陰の立役者と呼ばれて   作:一般構成員

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第十八話 陰の立役者は綺麗には終われない

 

 

 

 目の前の少年は持ってきていたみたいだった薬の様な液体を心底嫌そうな表情で飲んだ。

 そこまで嫌なら飲まなければいい物を、この少年は一体何処まで戦士としての自身の価値を落とすと気が済むのか。

 飲む為に仮面を外していた少年の顔は目の周りが黒く染まり、肌は死人の様に青白くなりそこに黒く蠢く血管が浮き出ているという、明らかに身体の許容量を超えた効果が出ている様に見受けられる。一体何を入れたらその様な効果が出る薬を作れるのか。

 

「随分な見た目だ。まるで死人の様だぞ?」

「本来は普通の人間が飲んでいい代物じゃ無いからな、これは」

 

 少年は何でもない風にこちらの問いに答える。どうやら話せる程度には回復したらしい。たった数秒でここまで回復するのは少々驚いた。

 

「それで? その様な代物に頼ってどうする」

「……」

 

 先ほどとは違いこちらの問いには答えず、少年は自身の背後に異様な翼を形成した後にこちらに剣の切っ先を向けるだけだった。

 成る程、これより先は言葉は不要という事か。

 そう感じた私は再び空蝉を放つ。

 しかし少年は先ほどとは違い防御する訳では無く、空中を飛び出して回避行動を取り始めた。それもこの狭いドーム状の空間でだ。

 この狭い空間でただひたすらに逃げるだけでは勝つことは出来ない。

 寧ろこの数分間の戦いでそれは理解しているはずだ。

 ならなぜこの様な一見無意味な事をしているのか。それはこの行動に意味があるからだろう。

 この少年はいやジョーカーという男は先ほどから躊躇していたり、何かをずっと隠すような行動が多かった。武器を振るう時など右手を庇いながらの行動が多かった。頭や首、心臓など生存に必要不可欠な部位も守ってはいたが、それでも奴の右手には何処か違和感がある。

 何か秘策でもあるのだろう。それを正面から捻じ伏せたい、そんな衝動が湧いてくる。

 今まで何人もの高名な戦士たちの心を折り、その命を奪ってきた。自身の研鑽してきた技が最高峰に近づく実感が得られるのが無上の喜びだ。だから戦いは止められない。

 ああ、このジョーカーという男は一体どの様な自身の集大成を見せてくれるのか楽しみになって来た。

 先ほどの顔に表れていた症状を見るに身体は長い時間持たないだろう。だから数分、いや数十秒で決着を付けに来るだろう。

 

 それにしても速い、この移動速度なら目で追えない訳では無いが一体何処まで加速するつもりか。

 急速で接近して通りすがりに斬りつけてくるがそれの威力も段々と高くなってきた。

 受け流すにも速すぎて態勢が整っていない状態で襲い掛かって来る。

 

 だがこれでは無い筈だ。秘策がこれな訳ない。

 リリは野生の感が残っているのか反応して攻撃までしている。しかしジョーカーはそれに中途半端な反撃しかしておらず全く有効打になっていなかった。

 だが傍から見ても戦いにくいと思っていると分かるような遠慮した動きをしているのが分かる。

 

「これでは無いのだろう? 君の集大成というものは」

 

 返事は無く斬りかかって来るだけ、こちらも血牙を振るい斬るが、何回かは当たり確かな手ごたえを感じる。しかしジョーカーの移動速度が一向に落ちない。

 それどころか更に加速していく。

 流石にこれ以上の速度を出されると見えなくり反応できなくなる。

 そう思った時だった。一瞬で天井が斬り刻まれ落ちてきた。

 

 見えなかった。どうやって斬り刻んだのか全く目で追えなかった。

 そして辛うじて捉えたジョーカーの姿はこちらを一瞥したような様子で地上に飛び去って行く姿だった。

 ……逃げたのか? いやまさかそんな事は無い筈だ。先ほどは何かを確認した様子だった。まるで私が反応出来ていないのを確認するような。

 私が反応できない速度を確認していたのか? 何の為に?

