアの皆に約束したいと思えた。

 

 

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