箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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交流:ロドス

 

 

「……ケルシー先生、これはどういう意味ですか?」

 

「端的に言えばスケジュールの変更だ。当面の間、座学の時間はロドス所属オペレーターとの実地研修になる」

 

「えーと、私に務まりますかね?」

 

「身体能力や知識を考慮し、問題無いオペレーターを用意した。それに実地研修と銘を打ってはいるが、内容はロドス本艦での軽作業に近いものだ。君でもこなすことが出来るだろう」

 

「それならまぁ……頑張ります」

 

「主目的は作業の完遂ではなく、オペレーターとの交流を通して、学んだ知識と実際の現状を擦り合わせることにある。素性がバレないよう言動には注意してもらうが、殊更に肩に力を入れて臨む必要は無い」

 

「分かりました。……資料によると明後日からですね。最初の方は誰でしょうか?」

 

「アーミヤだ」

 

 

 初手で最高経営責任者? 

 

 既に肩に力が入りそうなんですが? 

 

 

 

 

 

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「ノアの皆さんのご協力もあって、ここ一年でロドスの人脈は大きく広がりました。オペレーターとして勤務してくれる方もどんどん増えているんですよ?」

 

「……アーミヤさんは何というか、凄い人ですね」

 

「ありがとうございます、オーナーさん。……でも、支えてくれる周りの人達が凄いだけで、私なんてまだまだです。もっと頑張らなくちゃ……」

 

 

 アーミヤさんの執務室で行われたのは、何の変哲も無い彼女のお手伝いだった。

 

 届けられる書類や資料を、彼女は手慣れた様子で捌いていく。

 ロドスの運営に関わる資料が多いため積極的に手伝うことも出来ず、殆どが彼女の話し相手になるくらいだったのだが、俺達には思っていたよりも共通の話題が多く、ちゃんと会話を楽しんでくれているようで良かった。

 

 ロドスに入院していた頃に面会で一度会ったきりだったが、再びこうやって話すことが出来て俺も良かったと思う。

 彼女は俺の素性や事情をある程度知っている人だし、変に注意する必要が無かったというのも助かった次第だ。

 

 一番最初にトップというのは正直尻込みしていたのだが、むしろアーミヤさんが最初で良かったかもしれない。

 

 書類の束を机の上でトントンと揃えながら、彼女は俺の方を見てニコリと微笑む。

 

 

「それにオーナーさん。あなたが私を『凄い人』と言ってくれるように、私もあなたを『凄い人』だと思っています。お揃いですね」

 

 

 

 

 

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「オーナーさん、お疲れ様です! 食堂でサンドイッチを貰って来たので、一緒にどうですか?」

 

「ありがとうございます、リサさん。……どうかしましたか?」

 

「──いえ、何でもありません。……他のオペレーターの方からオーナーさんの事は聞いてましたが、聞いていた通りの方で安心しました!」

 

 

 オペレーターのスズラン──本名はリサらしく、出来ればそっちの方で呼んで欲しいと言われたので、そうすることにした。

 彼女もフロストリーフと同じヴァルポという種族らしいのだが、尻尾の数が九本も有って驚いた。ヴァルポの特徴は狐に似ているので、彼女は九尾の狐というやつなのかもしれない。

 

 鉱石病患者へのメンタルケアのお手伝いを終え、医療部の一室で昼食を取ることになったのだが、サンドイッチを受け取っただけで何故か喜ばれてしまった。

 

 ……いや、待て。これはケルシー先生との座学で学んだものに似ている。

 確か鉱石に直接触れない限り基本的に感染はしないと言われているけれど、非感染者は直接的な接触はもちろん間接的な接触も忌避するとかなんとか。

 

 そしてリサさんは左腕辺りに源石が見える通り、感染者である。

 つまり彼女が持って来たバスケットからではなく、差し出されたサンドイッチを躊躇いなく受け取ってくれたことが嬉しかった、という感じか? 

 

 正直に言えば『この程度で……?』と思ってしまうが、この世界では『それだけのこと』なのだろう。

 ……あと、他のオペレーターが何と言っていたのか気になる。俺の交友関係はロドスではそれほど広くないはずだし、シエスタからノアに来る際にお世話になった人達からの情報、という線が一番濃厚だ。そうなるとリサさんは、俺のオリジムシ関連も知っている可能性が有る。それはちょっと恥ずかしい。

 

 

「オーナーさんの事はケオベさんからもよく聞いてます。午後は少し休憩して、お昼寝をしませんか?」

 

 

 

 

 

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「あたしの方が先輩だから、敬意を持って呼ぶように! 分かった? オーナー?」

 

「じゃあテンニンカ大将軍でも良いですか? 私の中で普通の将軍枠はもう埋まっていますので……」

 

「……素直だね、オーナー。あたし、見た目がこれだからロドスの皆にはよく子ども扱いされるんだけど……何だか新鮮で凄く良い!」

 

 

 何度か見かけたことはあるのだけれど、ドゥリン族の方とちゃんと話すのは、このテンニンカ大将軍が初めてだ。

 会うなり「あたしはテンニンカ! 今はロドスのオペレーターだけど、その前は大将軍だったからよろしく!」と挨拶された時は、ロドスにも随分変わった人が居るんだな、という感想を抱いた。

 

 だが感情に嫌なものは全然混ざっていないし、言葉からは純粋さも受け取れる。

 いろいろと幼いが、元気一杯の良い子なのだろう。何だか見ているだけでこちらも元気になれそうな気がする。

 

 言った通り『大将軍』は付けるが、俺の心の中ではグロ将軍の方が序列は上である。

 テンニンカ大将軍はグロ将軍のことなんて知らないだろうからわざわざそのことを言ったりはしないが、もし彼女がイェラグに行くことがあれば、ぜひ紹介したいものだ。

 

 俺の心中を他所に、彼女は気分が良さそうにフフンと胸を張る。

 そして持っている旗を掲げながら、高らかに宣言した。

 

 

「よーし、やる気も出てきたし、さっそく仕事にしゅっぱーつ! オーナーもちゃんとついて来てね!」

 

 

 

 

 

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 オペレーターの皆さんとの交流は、思っていた以上に楽しい。

 

 仕事の方はあまり力になれていないかもしれないが、迷惑でなければもっと続けたいところだ。

 

 ……次はニアールさんだと聞いている。

 

 今からとても楽しみだ。

 

 

 

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「オーナーの検査数値や最近の言動についてだが……実地研修を開始してから改善の兆候が見られている。ドクター、君の仮説は正しいとみて良いだろう」

 

「……当たっていたことを喜ぶべきかどうか、判断に困るな。シーボーンの適応能力が肉体だけではなく精神にまで影響するとは……」

 

「彼が悲観的、あるいは破滅的な思考を続ければ続けるほど、行動もそれに従ったものになる。だがそれは逆も同じことだ」

 

「彼には大きな借りがある。ケルシー、多忙のところすまないが、引き続き上手く調整してくれ」

 

「もちろんだ。彼に大きな借りがあるのは、私も同じだからな……」

 

 

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