陰の立役者と呼ばれて   作:一般構成員

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第十二話 陰の立役者は仕事を受ける

 

 

 

 シドがヒョロの腹部に強烈なボディーフックを打ち込み、泡を吹かせて気絶させていた頃。

 シュウは『紅の騎士団』の一人としてアイリス王女とアレクシア王女の王女姉妹と、他の団員と一緒に学園に向かっていた。

 

「それでアイリス王女、そのアーティファクトの解析を頼む人は学園に在籍してる教師なのでしょうか?」

 

 俺はアイリス王女が持っているアーティファクトのこれからの行き先について尋ねる。

 解析を頼むって言ってたから、恐らく教授かそういった権威のある人の所に頼むとばかり思っていたのだが。

 

「いえ、これから我々が依頼する人物はまだ学生です」

「学生? という事は学術学園の方の生徒って事ですか?」

「はい、彼女は確かアレクシアとシュウ君より一つ上の学年です」

 

 ほえー凄いなまだ十六歳って事だ。その歳で国から依頼される程の実績とか諸々が既にあるって事だ。

 

「名前をお聞きしても?」

「彼女の名前はシェリー・バーネット」

「バーネット? 何処かで聞いた名前ね」

「アレクシア、貴女が今在籍している学園の副学園長の名前よ」

「そうでしたっけ? オホホ……」

「はぁ、まったく」

 

 自分の在籍している副学園長に全く興味を抱いていなかったアレクシア王女に飽きれるアイリス王女。

 うーん。今の情報で一気に実力で依頼されるのか、コネで依頼されるのか分からなくなったな。

 

「アーティファクトの研究で既に実績があると思うのですが、どんな実績が彼女にあるのでしょうか?」

「彼女は既に国内外に名前が知られています。母親の影響もあるかもしれませんが、それでも彼女の知識などは本物ですよ」

「成る程」

 

 そういう事なら本物だろうな。でもまあイータには及ばない。

 そんな事を考えているうちに会合場所である部屋に着いた。

 何か途中でシド達を見かけたけど、アイツらこんな時間に何やってたんだか。

 部屋に入ると桃色の髪で特徴的なアホ毛がある少女と初老の男性が居た。

 初老の男性の方は知っている。ルスラン・バーネット副学園長だ。

 という事はこっちのアホ毛の少女がシェリー・バーネットという事だろう。

 

「お待たせいたしました。今回アーティファクトの解析を依頼しに来ました『紅の騎士団』です」

「既存の騎士団では無く『紅の騎士団』での依頼と言う事ですね」

「はい」

 

 アイリス王女とルスラン副学園長が話し合っている。

 

「そして依頼したい物がこちらになります」

 

 そう言ってアイリス王女はケースから厳重に入れられていた大きなペンダントの様な物を取り出す。

 

「王国でも頭脳明晰と名高い貴女に、このアーティファクトの解析を依頼したい」

「え、でも……しかし私はまだ学生ですし」

 

 そう言ってシェリーは断ろうとしている。

 

「事アーティファクトの研究分野でシェリー・バーネットに勝るものは、国内外問わず居ないと私は思っている」

「そ、そんな恐れ多いです」

「シェリーいい機会じゃないか。私は受けてみるべきだと思うよ」

「お義父様……」

 

 ふむ。やっぱり親子だったんだな。あんまり似てないけど。

 

「シェリー。君は世界を変えれる程の研究者になれる、私はそう信じている。だから今回のアイリス王女からの依頼も受けて、今後の為に活かすべきだと思うよ」

「で、でも……」

「大丈夫、君はもう立派な研究者だ。後はどれだけ自分自身を信じられるかさ。君なら出来る、大丈夫」

 

 ルスラン副学園長はそう言ってシェリーを励ましている。

 紅の騎士団としてはシェリーにこの依頼を受けてもらわないと、詰み状態になってしまう可能性がある。

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 早く実績を作り上げないといざという時に動けなくなるかもしれない。正直それは困る。