 そう考えていた時だ、気配も何もかも感じなかった三秒間の後に突き刺すような気配と膨大な量の魔力を感じたのは。

 咄嗟に上空まで開けられた縦穴を見上げるが何も無い。いや、だが感じるこの突き刺すような殺気。何か来る事だけは分かる。

 私がそう警戒していたから偶然見えた。上空より光りながら飛来する人差し指程を金属の針の様な物が。

 それを全神経を集中して振り上げていた血牙で弾こうと渾身の技術で当てる。

 しかしその後信じられない光景が目に入った。全ての時間が遅くなっている感覚がする。

 その高速で飛来する金属質の針に当たった血牙がまるで液体の様になり溶け、弾く事はおろか何も出来ていなかった。

 そして私が霧になるよりも速く、その針は身体に当たって――――

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 ――時は少し遡る。

 

 

 俺は霊薬を四つ共全部飲み干した。一つ一つが親指程の長さの瓶に入った小さい物だとしても、その効果は絶大だ。何せこれは普通の人間が飲むものでは無いからだ。変異体と呼ばれるモンスタースレイヤーであるウィッチャーが飲むものだ。

 前世で結構やり込んだゲームの内の一つで、霊薬の調合素材を何となく憶えていたから作れたけど。

 作中でも一般人が飲んで廃人一歩手前か廃人になっていたけど、あれは多分安静にしとかないといけない状況で強制的に連れていかれたからだと思う。

 彼女には魔法や魔力による回復手段は無かったけれど、俺は何とか自己治癒で多少は悪影響の方は軽減できるはずだ。

 

 そう思ったからいくつかの種類の霊薬を作っておいた。使わないに越したことは無いけれど、今回は飲まないと勝てないと思った。

 だから飲んだけれど予想以上にキツイな。普通に考えて春ツバメと雷光と吹雪とマリボーの森を全て飲んだら中毒度がヤバいな。多分九十ぐらいだったかな。

 すぐにでも白い蜜を飲んで綺麗さっぱり効果諸共打ち消したい所ではあるけれど、俺の作った吹雪には少し欠点がある。

 それは徐々に効果が表れるので最大効果が発揮されるまで大体九十秒程でそれ以降はまた効果が急速に切れていく。

 つまり最大効果を発揮する九十秒程に合わせてアレを使う必要性がある。

 

「随分な見た目だ。まるで死人の様だぞ?」

 

 フェンリルがそう話しかけてくる。正直無視してもいいけどまだ話せる余裕がある。ここは敢えて話して、効果が表れるまでの時間稼ぎをする。加速して最高速度に到達すると摩擦でスライムが傷んでダメになる部分が出てくる。

 少ない時間だけ最高速度に到達してその時に攻撃する。何よりも奇襲の様な形では無いからタイミングが重要になって来る。

 

「本来は普通の人間が飲んでいい代物じゃ無いからな、これは」

 

 馬鹿正直に本当の事を話す。だけどこの程度何の問題も無い。知った所で作ろうとも思わないだろうし。

 

「それで? その様な代物に頼ってどうする」

 

 それというのはさっき飲んだ霊薬だろう。足元に空になった瓶が転がっている。返事をしてもよかったけどもう残り八十秒程だ。

 そろそろカウントの為に話している余裕が無くなる。だから翼を高速飛行用のジェットエンジンを混ぜた様な妙な形に変形させる。

 そして剣先を向けて準備が出来たから今からお前を殺してやるという合図を出しておく。

 これを合図と受け取ってくれた様でフェンリルはあの空蝉を再び放ってきた。

 そう来ると思って空間の丁度真ん中あたりに誘導するように飛び上がって回避行動を取り、ついでに攻撃をして後退させておく。

 あの気配はもう慣れた、そう簡単には当たらない。

 

 しかしここで一つ問題点がある。

 あのリリと呼ばれていたゼータ似の獣人の少女は高速で飛行しても何故か攻撃を当ててくる。

 ゼータの姿が重なって見えるから凄い攻撃しにくい。戦いの稽古とかそういう事をする時は手合わせをよくしていたけれど、ここまで明確に殺そうと攻撃された事は無かった。

 だからか決定打を与える事を躊躇ってしまう。やらなきゃ自分がやられるという状況だけど、そんな状況でも攻撃したくない相手は居る。

 彼女は既に死んでいる過去の人というのは分かっている。大昔に教団に利用されて死後もこうやって利用されているのだろう。

 そんな彼女をもう一度殺すような形で排除するのは如何なものか、そんな事をしたら俺はゼータにどんな顔をして会えばいい。それにこれから似た様な状況が来るかもしれない。

 今回はゼータだけど次はどうだ? イータに似た子も居るかもしれない。アルファやベータ、ガンマにデルタにイプシロン。七陰だけでなくナンバーズや他の番号だけで呼ばれている子達に似た存在も出てくるかもしれない。

