箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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オーナー②/20日目

 

 

 何だかよく分からないアーツとやらが自分に備わっていることを知ってから早十日。

 

 体調もすぐに良くなったので日雇いの仕事を再開しつつ、空いた時間でテレジアと共に実験や検証を繰り返した結果、やっぱりよく分からない、ということが分かった。

 電気や熱、それと光を発生させられることまでは判明したのだが、テレジアによれば不可解な点がいくつもあるらしい。

 

 その中でも大きな疑問点が二つ。

 

 まず一つ目。

 発生範囲がとても狭い。

 

 電気は直接触れている間だけ、ランタンなどの道具を起動させることが出来た。一応ではあるけど、源石電池をしばらく握っていたら充電のようなことも可能だった。

 

 熱も水を使って確かめたところ、こちらもやはり触れている間だけ温めることが出来た。どこまで出来るか試したのだが、沸騰したお湯で火傷してしまった。

 

 そして新たに判明した光に関しては、全身が眩く発光した。急に出来てしまったので、近い場所に居たアスベストスさんに「眩しぃんだよっ!」とはたかれてしまった。

 

 沸騰させるだけの熱量があるのに、その熱量自体ではなくあくまで沸騰したお湯によって火傷を負ったことから、体内あるいは体表までがアーツの発生範囲かもしれない、とテレジアは言っていた。

 

 火に関するアーツや電気に関するアーツを使用する者は居るが、そういった者は自身のアーツで火傷や感電をすることが基本的に無いらしい。

 ただ周囲の温度が上がることで火傷を負うことはあるし、水辺で使用すれば感電することもあるとのこと。

 

 正直難しくてよく分からなかったが、アーツそのものは影響が無いが、それによる副次的効果は自身にも影響がある、ということだろうと考えることにした。

 

 

 そして二つ目。

 エネルギー源が不明。

 

 アーツユニットならば組み込まれた源石、感染者ならば自身の源石を媒介してアーツを発動するのだが、長時間のアーツ使用でも一向に俺が疲弊も何もしないことが異常らしい。

 体内に恐ろしく大きい源石があるという可能性も考えられるが、普段の様子は感染者のそれには見えないらしいので、こちらの可能性は限りなく低いとのこと。

 

 アスベストスさんに実験動物の線もあると忠告されていたこともあって、これからどう過ごすべきなのかをテレジアに聞いてみたのだが、もしもの場合は、感染者と見做されるかもしれないが熱関係のアーツ使用者だと偽った方が良いと言われてしまった。

 

 アーツを使用出来ること自体を隠した方が良いのでは? 

 

 そう聞いた俺に対し、テレジアは困ったような表情を浮かべて何も言わず、アスベストスさんには呆れたように「無理だろ」と返されてしまった。

 

 簡単にバレるようなことをする奴だと見くびられている……! 

 

 そう思った時期が俺にもありました。

 

 

「おう、おはよう。今日も早いな。いつもの頼むよ」

 

「おはようございます。じゃあバケツ借りますね」

 

 

 早朝、小屋を出た俺に挨拶をしてくる他の労働者達。

 俺が出て来たことに気付いたのか、遠くに居た人達も、各々が桶やバケツなどを持ってこちらへと向かって来る。

 

 中に入っている水、あるいは一杯の雪に手を突っ込むと、程無くして湯気が立ちお湯が出来上がった。

 

 はい、一週間くらい前に普通に周りの労働者達にバレました。

 湯気が立つお湯を捨てようとしたところで絡まれてしまって、仕方なく。

 

 

「へぇ、お湯をそんなに使えるなんて羽振りが良いな」

 

「いえいえ、今日は偶々ですよ」

 

「でも昨日も一昨日も捨ててただろ?」

 

「…………えーとですね」

 

 

 確かこんな感じの流れだった気がする。

 

 あわよくばちょっと使わせてもらいたい、というくらいの気持ちで話し掛けたのだが、あんなにも隠し事が出来ない奴は初めて見た。とは、後にその人に聞いた話である。

 

 でも更に聞いてみれば、少し前から女二人組──それも鉱石病感染者に混じって生活している子供が居るということで、周囲では度々話のネタにされていたらしく、見かけた時は注目していたとのこと。それが原因とも言えるので、ここは連帯責任としても良いと思う。

 

 ちなみに周囲にバレたことを伝えた時、テレジアもアスベストスさんも「やっぱり……」というような表情をしていた。俺は何も言えなかった。

 

 そしてこのことが日を追う毎に周りに広まり、今に至る。

 

 

「やっぱりお湯だと身体を拭くのも楽だよな」

「洗濯もお湯の方が断然良い」

「水を汲みに行かなくて良いのも気に入った」

「ありがとな、助かるよ」

 

 

 嬉しそうに去っていく人達を見送って、俺も小屋へと戻ることにした。

 

 現状はアーツに関して深く追及されたりもしていないし、悪いことばかりではない。

 毎回、という訳ではないが、お礼代わりに何か貰うこともあるからだ。

 

 

「……今日は保存食と干し肉か。良い物貰ったな」

 

 

 時間を喰ってしまったが、早く戻って準備をしよう。

 

 今日はこのイェラグの玄関口とも呼ばれている『トゥリクム』に、一人でお使いに行かなければいけないのだから。

 

 

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