箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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秒読み/67日目

 

 

「──今日はいろんなことがあったな」

 

 

 ホテルの自室にて、疲れから早めにベッドへと入ったのは良いものの、中々眠りにつくことが出来ず、俺は閉じていた目を開いた。

 暗闇に慣れてしまうくらいには寝ることが出来ていなかったようで、視界には天井の模様がぼんやりと広がっている。

 

 スマートフォンらしき通信端末がこの世界にもあることを知って。

 双子かと思ってしまうくらいに顔が似ているミヅキさんと出会って。

 甘味を食べて街を散策しながら、ゲームショップに行くことも出来た。

 

 ゲームショップのラインナップは俺が知っているモノよりも世代がいくつか昔のモノだったが、どこかで見たことが有るようなゲームもあったことには驚いた。

 例え発祥の地が異なるとしても用途が決まっている道具等は、洗練された形が似たようなモノになっていくというのを何かで聞いたことが有るし、今日見たそれらの似ているゲーム達も、同じように生まれたものなのかもしれない。

 

 どちらにせよ久しく触れていなかった娯楽。

 機器を持っているというミヅキさんと遊ぶ約束も出来たことだし、明日が楽しみだ。

 

 

(でも、一応不安はあるんだよな)

 

 

 思い出すのは、スイーツショップでのこと。

 双子に見える、ということもあって周りの人達が、好奇心を筆頭に様々な感情を向けてくるのは仕方の無いことだと分かるんだけど、その中に明らかに違う感情が含まれていたことだ。

 

 敵意とかの悪い感情では無かったけれど、何となく観察や監視をされているような気分になった。

 人が多過ぎて特定も出来なかったし、その後のゲームショップではより微弱なものになっていたので、意図も目的も検討が付かない。

 

 シエスタには来たばかりだし、この世界に知り合いなんてもちろん居ないから、尚更不思議だ。

 テレジア関係かもしれないから一応本人に報告はしたけど……。

 

 

「…………分からん。寝よ」

 

 

 部屋の壁──テレジア達の部屋が有る方を見てから、もう一度目を閉じる。

 

 テレジアとアスベストスさんはそれぞれ別部屋だ。

 「今日は疲れたでしょう? 早く休んだ方が良いわ。おやすみなさい」と言われて俺は自分の部屋に来てしまったけれど、二人は何やら話し合いを始めそうな様子だった。

 

 ……気になるから明日になったら聞いてみよう。

 

 日中と違って、無遠慮に伝わってくる感情も無い。

 それに久々に頭の中で旋律が鳴り響いてくれている。

 

 うん、やっぱりこの旋律は落ち着く。良く眠れそうだ。

 

 

 

 

 

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「テレジア、どう思う?」

 

 

 オーナーが部屋を出て行った後、少し間を置いてからアスベストスは尋ねた。

 尋ねられたテレジアは、眉間に少し皺を寄せて難しそうな表情を浮かべる。

 

 

「聞いた限りだと私の関係の線は薄くて、考えられるのは『ノア』の関係者の線だけど……直接接触して来ない理由が分からないわね」

 

「あたしとミヅキって奴が居たから警戒したんじゃねぇか?」

 

「可能性はあるけど、どうかしら? 姿を見せてオーナーの反応を見たり、取れる方法はいくつかあったはずなのに、何もして来ないのは意図が読めないわ」

 

「……明日以降、どうする?」

 

 

 アスベストスの言葉に、テレジアは瞳を閉じて黙る。

 しばらく時間を掛けてから、テレジアはようやく口を開く。その表情には不承不承といった気持ちが、ありありと浮かんでいた。

 

 

「ミヅキ、というお友達との約束もあるんでしょう? とりあえずは普通に過ごしてちょうだい。……私も一度会ってみたいけれど、しばらくは難しそうね」

 

「お前はどうするんだ?」

 

「変装用の衣服も準備出来たから、何か有った時のために近くで待機しているわ」

 

 

 そう言って、テレジアは荷物の中から質素な衣服を取り出した。

 このシエスタで用意したものなのか、住民達に問題無く溶け込めそうなデザインで纏まっている。

 

 

「目立つ訳にもいかないし、派手に動くことは出来ないから、もしもの時はオーナーを連れて安全な所に退避してね?」

 

「……面倒にならないことを祈っとくよ」

 

 

 アスベストスが溜息を吐く。

 

 彼女の祈りは、きっと届かない。

 

 

 

 

 

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「それで、そろそろ事情は話してくれるのよね?」

 

 

 シエスタに建ち並ぶ建物の一つ、その屋上。

 オーナー達が入っていったホテルを双眼鏡で眺めていたフィアメッタは、後ろで先程から考え事を続けているモスティマに、振り向かないままに問い掛けた。

 

 

「うーん、実のところ私も自信は無いんだけど……」

 

「へぇ、何割?」

 

「七割くらいかな?」

 

「あなたの七割は確信と一緒でしょ。早く話しなさい」

 

 

 ようやく振り向いたフィアメッタの視線は鋭い。

 その鋭い視線を曖昧な笑顔でいなしながら、モスティマは言葉を返す。

 

 

「何となく気になって、スイーツショップで彼等の会話を聞いたんだ」

 

「黒髪の子は、『オーナー』って呼ばれてた」

 

「シエスタには来たばかりで……その『オーナー』の目的地は『ノア』って言ってたよ」

 

 

 フィアメッタの顔が驚愕に変わり、次いで怒りを含んだものに変化していく。

 

 彼女は「そんな大事なことを何で黙って──」と声を上げようとしたが、それよりも先にモスティマが、遮る言葉を彼女に告げた。

 

 

「──フィアメッタ、君は『ラテラーノ』からの任務と『ノア』からの依頼、どっちを優先するべきだと思う?」

 

 

 

 

 

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「お疲れ様、サガ。……モスティマとフィアメッタ? ……ええ、彼女達は別件の用事があるって言ってたわ。何か用でも有るかしら?」

 

「いえいえ、ただ気になっただけでござる。特に用事などは無いですぞ」

 

「そう? それじゃあまた明日ね」

 

「レミュアン殿もお疲れ様でござる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、拙僧の勘は何か有ると感じているが……」

 

「Ace殿とScout殿に相談するとしよう」

 

 

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