 そんな時俺はそういう存在を殺せるのか。無理だ。

 曲がりなりにも彼女達の上に立つ立場だ。そんな酷い事絶対に出来ない。

 だから早い事フェンリルを殺して、強欲の瞳を止めて、それから彼女をこの場所との関係を断つ。それで晴れて彼女は解放されて天に昇れるだろう。

 そうやって今回でコツを掴んで次に活かせるようにしよう。最もこのフェンリルを無事に倒さないと来ない未来の話だけど。

 

 こうやって考え事をしている間にもう残り二十秒を切ってしまった。

 空間中を縦横無尽にに飛び始める。出来る限り無理な方向転換はしない。相手に予測されて攻撃されても絶対に速度は落とさない。たまにフェンリルを攻撃して場所の調整をしていく。

 何処が一番天井に穴を開けた時労力が少なくなるかは地上までのルートを計算して一番壁が薄い所に誘導する。

 そして一気に加速して天井を斬り刻み崩落させ、それと同時にフェンリルが今の動作を見る事が出来ていたかを確認する。

 面食らった顔をしているという事は見えていなかったという事だな。

 それが分かったらもう残り時間を使って最大まで加速して投げるだけだ。

 

 開けた大穴から勢いそのままで飛び上がり速度を落とさない為に出来る限り緩やかな円を描く様に飛んでいく。

 途中大気圏擦れ擦れまで行ったが何の感動も無い。俺はガガーリンの様な素敵な感性は残っていないらしい。それくらい余裕が無い。

 目に見えて時間の流れが遅くなってきたのが分かる。

 そしてずっと右手の中に入れていたタングステン合金の弾頭を取り出す。

 別にシドの強さに置いていかれるのが嫌だったとかそういう訳では無いけれど、それでも何か一つぐらいはとっておきの技を用意しておきたかった。

 クラウンの鉱山で偶然発見したこの超希少なタングステン。単体の金属では融点がかなり高く溶かすのも合金を作るのもかなり苦労した。

 だがこれを使用した投擲は一定の速度を超えると理論上はこの世界で貫通出来ない装甲は無い。勿論調べれた範囲では、と付くけど。

 人に放つ技じゃ無いけどそう言うのはこの世界では今更だ。

 

 投げやすくするためにタングステン合金の弾頭を先端にしてスライムで槍を形成していく。それを範囲外にでたおかげで全力で使える様になった魔力をありったけ込めて、身体強化も忘れずに。

 そして今まで溜めていた速度をそのまま乗せる形で槍を地表付近から地下に向けて全力で投げつける、タイミングはきっちり霊薬を飲んでから九十秒だ。

 推定秒速1.5kmを超える投擲だ、避けれるなら避けてみろ、フェンリル。

 

 フェンリルは避けようとせずに武器で弾こうとしていたが結果は武器の限界でそのままフェンリル諸共液体の様に弾け飛んで死んだ。

 その後からよく晴れた日中に雷鳴の様な轟音が辺り一面に鳴り響く。

 

 俺はそのまま、また強欲の瞳の範囲内に入った影響で上手く魔力制御が出来ずに半ば墜落する形で地下に落ちた。

 

「俺にしては……よくやった方じゃ……無いか?」

 

 思わずそんな独り言を言ってしまう。

 そしてそのまま這いながら強欲の瞳の所へ行く。身体の殆どが落下の影響で使えない状況だ。死にはしない程度まで速度を落として落ちれたけど、全身の骨が折れていない個所を探した方が速いくらいダメージを負ってしまった。

 周りに誰も居ない状況ならよかったけど、後ろから例の獣人の子が来ているのが分かる。

 追いつかれたら今の状況だったら抵抗出来ずに殺されてしまう未来が見える。

 流石にここまで来てそういう終わり方は遠慮願いたい。

 