 だからルスラン副学園長がこうやってシェリーを励まして依頼を受けてもらおうとするのは非常に助かる。

 一応極秘ルート(イータを頼る)を使えばこのアーティファクトの解析自体は可能だろうけど、これ以上隣に居るアレクシア王女から疑惑を持たれるとマジで面倒だ。

 

「……分かりました、私に出来る事であれば」

 

 決意が固まったのかシェリーはアイリス王女からアーティファクトを受け取った。

 よしっ! これで一歩前進だな。

 

「これは古代文字ですね、それも……暗号で書かれていますね」

「これは『ディアボロス教団』の施設から押収した物で、恐らく古代文明の研究をしていたと思われます。そして暗号も古代文明に関係しているかと」

「なるほど、なので私に話が回って来たのですね」

 

 そのままシェリーは受け取ったアーティファクトをまじまじと眺めていた。

 

「それで、アーティファクトとシェリーさんに護衛を騎士団から付けたいと考えています」

「護衛ですか」

 

 アイリス王女とルスラン副学園長の二人の間に緊張が奔る。

 

「このアーティファクトですが、どうやらディアボロス教団がまだ狙っている可能性がありまして。一緒に押収した物と一緒に保管されていたのですが、倉庫に先日火を放たれまして、残ったのがあのアーティファクトだけなのです」

「他の押収品は残らなかったのですか?」

「ええ、情けない事に残りませんでした」

 

 先日の放火なのだが紅の騎士団を結成しますよという話し合いの裏で起きた事件だった。

 シャドウガーデンの方では情報は回収済みだけど、こっちでは残らなかったからうっかり情報を知りすぎているという事態は避けないといけなくなった。

 最悪燃えカスから情報の書類を復元しようと思ってたけど、火事で燃えたと知った時には既に破棄されていた。

 これに関しては紅の騎士団の団員全員がため息をついた程だった。

 

「成る程、でしたら護衛を付けるのはアーティファクトに二人、シェリーに一人までであれば」

「合計三人ですか……私がどちらかに付ければよかったのですが」

 

 そうだな、アイリス王女は公務があるから護衛は出来ない。

 であればグレンさんやマルコさん、俺やアレクシア王女あたりが適任だろうな。

 

「アイリス王女が出ると他の仕事に影響が出ます」

 

 そう言うのは立派な鬣の様な髭が特徴のグレンさんだ。

 俺からも結構頼れる人だと思うぐらいには頼もしい人だ。アイリス王女が無理を言って騎士団から引っこ抜いただけはある。

 

「この護衛の件。グレンに全て任せてもいいですか?」

「お任せ下さいアイリス王女」

 

 イイ感じに話が纏まって来たなと思っていたのだが、アレクシア王女が突然何か言い始めた。

 

「でしたら姉さま、シャドウガーデンの噂の調査は私に任せて下さい」

「貴女が?」

「私はシャドウともジョーカーとも会っています。ならばこの事に私以上の適任は居ないでしょう」

「いや、貴女には危険だから直接現場に赴かず、情報の整理などを任せたいのですが」

「そこのシュウ君も護衛に駆り出すのでしょう? なら私も出るべきじゃ無いのですか?」

 

 アイリス王女がアレクシア王女に口で押されている。ええ、弱い。

 最近入って来た情報だが、最近夜にシャドウガーデンの名を騙る人斬りが出ているらしい。

 俺たちのシャドウガーデンの名前を騙るだけでなく、更に人斬りまで行っていると来た。許せんな。

 本当は俺も動きたいのだが……いや、睡眠時間を削って調べればいいか。

 

「で、では学業に影響の出ない範囲でなら許可しましょう」

「ありがとうございます。アイリス姉さま」

 

 アレクシア王女は実にイイ笑顔だ。

 

「それではシェリーさんアーティファクトの件、よろしくお願いいたします」

 

