陰の立役者と呼ばれて   作:一般構成員

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 最近リアルが忙しく執筆する時間が取れなくて申し訳ございません。プロットだけは考える事が出来ているのですが、本文が書けていないという状況に。

 そして大変遅れましたが評価やお気に入り登録、感想など非常に励みになっております。誠にありがとうございます。


聖地リンドブルム編
第十九話 陰の立役者はアフターケアをしたい


 

 

 

 流石に使ったものが使ったものだっただけにほぼ自分の魔力が籠った強欲の瞳を使って治療したけど、まだ何処か本調子では無く体のいたる所が何かしらの異常を訴えてきている、そんな状況だった。

 頭の痛みはまだひいていなく、全身の筋肉、主に四肢の部分だけど筋肉痛のような痛みが残っており、何より魔力を使うと痺れるような痛みが魔力回路?というのか知らないけどそこに感じるようになってしまった。幸い症状は段々とよくなっているのでその内に治るとは思うけど暫くはこの症状に悩まされる事になりそうだ。

 

 そして今俺はゼータとイータに引きずられる形で久しぶりにアレクサンドリアのシャドウガーデンの本拠地の方に帰ってきていた、いや帰って来たというのは正しくない。連れ去られていたというのが正しい。

 何でもこっちでそれなりに施設を整えれたから電力を使用した機材が使えるとか何とか、少し前に物を取りに来たイータがついでに改修したらしく随分と便利になったらしい。

 そのおかげで前から言っていた清潔な環境での精密検査等が出来るようになったとか。

 

「なあ……ここまでする事か? もうそこまで問題がある状態じゃ無いし改めて検査する必要なんて無いだろ」

 

 俺がそう言ったら二人は振り返って睨んできた。えっ、怖っ。

 

「それ本気で言ってる? だとしたら七陰全員で怒った意味が無かったって事になるんだけど」

「……ゼータの言う通り。おまけに……ジョーカーが……こういう時に、本当の事……言ってるか分からないから、一回検査して……調べないと、信用できない」

「俺の信用無さ過ぎだろ」

 

 ここまで信用されていないのは流石にショックを受ける、いや原因が全部自業自得というのは分かってはいるけども。

 

「出来る限り早めに切り上げてくれよ? あまりあっちで長い間姿を消しすぎると怪しまれそうだし」

「それに関しては問題ないよ」

「おいまさかゼータお前何かしたのか」

 

 余りにも準備がよすぎて怖くなってきた。

 

「大丈夫。少なくとも一週間は戻れなくても怪しまれないようにしてあるから」

「いや全然安心できないけど? 何を言ったりやったりして来たんだ?」

 

 聞いてもゼータはこっちを見たまま笑顔を向けてくるだけだ。――可愛い。

 ――じゃなくて、後で何が起きるか分からないから怖い。

 

「……まあ、諦めて。……大人しくしていたら、早く終わる……筈だから」

「そうなる事を祈ってるよ」

 

 結局精密検査した結果、血中に有毒な成分が問題ない量だったとは言え残っていた上に、筋肉の繊維が未だに千切れている部分があったり、吹雪の反動の影響か反射神経というか反応速度が落ちてたり、諸々体中に問題点が見つかったので無事入院が決定した。

 

 それから回復して自由に動けるようになったのは五日後だった。

 久しぶりにアレクサンドリアの中を散策していたら、気になる気配を感じた。個人的に因縁というかただの縁というか一方的に託されたというか、一応俺も了承して救出は出来たけど助けれたかどうかはまだ分からない彼女の事、つまりミリアの事だ。

 部屋の前を通り過ぎる時にあの子の目が覚める気配がした気がした。気のせいの可能性もあるから少しだけ覗いて違うかったらまた来ようと思っていた。そんなそこまで深く考えずに扉を開いたから目が合った際の反応が変になったのは言うまでも無い。

 

「あっ」

「えっ?」

 

 気まずい空気が俺たちの間に漂う。落ち着け予想外の状況にも瞬時に対処出するのが最後まで責任を持つ者の務めだと思う、多分。

 

「目が覚めたんだな、具合が悪い所は無いか?」

 

 そう言いながら努めて自然な流れで入室する。本当は偶然のタイミングで来たけど、あくまで定期的に部屋を訪れていてからたまたま居合わせる事が出来たという感じにする為に。

 

「いえ特に無いです、それよりもあの貴方は? ……いえ、貴方が私を助けてくれた人ですよね」

 

 驚いた。確信を持って言ってきているぞこれは。

 顔を合わせたことも無かったし声を交わした事も無かったのに気づいているのか。理由は治した時の魔力を憶えていたとかそういう所だろうか?

