「──本当にごめん。……体調が良くなったらまた連絡するから」
駅のホーム。
乗車予定の新幹線があと数分で到着するというのに、俺はベンチから立ち上がって帰路につく。
通話を切った直後だったが、携帯には母親からの、こちらを心配するメールが届いていた。
頭痛と吐き気、倦怠感。心なしか身体のあちこちが痛むような気もする。
(病院……その前に荷物だけでも家に置いてくるか……?)
頭が上手く回らないし、メールも今は返せそうにない。
何とかタクシーを捕まえて乗り込むと、申し訳なさが詰まった大きな溜息が漏れた。
(しばらくは安静にしないと……)
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──家に帰ったら体調が良くなった。
「何で?」
感じていた不調の一切が消え去っており、むしろ気分が良くなっているくらいだ。
久し振りの里帰りを中止したのは早計だったかもしれない。
帰りのタクシーの車内で、母と妹からの心配のメールにも既に返信してしまったし、今更もう一度帰ろうとするというのはきまりが悪い。
まあ再度体調が悪化する可能性は否定出来ないし、家族には申し訳ないがこのまま何も伝えず家で大人しくしておいた方が良いだろう。
「……時間が出来た」
連休を利用して実家に泊まるつもりだったから、予期せず自由な時間が生まれてしまった。
そうなると、やることは一つ。ゲームしかない。
里帰りを終えてからゆっくりやるつもりだった部分を、連休中にやってしまおうじゃないか。
モスティマ一行、シャイニング、『ノア』の住民。
それぞれの要望から考えた結果、『リターニア』の後に『ラテラーノ』に行くことになったけど、どこまで進められるか楽しみだ。
ちなみにその途中で行けそうな『シラクーザ』という国については、また今度にすると決めている。
マフィアがたくさん居る……というか、社会のシステムに組み込まれているらしい。それってどんな社会?
興味はあるけど荒事は『ウルサス』で経験したばっかりだし、しばらくはゆるゆると進めたい気分なのだ。
「モスティマ達もまだ帰って来てないし、とりあえずは資源採取と会話イベントの消化かな」
失敗から学習した俺は、『ウルサス』の時のように勝手に侵入したりはしない。
『ラテラーノ』の公的な立場に居るモスティマ達にお願いし、『リターニア』のどこかの都市と接触することと、横断して『ラテラーノ』に向かうことの許可を、『リターニア』の主要都市に貰いに行ってもらっている次第だ。
『ノア』との交流要員として派遣されてきた彼女達にお願いする内容では無いかもしれないが、彼女達──特にモスティマがやけに協力的だったので、甘えさせてもらっている。
これを理由に『ラテラーノ』との交流の際に、要求とかをされるかもしれない。覚悟はしておこう。
「『260日目』。もう少しで9ヶ月……」
キャラクターとの会話とかで得た情報によれば、この世界には訪れていない国がまだまだあるらしい。
ゲーム時間でこれだけかかっていると、全部回るには数年単位だし、実際のゲーム時間も数ヶ月は下らないだろう。
そこまで長いとどこかで絶対飽きが来るという確信はあるが、それまでは楽しもうじゃないか。
『オーナー! 聞いて聞いてー!』
ゲーム画面では、祠の近くに居るケオベがいつものごとく元気な声を発している。
その姿に癒されて、俺の頬は緩むのだった。
≪Tips≫
≪『祭壇』の利用には最適化が必要です。誘導を推奨します≫
≪学習対象『共感』を持つネームド『レミュアン』が範囲内に居ません。対象を範囲内に置いて下さい≫