箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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レユニオン③/40日目

 

 

 ゲーム画面の端に表示されている『240日目』の文字。

 そして画面中央のポップアップに表示されている文字は、待望の──。

 

 

「『修理完了』、ようやく終わったー!」

 

 

 椅子の背もたれに体重を預け、両手を高く伸ばして万歳をする。

 最後の『5%』に一体何日かかったのか、資材は結局どれだけ費やすことになったのか。

 

 その辺りを考えると折角の気分が台無しになりそうなので、今は脇に置いておく。

 予定していた滞在期間も少し過ぎてしまっているが、この達成感に比べれば些細なことだ。

 

 

「体調も完全に治ったし、今日は嬉しいことばっかりだな」

 

 

 実を言うと俺は、あのパトリオットからテレジアの訃報を聞いた後、少しの間ゲームから離れていた。

 何となくショックが頭から消えなかったというのと、普通に仕事が忙しかったのが原因だ。

 

 よくあるソーシャルゲームのデイリークエストみたいなものがあったら違ったんだろうけど、この『生息演算』はそういうのも無かったので、たまには休むのも有りかと気楽な気持ちで離れることが出来た。

 

 でも数日ゲームをしないで仕事に精を出していたところ、頭痛や吐き気を感じるようになり、ついには有休を二日ほど取って休むことにしたのだが、体調は良くならなかったのである。

 

 

「でもゲームしている内に良くなっていったんだから、やっぱり気分転換って大事だよなー」

 

 

 ずっと寝ているのも飽きてきて二日目にはがっつりゲームをやっていたのだが、それまでの不調がまるで嘘のように消えていた。

 次の日には仕事にも行けたし、あれは結局何が原因だったんだろう? まあ仕事が体に毒なのは間違い無いのだが……。

 

 何はともあれ今日に至るまで、頭痛や吐き気は再発していない。完全に治ったとみていいだろう。

 

 

「おー、動いてる動いてる……」

 

 

 ゲーム画面では移動能力を取り戻した、『レユニオン』──タルラ達が命名していた──が早速動いている。

 

 『ノア』のような多脚式ではなく、陸に浮かべられた船のような外見で地面を滑るように移動する様は、圧巻の一言だ。

 大分小さいタイプだと聞いていたが、それでも『ノア』に比べると圧倒的に大きいので、画面を引きの状態にしないと収まりきらない。

 

 

『オーナー、このまま駐屯地に移動して仲間と合流し、物資も回収する』

 

「『了解』、っと」

 

 

 『レユニオン』に居るタルラからの通信に返事をして、『ノア』の行き先をアリーナ達が居る駐屯地付近へと設定する。

 

 有休二日目にゲームを再開した時、それはつまりパトリオットから話を聞いた翌日からのスタートだったのだが、監視している『皇帝の利刃』とやらにどう対処しようか考える前に、タルラから呼び出しがあった。

 

 呼び出されたテントに最近すっかり折衝役としての仕事が板についてきたシャイニングと向かえば、そこに居たのはタルラやフロストノヴァ、パトリオットだけではなかった。

 

 タルラと長い付き合いだという『レユニオン』の古株達や、スノーデビル小隊と遊撃隊の中でも特に経験が長い隊員達。

 合わせて十数名に及ぶ人数が、テントにひしめき合っていた。

 

 そこでタルラから、様々なことが伝えられる。

 こちらは特に口を挟むことなく、シャイニングも無線機を両腕に抱えたまま、タルラの言葉を黙って聞くことになった。

 

 移動都市の修理がもう少しで完了すること。

 完了次第『ノア』との交流が終了し、『ノア』がウルサスから離れること。

 移動都市を手に入れた『レユニオン』が、今後どうするかについて。

 

 こちらが離れることについては、ある程度周知の事実だったのか、これといった声は上がらなかった。

 だが三つ目の今後の進退については、タルラからとある提案がされたことで、騒然とした空気が流れた。

 

 あのフロストノヴァとパトリオットでさえも驚いていたのが、強く印象に残っている。

 

 ただタルラもそうなることが分かっていたのか、事細かに現在の状況や情勢を説明してくれた。

 その中で自身の出自に言及する場面があり、仲間達から追及されることもあったのだが……。

 

 

『タルラ、お前は一体何を考えているんだ? まさか俺達を……』

 

『……急にこんなことを明かされて困惑する気持ちは分かる。だが私がこの地で行ってきたことに偽りは無い。その行動と結果だけでは信用に足らないか?』

 

『今まで話さなかったのは、隠していたのは、後ろめたい何かがあったからじゃないのか? それを信用しろだなんて──』

 

『……? どうした? 何かあるのなら言ってくれ。お前の意見はこの場の誰もが思っていることだと私は思う。この際わだかまりは解消しておきたい』

 

『…………いや、いい。まずはタルラ、お前の話を全部聞いてからにする』

 

『……いいのか?』

 

『ああ。考えてみればお前より謎が多い奴がこの場に居る。そいつを信用してお前を信用しないっていうのはおかしな話だからな……』

 

 

 納得は出来ていない様子だったが、何かを飲み込んだような表情で、その仲間の男性は追及を途中で止めた。

 シャイニング、ひいてはその腕の中にある無線機の方を見ていたようだけれど、これってもしかして俺達の方がタルラより怪しいって思ったってことだろうか? 

 

 ……それは確かにそうだと俺も思う! 

 

 と、そういったこともありつつ、膨大な会話テキストを消費しながら、最終的に話自体は何とか収まった。

 

 その後に『修理が完了するまで、疑念を抱いている奴らと根気強く話してみる』とタルラも言っていたし、今は上手くいっていることを願おう。

 

 

「駐屯地まで行ったらついにお別れか……」

 

 

 いろいろあったけど、無事にこの地から離れられるかは、呼び出しの際にタルラが話していた作戦の的中度次第だ。

 

 ……こっちの方も上手くいくことを願っておこう。割と強めに。

 

 

 





≪Tips≫

『詳細』
ネームド: ケオベ 120%
      モスティマ 60%
      サガ 90%
      フロストリーフ 145%
      シャイニング 99%
      アリーナ 80%
      フロストノヴァ 50%
      パトリオット 45%
      タルラ 135%
      コシチェイ 120%


≪『祭壇』の学習は完了しました≫

≪要素はあと二つ以上必要です≫

≪現在目標が存在しません。範囲内に学習対象を置いて下さい≫
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