 でもこれは不味いな、そもそもまだ目が覚めないと思ってカバーストーリーとか何とかそう言うのは考えてきていない、父親であるオルバ子爵は既に死んでしまっている、シドが殺してしまったからな。本当にこういう貧乏くじのような役割ばっかり回って来る事が多い。

 

「よく分かったな、君が捕まっていた教団から助けたのは確かに俺だ。元気になってよかったよ」

 

 取り合えず場を繋ぎながら考えるしかない。

 

「ところでお父様の事は知りませんか? 私が悪魔憑きに……あれ? 悪魔憑きの症状も治ってる!?」

「悪魔憑きは治せる症状なんだ……本来は」

「そうだったんですね」

 

 悲しい事にせっかくミリアは元気になったのに、一番この子の事を思っていた存在は既に居ない、オルバ子爵既に死んでしまっているのだ。ところでここで一つ考えよう。

 オルバ子爵が既に死んでしまっている事は伝えないといけない、問題なのはどう伝えるかだ。

 

 その一、普通にうちの組織のトップと敵対してしまったので殺されてしまいました。でも最後を看取った俺は君を助けて欲しいと言われたので助けました、と正直に言うパターンだ。

 これは楽だけど普通に考えて気分がいい話では無いだろう、もう少しオブラートに包んで話すにしても結局起きてしまった出来事は変わらないし変えられない。

 おまけにシドに対して敵対心を抱く事になるかもしれない、それは困る。だからこの方法もいい手段とは言えないだろう。

 

 その二、俺たちと敵対していた組織に所属していたみたいだが君の為に反旗を翻したが、返り討ちに会い後で出会った俺が最後を看取りその際に君の事を託されて助ける事が出来たという、嘘を言うパターンだ。

 これならオルバ子爵の名誉も守れるし、ミリアが最悪シャドウガーデンに敵対心を抱く事は間違っても無いだろう。

 だがこれにも問題がある、それはミリアをほぼ確実にこちら側つまり裏側に引きずり込んでしまう事になる事だ。この様な形で入ったならばディアボロス教団に復讐心を抱いてそのままの衝動で行動をしそうだ。

 はたしてそれは助けたと言えるのだろうか、恐らくそれは助けたではなく利用したに変わってしまう。助けて欲しいとオルバ子爵に頼まれた手前、この手段は使うべきでは無いだろう。

 

 その三、その一のシドが殺してしまった所をそのまま俺がやった事にする。互いに対立しあう組織に身を置いていた為剣を取り戦いどちらかが死ぬしかなかったと言う事に変えるパターンだ。

 シドは最早オルバ子爵を殺した事を憶えていないかもしれない、仮にそうだったならばアイツに責任を取る事は出来ないだろう。恨まれる対象がシドから俺に変わる、俺ならその辺りの事情は知っているからまだマシな対応が出来る筈だ。

 個人的に一番まだマシな案だと思う。もし恨まれたとしても構わない生きていたらそういう事もあるだろうと割り切れるし、何より自ら進んでそういう状況に持っていくなら後悔は無い。

 

 その四、オルバ子爵とは別れてそれっきりで行方が分からないと真っ赤な大嘘を言うパターンだ。

 これはもう責任とか諸共全てを投げ出す最低最悪の所業だ。一番楽でこちらもミリアも互いに傷つかない手段だが倫理的にも個人的にも論外だ。思いついてしまった自分を殴りたくなってくる。

 

 その五は……もう思いつかない。ダメだな。

 

「あの……先ほどから難しい表情をしていますが大丈夫ですか?」

 

 時間切れだな。どうであれミリアにはオルバ子爵は既に死んでしまった事を伝えないといけないだろう。

 

「大丈夫だ。けれどミリア、君にはこれから残酷な真実を話さないといけない」

「それはお父様に関係する事ですか」

「そうだ」

 

 ミリアは考え込んでしまい黙ってしまった。居心地の悪い空気感が漂い、窓の外から聞こえてくる平和そのものを感じさせる鳥のさえずりが、今この時だけは煩わしく思ってしまう。

 

「聞かせて下さい、その真実を」

「分かった……そうだ、先にこれを渡しておくよ。君のだと聞いてる」

「この青い宝石の入った短剣は……まさか」

 

 結局俺が選んだのは――――

 

