「──200日目到達! ……あ、特典とか特別なメッセージとかは無いのね」
ゲーム画面の端には『200日目』の文字が刻まれているが、画面内の様子はいつもと変わりなく、『ノア』の住民や駐屯地の人達が忙しなく動いていた。
「ここ数日は特に濃い内容だったなぁ……」
見慣れた画面に少し残念な気持ちも覚えつつ、ここ数日のことに思いを馳せる。
仕事があるのでまとまった時間は取れなかったのだが、ゲームの方も重要イベントらしきものが多く、一日の内に進められる日数も短めだったので、毎日キリが良い所で終わることが出来た。
昨日くらいからはいろいろと落ち着いたため、会話イベントをこなしつつ資源の採取を繰り返している状態だ。
「この場所に来てまだ3週間くらいか? もっと長く居た気がするけど」
『パトリオットとの交渉』
『タルラとの交渉』
『感染者組織の食料問題改善』
『資源回収の合同作戦』
『ゲームシステムの実験』
『住民の鉱石病末期による死亡』
『ネームドとの特殊イベント』
『感染者組織との特殊イベント』
ここ数日の内容を列挙するだけで凄まじい。
パトリオットとタルラとの交渉は、相手の取引材料の少なさで難航したんだよな。
出て来た選択肢に『不平等でも取引を行う』っていうのが無かったら、破談だったかもしれない。
まぁ折角こんな遠いところまで来たんだし、多少は先行投資ということで目を瞑ろうじゃないか。
そしてその取引の一環として、『栽培ポット』とかを駐屯地に設置したり、彼らの把握している未開発地域での資源回収を行った。
彼らの物か、と問われれば疑問は残るものの、駐屯地に居る人々が元々住んでいた場所だというし、無断でそこかしこから採取するよりかは波風も立ちにくいだろう。
もしもの時があっても自分達のせいになるように情報を操作しておく、とも言っていたし、大丈夫だと信じたい。
そして俺が一番やりたかったことも、その頃に行うことが出来た。
システム、特に変換に関する実験だ。
協力者はサガとフロストリーフとアリーナ、そしてアリーナに付いてくる形でタルラも参加してくれた。
相手のトップに参加してもらうのは正直気が引けたのだが、『些細なことでも恩返しがしたい』とのことで、断り切れなかった。
実験方法は簡単で、会話イベントの際に『私の発言を復唱して欲しい』とお願いするというものだ。
一度お願いが通ればその後も会話の際には復唱してくれたことには、少々驚いた。何気に凄いAIを積んでいるんだよな、このゲーム。キャラクター毎に会話内容を覚えてたりもするし……。
で、何度か実験をして分かったことが主に5つ。
『俺の発言は基本的に丁寧な言葉に変換される』
『変換の際、曖昧な表現は断定に変わりやすく、修飾語は消されることが多い』
『文字入力より音声入力の方が変換が緩い』
『選択肢での発言は機械音声になる』
『複数人かどうかで変換内容が変わる』
丁寧な言葉は構わないが、曖昧な表現が駄目なのには驚いた。
例えば『難しいと思います』という言葉は、『出来ない』とか『不可能』に変わるのだ。断定の表現を避ける日本の社会人として中々に辛い。
もしかしたら今までも、俺のやんわりとした断り文句が、歯に衣着せぬ物言いになっていたのかもしれない。そりゃ相手が怒ったりもする訳だ。
文字と音声だと、音声の方があまり変わらないということに気付けたのも大きい。
サガとの実験で『サガの性格は明るくて好ましい』と入力したところ『サガの事が好き』という、修飾語が省かれ断定表現に変わるということが起きたのだが、音声入力でフロストリーフに同じことを話してみたところ、『フロストリーフの性格を良く思っています』という、意味合いがより近いままで変換されたのだ。
これからは音声入力を基本にして、文字入力はよっぽど長文で話す時だけにしよう。
あとは機械音声になっていることを知れたので、これで住民達が『ノア』と『オーナー』を判定しているということも分かった。
まぁ選択肢も選んでいるのは俺なので、どちらも俺の事だとは思うんだけど、問題が起きているわけでもないしわざわざ訂正しなくてもいいだろう。
最後に関しては副産物のような形で分かったことなので、あまり気にしていない。
サガ相手だと『寿司』がそのまま通るけど、他の人が一緒だと『海産物を使用した料理』に変わる、というものだ。
おそらく、意味がより多くの人に分かる形で変換されているということだろう。ただただ便利である。
「……思い出しちゃったな」
ふと、実験期間の途中で起こった、住民の鉱石病による死亡を思い出してしまった。
致死率100%とは聞いていたけど、死んだ後に源石を拡散させて周りに感染させるとかヤバ過ぎる。
タイムラグがあるから、死んだ後でも隔離等を行うことで感染リスクを下げられるということだけど、これって場合によっては死ぬ前に居場所を追い出されるケースもあるんじゃないだろうか?
最後の最後に一人で死ぬ、というのは何だか悲しい。
今回は一人だけだったので、雪原に小さい住居を建設して移動してもらい、最期を看取ってあげた。
ゲームのキャラとはいえ、最期までこちらに感謝を伝えてくる様子は、普通に泣きそうになった。
……何とかならないものなのかな、鉱石病って。
「考えても仕方ないか」
これがゲームの設定なんだから仕方無い。
頭の中を切り換えて、今日やるべきことを確認する。
確か昨日、タルラに呼び出されたところで止めたはずだから、まずはその処理からしよう。
最近タルラとの会話がかなり多いけど、今回は一体何の用事だろうか?
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『──こちらで『ノア』を手に入れるべきだという声が強まっている』
『これだけの支援をしてもらっておきながら、申し訳ない……』
マジですか?
≪Tips≫
『詳細』
ネームド: ケオベ 110%
モスティマ 40%
サガ 80%
フロストリーフ 135%
シャイニング 90%
アリーナ 60%
フロストノヴァ 30%
パトリオット 25%
タルラ 110%
≪一定期間が経過しました≫
≪現時点での内部データを、秘密裏に開示します≫