術式:聖剣エクスカリバー 改め   作:錯乱坊

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試験と学生服

「今から試験を受けてもらうよ」

 

 物々しい雰囲気を醸し出す呪術高専の中をどこに行くのか知らぬまま歩くこと数分、突然そんなことを言って来た目隠し男。言葉を理解した瞬間は怒りも当然湧いたがそれよりも驚きと不安が勝った。

 

「落ちたら、こんどこそ死闘になりません?」

「ははは、まさか!」

「なーんだ。さすがにそんなわけないか」

「僕と君じゃ勝負にならないよ」

「今やりますか」

「意外に負けず嫌いだったか」

「冗談は置いておいて、なんか気をつけることとかありますか? 開始時間も知りたいです」

「気をつけることなんか無いよ、そういうのじゃないし。開始時間か……あっもう過ぎてる」

「エクスカリバるぞ」

「何それ……? もう着いたよ」

「おいコラダメ教し──」

 

「悟、5分の遅刻だ。前より早く来たとはいえ、あれほど遅刻をするなと言っていただろう」

 

 五条先生よりちょっとしたくらいだが凄く威圧感のある男が立っていた。

 

「勝利! この人が試験官の夜蛾学長だよ! さあ! 行ってきなさい!」

 

 あ、ため息吐いた。諦めたなこの人。そうなると目隠しやろうの方には用はないらしく夜蛾学長さんのグラサンがこっちに向く。

 

「君が噂の呪詛師か」

「それ、よくわかんないですけど悪いやつって意味で使ってるならやめて欲しいです」

「世界には守られなければならないルールが存在する。事情はどうあれ呪術界から見れば君は違反者だ。そういうものを私たちは呪詛師と呼ぶ。君はまだ呪術師じゃないからな」

 

 今の俺からすれば嫌な人に見える、けど多分ちゃんとした人だ。五条先生とは大違いのちゃんとした教師。

 

「君はなんでここに来た」

「それは……ならなきゃあそこの目隠し野郎と戦わないといけないみたいですし」

「では、ここへは逃げてきたのか? それならば海外へ行った方がいい。呪術界はそこまで手を伸ばさないからその方が君は安心して余生を過ごせる」

「いや、日本にはいたいし」

 

 少し考えるようにして彼は一つぬいぐるみを取った。

 

「質問を変えよう。君は呪術師となって何を成す」

「成すって何も……ただバケモン殺すだけですよね」

 

 一瞬彼の目線が五条の方へと流れた気がした。

 

「五条のやつはどんな目的をもって君の前に現れたか覚えているか?」

「え、えーっと……あ」

「そうだ。呪術師を生業とすればあそこのアレでさえ人を殺さなければならない瞬間がでてくる」

 

 ぬいぐるみが放たれる。瞬間意志を持ったようにこちらに襲いかかってくる。見た目からは想像もつかない鋭い動きに油断なく身構える。

 

「君は人を殺す時も『逃げるため』に殺すのか」

 

 その言葉に流そうとしていたぬいぐるみのストレートをそのまま受けてしまう。かなり重い一撃をもろに食らってしまいたたらを踏むが何とかぬいぐるみを目で捉えると既に次の攻撃が向かってきていた。今度は掴み投げて対処する。一瞬脅威が消えた中で夜蛾学長の方を見る。

 

「俺は……」

 

 言葉は、出てこなかった。人を殺す理由なんて考えたこともなかった。ましてそんな状況になることさえ考えていなかった。漠然と人は殺さない方が良いと思っていたからだ。殺さない選択を取れるほどに自分は強いと思っていたからだ。

 投げたぬいぐるみは身を翻してこちらに向かってくるが攻撃の前に止まった。夜蛾学長が止めたのだろう。

 

「必死になれば答えが出るか」

 

 そういった夜蛾学長に答えるように部屋の中にあった人形たちが一斉に動き出した。

 

「全部動くのかよっ!」

 

 大小様々でありながら連携をとって攻撃してくる。やり辛いったらありゃしない。このままではジリ貧になって、そのうちボコボコに殴られて大怪我をするだろう。

 

夜蛾学長、どうだろうか。そういうことをする人間だろうか……? いや、あのテキトーな目隠し男と同業者だ。教師として良しと思っても怪しい部分はまだ否定しきれない。考えろ。ちゃんと考えてこれを止めるんだ。

 

 殺さない理由、殺す理由。なんのために来て何を成すのか、目的はなにか、どう生きるのか。いったいなんと言えば正解なのだろうか。滞ることなく流れる体とは裏腹に頭は変わり映えしない思考をぐるぐると回し続けている。

 

「君はなにに配慮しているんだ」

 

──……。

 

 空間に光が生まれた次の一瞬、雪のように綿が宙を舞う。

 

「夜蛾学長、すみません。ぬいぐるみ壊しました」

「いや、いい。それより答えを聞こう」

「正直に言うと呪術界がどうとかルールがどうとか心底どうでもいいです。あそこの目隠し……五条先生と一戦交えることになろうが構いません」

「では、何故ここに来た」

「こんな力もっていて生まれてこの方、幸福だなんて思ったことは一度もありません、でもどうせなら有効活用したいじゃないですか、ここなら力を使ってお金が貰える。戦うのも嫌いじゃないし……結局自分の思うように生きたいだけです。隠して消して何も無いように生きていくのは疲れるだけですから、その結末がどうだろうとこの選択に後悔は無いです」

 

「……いいだろう。合格だ」

 

 

 ◆

 

 

 

「おはよう」

 

 転校してから二三日たった頃、いつも通り簡素ながら挨拶して教室に入る。いつも(と言っても数日だが)はここで挨拶が帰ってくる。

 

「どうしたの2人とも?」

「それ……いや、なんでもない」

 

 何を察してか憐れみの目をこちらに向ける伏黒、釘崎は机をバンバン叩きながら顔をこちらに見せないまま俯いている。肩を小刻みに震わせながら。

 いや、すっとぼけているんじゃない。原因はわかっている。

 

「この『学生服』そんなにおかしいかな」

「ぶはっ! が、学生服ってアンタっヒッヒヒッそれ下手なコスプレじゃないんだから」

「浅野……やっぱ五条先生か?」

「……うん」

 

 ズボンとシャツとフード付きのロングコート、百歩譲ってロングコートまでは許そう。学生服って言うには逸脱しておかしいけれど、一旦置いておこう。明らかに要らないケープが着いているのも寛大な心でまあ良しとしようじゃないか。だが、なんで鎧があるんだよ。

 

「あの人、イメージのままに散々やりやがった。つかなんだよこれは、どこのイメージの騎士だよ。肩肘膝は守らないことで動きを阻害しないようにとか地味に実用性考えて作ってんのが余計に腹立つんだよ。学生服だつってんだろうが、どこの学校にひたすら実戦メインの服着てくんだよ。ガシャガシャうるさくて気が散るわ」

「アッハッハッハッ、最高! あのちゃらんぽらんもなかなかやるわね!」

「……それ暑くないか、今日気温上がるらしいぞ」

 

 伏黒くんの優しさが身に染みる。けどそうじゃないんだよ。釘崎さんも何もそこまで笑うことは無いと思うんだ。つかあの目隠しどこ居るんだ? 今の俺は1発くらい殴ってもいいと思う。

 

 怪我の功名と言うべきかその日以来、少しだけ2人と仲良くなった。そしてこの後出会う虎杖からは意外と好評だった。




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