陰の立役者と呼ばれて   作:一般構成員

19 / 32
第十七話 陰の立役者は強敵に挑みたい

 

 

 

 突然部屋にダイナミックエントリーして来たバンダナの男。その男は俺たち全員に剣先を向けている。軽く魔力探知をしてみるがいつもよりかなり狭い範囲しか探知できなかった。それでもこの付近にこの目の前の男以上の実力を持っている敵は居なさそうだった。

 俺は男とシェリーの間に入る形で目の前に立ち、振り返らずにそのまま話しかける。

 

「グレンさん、マルコさん。ここは自分に任せて先にシェリーを安全な場所に連れて行ってあげて下さい」

「シュウ……それは出来ない相談だな、残るなら俺が残る」

「そうですよシュウ君、君の方が若いから君がシェリーと行くべきだ」

「グレンさんにマルコさんまで」

 

 そりゃそうか若い奴が生き残れってのは理屈としては通ってる。がしかしここで任せると普通に二人共死にそうだから俺が残ってそのままジョーカーとして動けるようになりたいからここは譲れない。

 何より刻一刻と他の生徒の生存時間が減っているだろう。今この時にも誰かが誰かを庇って袈裟斬りにされて血の海に沈んでるかもしれない。

 可能な限り犠牲は無しで、いや犠牲無しでこの戦いを乗り切る。

 

「お二人共お忘れの様ですね。自分の父は魔力の才能がないにも関わらずブシン祭で優勝したあのファタ・ヤークです。自分はその息子シュウ・ヤークですよ? 魔力が使えないくらいで戦えなくなるような軟な鍛え方はされていませんよ」

「だが……若い奴を先に行かせる訳には」

 

 そう話している間に相手は我慢の限界だったのか斬りかかって来た。短気な奴め待ても出来ないのか。

 

「さっきから話が長ぇんだよ!」

 

 割とまともな事を言いながら斬りかかって来た。ド正論を言いながら攻撃するのは止めて欲しい力が抜ける。そう思いながら相手の剣をそのまま構えていた剣に添わせて地面方に受け流す。そして剣が地面に突き刺さったその隙に、腹に蹴りを入れていつでも仕切り直せる距離を開けさせてもらった。これでまた会話に集中出来る。

 

「年齢を気にするならアイリス王女はどうなるんですか、ここの相手は自分で十分ですので安心して下さい。必ず後で合流します」

「――分かった」

「グレンさん!? いいんですか!?」

 

 やっと納得してくれたか。

 

「必ず後で生きて帰って来いよ」

「シュウ君、無理はしない様に! 必ずここに迎えに来る!」

 

 最後にシェリーも何か言いたそうにしていたがそのまま二人に連れていかれた。これでやっと人目を気にせず戦える。

 

「本当にこの俺とタイマン張る気なんだな。度胸は認めてやるよ」

「そうか、そりゃどうも」

「だが相手がこのチルドレン1stの叛逆遊戯のレックスだった事が運の尽きだな。――ここで死ね」

 

 そう言いながらレックスは俺に対して剣を再度振って来る。先ほどとは違い遊びの無い殺す気を隠そうともしていない剣筋だ。さっき蹴りを入れたから警戒心が高くなってるみたいだ。目が先ほどまでの舐めた目付きではなく戦場に似合う人殺しの目付きに変わっている。

 だからこの極限まで集中された状況下でこそ刺さる武器もある。

 俺は左から来る剣を左手に持った剣で弾く様な動きで動かし、その間に右手で懐からある物を取り出す。黄色く絶妙なカーブを描くアレだ。そうバナナだ。

 

「――――は?」

 

 そんな間抜けた声を上げるレックスに向けてバナナは火を吹く。そうこれはただのバナナではない。これはイータと共同開発したバナナに偽装したショットガンだ。弾丸は悩んだけど魔力で強化された皮膚を貫通させる為に鋼鉄の針を五本ほど込めている。一発撃ったら勝手に壊れる素敵仕様だ。これでうっかり相手に流れても解析されないという仕組みだったけど、思ったより派手に壊れたな。