 アイリス王女がそう言って今回の話は終わった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 俺がシェリー本人の護衛を受ける事になったから、学園の方に暫く行事は出れなくなると伝えに行っていた。

 そこで知ったのだが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 勿論そんな事よりも重要な案件があったので、特例でキャンセルさせてもらった。

 俺と一回戦で当たる予定だった奴は不戦勝というか、そんな感じの扱いになるだろう。

 今日が護衛の任務が終わるまで自由に動ける最後の日なので、無理を言って事前に普段よりも門限を遅くしてもらった。

 で、教室から出るといつもの三人が待っていた。

 

「何でお前らここに居るんだよ」

「僕は選抜大会に勝手にエントリーさせられてたから辞退しようとしてただけ」

「で、出来なかったと」

「そう」

 

 成る程ね、シドの事情は分かった。

 

「それで二人は何で待ってたんだ?」

「いや、落ち込んでるであろうシドをいい店に連れて行ってやろうと思ってな」

「えっ⁉ イイ店ですか!」

 

 突然ジャガが鼻息を荒くして興奮しだした。下半身に正直な奴だ。

 

「バカ、今回はそういう店じゃねーよジャガ!」

「じゃあどういうお店何ですか?」

「最近話題の『ミツゴシ商会』って所だ。何でも未来から来た様な目新しい商品がいっぱいあるらしい。中でもチョコレートって菓子がスゲェ旨いらしい」

「甘いお菓子ですか。じゅるり」

「自分で食う為じゃねぇよ」

 

 食い意地がはっていたジャガにツッコむヒョロ。

 自分たちで食う訳じゃないんだな。美味しいのに。

 ちょくちょくミツゴシにはガンマに経営関係で聞きたい事があるから訪ねてるんだよな。

 そこで毎回試作品とか普通に食べて欲しいとかで、チョコ以外も振舞って貰ってるからな。美味しいのは知っている。

 プレゼントの為だけに買うってのは勿体無いって感じるな。

 

「チョコさえあれば女なんてちょろいもんだぜ」

「流石ヒョロ君! 勉強になります!」

「そうだろ」

 

 調子のいい事言いやがって。ガンマ達が頑張って再現したチョコを変なクスリみたいに言わないで欲しい。

 

「よしっ! 行こうぜ二人共!」

「行きましょう二人共!」

 

 ヒョロとジャガが俺らを誘ってくる。

 

「どうするよシド? 俺は別に行ってもいいぞ。暫く仕事が続くからこうやって集まれないし」

「はぁ、分かったよ、行こうか」

 

 そうシドはため息交じりに言った。

 そして俺たちはミツゴシ商会に向かったのだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 王都のメインストリート、夕日が綺麗な今日。立ち並ぶ建物の窓に反射して街中が赤銅色に輝いて見える。

 その中でも一際目立つ建物が一つ。ミツゴシ商会だ。

 一つだけ飛びぬけて建物としてのデザインが違う。国の首都の有名な……説明が面倒だな。銀座とかに並んでそうな高級ブランドの店の様な雰囲気が出ている。

 建物のデザインはイータが担当だったな。改めて見てもいい仕事をしたな。

 そしてミツゴシには長蛇の列が出来ていた。プラカードを持った美人さんによると八十分待ちだそうだ。

 

「流石ミツゴシだな。入店まで八十分待ちだってよ」

「門限に間に合いますかね?」

「門限ぐらい何てことねぇよ」

「そうですね、それよりも最近は人斬りが出るって話ですよ」

「……人斬り?」

 

 シドが不思議そうにしている。

 

「もう騎士団にも被害が出てるらしい」

「怖いですね」

「バカ、こっちは魔剣士四人だぞ。それにいざとなったらシュウに守ってもらえばいい」

「確かにそうですね」

 

 二人が何か言ってるな。

 

「期待してもらってる所悪いけど、俺はこの後その件で調査に出るからお前らを寮まで送れないぞ?」

「嘘だろ」

「そんな」

 

