箱庭ゲーム『生息演算』   作:キノント

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失念/71日目

 

 

 シエスタのレジャー施設。

 一通り遊び終えた俺とミヅキさんは、二人で椅子に座り、飲み物を口にしながら雑談をしていた。

 

 

「────じゃあオーナーが会いたかった人には会えたんだね。良かったじゃないか」

 

「そうですね。……まあ、まだまだ会わないといけない人は沢山居ますけども、とりあえずはホッとしました」

 

 

 シエスタは観光都市と呼ばれているけど、イベントの開催や名所のアピールなど、観光だけに注力している訳じゃ無い。

 時期が外れていても観光客が訪れてくれるように、施設や店舗もかなり充実している。

 

 午前中にサガとの再会を果たした俺は、ホテルに一度戻った際、俺の様子を見に訪ねて来ていたミヅキさんとバッタリ会い、お詫びを兼ねてレジャー施設へと一緒に遊びに来ていた。

 

 ホテルに置いてあったパンフレットを見た時からこの施設の事は気になっており、誰かと一緒に来てみたいとは思っていたのだ。

 ある意味では初対面なので急に誘うのは少しどうかと考えていたサガには、ロドスでの仕事を理由に断られてしまっている。

 

 

「……今の拙僧は雇われの身故、今日はこれ以上仕事を放り出す訳にはいかぬ」

 

 

 提案をした際、サガからはもの凄い葛藤を感じた。

 やっとのことでその言葉を絞り出した時には彼女の犬耳はぺしゃんと伏せられてしまっており、それが何だか不憫に思えて「それならまた今度、お誘いしますね?」と返したのだが、俺が思った以上に彼女は元気を取り戻してくれた。

 

 「約束ですぞ!」という力強い言葉が、未だに耳に残っている。

 

 

「でもそうなると、オーナーはもう少ししたらシエスタを出て行っちゃうのかな?」

 

「はい、数日後には」

 

「それは……残念だね。オーナーと遊ぶの、楽しかったから」

 

 

 そんな中でミヅキさんが、丁度良いタイミングで現れてくれたのは助かった。

 おかげさまで、楽しい時間を過ごせている。

 

 ……それにしても、この世界のレジャー施設が地球のモノと遜色無さそうなことにはとても驚いた。

 海に囲まれているということもあり、水を利用したアトラクションなどが多いのは分かるが、スポーツ系だとサッカーのようなものすらあった。

 

 このシエスタが特に発展しているという可能性もあるが、スポーツなどが地球のモノと似ることなんてあるのだろうか? 

 そんな疑問を持ちそうになったが、それを言えばスマートフォンみたいなものがあることを思い出した。

 もう考えるだけ無駄なのかもしれない。…………この世界のあるがままを受け入れないと。

 

 ──ちなみにだが、対戦系のアトラクションやゲームに関しては俺の全敗だ。

 ミヅキさん、『ゲーム』というか『遊び』に強過ぎる。見栄を張らないで大人しくハンデを貰うべきだった。

 

 

「そう言って貰えると私も嬉しいですね。……ミヅキさんはこれからどうするつもりですか?」

 

「んー、僕は……」

 

 

 俺はミヅキさんに、『ノア』のことや俺自身のことを詳しく話していない。

 『ノア』に向かう理由もぼかしているし、ミヅキさんも何かを察してか追及をしてきたことは無い。

 

 元々、顔が双子のように似ている、という接点から始まった短い付き合いだ。

 こちらの事情に巻き込むのは、そんなに仲が深い訳でも無いということも相まって、何となく気が引けてしまっている。

 

 

「ボリバルのドッソレスっていう移動都市に行くつもりだったんだけど……」

 

「だけど?」

 

「……今はちょっと、悩み中。そんなことより、オーナーと遊ぶ時間は限られちゃってるんだから、もっと遊ぼうよ!」

 

 

 そう言ってミヅキさんは立ち上がり、俺の手を引いた。

 引かれる力に従って俺も立ち上がると、彼はニッコリと笑う。

 

 

「出発までまだ遊べる日はあるよね? 実は僕、料理が得意なんだ。今度作って来るから、もし良かったらオーナーの感想も聞いてみたい」

 

「食べるのは良いんですが、明後日以降でも大丈夫ですか? 明日は別の予定があるので……」

 

「全然大丈夫だよ! 腕によりをかけて作るから、楽しみにしててね!」

 

 

 向かった先は、筐体系のゲームコーナーだった。

 どうやらミヅキさんは俺に対して手加減をするつもりは無く、更なる勝ち星を積み上げる心積もりらしい。

 

 見た目と、俺に対する態度。

 その要素が有るからなのか、ミヅキさんは俺にとって『友達』に近い。

 

 思えば社会人になってから、友達とゲームをしたりスポーツをしたりという事は、無いに等しくなっていた。

 たまに会う同級生や職場の同僚とだって、遊ぶ時は飲みが絡むものだったし。

 

 ……懐かしくて、楽しい。そう思うのは、久し振りだな。

 

 

「シエスタはレトロゲームが多くて嬉しいね。ところでオーナー、ハンデは要る?」

 

「ミヅキさん、その足を掬って見せましょう」

 

 

 こういう機会が今後訪れてくれるか、分からない。

 だからこそ今の内に、目一杯楽しむことにしよう。

 

 

「じゃあ負けた方が罰ゲームでいいかな?」

 

「それはちょっと待って下さい」

 

 

 その日は夕方まで、二人で遊び倒した。

 

 罰ゲームについては、次までに考えてくるとミヅキさんは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばミヅキさん、最初に会った時言いかけてたことがありましたよね? あれって結局、何だったんですか?」

 

「……盤外戦術?」

 

「これだけ差が有ったら、このゲームの勝敗は確定的でしょう」

 

「それもそっか。えーと、あの時は確か……」

 

「私のことを『同類』って言ってたやつです」

 

「ああ、そういえばそんな事を話したね」

 

 

 

「ねぇ、オーナー? 君ってもしかして────」

 

 

 

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