 有効射程はせいぜい2mと言ったところだけど超至近距離で撃つとそれなりの威力が出る。……そう……それなりの威力が。

 俺はそう思いながら下で顔を押さえながらのたうち回るレックスを見る。どうやら貫通力というか威力が微妙だったようで全ての鋼鉄の針が顔の色んな所に刺さって止まっていた。痛そう。

 このままだと死にそうに無いのでそのまま頭を踏みつぶしてついでに証拠も隠しておく。

 一発で決まると思っていたから使ったけど余計に時間が掛かった。今度からは事前に試験運用をしてから使おう。こういう時に使うべきじゃ無かった。

 

「さてと魔力が引っ張られる感覚は地下か。この学園に地下何てあったんだな」

 

 そう呟きながら姿をシュウからジョーカーに変えていく。最短経路で地下まで行こう。恐らくそこに例のフェンリルが居る筈だ。

 俺は魔力が持っていかれる方向を頼りに下へと進んで行く。

 

 

 

 思っていたよりも簡単に地下まで到達出来た。まあ十中八九誘われていただけだろうけど、今までの活動でそれなりに嫌がらせはして来たつもりだけど、それで色々バレているとは考えたく無いな。

 ただ視線の先に居る存在を見るとこの世界を裏で牛耳って来た奴というのは相当ヤバい奴らしいという事は分かった。

 

「まさかラウンズ第五席のフェンリルがこの様な少年と言える姿をしているとは思わなかったな。そういう趣味か? 気持ち悪いな」

「あんまりな評価だねジョーカー君。これは何となくこの姿をしているだけさ」

 

 そういうフェンリルの姿は白銀の髪色の少年の様な奴だった。まさかこんな姿をしているとは思っても居なかった。

 

「それでそこの装置が強欲の瞳か」

 

 スライムでパッと再現した制御装置を投げつけるが効果が無かった。成る程既に組み合わされているから無駄か。

 

「残念だけどもう遅いよ、この学園の生徒全員分の魔力をこの右腕に注いでいる状況だ。開放も今日で終わるだろうね」

「それはこのまま行けばの話だろ?」

 

 俺のその言葉にフェンリルは獰猛な捕食者の様な顔をしながらも確かに笑っていた。

 

「君にそれ程の実力があるとは思えないけど」

「やらなきゃ分からないだろ、そういう事は」

「それもそうだ、今まで殺してきた戦士たちも窮地に立たされた途端強くなった事例もあった。君もそういうタイプかな?」

「さあな」

 

 そう言いながらスライムで剣を作り臨戦態勢に入る。お喋りはここまでだ。話している間に辺りを漂う霧の正体は大体掴んだ。

 これはフェンリルが作り出しているもので間違いなさそうだ。コイツの気配が少し混ざっている影響で気配を殺しながら紛れ込まれると途端に掴めなくなる。特に俺は魔力による気配探知を多用しているからかなり厄介な性質だ。

 この霧を晴らすところから始めないとそもそも戦いの土俵に入る事も難しそうだ。

 全身から大量に魔力を放出して霧を吹き飛ばすが、中々晴れない。というか放出するそばから強欲の瞳に持っていかれる。だけどそうしている間はこの空間の外側の魔力の濃度の減りが少し遅い。……つまりこの強欲の瞳は周りから持っていくが近くにより濃度が高い魔力があるとそちらを優先して吸収するのか。

 これは上の人達の分を俺が肩代わりすると何とかなるんじゃないか?

 

「考えは纏まったかな?」

「そうだな」

 

 敢えて全身から魔力を垂れ流しにしながら自分の魔力を極限まで練っていく。

 黄緑色の魔力が辺りに広がっていく。

 

「成る程、自分の出した魔力を優先的に吸わせて上の人達を守るんだ、考えたね。でもそれは右腕の開放を早める事にも繋がるよ?」

「解放されるまでにお前を倒せばいいだけだろ」

「出来るのかい? 君に」

「やるしかないだろ」

 

 戦闘態勢に入ったフェンリルを見て一瞬で分かった。多分通常の剣の勝負なら到底勝てないという事が。だからもう一つの手段で戦う事に決めた、その為にはもっと魔力の出力を上げないといけない。

