ただ今の時刻は夜11時。ゲーム内の時間は『100日目 昼』。
休日だから長時間プレイしていたけど、そろそろ俺の体の方が限界だ。
明日は普通に仕事だし、この辺りで今日は終わりにしておこう。
「ようやく100日目かー……」
モスティマが『ノア』を出発してから、何かイベントが起こるかもしれないと思って待ってみたけども、ゲーム内で約1ヵ月が経っても音沙汰は無く、資源回収と襲撃イベントをこなすだけの日々が続いた。
とはいっても新しい建造物や装置、薬なども生産出来るようになったし、住民や新しいネームドも増えたため、退屈な時間ではなかった。
「でもそろそろ新しい要素が欲しいな」
モスティマが去った後、メニューに『貿易』の欄が出現していたので、今はそれが使えるようになるのが楽しみの一つだ。
……一応もう一つ、新しいメニューが増えてはいたんだけれども、そちらは何となく選ぶ気になれていない。
「『襲撃』……キャラロストあるよな、多分」
起きるばかりであった『襲撃イベント』を、こちらから起こすことが出来るコマンドだ。
襲撃対象は移動範囲内の村や砦となっており、予想される報酬は採取等では入手不可能な各種資源や開発レシピの解放などと、かなりのものとなっている。
『ノア』に登録されたネームドが『5人目』を迎えた時に、ポップアップと共に解放された要素なので、ネームドの数も今後重要になるのかもしれない。
正直に言うと一度くらいは試してみたい。が、キャラロストの危険性を差し引いてもデメリットが多過ぎる。
・発展度の減少
・評判低下の可能性
・ネームドの好感度減少及び一部ネームドの参加不可
・『良好』未満の住民のバッドステータス追加
これらは一例で、他にもいくつかのデメリットがある。
あからさまに推奨されていない辺り、略奪などの残虐行為は基本駄目ということなのだろうか? 『ノア』にはそれなりの頻度で『襲撃』が起こっているというのに……。
「まあ資源は貿易でも入手出来るみたいだし、レシピは発展度の方でコツコツ解放していけばいいか……」
一刻も早くゲームクリアしたい、という訳ではないし、ゆっくりプレイする方が俺の性に合っている。
「──お、出来た出来た」
とある道具の作製が、ちょうど終わる。
文字を刻んだ小さな鉄板に鎖を通したドッグタグのようなもの──『ノア』における住民票だ。
効果は住民のやる気アップとささやかなものだが、100日目記念としては悪くないだろう。
ネームドの分は作製不可で、資源が思ったより必要だったので、初期の住民の分をとりあえず作った。残りの住民の分は余裕が出来たらにしよう。
「へー、こんな名前だったんだ」
ネームドと違って住民達には名前が表示されていなかったが、どうやら作製したドッグタグにはそれぞれの名前がちゃんと記されているらしい。
感謝の言葉を述べる住民達のテキストの上に、名前が表示されるようになっていた。
……統一性が無いから凄く覚え辛い。他の住民のことも考えると、初期組を覚えるので精一杯かな?
ただの住民達とはいえ、何十時間もゲームをプレイしていれば愛着の一つも湧くものである。あまりの喜びように、俺も思わず嬉しくなった。
なおも止まない感謝のテキストを一通り眺めた後、俺はゲームを閉じてパソコンの電源を落とす。
今日は良い夢が見れそうだ。
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『────』
祠から自分の名前を呼ばれ、恐る恐る足を踏み入れる。
その中心には、鈍く光る装飾品が置かれていた。
『 コレカラモ ヨロシク 』
手に取ってその表面を見れば、名前と『ノアの住人』の文字。
今まで一度も名前を呼ばれたことは無かったが、ノア様はちゃんと知っていたということだろう。
与えられたものに対して返すことが出来ているか不安だったが、認めて貰えたということだろう。
「──あ、ありがとう、ございますっ……!」
膝を折り、その小さな、しかし確固たる証を、強く握りしめる。
恐怖は今でもある。
だがそれ以上の安堵と感謝が、私の中に確かにあった。
≪Tips≫
『住民詳細』
評価 : 感謝 崇拝
好感度 : 大人①→心服 その他大人→信仰
子供①→信仰 その他子供→良好
老人→信仰
ネームド: ケオベ 60%
モスティマ 20%
サガ 30%
フロストリーフ 40%
シャイニング 15%
『ノアの住民票』
≪『ノア』にて作製された装飾品。名前と『ノアの住人』という文字が記されている。鉄を加工した簡素なもので、商業的価値は無い。しかし本人にとっては黄金に勝るものだろう≫
『条件を満たしました。ロドスが向かっています』