 強欲の瞳のまであと一歩という所で後ろから来ていた足音が隣で止まった。

 

 そしてそのまま心臓を背中側から何処かで拾ってきていたのかフェンリルが持っていた武器の刀身の端だけで刺してきた。

 でも直ぐに動きを止めたいなら心臓よりも頭や首を狙うべきだった。

 スライムを伸ばして強欲の瞳のシステムの方に干渉しその機能を完全に停止させる。

 

「――ハッ、俺の勝ちだな」

 

 魔力を使える様になった瞬間にそのまま獣人の子に触れて、教団に縛られている原因と思われる魔力によるものかはたまた別の呪いの類かは分からなかったけど、契約の様なものを取り除いた。

 

 すると彼女の姿は段々と透けていくのが分かる。散々な目に合わされたけどそれでもただ命令を聞くしか出来なかった彼女には……やっぱり一言ぐらいは何か言いたいけど、そこは堪えて見送る。

 まだ実態があった彼女は俺に向かって強欲の瞳を投げ渡してくる。

 

「……もしかして使えって事か?」

 

 少女は無言のまま頷くだけだった。

 

「そうか、じゃあ有り難く使わさせて貰うよ。白い蜜がフェンリルに攻撃された時に割れて無くなっていたから」

 

 そうあの時心臓付近を刺突で攻撃された時にどうやら割れていたらしい。保険がない状況で俺はあの劇薬を飲んでいたのだ。今思うと正気の沙汰ではない。

 強欲の瞳に身体を治癒出来る使用方法があってよかった。

 

 最後に獣人の少女は俺を尻尾ではたいてそのまま粒子になって空気中に消えていった。

 フェンリルは倒した、強欲の瞳も止めて回収した、利用されていた獣人の少女も解放した。そして強欲の瞳に残っていた魔力を拝借して自分の怪我も治した。

 でもまだやり残したことがある。それは目の前のディアボロスの右腕だ。

 これもどうにかしないといけない。しかし問題がある。

 それは圧倒的に血が不足しているから今にも倒れそうだという事だ。

 

 そんな時天井に大穴の空いたこの地下にわざわざ入口からご丁寧に入って来る存在が居た。

 上から来たらいいのに何の拘りを持っているのか、一歩一歩大地を踏みしめる様にブーツの足音を鳴り響かせながら歩いてくる奴がやって来た。

 

「随分と遅い到着だな……シャドウ」

「随分と酷い状態だな……ジョーカー」

 

 シドがやって来た。

 

「敵は居ないのか?」

「お前が何処かで遊んでる間にそこの地面のシミに変えてやったよ」

「随分と出血していた様だが」

「想定外の事が多かったからな、流石にしんどい」

「そうか」

 

 シドの前では死にかけてる姿何てダサすぎて見せれないから空元気で立ち上がって、ディアボロスの右腕に近づく。

 

「……それは?」

「よくないもの」

「破壊するのか?」

「ああ」

「だったら代わりにやろう」

「代わりに?」

 

 どういう風の吹き回しだ? シドがこういうのに積極的になるなんて。

 

「シド、どういうつもりなんだ?」

「いやただ、僕にも思う所がある訳で」

「どういう事だよ?」

 

 その俺の問いに答える事無くシドは螺旋を描く魔力をその手に持つスライムソードに収束させていく。正確にはその剣先にのみ収束させていた。

 

「前にも話したけど物を使って自分を補うのはいい、それは武器を使うのと同じ事だから。でも君自身に負担がかかる薬のような代物は許容できない。それは僕の目指している陰の実力者のやり方じゃない」

「それは強いお前だから言える事だよ、俺はお前みたいに強くない。だから――」

「――だから手段を選ばないと? それは違うよ」

 

 シドはそう言いながら振り返って黒から赤に変わった瞳で俺を見てくる。真っ直ぐだけどふざけた理想、しかし誰にも折る事が出来ない一本の芯の通った強い意志の籠った瞳で。

 そんな瞳を俺は思わず目を逸らしてしまう。

 

