箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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レユニオンとの交流①

 

 

「────思ってたよりずっと暇なんだよなー……。なぁオーナー、なんか面白いのはねーのか?」

 

「そうですね……。隠し芸として考えておいたものならいくつか」

 

「へぇ、面白そうじゃん。オレサマに見せてみろよ!」

 

 

 ノア内部に建てられた本部、その一角に設置されている遊戯室にて。

 

 レユニオンとの初接触を済ませ、今回の交流におけるメインイベントとも言える貿易に関しての内容説明を終えた俺は、レユニオン側からの提案によってノアへと早々に引き返していた。

 

 レユニオン曰く、『方法が想定以上に特殊なため一度時間を頂きたい』とのこと。

 今後各国との貿易においても最初となる今回のレユニオンとの取引が基準となるので、ドクターやケルシー先生、ノアの住民達とも話し合って慎重に決めた方式だったのだが、自由度が高過ぎたためなのか、レユニオン自体がこういった貿易を経験してこなかったためなのか、どうやら多少の混乱を与えてしまったらしい。

 

 内部で話を取りまとめて明日には何かしらの結論を持ってくるとのことだが、初日はいろいろと大変だろうなぁ……と考えて身構えていた俺は、盛大な肩透かしを食らってしまった。

 

 

「すげぇっ! どうやって虹みたいに光ってんだ?」

 

「他にもこういったことも出来ますよ。……どうです? サンクタみたいでしょう?」

 

「────オーナー様、今のは絶対に外でしないようお願いします」

 

「……えーと、リーヴァさん? その、笑顔がどことなく怖いのですが……?」

 

 

 レユニオンへの説明後、情報解禁ということでノアに乗っていた各国の方々へも貿易方法の説明と専用端末の配布を行ったのだが、聞くや否や軒並み自分達の区画へと引っ込んでしまった。

 

 ライン生命の方々もそれに漏れず、そのため話し合ってばっかりでつまらないと判断したイフリータが、この部屋へと遊びに来ていた。

 彼女とは前々からロドスで面識が有り、ミヅキも含めたゲーム仲間の一人である。

 本来はロドス本艦に居るはずなのだが、今回の遠征で彼女と深い関わりが有るサリアさんとサイレンスさんがノアに乗ったため、我儘を言って同行したらしい。

 

 何度か一緒に遊んで感じたことだが、イフリータはとても良い子である。

 多少攻撃的な面も有るが、『共感』で感情が分かる俺はその一面を大して気にしていない。サリアさんやサイレンスさんが可愛がるのも意味が分かるというものだ。

 

 

「ちなみにこちらはどうでしょうか、ビガロさん? ノアの生成能力で作ってみた付け角なのですが……」

 

「…………僕と同じキャプリニーの角ですね。 確認ですが、そのデザインはご自身で考えられたのでしょうか?」

 

「はい、何となくで作ってみましたがどうですか? 個人的にはこの捩れた赤と黒のデザインは格好良いと思っています」

 

「オーナー様、その角を見せるのは止めるべきです。特にリターニアの人達には見せない方がいいでしょう」

 

 

 ノアの生成物と『低重力発生装置』を用いたサンクタの光輪と光翼の再現。

 ノアの生成能力で細部にこだわり緻密に創り上げたキャプリニーの付け角。

 

 エネルギー変換を利用した全身七色発光の受けが良かったので、密かに温めていた他種族のモノマネネタもいくつか披露してみたのだが、今日の担当秘書であるリーヴァとビガロの反応は芳しくなかった。

 イフリータは面白がってくれたが、よくよく考えると他種族の身体的特徴を真似するのは、相手からすればあまり良い気分にはならないものかもしれない。……今後は気を付けるとしよう。

 

 

「イフリータさん、ちょっと早いですが夕食にしましょう」

 

「……もう一回ゲームって感じでもねぇし、そうすっか。オーナーが作ってくれんのか?」

 

「それでもいいですが、一緒に作りませんか?」

 

「えー、オレサマもか?」

 

「……サリアさんとサイレンスさんに持っていったら、きっと二人とも喜びますよ」

 

「…………やるっ!」

 

 

 うーん、素直。

 こんなに真っ直ぐだと、いつかいろんな人に簡単に騙されてしまいそうで不安になるな。

 

 リーヴァとビガロに同意を求めてみたところ、曖昧な笑顔で返されてしまった。

 伝わって来る感情は二人とも困惑だし、一体どうしたというのだろう? 

 

 疑問に思いながらも、俺達は遊戯室を出て厨房の方へと向かっていく。

 

 料理は無事完成しとても美味しかったが、リーヴァとビガロの二人が、俺に包丁と火周りをさせることは無かった。

 流石に心配のし過ぎだと思われる。プロアスリートじゃ無いんだから。

 

 

 

 

 

 ────────

 ────────

 

 

 

 

 

「────資源をそれぞれ点数として変換し、持ち込んだ資源量に応じた点数内でリスト内の物品を自由に選ぶことが出来る、か……。人員が増えたことによる食料問題、感染者や負傷者の医療問題、レユニオンの住民達の環境問題……。一つに注力すれば完全な解決が可能で、分散しても大幅な改善が可能となるのが悩みどころだな……」

 

 

 レユニオンの作戦本部にて、タルラはオーナーから渡された専用端末を操作しながら、誰に語り掛ける訳でも無くそう言葉を零した。

 懸念していたコシェルナの動向も、本人の口から「あの護衛達を目にしその背景を推測して、なお無謀な賭けに出るほど私は愚かではない」という言葉を聞き、タルラは一先ずの安心を得ることに成功している。

 貿易の方法と内容が想定から大きく外れていたことと、初日を把握に使用しなければいけなくなったことは誤算だったが、それらを差し引いても悪く無い滑り出しだと彼女は評価を下していた。

 

 主要なメンバーが別室で会議をしているため、自分一人となっている空間。

 ふとした拍子に彼女の脳裏に浮かぶのは、初めて目にしたオーナーの姿。初めて耳にしたオーナーの肉声。そして友好の握手の際に初めて知った、オーナーの手の感触。

 

 胸の高鳴りが抑えられなかったことを、タルラは自覚している。

 

 

「……もう少し、ゆっくり話をしたかったな」

 

 

 機会は明日以降にも有る、と彼女は頭の片隅で考える。

 

 レユニオンに所属する者達のために、浮ついた感情を抱くことが良くないということは重々に承知している。

 

 そうであっても、その言葉が零れ落ちてしまうことを、彼女は止めることも気付くことも出来なかった。

 

 

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