箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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ワンサイドゲーム/5日目

 

 

 ふと時計を見れば、針は頂点を回ろうとしていた。

 

『ノア』は目的地に到着したみたいだし、キリも良い。

 今日はこの辺りでそろそろ終わろうか、と思ったその矢先に、画面にポップアップが現れる。

 

 

『襲撃が予想されます。戦力を整え、対処して下さい』

 

 

 襲撃イベントだ! 

 

 初めてのイベントにワクワクしながら、詳細を確認する。

 どうやら『拠点で迎撃』と『派遣で襲撃』を選べるらしい。

 

 報酬の方は……うーん、美味しくなさそう。

 

 敵の詳細が『ならず者』となってるし、その程度の敵だと大した物も持っていないのだろう。

 一応敵が持っている武器とかは貰えるみたいだけど、自分で鉱石から作った方が性能は良さそうだ。

 

 あ、でもこの『龍門幣』っていうのは気になるな。このゲーム内の通貨に見える。

 

 

「この襲撃イベントを終わらせたら今日はもう終わりにしよう!」

 

 

 そう意気込んで、準備を進める。

 

 ちなみにこのゲーム、作製出来るものに攻撃系統のものが非常に少ない。

 その代わり防御や支援のものがたくさんあるので、コンセプトとしては住民に攻撃を任せるのが正解なのだろう。

 

 ただこちらの戦力でちゃんと戦えそうなのは大人の男性陣4名くらいだし、もしダメージを受けた場合ロストしてしまうのかどうかすら分からない。

 

 だから今回は大盤振る舞いで行こうと思う。

 明らかに過剰戦力だし資源も少しもったいないけど、今後のために学ぶ良い機会だと思えば安いものだ。

 

 数少ない攻撃系の中から、現時点で作製可能な『支援地雷セット』を作れるだけ作製……って、10個しか保有出来ないのか。

 じゃあその代わりにこの『支援スモークマシン』を作っておこう。あとはもしもの時の住民の回復用に『救急キット』も作製して……。

 

 大人達には作ったばかりの槍と大盾を支給しよう。敵にクロスボウ持ちが居て、こちらに遠距離攻撃手段が無いのが痛い。確実に防御出来る布陣にしなければならない。

 2人組になって、盾持ちの後ろに槍持ちが付くように指示を出す。

 セットで考えると戦力が2人しか居ないっていうのは流石に酷い気がするが、残りの住民は全滅した場合の2戦目に備える必要がある。

 

 

『ノア』の四方から攻められたら人数の関係で絶対に手が回らないから『派遣で襲撃』し、倒せれば良し。駄目でも数を減らせれば、襲撃を辞める可能性もある。それでも襲撃を続けるならば、残りの住民にも戦ってもらう。そういう作戦だ。

 

 

 襲撃予想の時間帯は夜。

 敵の拠点は画面に表示されているので、準備が整う前に攻めてしまおう。

 

 

「……ゲームなのに緊張してきた」

 

 

 既に十数時間はプレイしたゲームだから、これで負けて最初から、ということになったらかなりショックだ。しばらくの間落ち込むに違いない。

 

 

「拠点前に着いたか。それじゃあ『支援地雷セット』を使用して……」

 

 

 拠点の構造は画面で分かるが、敵の配置や人数は不明のままのようだ。

 とりあえず物資の置き場所に設置しておけばいいだろう。

 数個を残して全て設置する。この数個は戦闘になった際に、うちの盾持ちの前方に設置するつもりだ。突っ込んできたやつはこれで対処出来るはず。

 

 

 深呼吸をする。

 開戦の合図は拠点ど真ん中への『支援スモークマシン』だ。

 

 

 

「よし、行け!」

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその数分後。

 

 敵残存数は1人で、既に戦闘の意志は無い。捕虜でも、逃がしても、どちらでもいいだろう。

 

 こちらの被害は全くのゼロ。ただし『救急キット』以外も残っていない。

 

 初陣は、拍子抜けするほどの完勝で終わったのだった。

 

 

 

 

 

 ────────

 ────────

 

 

 

 

 

『 テキ シュウゲキ 』『 オトナ オトコ タタカエ 』『 ブキ アタエル 』『 シジ マテ 』

 

 

 その声と言葉の意味を飲み込む暇もなく、私達は武器を持って『ノア』の外へと駆り出された。

 何時かは起こる可能性を考えなかった訳ではないが、あまりにも急な出来事に私を含め他の者達も覚悟が定まっていない。

 

 かといって逃げることも出来ない。『ノア』には女子供が残されたままだからだ。

 ……まさかとは思うが人質のつもりなのだろうか? そんな考えが頭の中をよぎる。

 

 

『 ゼンシン 』『 シゲミ ミ カクセ 』『 アイズ ケムリ ダス 』

 

 

 祠に武器と共に現れた無線機は、道中で問い掛けても何も答えてはくれなかった。

 ただただこちらへの指示の言葉を紡ぐばかりだ。そこには何の感情も見えはしない。

 

 

「……死にたくないな」

 

 

 何でもしよう、と考えてはいたが、死にたい訳じゃない。出来ることならば、無事に帰りたい。

 

 でも私は知っているのだ。

 

 この大地は何時だって、突然に、そして理不尽に、私達を殺すということを。

 

 

 

 そしてその理不尽は、『私達には』降りかからなかった。

 

 

 

 敵がいる拠点から煙が上がり、何度か爆発音が続いた。

 

 しばらくすると、体のところどころを赤く染めた敵が、煙を抜けてこちらへと走ってくる。

 

 私は盾を構える。

 

 後ろの仲間も槍を構え直したのが分かった。

 

 そしてまた、爆発音。

 

 物体のようなものと液体のようなものが、盾にぶつかってきた。

 

 後ろの仲間が小さく悲鳴を上げた。

 

 何が起きたのか? いや、今は考えるな。考えてはいけない。

 

 大盾から、顔を出すことが出来ない。

 

 向こうの光景を見ることが、出来ない。

 

 そのまま何度か爆発音と衝撃が続く。

 

 私も、仲間も、何も喋らなかった。

 

 

 

『 ヒトリ マカセル 』

 

 

 

 そして無音になり、無線機の声だけが響いた。

 盾の向こうを見れば、一面に赤黒い染みが広がっている。

 

 その中でもがいている敵が一人。状態を見るに、長くは無いだろう。

『マカセル』? 一体何を? トドメを刺せとでも? 

 

 後ろの仲間達が嘔吐している。無理もない。私だって指示さえなければそうしていた。

 

 だが、体は一向に動かなかった。目の前の光景を信じたくなかった。

 

 

 そうしている間に、敵は動かなくなった。

 

 

 

『 テキ スベテ タオシタ 』

 

 

 

 無線機だけが、音を出す。

 

 

 

 

『 ブキ ロンメンヘイ ブッシ カイシュウ 』

 

 

 

 

 こんな最期は迎えたくないな。

 

 ただそれだけを、思った。

 

 

 





≪Tips≫

『住民詳細』
評価  : 感謝 恐怖 
好感度 : 大人→■■
      子供→良好
ネームド: ケオベ


『ネームドが拠点に居ます。対処して下さい』

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