「君のお父さんは既に亡くなっている。出会った時には互いに対立しあう組織に身を置いていた。俺はシャドウガーデンに、君のお父さんであるオルバ子爵はディアボロス教団に、もう二年前ほどになる。シャドウガーデンのトップであるシャドウの姉であるクレアさんが攫われてその際に戦う事になった。君のお父さんは君の治療の為に脅されて悪魔憑きの兆候のある子供を攫っていた」

「そ、そんな……では貴方達がお父様を?」

「ああ、結局最終的には俺が看取ったよ、その際に君の事を託された。悪魔憑きを治せるなら娘の事を頼むと」

「看取ったのは貴方なのですね、では誰がお父様を……殺したのですか」

「君のお父さんを殺したのは――――俺だ

 

 ――――その三、シドが殺した事をそのまま俺がやった事にする。

 アイツに責任を取る能力があるとは思えない。だから俺が引き受けるしかないだろう。あの時もっと早く俺がシドとオルバ子爵が戦っている現場に到着していたらこの様な形にならなかったのだろうか、運がよかったら共に肩を並べて教団と戦うそんな未来もあったかもしれない。

 

「そう……ですか」

 

 渡した短剣を見ながらミリアはそう呟いた。

 

「随分とこの短剣手入れをされていたようですね」

「形見になってしまう事は分かっていたから、悪い状態にする事は避けたかった。それと……託されたからには何時でも渡せるようにと思ってな」

 

 お互いに少しの間黙ってしまう。そしてその沈黙を破ったのはミリアの方だった。

 

「少しの間一人にして頂けませんか? 気持ちの整理をしたいので」

「……それも……そうだな、分かった。ここを出る時はまた言ってくれ」

 

 下を向いたまま殆ど動かなくなってしまった彼女に掛ける言葉が何がいいのか全く分からなかった。でも扉を開けて外に出て扉を閉じる寸前。

 

「君のお父さんを守れなくてすまなかった」

 

 それだけ言って後にした。後ろから聞こえてくるすすり泣く声が耳にこびりついて離れなかった。また自分の無力さと無能さを認識させられる結果になった。

 

 

 

 それからアレクサンドリアで用意してくれていた自分の部屋に戻る。暫くベットで横になっていたが結局何とも言えず何処にぶつければいいか分からない感情を押さえられずにアレクサンドリアから少し離れた湖畔に一人で行く。

 何もせずにただ風に揺られて波打つ湖面を眺めるだけ、まだ日は高く夜まではまだ遠い。ミリアは気持ちの整理をしたいから一人にして欲しいと言っていたけど、実は俺も同じだ。

 俺だって気持ちの整理をしたかった、だからこうやって一人になれそうな場所を選んで来た。だから一旦誰とも会話をしない時間が欲しい。

 

「悪いけど……今は一人にしてくれないか」

 

 だから勝手に頼んでもいないのに付いてきてくれていたみたいだけど帰って貰う。今は誰だろうとどんな人だろうと話したい気分では無い、それが例え自分の中で大切な人の一人だとしても。

 

「そんな状況の人をそのままにすると思うの? だとしたら心外なんだけど」

「一人にしてくれって言ったんだけど? ゼータ」

 

 言外に帰れと言ったのにも関わらず隣にゼータが座って来た。

 

「何で本当の事言わなかったの? 正直に主が殺したって言ったらよかったのに」

 

 聞いていたのかさっきのミリアとの会話を。

 

「アイツじゃその後の責任取れないだろ」

「まあ……そうだね。だからってジョーカーが全部責任を取ろうとして背負いこむ事は無いと思うよ」

「積もり積もるとシャドウガーデンが内部崩壊する可能性があるものを残しておく必要は無いからな。こういうのを引き受けるのが二番手や副官の仕事だろ。トップは堂々として貰わないと示しがつかない」

「それでいいの?」

「いいんだよ。確かにアイツにはムカつく事が多いけどそれでもあの時出会わなかったら俺はここに居ない。こうやって並んでゼータと話したりする事も、イータと一緒に何か開発したりも出来ていない、せめてその分の働きはしないとな」

 

 そう言いながらゼータの顔と建物の方を、どうせ望遠鏡か何かでこっちを見ているだろう人物、つまりはイータの方を見ながらそう言った。検査とか言いながら服に余計なものを取り付けてる事ぐらいは気が付いてる。人にマイクなんか常時付けてどうするんだ、俺のプライバシーが無くなるだろうが。おかげで今の会話も聞いてるだろうけど。

 

「無理のしない範囲でね」

「もうそんな無理はしない、流石に死にかけるのは二回で十分だ」

「一回だけでも十分だと思うけど?」

「違いない」

 

