箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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リターニア①/45日目

 

 

 交渉に行っていたモスティマ達が、領主が発行した許可書と共に戻って来た。これで心置きなく領地に進入が出来る。

 

 それから2日ほどかけて移動をしてみれば、ゲーム画面には『レユニオン』よりも大きな移動都市が姿を現した。

 モスティマ達曰く『ヴィセハイム』という移動都市らしい。

 

 『滞在の許可が出たのはアフターグロー区。感染者の待遇を考慮して作られた≪感染者区画≫らしいよ』とは、モスティマの談だ。

 

 そういえばこのゲーム、感染者とか、あと種族だとサルカズとか、かなり差別されているらしいのだが、今まで巡ってきたところではそういうのを殆ど見たことが無い。

 感染者に関しては『ノア』において多数派なのでいいとして、サルカズがそれなりに居る件については住民の代表に聞いてみたが、特にトラブルなども起こっていないようだ。

 

 そうなると俺としても、実感が薄いのが現実となる。

 

 余談だが、『ところでそういった事が起きた際は、どう対処致しましょう?』と聞かれた際には、「起きないのが理想だけど、頭を冷やす意味を込めてノアを一旦出てもらう」と答えておいた。

 『ノア』って一種の閉鎖空間とも取れるし、落ち着くまでは外に出て一度離れた方が良いと思っての発言だ。怒りとかの感情って持続しないらしいし、すぐに戻ってくることにはなるだろうけど。

 

 代表が真剣な顔で『……かしこまりました。住民達に伝えておきます』と言っていたから、俺の回答も悪くないものだったに違いない。

 

 

『リーヴァ、ビガロ、準備はいいか?』

 

『はい、フロストリーフさん!』

 

『僕も何時でも大丈夫です』

 

 

 可能な限り『ヴィセハイム』には近付いたが、防衛の関係で離れた場所に『ノア』を停めなければならず、多少ではあるが徒歩で向かう必要がある。

 『ノア』を降りたメンバーは、行く前の最終確認を行っていた。

 

 

『感染者区画はいくつかの移動都市に点在していると聞きました。ニアールさんとリズさんの情報を集めて、確かな情報が見つかれば迎えに行きます』

 

『……しばらくの間別行動になりますが、オーナー? 大丈夫ですか?』

 

 

 シャイニングの顔はとても心配そうなものだった。何となく、幼い頃遠出をする際に玄関でしきりに話しかけてきた母の事を思い出してしまう。

 「大丈夫です。何も起きませんよ」と返してみたが、『……オーナーが何かを起こさないかが心配です』と言われてしまった。何でだろう、信用されてないのかな? 

 

 別行動のシャイニングを除いて、今回向かうメンバーは『フロストリーフ』『リーヴァ』『ビガロ』『レミュアン』の4名だ。

 

 何も起きないとは思うが、万が一に備えて『ノア』の戦力は残しておきたい。

 ケオベとサガも交えて話し合ってもらった結果、フロストリーフが選ばれた。本人も音楽に興味があるようで、傍目から見ても楽しそうなのが分かる。

 

 リーヴァとビガロについては、住民の代表から申し出があって加えた、ネームドでは無い者になる。

 『ノア』にだけ居て外の世界を知らなければ、遅かれ早かれ集団として生きていく上で問題が起きる、と彼は言っていた。

 

 もっともな意見だと思うけど、このゲーム、妙なところでリアルである。

 まあ今回の滞在期間は1~2週間で短めだから、何か得られるものがあることを祈ろうか。もしかしたらレシピとかが解放されるかもしれないし。

 

 

『二人とも、滞在中は私とフロストリーフから離れないようにね?』

 

 

 レミュアンに関しては、足の治療のお礼ということで自ら志願してくれた。

 ラテラーノでの仕事柄、いろいろと慣れているらしいので、お言葉に甘えて頼らせてもらうことにした。

 

 またリーヴァとビガロに関しても、妹が居るので子供の世話も大丈夫とのこと。何とも頼もしい。

 ちなみにモスティマも同行したがっていたが、フィアメッタから止められ、最終的には残念そうにレミュアンにお土産を要求していた。

 

 『ノア』の上部から手を振る住民の子供達に見送られながら、一同が『ヴィセハイム』へと向かっていく。

 移動方法は、モスティマ達が『ノア』に来る際に乗っていた車だ。

 

 

「……着くまでの間、暇だな」

 

 

 スキップなどのポップアップが出ないということは、待つしかない。

 

 ──そうだ、この間に最近住民達が不調になっている原因を調べてみようか。

 

 

 

 

 

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 『アフターグロー区』に着き、ゲーム画面に街並みが映される。

 

 舗装された地面。

 石やレンガで出来た建物の数々。

 道路があり、車も行き交っている。

 歩く人々もきちんとした服装をしており、何処からか楽し気な音楽さえも聞こえてくる。

 

 そして中央の広場らしき所には、かなり前衛的で巨大な建造物が鎮座していた。

 

 

「ぶ、文明がある……!?」

 

 

 『バベル』や『レユニオン』、後は移動中にあった村の数々。

 それらと比べて一目で分かる、文明の違い。

 

 あまりの光景に、俺は言葉を失ってしまった。

 

 ……『ノア』の建造物よりも数段上じゃないか! 

 やばい、住民に移住されてしまう!

 

 

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