 フェンリルは未だに攻撃してこない。強者の余裕と言うやつだろう。ムカつくが今はこの時間が必要だ。

 そして極限まで練った魔力は色が変わり始める。今までは黄緑色だったが、今の俺の魔力の色は青白い色に変わっている。

 

「珍しい。魔力の色が変わる奴なんて初めて見たな」

 

 待った甲斐があったとそう言いながらフェンリルは軽く剣を振るった。見えなかったが斬撃がこちらに来ていたのは感知できた。冷静にそれを回避して懐からガシェットを取り出す。

 

「ここからが本番だ」

「楽しくなってきたよジョーカー君」

 

 戦いを楽しむ狂人がここにも居たか。

 そしてスライムの剣を収納してスライムスーツも仮面以外すべて格納して、持てる魔力を全て攻撃に使う。そのまま手刀の動作でフェンリルに攻撃をする。

 一瞬だ。一瞬だけ手の所から魔力を噴出させて短い距離だけど、超高出力の魔力の斬撃を放つ。今回は外れたが掠った地面のコンクリートの様な建材が砂の様に崩れていた。熱で崩壊したようだった。

 

「興味深いね、その放出した魔力の斬撃。振るっても木の枝よりもしなっていないじゃないか。一体どんな出力をしているんだか」

「当たった奴が一瞬で消し飛んで即死するレベルの放出だな」

 

 それを聞いたフェンリルはまた一段と笑みを深く浮かべた。

 そして剣をまた構えた瞬間ガシェットのコンカッションを投げつける。戦闘に置いて重要なのは如何に相手に何もさせないかだ、この手に限る。

 だがコンカッションは無残にもその役目を果たす前に斬られてしまう。やっぱり通じないか。

 

「そういう小手先の嫌がらせではなく、真正面から来なよ。せっかくの戦いだお互いの武を魅せ合おうじゃないか」

「それで勝てるならそうしてるっての」

 

 本当にそれで勝てるならこんなに頭を悩ませながら戦っていない。

 本人は戦いを楽しんでいるみたいだが、俺の優先順位はフェンリルを倒す事じゃない。最終的には倒さないといけないけど、このデバフを喰らっている状況で勝てるとは正直思えない。

 だから先に強欲の瞳を何とかしないといけない。

 その為に牽制として魔力の刃をいくつも投げつける。威力は落ちるがそれでも岩盤を切り裂くぐらいは可能な威力は秘めている。到底無視できない攻撃だ。

 避けるにしても迎撃するにしても一瞬の隙は必ず出来る。その間に強欲の瞳を回収する事が出来れば勝てる可能性が上がる。

 

「成る程それが目的かそれならばこちらも相応の対応をしないとね」

 

 フェンリルが何か言ってるがあの距離から攻撃されても最悪強欲の瞳は回収出来る。

 これで漸くスタートラインに立てる。そう思っていた。

 

「――――リリ」

 

 フェンリルがそう言った途端、腹から尋常ではない痛みが襲い掛かる。思わず速度落としてしまった……いやこれは……止められているのか。

 急に現れた謎の敵によって俺は腹に腕を通されて止められているみたいだ。凄まじい痛みだ。体の中に腕のサイズの異物が入っている状況だ。痛すぎて眩暈がする。

 そしてそのまま入り口付近の壁際に投げられた。どう考えても明らかに重症だ。急いで魔力による身体の修復を急ぐ。傷は治せても血は増やせないから、出血だけは防がないと直ぐに危険な状況に陥ってしまう。

 どうやらスライムスーツを解除するのはダメだったらしい。俺やシドじゃ無かったら死んでるレベルのダメージを負ってしまった。

 身体の修復が終わると同時にスライムスーツを再び身に纏う。スライムスーツを展開している間はあの超高出力の魔力の斬撃は行えない。いつもなら出来なくも無いけど今魔力を吸われ続けている状況ではあの技は使えない。

