箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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シエスタ②/67日目

 

 

「うーん……」

 

「ミヅキさん、何か分かりましたか?」

 

「ううん、でももう少しだけ触ってても良いかな?」

 

「それは構いませんけど……やっぱり偶然だと思いますよ?」

 

「僕もそうは思ってるんだけど、ここまで似ていたらちょっとね……。ねぇオーナー、もう一度聞くけど極東出身じゃ無いんだよね?」

 

「そうですね、極東出身では無いです。そもそも行った事も無いくらいです」

 

「そっか。…………でもやっぱりこの感じは『同類』な気がするんだけどな……」

 

「同類? もしかしてミヅキさんもエルフなんですか? 普通の耳のように見えますが……」

 

「……エルフ? いやオーナー、君はきっと僕と同じ──」

 

 

 

「──おいオーナー、そいつは誰だ?」

 

 

 

 

 

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「──という訳で、こちらのミヅキさんと知り合いまして……」

 

「よろしくね、アスベストスさん」

 

 

 呼び掛けた後、俺とミヅキさんの顔を交互に何度も見て愕然としていたアスベストスさんに簡単な説明と紹介をすると、何か言いたげな顔をしつつも彼女は一旦落ち着いてくれた。

 

 簡単な説明、とは言ったが本当に簡単なものしかしていない。

 

 というのも、同じ顔だなんて珍しい! 何かの縁だと思うから仲良くしよう! というような感じでミヅキさんの勢いに流されてしまっただけで、大した関係はまだ築いていないからだ。

 アスベストスさんが来るまでの間も特に何かが有ったという訳ではなく、お互いの事を話したり、ミヅキさんに俺の手とか腕とか顔とか耳を触られていただけだ。

 

 ……まあ初対面でこっちの身体を触ってくるのは正直どうかと思ったけど、敵意とか害意も感じなかったし、俺もこの身体とこの顔だという自覚が薄いからそうしなかっただけで、自分とそっくりな人が居たら触って本物かどうか確かめたくなる気持ちは分かる。

 

 

「……オーナー、血縁者じゃねぇんだよな?」

 

「その気持ちは分かりますが違います。他人の空似ですね」

 

「空似?」

 

「全くの偶然、ということです。ほら、同じ顔の人は3人は居るとも言いますし、おかしい話では無いと思いますよ」

 

「そんな話は聞いたこともねぇけど……そういうもんか」

 

 

 アスベストスさんに手招きされて近付き、肩を組まれ顔を寄せ合って、ミヅキさんには聞こえないように小声で話し合う。

 

 髪が短めであること。

 黒目黒髪であること。

 声の質が違うこと。

 耳の形が違うこと。

 

 相違点を挙げればこれくらいしか無く、それ以外は背丈も含めて殆ど同じなのだから、血縁者を疑うのはむしろ当然のことだろう。

 そういうもんか、と、口では言っているが、アスベストスさんの瞳には結構な疑念が残っているのが分かった。

 

 ちなみに俺としては血縁者じゃ無いことを祈るばかりだ。

 まだまだ不思議が多いこの身体、もしかしたら他の誰かを俺の意識が乗っ取っているかもしれないというのは、その誰かに対して申し訳無さしか出て来ないからだ。

 

 ミヅキさんの方を振り向くと、彼はニッコリと笑顔を見せた。

 

 

「話し合いは終わったかな? もし良ければオーナーともっとお話ししたいんだけど……」

 

「あたしに聞くな。あたしはこいつの保護者じゃない」

 

 

 それを聞いたミヅキさんの視線が俺へと向く。

 言葉は無いが、「君はどうしたい?」と聞いて来ているのだろう。

 

 ……どうしよう? 

 彼とお話をするのは、気持ち的には全く問題無いんだけど、俺自身の事情が事情だから、会話の途中でいろいろと躓くのが想像出来てしまう。

 

 さっき少し聞いたのだけれど彼はこのシエスタに来て短い訳では無いらしいので、観光の案内をお願いして、それと並行する形なら間も保ちそうだし大丈夫だろうか? 

 

 

「街を歩きながらとかでも良いですか?」

 

「もちろん大丈夫だよ。オススメのお店もあるから、一緒に行こっか。アスベストスさんもどうかな?」

 

「……今日のところは着いてってやる」

 

 

 ミヅキさんの提案に、アスベストスさんは少し間を置いてからそう答えた。

 視線が俺に向いていたので、恐らく安全かどうかを確かめようとしてくれているのだろう。やっぱり根が優しいよ、この人。

 

 

「よし、それじゃあまずはあっちのお店に行こう! 美味しいスイーツがあるんだ。その後は……ねぇオーナー?」

 

「はい、何ですか?」

 

「ゲームって、興味有る?」

 

「あります!」

 

 

 何と、この世界にも『ゲーム』があるらしい。

 

 ……楽しみだけど、どうか『生息演算』みたいなゲームじゃありませんように!

 

 

 

 

 

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「──うん、観光都市なだけあって、スイーツの水準が高いわ」

 

「レミュアン、よくそんなに食えるわね……。…………モスティマ? どうかした?」

 

「……フィアメッタ、あれを見て」

 

「ただの客──ああ、顔がそっくりね。双子か兄弟とかじゃない?」

 

「珍しいけれど、何か気になる事でもあるのかしら、モスティマ?」

 

「……いや、何でも無いよ、レミュアン。それ、一口貰っても良いかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何となくだけど、気になるんだよね)

 

(あの水色の子も普通じゃない感じがするけど、黒い子の方……)

 

(……一応聞き耳を立てておこうかな?)

 

 

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