術式:聖剣エクスカリバー 改め   作:錯乱坊

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誤字報告大変助かりました。


4話

「つっかれたー!」

 

 手を上にのばして体全体で伸びをする。グッグッと体の具合を試すようにしてダラりと腕も肩も脱力すればその前よりは幾分気持ちがいいような気がする。

 転校初日の長い一日を終えて、今は夜。校舎に残っているけれど外はすっかり暗くなってしまっている。良い子はもう寝る時間という頃合だ。

 しかし、今日は振り返ってみれば思いのほか良い一日だった。あの模擬戦闘訓練のあと変態は用事があるとか言ってどこかへ行ってしまったが、俺は伏黒と釘崎(敬称がキモイと言われたため呼び捨て)の2人に質問責めにあった。転校生が質問責めといえばありがちかもしれないが内容はなんというか「ほんとに一般人か?」とか割と失礼なものが多かった。遠慮がちに剣のことも聞かれたが正直なところ物心着く頃には既にあったものだけれど俺自身よくわかっていないのだと素直に答えた。逆にこちらからも色々聞けたので付け焼き刃だが呪術というものに少し詳しくなった。

 その後先輩だという彼ら……2人と1匹と共に訓練させられた。

 

 呪術師は少数派(マイノリティ)、あまりの生徒の少なさに伏黒に質問したところそう返ってきたけれど、まさか一二年生合わせて6人しかいないと知った時はほんとにびっくりした。正確には1人海外に行ってるだけらしいけれどそれでも7人だ。少ないにも程がある。

 

 そんな訳で今までの常識を覆す出来事だとか新情報だとかを整理するため1人で夜の校舎を歩き回っているのだが……なかなか雰囲気がある。使用人数少ないくせに広さだけは一級品だ。そこに月明かりの差し込む校舎は一見幻想的に映るのだが、時折月明かりが雲間に隠れてしまう時に校舎という建物の本性が顔を出すのだ。暗がりにうっすら光る緑の光とどこまでも続くような闇の中の廊下、正直もう帰りたい。最初の元気な声と伸びなんてのは正直に言えば苦し紛れの強がりだ。おそらく声は震えていただろう。

 

「ハハハー、そろそろ帰ろ〜かなぁ」

 

 そうやって後ろに進路を変更しようと振り返った時、少し上に目のない人の顔が出現し声が降ってきた。

 

「なにやってんの───」

「うぅおおおぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

「うお、うるさ、え、あっぶなっ!!」

 

 幽霊を捉えた瞬間反射的に剣を出して全力で振ってしまった。幽霊は避けたかと思えば俺の追撃の起点をいつの間にか潰している。しかし、気づいた。

 

「効くのか? 幽霊に、物理」

「……幽霊?」

 

 そうとなれば問答無用。今までの恨み今ここで晴らしてやる。幽霊の動きが硬直した今が好機。

 

「喰らえええ!!」

「落ち着け」

「グホァッ!」

 

 腹に一発。俺は立てなくなった。

 

「見事。幽霊」

「あのさ勝利、そろそろ正気に戻ってくんない?」

 

 何とか体制を変えて大の字の仰向けになるとそこに居たのは一度見た事のある青空のような瞳の持ち主。五条悟だった。

 

「……死んだのか成仏してくれ」

「勝手に殺すなよ、ていうか君の剣は術式を中和して斬ってくるんだから僕じゃなきゃ死んでたよ。ほんと無闇に振らないでよ?」

「はぁ……」

「おまえ分かってないな」

「まあ術式とか中和とか言われても正直何を言ってるのかさっぱりだし」

 

 五条先生については軽く伏黒や釘崎、それから先輩立ちにも聞いたけどわかったのは軽薄で無神経で信用がないどうしようもない人間であること、それから皆が口を揃えて言った『最強』という評価のみだ。

 信じられないといえばみんな笑って同意してきた。そうだ普段の言動からこの男が最強なんていうのは到底信じられる話じゃない。しかし、今の腹に貰ったパンチは相当だ。今も腹を中心に全体で響いている。

 

「あんた強かったんだな」

「そっか言ってなかったね。僕『最強』なんだ」

「……あんたもか」

 

 まさか自称しているとは思わなかった。裏を返せば余程の自信があるんだろうな。

 そうこう考えていると彼が手を伸ばしてきた。掴めば力強く引き起こされる。

 

「さ、もう就寝の時間だ。僕も今日はそれなりに疲れたからね勝利ももう寝なよ」

「あぁはい」

 

 五条先生は手を振って廊下の先へと消えていった。薄い雲から僅かに届く月の光が彼を照らしていたが次第に暗くなり姿は見えなくなった。俺も自室に戻ろうとさっきは目のない幽霊(五条先生だったけど)に邪魔をされた道に振り返り歩き出すと、ふと、そよ風が吹いた気がした。それに乗って声が聞こえる。

 

『君の物語を楽しみにしているよ』

 

「──五条先生……?」

 

 振り返っても彼の姿は見えなかった。

 

「……女性の声だった」

 

 一瞬ゾゾゾと体に悪寒が走るような気がしたが、しかし不思議と恐怖では無いと確信していた。これを表現するなら、気持ちの悪い虫に遭遇した時のような、そんな気持ちだ。

 

「けど、女性に対してそんなに……トラウマじみた過去なんて記憶にないけどなぁ」

 

 喉に残る小骨を吐き出すように独りごちる。そうして今の出来事に一旦は蓋をしてやってきた眠気を感じながら自室へと戻って行った。

 

 

 ▼

 

 

 幻想の塔、その周辺に広がる花畑。それらから想起されるそこは正しく天国のようだ。

 そこには1人の美しい女性がいた。それは咲く花のように美しく、夢のように理想的で、うっすらと感じられる魔性の気配が彼女の美しさをより際立たせていた。その女性は覗いている。エクスカリバーが宿るという数奇な運命を持つ彼を。

 そして彼女は微笑んだ。きっと素晴らしい物語を紡ぐ彼を、きっと明るい未来に藻掻く彼を。

 ならばその彼のために『標』を与えなければ行けない。そうすればきっとどこまでも歩んでくれるだろうから。




ガッツリは出てきません。多分
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