 誰かと話したら少しだけ気分が晴れてきた気がする、本当にそんな気がしているだけだけど。それに実際は何も状況は変わっていない。それでも気分が変わるだけでもその後の対応力が変わる。

 まだミリアを一人にするべきだろうから暫くはここで寝るのも悪くないかと思ってその場で横になるとゼータがまた話しかけてきた。

 

「ただあの子はそこまで鈍くない子みたいだから近いうちに気が付くと思うよ」

「それはそれで困るな、わざわざ嘘を言った意味が無くなる」

「今回は悪い様にはならないよ……きっと」

「だといいけどな」

 

 本当に悪い様にならないならそれに越した事は無い。

 

「シドの姉さんのクレアさんが攫われた時の夜の事憶えてるか?」

「うん? 憶えてるけどそれがどうかした?」

「あの時もっと早く着いていればこんな事にはならなかったのかなって」

「どうだろう、もうあれはどうしようもなかったと思うけど」

 

 速さが足りない、実力が足りない、知識が足りない、何もかもが足りていないこの状況。既に成人した大人が一人居れば気持ちに余裕が出来てもう少し上手く立ち回れたかもしれない。前世で生きてきた年月を足すと俺やシドがどちらかと言うと他のメンバーを引っ張って行かないといけないと思っていた時期もあった。誰にも方針を相談できない、やっている事が正しいかも分からないそんな状況がずっと続いていた。

 少なくともクラウンの表の顔ぐらいは生きて仲間になっていたらオルバ子爵に任せる事が出来た筈だ。今の俺は二足の草鞋を履くどころか、シャドウガーデンにクラウン財団、魔剣士学園の生徒に紅の騎士団と四つの身分と顔を持っている。控えめに言って首が回らない。

 

「最近は本当に忙しそうだしね。王都での教団の機能を停止させたけど、その代償として体調不良になってるし」

「あれはどうしようもなかっただろ」

「もっと連絡とか連携をしっかりと取っていたらもっといい結果になったと思う」

「まだ説教の続きをするのか? 二度とあんな状況にならない様にするって言っただろ」

 

 このままでは説教が再び再開されそうだ。何か話を逸らさないと……。

 

「ん、もう時間切れか」

「時間切れ?」

 

 ゼータがそう言いだした後直ぐにイータがこっちに来ている事に気が付いた。少ししたらイータが到着した。そして来て早々開口一番に。

 

「抜け駆け……よくない」

「ただの役割分担だよ。物事を円滑に進める為のね」

 

 何だかゼータとイータの間に険悪な雰囲気が漂う。それなりに長い付き合いだし関わる事も多いけど、未だに二人の仲がいいのか悪いのかが分からない。

 

「仲がいいのか悪いのか分からないな、二人は」

「悪くはないよ、悪くはね」

「……うん悪くはない。いいとも……言えないけど」

 

 ベータとイプシロンみたいな関係なのか? でもあっちの二人は一緒に出掛けていた事もあったから仲はいいと思うけど、実際の所はどうなんだろうな。

 

「そう……先に言っておくと、ミリアが……後で、ジョーカーと……話したいって……言ってた」

「会ってきたのか?」

「……ただの定期検診のついで」

 

 イータが若干俺から目を逸らしながら言ってくる。これは嘘を言ってる時の言い方だな、何か余計な事をしていなかったらいいけど。

 

「話したいって言っていたならもう戻るか。いつまでもここで感傷に浸ってる場合じゃないな」

「行くんだ、もう」

「ああ、いい加減この事にも決着を付けないとな。このままだと先に進めないと思うし」

 

 ミリアの心の整理がついたならもう俺が悩んでいても仕方が無いだろう。シャドウガーデンに加わらずにアレクサンドリアを離れるならそれでいい、俺の恨んで正体を外で話すのも別に気にしない。それで彼女の気が済むのならあるがままに受け入れよう。

 最終的にシャドウガーデンの場所さえ把握されなければ、俺自身の表の姿での活動が制限されても問題ない。俺の力不足が招いた結果だ。

 どのような結果であれなるようにしかならない。

 

 

 

 そして俺は再びミリアの治療室を訪れた。因みにゼータとイータは部屋の外で聞き耳を立てるとの事だった。どうなるか分からなかったから追い払ったけど無駄に終わった。

 

「入るけど、いいか?」

「どうぞ」

 

 許可を得てから入室をする。

 入るとミリアはベットから上体を起こして窓の外を眺め、灰色っぽい髪が開いている窓から入って来る風に靡かせられて揺れていた。

 

