箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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リグレット/10日目

 

 

「──リニューアル完了! 思ったよりも早く終わったなー」

 

 

 画面の、新しい住居に向かっていく住民達を眺めながら、一仕事を終えた余韻に浸る。

 もしかしたら2日くらいかかるかもしれないと思っていたのだが、事前の準備と段取りが上手くいったおかげか、ゲーム内時間はまだ夕方だった。

 

 

『オーナー、ご飯はー?』

『たくあん漬け、納豆ご飯、油揚げ……』

 

 

 住民達や道具を全て外に出して作業をしてしまったため、朝食と昼食は全員『無添加エナジードリンク』で我慢してもらった。

 住民達のステータスに特に影響は無かったが、うちの食いしん坊ネームド達──ケオベとサガに関しては、『無添加エナジードリンク』のみというのは不満が残るものであったらしい。

 

 クリックしてステータスを確認すると、『幸福値』にデバフがかかっていた。

 

 

「少し早いけど、住民に夜ご飯の作製をお願いして……ん?」

 

 

 近くに居た住民にお願いし、快く承諾してもらう。

 その住人に着いていった2人を見送ると、当拠点最後のネームドであるモスティマが、祠に近付いて来ていた。

 

 

『オーナー、少しお話があるんだけど……良いかな?』

 

 

 選択肢の『構わない』を選ぶと、モスティマがいろいろなことを語り始めた。

 

 

『ラテラーノ』『レガトゥス』『ペンギン急便』『エンペラー』……。

 

『ラテラーノ』はモスティマの出身地で、『レガトゥス』っていうのは何だ? 

 

 ……『ラテラーノ』における『トランスポーター』の組織? ふーん、モスティマはそこで働いているのか。

 

 え? 『ペンギン急便』の『エンペラー』の下で働いている? いやこの世界にもペンギンっているのか。それにボスの名前が『エンペラー』って、合わせると皇帝ペンギンじゃん。

 

 うーん……、どちらかに報告しなきゃいけないって言われても、判断材料が無いんだよなー。

 

 

 専門用語が多く詳しくは理解できなかったが、多分モスティマは『レガトゥス』と『ペンギン急便』でダブルワークをしていて、この『ノア』のことをどちらにどう報告すればいいか迷っているということなんだろう。

 

 貿易みたいなことが出来るかもしれない、と考えれば、少しワクワクする。

 でもどちらが良いか急に聞かれてもな……。

 

 

「判断基準……タスクを優先するか?」

 

 

 ゲーム画面の左上、重要なタスクが表示されるその場所には、当初『ノアを発展させよう』という文字があったが、少し前から『ロドスと接触しよう』という文字に変わっている。

 

 ロドスとの接触への足掛かりになる方を選ぶのも良いかも知れないと思い、彼女に尋ねてみるが、彼女の返答は『名前は聞いたことがある』というものだった。タスクにはあまり関係しないのかもしれない。

 

 さて、どうしたものか。そう考えた矢先、彼女の口から俺の興味を引く言葉が飛び出した。

 

 

「『ペンギン急便』の本拠地は『龍門』……!? もしかしてこの『龍門幣』が使えるようになるんじゃないか?」

 

 

 襲撃イベントでコツコツ貯めていた『龍門幣』、それがようやく日の目を浴びる時が来たのかもしれない。

 報告先を『ペンギン急便』に指定し、『ノア』の印象を良くするため、モスティマにお土産を持たせることにする。

 

 移動時間が分からないため、食料関係は駄目。資源はまだ残っているが、資源そのものはシンプルに重くて彼女に負担をかけることになるから駄目。

 

 

 

 となると、こちらから渡せるのは『薬関係』だな。小さくて持ち運びがしやすく、薬の効能でこちらの技術レベル的なことも分かって貰えそうだし、良い選択だと思う。

 

 こういうのは最初が肝心だから『鉱石病予防薬(高級)』と『救急キット(高級)』をいくつか渡しておこう。

 住民用に作っておいた虎の子だが、子供達への薬は足りているし、襲撃はケオベとサガが居れば大丈夫だ。問題無い。

 

 

『……手土産、ね』

 

 

 ……何だかモスティマが驚いたような顔をしている。

 

 これ、どっちの意味の驚きだろう? 

 

 このアイテムだと技術レベルが低い、とかじゃ無いと良いなぁ。

 

 

 

 

 

 ────────

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「やあ、『苦難陳述者』。お願いがあるんだけど良いかな?」

 

「私の監視も大事だと思うけど、こっちも重要なことだと思うよ」

 

「はい、これ。あの移動都市の主から、手土産だってさ」

 

「他? ……いや、私が貰ったのはこの『救急キット』だけだよ」

 

「どんな物なのかはこの用紙に書いてあるって言ってたけど……本当なら大変だね」

 

「……ラテラーノで試してみて欲しい。効果が実証されたら、レミュアンに使って欲しいんだ」

 

「私は龍門に行かなきゃいけないからよろしくね、『苦難陳述者』」

 

 





≪Tips≫

『住民詳細』
評価  : 感謝 崇拝
好感度 : 大人①②→信仰 大人③→良好
      子供①②→良好
      老人→信仰
ネームド: ケオベ 40%
      モスティマ 15%
      サガ 10%

『鉱石病予防薬(高級)』
≪『ノア』にて作製された薬。従来の予防効果は向上し、『血液中源石密度』を少しだけ下げる効果がある。ただし鉱石病に罹った者を治すことは出来ない≫

『救急キット(高級)』
≪『ノア』にて作製された薬。本来は装置だったが、改良が加えられ持ち運びがしやすい薬タイプになった。細胞を活性化し、肉体と精神を回復させる効果がある≫



『条件を満たしました。ロドスとの接触が発生します』

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