箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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リニューアル/10日目

 

 

 ゲームを始めて10日目。

 毎日のプレイ時間はまちまちだが、今日は休日なのでガッツリ遊ぶことが出来る。

 

 

「今日こそ貯まった資源で拠点をリニューアルだ」

 

 

 このゲーム、今のところ楽しく遊べているが、不便な点が無いわけではない。

 

 

 一つ目が、作製や料理、建築のメニューを開いている間も、ゲーム時間が進行する点だ。

 

 

 ポップアップするメッセージやネームドキャラとの会話選択肢が出ている間は時間が進まないので、じっくり読んだり考えたりが出来るのだが、拠点を整えようとすると、配置を迷っている間に何日か経ってしまうことがあるのだ。

 

『ノア』を移動させている間と住民達が全員就寝した後の夜の間は、退屈を防ぐためなのか時間の進みが通常より早く設定されているようで、日中の時間を含めても大体15分程度で1日が終わってしまう。

 

 この前も作製物のテキストを一通り見ている間に、3日経過してしまっていたことがあった。

 住民達の行動方針は事前に設定していたので、資源回収や物資の作製は問題なく行われていたのだが、住民達のステータスに『不安』『焦燥』というバッドステータスが追加されていた。

 

 詳細を確認したところ、放置時間が長過ぎたことが原因らしい。

 

 行動方針は設定していたのに、何が放置と判定されたのかは未だによく分からないが、作業効率が落ちていたことは明らかだったので、それからは出来るだけ気を付けるようにしている。

 

 

 そして二つ目が、作製物は解体や撤去などをしても資源に戻ってくれないという点だ。

 

 

 この二つ目が個人的にデカい。

 更に言えば設置や建築をした場所から移動させることも不可能なので、邪魔な場合や無駄になっている場合でも、解体や撤去が必要になる。

 

 この点がかなり不便で、俺のリニューアルの手を躊躇わせたのだ。

 

 

「──完成図も作っておいたからな。これで『ロドス』とかいう組織との接触も大丈夫だろ」

 

 

 表計算ソフトで作成した拠点の完成図を広げ、ゲーム画面との縮尺を合わせる。

 

 こういうのはキッチリ計算してから配置しないと、気になってしまうのが俺の性分だ。

 左右対称までは気にしないけど、建築物の種類だったり向きや間隔にはこだわりがある。

 

 

「そろそろ皆が起きる頃合いだし、準備準備……」

 

 

 ゲーム画面の『71日目 夜』の表示が『71日目 朝』に切り替わる。

 

 

『オーナー、おはよー!』

 

 

 いの一番に住居から飛び出したケオベが、祠に走ってくる。ボイス付きのテキストメッセージは、今日も元気一杯だった。

 

 彼女が住み着いてからゲーム内時間で1カ月以上が経つが、襲撃イベントは俺が補助をするとはいっても一人で勝利するし、レア生物っぽい『金砂晶蹄獣』というやつも難なく狩ってしまうしで、戦闘に狩猟にと大活躍である。

 住民達からの評価も高く、食料を人一倍以上に消費することに目を瞑れば、最高のキャラクターと言って良いだろう。

 

 

 あと、彼女のおかげで住民とネームドが増えてくれたので、その点でも感謝している。

 

 

 

『今日は何をすればいい?』

 

 

 他の住民と違って、ネームドは指示を出さないと勝手に行動するようだ。ちなみに指示を必ず聞いてくれる訳でもない。

 いつもなら採取組の護衛か狩猟をお願いするのだが、今日は『ノア』のリニューアルをするつもりなので、待機を命じる。

 

 

『分かった! おやすみー!』

 

 

 そう言って祠の近くで寝てしまうケオベ。よくあることなのでこのまま放っておく。

 

 続くように、他の住民達が住居から出てきて、祠の方へと歩いてきた。寝ているケオベを一瞥した後、挨拶のテキストメッセージが現われる。

 選択肢は出ないけど、テキストメッセージをクリックすると住民達がお辞儀をして去っていくので、ゲームの内部的には何かしらの会話処理が行われているのかもしれない。

 

 去っていく住民達や新たに出て来た住民達をドラッグし、まとめて待機の指示を出す。

 

 何回か続けたところ、一部の住民のステータスが『不安』に変わった。

 

 

 

 ……いや、何で? 