 二人は絶望した表情に変わった。コロコロ表情が変わって面白いなこいつら。

 そんな事を思っていたら、少し前まで遠くに居たプラカードの美人さんが近づいてきていた。

 

「お客様方、少しアンケートにご協力頂きたいのですが」

 

 そう言ってシドと俺を見てくる。

 どっかで見た顔だな。……ああ思い出した。という事はそういう事か。

 

「僕とシュウですか?」

「はい」

 

 シドは困惑している様だった。

 

「は、はい俺も協力したいですッ!」

「じ、自分も協力したいですッ!」

お二人だけで、結構です

 

 バッサリと断られるヒョロとジャガ。さっきの凄みは凄かったな。流石ナンバーズだな。

 

「ではこちらへどうぞ」

「ほら行くぞシド」

「ええ? 分かったよ」

 

 困惑したままのシドと一緒に俺は案内されるがままに、従業員専用の入り口や豪華な階段上ったりしてドンドン進んでいく。

 最終的に大きな扉の前まで案内された。

 そして扉が開かれる。案内された部屋は大きなホールのような場所で、少し先に階段がありその上には豪華な椅子が一脚置いてある。

 そして会談の中腹あたりに居たのは我らがシャドウガーデン随一の頭脳を持つガンマが居た。

 

「あれ? アンケートは?」

「何まだ寝ぼけた事言ってんだ」

 

 いつまでシドの状態を続けるつもりなのか分からないシドに思わずツッコんでしまう。

 

「長らくお持ちしておりました主様、そしてお久しぶりですジョーカー様」

「ああ、久しぶり。この前のチョコも美味しかったぞ」

「ありがとうございます。イータに伝えておきます」

 

 ああ、あれってイータが開発したやつだったのか。

 どうりで口に合う味だったわけだな。

 

「ミツゴシってガンマが経営していたんだ」

「恐れ多いですが主様から授かった『陰の叡智』を微力ながら再現し活用させて頂いています」

「成る程ね、でさっき久しぶりって言われてたけどジョーカーはこの事知ってたの?」

「知ってたぞ、何ならお前以外全員知ってる」

「え”? それってアルファ達七陰の皆もって事?」

「そうだな」

 

 見るからに気を落とすシド。でもお前が全面的に悪いわ。

 だってお前が話をちゃんと聞いてないからこうなってるんだろうが。

 そういつもなら言ってるけど、ガンマたちの前だから言えない。

 

「それでは主様。どうぞこちらに……ぺぎゃっ

 

 こちらに来ていたガンマだがクソ高いヒールなんか履いてるから階段で踏み外して盛大にこけた。

 運動音痴なんだからヒール何て履かなければいいのに。

 

「ガンマ鼻血出てるよ」

 

 シドがそう指摘すると周りの人達がパパっとガンマを綺麗にする。

 慣れた動きだなぁ。

 

「せっかくだシャドウ、用意されてるみたいだしあそこの椅子に座ったらどうだ?」

「勝手ながら、このガンマ主様の為に用意させて頂きました」

「え? ああ、そうだな」

 

 俺とガンマはシドに用意された巨大な椅子に座らせた。

 

 そのままシドは気分がよくなったのか魔力の雨を降らしたりしていた。皆感動してるみたいだ。

 俺は階段の下の方で立っている。シャドウの隣に行く気は無い。

 

「そう言えばガンマこの商会について聞きたいんだが」

「はい、何なりとお聞き下さい」

「ぶっちゃけここってどれだけ儲かってるの?」

 

 俺は思わずこけかけた。シャドウの時の声でそんな事を聞くなよ。

 

「そうですね、直ちに運用可能な金額はミツゴシだけで30億ゼニーといったところです」

 

 クラウン財団を含めるともう少し可能だと思いますとガンマが付け加える。

 ごめん、ガンマ。いまクラウン財団は謎の出金があって思ったより貯金額が少ないんだよな。

 大方イータが勝手に持ち出しただけだと思うけど。一体何に使ってるのやら。

 