 そして漸く俺を止めた相手の正体が分かった。……最悪だよ。よりによってそういう展開か。

 視線の先には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「君にサプライズさ、ジョーカー君。昔よく一緒に行動していたよね金髪の獣人の女の子と。途中から二人共潜入が上手くなったから分からなくなったけど、最初の二回ほどの時かな? 君たちの姿をたまたま見つけてね面白そうだったから黙っていたんだ」

「悪趣味なクソ野郎だな本当に、それとゼータの髪の色は金色じゃなくて白金色だ。二度と間違えるな

「それは失礼。そんな事よりもどうだい? 仲間の姿にそっくりな相手が倒さないと行けないと言う状況は」

「最悪の気分だ、アンタ武を何たらとか言って無かったか?」

「君は武を極めたタイプの人間じゃ無いからね、それ相応の戦い方をするさ。こちらだけ真面目に戦うなんて馬鹿みたいじゃないか」

「あっそう」

 

 いよいよ手段が無くなって来た。流石はラウンズ第五席と言ったところか、普通に強い。

 

「それと小手先の嫌がらせとか、後の事を気にしながら戦うというのは辞めな。今君の前に居るのは千年生き武の頂を目指す者だ――――図に乗るなよ青二才が」

 

 そう言うとフェンリルの身体が段々と少年から老人の姿へと変わっていく。成る程これがフェンリルの本当の姿か。年相応になったな。

 それにしても千年生きた化け物か、そう言うのは初めから知っておきたかったな。そうと知っていたらもっと別の手段も考えてきたのに。

 

「それは失礼したフェンリル殿。でもお生憎さま俺は正面切った戦闘よりも騙し打ちとかそう言うのが得意な者でね、アンタの期待には応えられそうに無い」

「そうか、では死ぬといい」

 

 そう言ったフェンリルは今までとは違う雰囲気があった。全身で感じるこの悪寒は本気で殺そうとしていると俺の本能の部分が察知しているんだろう。つまりさっきまでは本当にただ遊んでいるだけだったって事か。

 遊ばれているだけでリスク無しな攻撃手段を潰されて、準備が必要な攻撃手段と代償が重いドーピングを残すだけにされた訳か。だいぶ厳しい状況だな。

 フェンリルが剣を構える。一気に辺りの気温が下がった様な感覚がする。これは……今までに感じたことが無いほどの濃密な殺気か。何が来るかしっかりと見定めないと死ぬ未来が見える。

 

「君は武人たる資格は無かった、だからここで死ぬのだ――――『空蝉』」

 

 そうフェンリルが呟いた瞬間、霧に包まれて姿が見えなくなった。その時斬撃の気配が左から感じられた。俺は瞬時に左側を防御するが、衝撃は右側から来た。

 そしてその攻撃を防御出来ずに受けてそのまま吹き飛ばされて壁にめり込んだ。肺の空気が一気に押し出され、呼吸がままならない。口から血も少量だが吐いてしまった、内臓にもダメージが入ってしまったようだ。

 来ると思っていなかった方向からの攻撃で脇腹への重い一撃、攻撃が身体に触れた瞬間に反射的にスライムスーツに魔力を込めていなかったら肋骨辺りから俺は上下に断ち切られていたかもしれない。

 

「ほう、防御が間に合ったようだな」

「身を守るのは一番初めに訓練するからな、その成果が出ただけだ」

「成る程」

 

 身体を治しながら冷静にたった今何をされたのかを分析する。左から斬撃の気配が来たと思ったら実際は右側から斬られた。状況を見直してもどのような過程でどのような事をされたかが分からない。

 確かに初めは左だった。それは間違いない。斬られるまで右側にフェンリルが居る事に気が付けなかった。攻略のポイントはここだろう。フェンリル本体の気配が読めなかった事が一番問題だ。

 先ほど調べた霧が必ず関係している。あれは少しフェンリルの気配が混じっていた。何回か攻撃を見ると分かると思うけど。

 

 たださっきの攻撃を何回も受けたくない。あの厄介な『空蝉』とかいう攻撃をされると確実に喰らってしまう。だからあの攻撃をさせない様にひたすら攻撃を続けるしかない。

 そういう事でスライムの剣を再び作り出して斬りかかる。時に違う武器に変えながら変幻自在の攻撃を仕掛ける。だが一発も届かない。

 いつもの速度で剣が振れないというのもあるけど、純粋に剣術などの武器の扱いの練度が違いすぎる。

 