「来て下さったんですね」

「来ないという選択肢は無いからな、それでここから出る準備が必要だと思うけど何時にする?」

「出ていくにしてもここでもっと多くの事を学んでからですね」

「学んでから?」

 

 てっきり体調が回復したら早々に出ていくとばかり思っていたけどそうじゃないのか? だとしたらまるで――

 

「まるで俺たちと共に活動する様に聞こえるけど」

「ええ、そうさせて頂こうかと」

「仮にも君の父親を殺した男と来るのか?」

「敵だったお父様との約束を律儀に守る方の下につくのであれば何も問題ありません。看取って下さったんですよね、そして殺した相手は別の人。庇わなければならない対象つまりここのトップによってお父様は止められたという事ですよね」

 

 何てこった。嘘を言ってた事がバレてる。

 

「おい、イータ。絶対に話しただろ」

 

 そう声を掛けるとのそのそと入って来て口を開いた。

 

「……私は聞かれた事を……答えただけ。既に……殆ど自分で……気づいていた」

「そうか」

「……ん」

 

 じゃあ俺のあの悩んでいた時間は何だったんだ。

 

「でもその流石にお父様を殺したシャドウ様?の下につくのはちょっと嫌なので出来ればジョーカー様、貴方の下につきたいです。何もクラウン財団は戦うだけじゃないそうですし」

「そうだけどなぁ。君のお父さんには君を助けてくれと頼まれている訳で、危険な目に合う環境に居て欲しくないってのが本音なんだけど」

 

 俺がそう言っているとまた一人、ゼータが入って来た。結局二人共ガッツリ関わって来てるじゃないか。

 

「本人がいいって言ってる訳だしいいんじゃない? もう」

「このままだとゼータの時の二の舞みたいな状況に……」

「私は後悔してないよ、あの時の決断を。だからこの子もきっとそう、だから大丈夫」

 

 結局押し切られる形でミリアがクラウンの方に加入する事が決まってしまった。ああ、流されやすいな俺。

 そして後でイータと一緒に王都の方に来るという事になり、二人とは別れた。そして現在俺は王都の方に先に戻るから、ゼータは次の短期の任務に行くのでアレクサンドリアを出る準備をしていた。

 

「そう言えばずっと聞きそびれていたんだけど」

「何だ?」

「最近私以外の猫系の獣人に会った?」

 

 会っていないと即答しそうになったけど、あれは会ったというのに入るのだろうか? どう考えても既に故人だったしなぁ。

 

「会ったような会っていないような、どう表現すればいいのか分からない相手だったな」

「どういう事?」

「フェンリルと戦った時に先に強欲の瞳を何とかしようとしたら召喚かな? された人物が猫系の獣人だったんだよ」

「それで交戦したと」

「そう、ただもう死んでる人が縛られていただけっぽいから、何だかなぁって思ってな」

「じゃあ私の気にしすぎかな?」

「何が?」

「何でもない」

 

 絶対に何かあると思うけど俺も話していない内容があるからお互い様だな。これ以上は余り追求しないでおいた方がいいな、わざわざ藪蛇する事はないだろ。やったら被害を受けるの俺の方な気がするし。

 

「一週間も離れた言い訳って何にしたんだ。知っておかないと流石に合わせられないから知りたいんだけど」

「普通にクラウンの関連事業の視察が入ったから暫くは帰れないという事にしておいたよ」

「まともな感じだな」

「そうだね、アイリス王女も納得していたし」

「は? 直接会ったのか?」

「ダメだった?」

 

 出来ればゼータには余りこういう事に関わって欲しくないからやらないで欲しかったけど、仕方が無いか。

 潜入してもらう事が多いからゼータの存在を余り余計な人に知られたくなかったけどなぁ。

 

「別にいい」

「そう」

「じゃあまた今度、元気でな」

「そっちこそあんまり無茶しないでよ?」

「分かってるって」

 

 そう言って俺たちは分かれた。

 次は何をやる事になるのやら、ミツゴシによってアルファ達から何をする予定なのか聞いてから紅の騎士団の方に行って、シュウとして何をするべきなのかを確認して、シャドウガーデンにとってどう動くべきなのかを考えないとな。

 そんな事を考えながら王都に向けて歩き出した。




 今回もここまで読んで頂きありがとうございます!

 全く二巻の内容に触れれておりませんが一応二巻の場所には入っているつもりです。次回から本格的に聖地リンドブルム編始まります。

 それでは次回も楽しみにして頂けると幸いです。
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