「そ、そうか」

「足りませんでしたでしょうか?」

「いや、別に大丈夫だ。個人の範囲で使うのはジョーカーから既に貰っている」

「成る程、あの時のはここに繋がっていたのですね」

 

 ただのごっこ遊びだと思ってる奴には毎月5ポチで十分という訳だ。

 

「話は変わりますが主様方がここに来た理由は例の件での事でよろしいでしょうか?」

「え? ああ」

 

 またしても分かって無さそうなシド。

 

「最近この王都で『シャドウガーデン』の名を騙る愚者が現れました」

「ああ、聞いている。騎士団の方でも調査をするとの事だ」

「人斬り……」

 

 シャドウが顎に手をやり何か考えているみたいだけど、大方見当違いな事を考えてるんだろうけど。

 

「一応俺も今夜実際に現場に出て見てみる予定だ」

「それはジョーカー様としてですか? それともシュウ・ヤークとしてですか?」

「周りの状況に合わせるつもりだけど、基本はジョーカーで動くつもりだ」

「分かりました」

 

 そうやって俺とガンマが話していると。

 

「ふむ、心当たりがある。我も直接出向くとしよう」

「シャドウ様も直々に? 分かりましたであれば……来なさいニュー」

 

 そうガンマが呼びかけるとダークブラウンの髪の女性が出てきた。

 先ほどまで俺たちを案内してくれた子だ。

 

「この子はニューです。ジョーカー様はご存じでしょうが、シャドウ様とは直接の面識は無かったはずかと、実力はアルファ様が保証しています」

「ああ、そうだな。久しぶりだなニュー」

「お久しぶりです、ジョーカー様」

「成る程、用事が出来たら呼ぼう」

「はっ、分かりましたシャドウ様」

 

 ニューはそのまま下がった。

 

「さて、そろそろ帰るか」

「そうだな、余り長居しても待たせてる二人がうるさそうだしな」

 

シドがそう言いながら立ち上がったので俺もそれに続く。

 

「そうだ、チョコが欲しいんだけど。一番安いのでいいから友達割引とかで更に安くならないかなーなんて」

「ふふっ、かしこまりました。最高級の物を用意しなさい」

「えっ、それっていくらぐらいなの?」

「シャドウ様割引きで十割引きとさせて頂きます」

「ホント? いやぁ悪いねありがとう。せっかくだから三個貰っていい?」

「ええ、おいくつでも大丈夫です」

 

 シャドウからシドに戻った光景を見てガンマは微笑んでいた。

 これがあるべきシャドウガーデンの姿だ。だから――名を騙る輩は始末しないとな。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 俺たちはすっかり日が落ちてしまった王都の中を走っていた。

 

「おい、このままじゃ門限に間に合わねーぞ!」

「お二人が遅いからですよ!」

「ごめんごめん、でも二人の分のチョコも貰って来たんだしさ許してよ」

「俺だってお前らを寮まで送ってやるからそれでいいだろ」

 

 その時遠くで剣同士が激しくぶつかり合った時特有の音が聞こえてきた。

 誰かが今この周辺で戦っている様だ。

 シドも聞こえていたようで眼でこっちに訴えかけている。

 ――僕も参加したい――と。

 二人に何て説明しようか迷っていると先にシドが口を開いた。

 

凄いウンコが漏れそう

「はっ⁉」

 

 前を走っていた二人もドン引きである。当たり前だわ。

 もっとマシな言い訳を思いつかなかったのか。

 

「もう穴から『こんにちは』状態なんだ。ここでしないと漏らしながら走り続ける事になる」

 

 穴から『こんにちは』状態は既に漏らしていると同じだと思うのは俺だけか?