「いい太刀筋だ悪くはない、努力の跡が見える。だがまだ荒い、途中で他の事を始めて剣術を怠ったな。だから武人に至る資格が無いのだ」

「やる事が、多かったからなッ!」

「仕事は破壊工作や潜入捜査か」

「それが悪いか!」

「いや」

 

 途中で今までにやって来たことや自分の実力が足りていない事を指摘されると腹が立つし、集中力が乱れる。

 

「隙だらけだな」

 

 そう言うとまたフェンリルは消えてしまった。今度の気配は……後ろからか。

 だが振り向いた瞬間に背中が斬られる。スライムスーツを貫通して身体も斬られる。振り向きざまに剣を振るうが全く当たらない。どういう原理で斬撃の気配を錯覚させてきているんだと思っていたけど、さっきの濃密な殺気が頭に思い浮かぶ。

 何となくカラクリが分かって来た気がする。それを確かめる為に一回魔力を一気に放出する。

 一瞬霧が晴れた時フェンリルが少し嫌そうな顔をしたのを見逃さなかった。成る程ね何が武人だ。霧に紛れて自分の気配を撹乱しこっちに分からない様にして斬りつけていると言った所か。

 

「そろそろ終わりにしよう」

 

 そう言うと奴はまた霧に包まれて消える。さっきの仮説が正しいならカラクリはもう分かったし攻略方法も浮かんだ。恐らく俺が感じているのは魔力で形成された囮の斬撃の気配だ。正直気配などの探知を魔力に頼っていた俺にとってはこのフェンリルは天敵の様な存在だ。

 本命の攻撃は極限まで気配を消したものだろう。魔力の流れではなく物体が空気中を通るときに発生する微妙な空気の流れを探知すれば見分けられるはずだ。

 後ろから斬撃の気配、だがこれは囮で空気の流れから察するに本命は右側からの上段斬り。

 

「――ッ! 防ぐか面白い」

「タネは分かった、そう簡単にやられるかよ」

「そうか、ではこれはどうだ?」

 

 そう言うと相手は消えずにそのまま剣を振るってきた。しなやかに鞭のように放たれる斬撃、それが振るわれる度に増えていく。一本、二本、三本と増えていく。これは本当に全て囮なのか、全て警戒しないといけない気がする。

 その増えていく斬撃に気を取られていたのか、いつの間にかフェンリルが再び消えている事に気が付くのが遅れた。

 

「しまっ――ッ」

 

 九本の斬撃に紛れた突きへの反応が遅れてしまった。防ぐために剣を盾がわりに使おうとしたが、間に合わず俺は心臓に剣を突き立てられた。その威力は凄まじく背中側が衝撃により裂けて血と肉が辺りに飛び散る。

 流石にダメージが大きすぎる、俺はその場から立ったまま動けなくなった。

 

「勝負あったな」

 

 そう言いながらフェンリルは俺から剣を引き抜く。前からも血が流れていく。

 

「……」

 

 ただ無言のまま相手を睨みつける。このままここで終わる訳にはいかない、今この場で確実に殺してやる。強欲の瞳に吸われるけどそれを上回る量の魔力を全身に回して身体を急速に修復していく。まだだ、まだ死んでいないから負けていない。

 フェンリルと戦い始めて数分。襲撃が始まってからまだ二十分も経っていない。まだ間に合うはずだ。まだ誰も魔力欠乏状態になり首輪の装置が起動して何かが起こるという事は起きていないはずだ。誰も死なせずに済ます方法はまだあるし、まだ間に合う。

 本当は余り使いたくなかったから使わなかったけど、そうも言っていられない。

 

 俺は躊躇なく持ってきていた霊薬を全て飲んだ。




 今回もここまで読んで頂きありがとうございます!

 前回がかなり長くなってしまったので今回は少し短めです。
 それに投稿期間もかなり開いてしまったので連投になります。
 このままこの章の終わりまで書ければいいのですが……。

 次回も楽しみにして頂けると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。