「ただいまー……、って言っても誰も居ないんだけどさ」
時刻は夜10時。
最近仕事が忙しくて毎日この時間帯の帰りになってしまっているが、段々と慣れてきた。
来週頃には少し落ち着きそうだし、『生息演算』をやる時間も多く取れそうで、今から楽しみである。
「食事は……いいか。それよりゲーム……!」
手早く着替えを済ませて椅子に座り、いつものごとくモニターへと目を向ける。
ここ数日は1日1時間程度しかゲームをする時間も取れなかったし、会話イベントも頻発していて、10日程度しか進められていない。
「昨日の時点で移動能力の修復率が95%だったし、今日こそは……あれ?」
ゲームのアイコンをクリックすると、スタート画面が出てくる前に、見たことの無いポップアップが出現した。
≪調査≫と書かれているそのポップアップは、閉じるためのボタンが見当たらなかったので、とりあえず文字の部分を押してみる。
「──なるほど、アンケートか」
画面に広がったのはいくつかの質問事項と、それに回答するための空白欄だった。
そういえば今日でプレイし始めてから大体一ヶ月くらいだし、それだけ長くやってれば運営側としても聞いてみたいことはあるだろう。
でも選択式じゃなくて全部入力式なのか……。
まあかなり楽しませてもらっているし、こういうのは普段あんまり真面目に書かないんだけど、今回くらいはちゃんと書いておこうかな。
≪良いと思う点をあげて下さい≫
『キャラクターとの会話の多彩さや、自由度の高さはとても面白いです。クラフト要素も素材変換のおかげでストレスが無く、資源採取も楽しんでいます』
≪悪いと思う点をあげて下さい≫
『こちらの選択や言葉が、相手にどう伝わっているのか分からないことがあります。それがゲームの要素と言われてしまうとそれまでなのですが、確認のためのログ機能くらいは欲しいです』
≪気になった方・もっと知りたい方がいればあげて下さい≫
『バベルの方達とは交流時間が短かったので、もう少し話してみたかったと思います。あとモスティマも』
≪行ってみたい都市や地域があればあげて下さい≫
『移動したところが内陸ばかりなので、海とかも見てみたいです』
≪この世界や人々をどう思いますか?≫
『基本的に暗い世界観だと思いますが、キャラクター達は前向きに生きている者も多く、最終的には報われて欲しいなと思います』
≪この世界に住むとすれば、何を欲しますか?≫
『病気にならない健康な体と、劣悪な環境でも適応する能力、常識などの基礎知識』
≪この世界に何か一つをもたらすのであれば、何にしますか?≫
『鉱石病の治療方法』
最後に≪完了≫のボタンを押して終了、と。
何だか後半は変な質問だったけど、それっぽいことは書いておいたし大丈夫だろう。
それにしても『住む場合』かー。
この前、この世界だと生きていけないなーなんて思ったばかりだから、タイムリーな質問だった。
鉱石病になることがなくて、文明レベルとか環境の違いに適応出来て、現地の人とちゃんとコミュニケーションを取れるなら可能性はアリだ。
いや基本住みたくはないんだけどさ。あくまで可能性として。
「鉱石病の治療は無理だろうけど、書く分にはタダだしな」
予防薬は効果の差でいくつか種類があるのに、治療薬に至ってはレシピや説明文などのテキストを見ても、影も形も見当たらない。
文字通り不治の病、ということなんだろう。
「……さて、時間かかっちゃったけど、少しは進めておくか」
気を取り直して、スタートボタンを押す。
一瞬だけ画面にノイズが走ったが、それからいつものゲーム画面が現われたのだった。
『≪条件≫と≪要望≫を確認』
『記録及び情報を確認中……』
『記録及び情報を確認中……』
『記録及び情報を確認中……』
『現在、対応は不可と判定します』
『収集及び調査を続行します』