箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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箱庭ゲーム/5日目

 

 

 仕事から帰宅。

 

 電子レンジでコンビニ弁当を温め開始。

 温めている間にパソコンを起動し、ジャージに着替える。

 弁当を回収して椅子に座り、いつものようにゲームを開始する。

 

 最速最高効率でのゲームスタートだ。

 

『生息演算』を始めて早5日。

 俺は間違いなくこのゲームに嵌まってしまっていた。

 仕事の休憩中ですら、帰ったら何処に手を付けるか考えている始末である。

 

 

「こういうゲームって、出来ることが増えてくると楽しさが増してくるんだよなー」

 

 

 始めて2~3日目は不便な部分が多く、評価的には微妙だったけど、住民達が住み着いてからは細かいところに手が届くようになり、快適さと爽快さが増した。

 いちいち手動で回収していた資源も、最初に範囲さえ指定すれば住民達が頑張ってくれる。俺はただただ増えていく資源を見ているだけでいい。

 

 大人の男女ペアが4組で8人、子供が5人。総勢13人が、この『ノア』の最初の住民達だ。

 見つけた当初はステータスが『衰弱』『空腹』『絶望』『鉱石病』と、バッドステータスのオンパレードだったが、今や『少し健康』『普通』『かなり幸福』『鉱石病』まで持ち直している。

 

 作業効率とかに補正がかかるみたいなので、最高の状態を目指したいところだ。

 

 ちなみに『鉱石病』は治ることが無いバッドステータスのようで、対人コミュニケーションに対して驚くほどのマイナス補正がかかるようだが、罹患していない住民に対応させれば良いだけだし、問題無しである。

 

 適材適所は配置系ゲームの基本。

 ……まあ、今のところかかってないのが子供達だけっていうのが厳しいところなんだけど。でももしもの時は貿易とか商売とかの大人の対応を、子供にさせることになるのだろうか? 

 

 

「とりあえずいつもの薬は補充して、っと」

 

 

 外部との交流でゲームが詰むことは無いと思うけど、楽しむ要素が減るのは困る。

 

 罹ることを完全に止めることは出来ないが予防程度の効果はある薬を製造し、中央の祠にセットする。

 採取は自動化出来たけど、製造や建築関係はまだまだ手動だ。完全自動化の道のりは遠い。

 

 

「今日の目標は鉱石で武器の作成だな。採掘先を探さないと……」

 

 

 

 

 

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『 イドウ カイシ 』

 

 

 中央の祠から、抑揚のない声が流れる。

 今日の作業を確認していた私達は、地上へと降りる準備をしていた手を止めて、急いで子供達の回収へと走った。

 

 大人と子供、人数を数えて問題無いことを確認し、祠の近くに建てられている大き目の建造物へと避難する。

 

 この構造物──祠は『ノア』と言っていた──は、数日置きに移動を始め、移動先に着けばまた数日間そこで停止する。

 今のところ規則性などは無いようだが目的はハッキリとしており、着いた先では声と共に、祠に道具が現れる。

 

 

『モクザイ』『コウセキ』『ミズ』『ドウブツ』『ショクブツ』

 

 

 集めるべき資源を指示しているのだろう。

 最初は戸惑うばかりだったが、私達が『ノア』を見つけた当初に食料のようなもの──文字が読める奴によると『無添加エナジードリンク』と書かれているらしい。味は美味しくない。──を提供してくれたこともあり、手探りながらも素直に従っている。

 

 見たこともない機械と共に作業を行う日々も、『1ヶ月』も経過すれば慣れたものだ。

 

 採取・採掘したものは全てその機械へ渡し、私達が作った物は祠に納める。

 毎日の食料は祠から提供され、多くの資源を集めることが出来た日には料理だって貰えることもある。

 

『ノア』の中へと入れてもらえたことは無く、私達の住居などは上部に直接建てられたもので野ざらしだが、元の生活に比べればここは天国に近いと言って良い。

 

 

 ……今となっては天災に呑まれた村を見て、絶望を覚えたことさえ懐かしい。

 ここを追い出された日には、冗談ではなく命を絶つことを考えるだろう。

 

 

「……お父さん?」

 

「どうした?」

 

「怖い顔、してる。大丈夫?」

 

「……大丈夫だよ。ほら、そろそろ動くぞ。揺れるからしっかり掴まってなさい」

 

「うん……」

 

 

 揺れで怪我をしないように、建物の中で私達は身を寄せ合って一塊になる。

 

 私や妻と違って、この娘は『鉱石病』に罹っていない。

『ノア』が薬を提供してくれている限り、今後もその可能性は限りなく低い。

 

 

 ……この暮らしを守るためならば、私は何でもしよう。

 

 

 

 

 

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「……移動を始めたな」

 

 巨大な建造物が動くその後方で、数日前からその建造物を見張っている者達が居た。

 

 国や町、村を追われたそのならず者の集団は、次の停止先で襲うことを決めた。

 

 

 

 

 

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「あれー? 山が動いてるー?」

 

 巨大な建造物が向かう先、木に登った1人のペッローは見たことのない光景に首を傾げた。

 

 彼女に背負われた様々な武器が、鈍く輝いている。

 

 

 





≪Tips≫

『住民詳細』
評価  : 感謝
好感度 : 大人→良好
      子供→良好
ネームド: 無し


『襲撃が予想されます。戦力を整え、対処して下さい』

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