 

「それは……不味い状況だな」

「ええ、門限か尊厳かの問題ですね」

 

 何が門限か尊厳かなんだ普通に上手い事言ってる場合か。

 

「二人には悪いけど僕はここまでだ、先に行ってくれ」

「分かった、シド。俺はお前が外でクソを漏らしたことは誰にも話さねぇ」

「誰が何を言おうと、シド君は正しかった。自分はそう思いますよ」

「行ってくれッ! 早くッ!」

 

 二人はそのまま振り返らずにシドの事を叫びながら走っていった。

 

「じゃあ行こうか」

 

 何事も無かったかのように話しかけてくるシドに俺は

 

「お前、もう少しマシな嘘をつけよ」

 

 という事しか出来なかった。

 

 

 

 現場にシャドウとジョーカーとして到着すると、そこにはアレクシア王女と黒い外套を纏い仮面を付けた男が居た。

 成る程ね、コイツがシャドウガーデンを騙っていた奴か。

 

「あれ? 人斬りってアレクシアの事じゃないのか」

「そりゃそうだろう、アレクシア王女は調査してる側だぞ」

「へー知らなかった」

 

 アレクシア王女が偽物の剣を弾き決着がつきそうな時、背後からもう一人現れる。

 アレクシア王女は前に比べて強くなってるけど、おまけに後ろからもう一人追加できているから合計三人だ。

 あの実力じゃあ三人同時には相手出来ないだろうな。

 

「そろそろ加勢に行くか」

「え? もう少し見ていてもよくない?」

「いやいや、これ以上待って怪我でもされたら俺の負担が増える」

「あっそういう理由なんだ」

 

 当たり前だろ。これ以上仕事を増やされると俺もミスをしやすくなってしまう。

 

 取り合えず目についた追加の三人目からサクッと始末しよう。

 音も無く背後を取り、そのままスライムナイフで喉を刺して声を出せないようにする。

 そのまま喉を抑えてる一人目を壁に叩きつけて、一人目処理完了。

 そしてさっき作ったスライムナイフを未だに気づいていない二人目の頭に投げつける。

 投げられたナイフはそのまま後頭部に刺さって、二人目処理完了。

 驚いているアレクシア王女をそのままに、瞬時に間合いを詰めて最後に残った一人の喉を掴んでそのまま握りつぶす。

 これで三人共処理完了だな。

 あーあ、手が血まみれだわ。きったねぇ。

 

「貴方がジョーカーね。あの時名乗らなかったから、アイリス姉さまの情報を聞くまで分からなかったわ」

「別に知る必要は無かったからな」

 

 俺が目立つわけにはいかなかったからな。

 

「一応地下ではどうも」

「ああ」

「そして今回もどうも」

「ああ」

 

 あの時アレクシア王女の子守なんかしてなければもっと早く事件とか片付いたんだけどな。

 さて、本当にこれだけなのかね。もっと探さないとな。

 そう思って立ち去ろうとしたのだが。

 

「待って!」

「何だ……こちらも暇では無いのだが」

「こいつ等と貴方達シャドウガーデンは関係ないの?」

「ん? ああ、そうだな。こいつ等は我らの名を騙る愚者共だ」

 

 危ない危ない。説明せずに立ち去っていたら勘違いをされていたかも知れないな。

 

「つまり偽物って事?」

「そうだな」

 

 キチンと伝えれる真実伝えておく。これが重要だ。

 そんな事を考えていると、待ちきれなかったのかシャドウがいつの間にか屋根から降りてきていた。

 その手にはいくつかの死体があった。上にも居たんだな。

 

「もう片付いただろう」

「変な誤解は解いておかないと今後が面倒だ」

「ふむ」

 

 誤解も解いたしここには用事は無いな。話している間に死体も回収したし。

 頭が残っていたら情報は抜き出せるからな、後はイータに丸投げでいいだろ。

 そうして俺たちはどこか釈然としないアレクシア王女を置いたまま、待機していたニューを呼びそのまま残党狩りを行った。




 今回もここまで読んでいただきありがとうございます!

 アンケートにご協力頂きましてありがとうございました。
 結果は活動報告にも書きましたがゼータに決まりました。

 これからも投稿を頑張っていきますので応援して下さると幸いです。
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