 

 

 

 

 

 ────────

 ────────

 

 

 

 

 

『ノア』の上部、その四方を囲うように『都市様式障壁』が建設され、その内側に『防衛施設』と『堅牢な台』も建設される。

 この三重構造には外側から順に、『迷彩』『防御』『高台』としての役割があるのだが、『ノア』の表面から光を伴って現れる建築物という光景に驚く住民達は、多くがその意図には気付けない。不思議な光景にただただ驚くだけである。

 

 

(『アーツ』のようだけど、こんなに大規模なものは初めて見た。人一人が扱えるような規模じゃないはずだけど、この『ノア』が一種の『アーツユニット』と仮定すれば……)

 

 

 その『多く』に属さない内の一人、『サンクタ』と呼ばれる頭上に天使のような輪を持つ種族と『サルカズ』と呼ばれる悪魔のような角と尻尾を持つ種族の、両方の特徴を併せ持った青髪の女性が、次々と現れる建造物を見てその目を細めた。

 

 

(一番外側の建造物、私の認識を阻害しているのかな? 見えているはずなのに、途中から見えなくなった。それに何となく『通ったり乗り越えたり出来ない』気がする)

 

 

 今はもうその内側に建てられた『防衛施設』と『堅牢な台』のせいで、彼女──『モスティマ』からは物理的に見えないが、その推測は当たっている。

 訳も分からず強制的に迂回させることが出来る『迷彩』が掛けられた建造物の特性を看破する辺り、彼女の能力の高さが窺えた。

 

 モスティマは、つい数日前にこの『ノア』を訪れた者だ。

 多くは語らず、『ラテラーノ』という国の出身で『トランスポーター』──運び人をしているとだけ、自己紹介した。

 

 職業柄様々な都市や場所、物を目にしてきたモスティマでさえ、このような拠点は初めてだった。

 

 

 外周の構築が完了したのか、内側の建造物が祠を残して一斉に消滅し、新たな住居や栽培施設、設備や道具が産み出されていく。

 

 

「やはりノア様は私達の神様なんだ……」「おうち、前のより大きい!」「何だよこれ……俺は夢でも見てんのか……?」「ひっ……!」

 

 

 住人としての時間が長い者は感謝を、まだ短い者は困惑と恐怖を。

 そんな住民達を横目に、彼女の頭の中は考え事で一杯だった。

 

 

(さて、私はどうしようかな?)

 

 

 彼女がここを見つけたのは偶然の産物だが、無視をするにも深く関わるにも、面倒事が纏わりつく。

 いっそ報告だけしてしまえば楽なのだが、そうなれば今度は『どちらに報告するか』という問題が生まれてしまう。

 片方にだけすれば後々もう片方からの追及があることは想像に難くなく、かといって両方に報告すれば争いは避けられないだろう。

 

 

(私が原因で争いが生まれるのは本意じゃないなぁ……)

 

 

 そうなると、どちらにするか。

 

 

(……オーナーとやらに直接聞いてみるか)

 

 

 仕事の関係上、これ以上ここに滞在するのも難しい。そろそろここを発たなければならない。

『ノア』の管理人──『オーナー』と呼んで欲しいと言っていた──に、どうして欲しいか決めてもらおう。

 私が勝手に決めてしまうことには、少し罪悪感があるから。

 

 モスティマはそう結論付け、新しい住居に道具を運んでいく住民達の流れに逆らって、祠へと向かっていった。

 

 





≪Tips≫

『住民詳細』
評価  : 感謝 崇拝 不安
好感度 : 大人①→信仰 大人②→良好 大人③→普通
      子供①→良好 子供②→普通
      老人→信仰
ネームド: ケオベ 40%
      モスティマ 10%
      サガ 10%

『発展度が基準を満たしました。特定の人物が拠点に居るため、条件を満たすとロドスとの接触が発生します』

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