箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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束の間/69日目

 

 

「あー、落ち着く」

 

 

 ホテルの自室、ベッドの上。

 

 昨日の歩き通しによって流石に疲れてしまった俺は、今日一日は部屋でゆっくり休むことにした。

 テーブルにはミヅキさんから借りたレトロゲームの類が積まれており、時間を潰すにはもってこいの環境も整っている。

 

 ……『明日は何処に行こっか?』と聞かれて、疲労感の強さから断った時のミヅキさんの顔、凄く残念そうだったな。

 でもすぐに何事も無かったかのように、『……これ、貸してあげるね』と言ってゲームを渡してきたし、案外気持ちの切り替えが早い人なのかもしれない。

 

 そういえばちゃんと返しに来るよう何度も念を押されたけど、あれは何だったんだろう? 持ち逃げされるかもしれないと思われたのだろうか? 

 ゲーマーたるもの、借りたゲームはちゃんと返す。常識だ。俺は小学校の頃借りパクしていった友達のことを未だに許していない。

 

 ……許していないけど、元の世界の人に会えるのならそんな奴でも構わないと思ってしまう辺り、大分郷愁の念に駆られてしまっているらしい。

 

 

「……ゲームするか」

 

 

 考えたところで、感じたところで、現実は変わりはしない。

 せっかくの休日を暗い気持ちで過ごしてしまうのは損でしかない。

 

 元の世界に居た頃のように、時間を忘れるくらいゲームに没頭してしまおう。

 

 

「俺一人だし対戦型っぽいゲームは除外して、っと」

 

 

 俺がホテルで過ごすことを知って、テレジアとアスベストスさんは一緒に出掛けてしまった。

 ……もしかしなくても、俺の存在が彼女達の行動を縛っていたということなのだろう。

 

 大変申し訳ないことをしてしまっていた。

 今日は二人ともゆっくり羽を伸ばして欲しいし、明日からは一人で観光などをすることも視野に入れなければ……! 

 

 そんなことを思いながら、ゲームの電源を入れる。

 元の世界で見たことのあるものに酷似しているゲームタイトルが現れ、軽快な音楽と共にゲームが開始された。

 

 

「いや、ミヅキさんのゲームスコア凄っ……」

 

 

 何度かプレイして、その差に驚かされた。

 ミヅキさん、相当なゲーマーだな……。

 

 

 

 

 

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「そこのお二人さん、ちょっといいかな?」

 

 

 オーナーから贈られた黒曜石のお礼を返すために外出していたテレジアとアスベストスは、後ろからのその声に振り返る。

 フードを被ってはいるものの、その頭上に輝く光輪を見て、二人は直ぐにその人物がサンクタであることを理解した。

 

 サルカズであるテレジアは警戒するが、目の前の人物は敵意が無いとでも言うかのように、両手を軽く上げる。

 

 

「争うつもりは無いよ。──『ノア』の関係者として、話がしたいんだ」

 

 

 『ノア』の関係者。

 

 その言葉にテレジアとアスベストスは一瞬驚き、互いの顔を見合わせた。

 そして無言のままに覚悟を済ませ、もう一度モスティマへと顔を向ける。

 

 

「──そうね、まずはお話をしましょう」

 

 

 

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 『ロドス』の臨時オペレーターとして勤勉に仕事をこなすサガは、その持ち前の明るさと人当たりの良さも有って、『ノア』の者達からだけでなく『ロドス』の者達からも信頼が篤い。

 その関係もあってなのか、サガからのお願い──モスティマ達の動向の注視に関しては、『ロドス』の仕事に影響が出ない範囲で行われることとなった。

 

 『ロドス』において特に優秀とされる『エリートオペレーター』でもあるAceとScoutは、その卓越した能力によってモスティマ達に気付かれること無く情報を収集する。

 

 サガの読み通り、モスティマ達は誰かを監視していることが判明した。

 その対象と、接触しようとしていることも分かった。

 そして今、その現場をScoutは目撃している。

 

 通信機越しに聞こえるAceの声に、Scoutは反応出来ない。

 

 サルカズの象徴と呼べるものに、『角』が挙げられる。

 それは同じように角を持つキャプリニーやエラフィア等と明確に違いがあり、同族であればそれを見間違えることは無い。

 

 サルカズであるScoutは、自身の目で何度も確認した。

 

 服装や髪型を変え、眼鏡や帽子でその見た目が分かり辛くなっていたとしても、その『角』の全てを隠すことは出来ない。

 

 

「殿下……?」

 

 

 Scoutの口から、その言葉だけが溢れ出した。

 

 

 

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 丁度良いところまでゲームを進めたオーナーが、伸びをしてから窓際へと向かう。

 近くのものを見過ぎていた目を休めるためなのか、窓の外に広がる景色へと視線を飛ばし──ふと、気付く。

 

 見下ろした砂浜にポツンと見える、『薄緑色のナニカ』。

 それは彼が元の世界、ゲームなどで見た『スライム』によく似ていた。

 

 

(この世界にもスライムって居るのか……?)

 

 

 そんなことを考えている内に、そのナニカは何時の間にか消え去っていた。

 もしかしたら見間違いだったかもしれない、と考えながら、オーナーはベッドへと戻りゲームを再開する。

 

 

「目が合った気がしたけど……気のせいだよな」

 

 

 





≪Tips≫

『詳細』
ネームド: テレジア 182%
      アスベストス 90%
      ミヅキ 75%
      モスティマ 85%
      サガ 130%
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