「シュウは既にシュウにしか出来ない魔力の使い方が出来る筈だよ。確かに僕と同じ様な事が出来たらいいとは思うけど、それで個人の持ち味が消えるのは面白くないよね」

「いや俺は中途半端で大したことは出来ない」

「まあ、僕が言えるのはここまでかな。後は自分で気が付いたり知った方がいいと思うし」

「最後は適当だな……本当にお前は」

 

 そしてシドは剣を上段に構える。

 

アイ・アム・アトミックソード

 

 シドが放った剣によってディアボロスの右腕は粉微塵になって消えた。

 ……俺にしか出来ない魔力の使い方なんてあるのか? ただ他人の魔力と物の魔力に干渉するのが得意なだけでシドにだって出来てもおかしくない事だし。

 やってる所は見たことないけど、悪魔憑きの治療の応用で出来る筈だ。

 

 そんな何とも言えない気分になりながら、この学園襲撃事件は幕を閉じた。

 地上は付近で待機していたアイリス王女が率いる部隊と合流したグレンさんやマルコさん達が押さえてくれたらしい。

 そして怪我人こそ出たけれど死者は出なかったそうだ。一番の重症者は頭が重症な事以外は何とも無いシドだったそうだ。

 俺の方は何とか誤魔化した。貧血で常に倒れそうだったけどそこはこういう事が多かったから誤魔化すのも慣れてしまった。

 そして――――

 

 

 

「もうラワガスの方に行くのか?」

「はい。シュウ君や他の人達が元気になったのを見たので、私も自分の道を進もうと」

「そうか……長い様な短い様な期間だったけど、色々楽しかったよ」

「そうですね。私も多くの事を知れて楽しかったです」

 

 前を向いて進んでいるシェリーの姿が眩しい。ただもう心配は無いだろうなとは思ってる。

 

「もう時間じゃないか? 乗り遅れるぞ」

「もうそんな時間なんですね……えっと」

 

 何か言おうとしているのか口を動かしているが何も言えていないシェリー。気の利いた別れの言葉なんて要らない。何故なら――

 

「シェリー、またな。元気で」

「はい、シュウ君もお元気で」

 

 今回が永遠の別れという訳では無いのだから。またいつか何処かで会うだろうし。

 そして窓から手を最後まで振って来ていたシェリーの姿が見えなくなるまで俺も振っておいた。

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「随分と気にかけていたね? あのシェリーって子に。ああいう子がタイプなの?」

「別にそういう訳じゃ無いって。ただ可哀想だからほっとけなかっただけだよ」

「私の時もそう思ってた?」

「いや、あの時はそんな事考えてなった」

 

 そう言いながら振り返ってゼータと向き合う。

 ゼータの時はもっとこう色々考えていたからな。本人には言えないけど。

 

「また任務をほったらかしてこっちに帰って来たのか?」

 

 少し前のウィクトーリアからの任務の報告書にそう言った内容が書かれていたからな。

 

「いや今回は誰かさんの件で緊急という事で呼ばれて帰って来たんだけど」

「アルファが呼んだのか?」

「そう。何でだと思う?」

 

 心当たりが無い事も無いけど今更そんな事でゼータまで呼び戻す程ではないと思うけどな。確かに報告せずにほぼ全て自分一人で解決しようとしたのは悪いと思ってるし、次からはちゃんと連携をとってもっといい結果で終われるようにしようと反省してる。

 ちょっと考えても分からなかったから正直に答えるしかなさそうだ。

 

「いや分からん」

「じゃあコレに見覚えは?」

 

 そう言ってゼータは懐から四つの小さい瓶を取り出す。

 ……やっべぇ、回収するの忘れてた。

 

「随分と顔色が悪いけど、これがどういう代物か教えてくれるよね?」

「……はい」

 

 俺は従うしかなかった。

 

 その後ミツゴシの建物の上にある建物の一室に連れ込まれて集合していた七陰全員からみっちり怒られた。

 材料と製法と他にどういうものがあるのか洗いざらい全て喋らさせられた。

 その後で二度とこういう危険な霊薬というものを使うなと、そう言われた。

 まさか身内からも手札を没収されるとは思わなかった。




 今回もここまで読んで下さりありがとうございます。

 今回で一巻の内容が漸く終了しました。次回からは二巻の内容に入っていきます。

 次回も楽しみにして頂けると幸いです。
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