陰の立役者と呼ばれて 作:一般構成員
第七話 陰の立役者は学生生活を満喫したい
突然だが俺たちはもう十五歳になった。そう、なってしまったのだ。
シドと会った時にした口だけの約束だったし、もう五年も経ってるから忘れてると思ってたけどアイツはこういう事に限ってしっかりと憶えていた。
俺たちがミドガル魔剣士学園に入学するまでに、この世界の主人公の様な存在を見つけるという約束だ。間に合わなかったら俺がそういうロールをしなくてはならないというおまけ付きの。
アルファが余計な事をしなければ今頃俺とイータで主人公みたいな可能性を秘めた人造人間を作る事が出来ていたのに。
いや、流石にヤバい事をしてる自覚はあったけど、それよりも主人公ロールをするのは避けたかったんだ。
なのにアルファは弁解の余地も無く、デルタを放って施設ごと破壊してきたのだ。
施設ごと破壊はやりすぎだと思う。あの施設にどれだけの資金をつぎ込んだと思ってるんだか。
俺もイータもあの時ばかりはFXで有り金全部溶かした様な顔になってしまった。
自分で主人公を作る計画は施設ごと木っ端微塵に砕け散ったが、俺にはもう一つのプランがあった。
地道にそういった才能のある人物を探し出す計画だ。だが残念ながらそういった主人公の様な人物は見当たらなかった。
なりふり構わずゼータにも何か才能ありそうな奴見つけたら教えてくれって頼んだけど、結果該当する人物は居なかった。
何が言いたいのかと言うと、俺は学園に特待生として入学する羽目になった。
優秀な主人公で頼むよってシドに言われたからだ。クソが。
入学試験の時に少しだけ真面目に取り組んだらあっさり通過できた。こんなんでいいのかって拍子抜けしたわ。大丈夫かこの学園。
因みにシドは中の下辺りの成績で入学していた。本当にブレないなって思う。
前もって聞いたけど、この学園では成績優秀な奴の周りにいる腰巾着のモブAを目指すとの事。
珍しく普通にモブっぽいロールを選んだなって思ったよ。時々理解しがたい行動をするからな。
何か最近はコイツのシャドウとしてのヤバい側面しか見ていなかった気がするし、こうまともなモブを久しぶりに見る事になりそうだ。
取り合えず学園での生活を過ごしつつ、アルファに頼まれていた教団の調査をやっていこうと思っていたのだが、シドと学園を歩いていると、何か当初二人で予想していた反応とは微妙に違う小声での会話が聞こえてくる。
「あの人が今年の特待生の一人の……」
「うーん、ちょっと怖い顔」
「そう言えば何か二股してるって噂が」
「マジかよ。羨ま……じゃなかった許せんなぁ」
みたいな会話が俺たちに聞こえてくる。
何か知らない間に俺は二股してる最低野郎になってるんだけど、どういう事?
「え? シュウ二股してたの? 最低だね」
「やってないやってない」
「でも噂が流れてるみたいだよ? 二股君」
「二股君って言うの辞めろ。ぶっ飛ばすぞ」
そう、実際に噂は流れてしまっているのだ。全く身に覚えが無いから怖いんだけど。
「それで心当たりはあるの? こういう噂が出てくるような」
「いや、全くないな。火のない所に煙は立たないって言うけどマジで心当たりが無い」
「無いんだ」
「ねえよ」
何だかシドは思い当たる節があるような感じの表情をしている。
「傍から見てるお前には何か心当たりがあるのか?」
「うーん、そうだねぇ。取り合えず一人一人考えてみようか」
「一人一人?」
はて? どういう事なのだろうか。
「まず、アルファはどう? こういう事しそう?」
一人一人ってそういう事か。でもシャドウガーデンの皆がそんな事する訳ないと思うけど。
「まずアルファは無いはずだ。今回学園でやって欲しい事があるって事前に仕事を頼まれてるから、それに支障をきたす様な事はしないだろ」
「そういう事ならそうだね」
「それにアルファは基本シャドウやジョーカーの時は積極的に関わってきたり口出ししてくる事が多いけど、シド・カゲノーやシュウ・ヤークの時は余りそういった事してこないだろ?」
「そう言えばそうだったね。アルファは設定を重視してるもんね」
「……まあ、そういう事だ」
そういう訳でアルファは無いと断言できる。
それにアルファは俺に対してそういう事はしないだろうし。
「じゃあゼータは?」
「ゼータ?」
「そう。ゼータはどうなの?」
「ゼータは少し前から遠くの場所に任務に行ってるからこんな事してる暇なんて無いと思うけど」
「本当に?」
「わざわざこっちに帰って来てこんな事をする理由なんて無いだろ」
「ふーん」
「それにゼータとは七陰の中でも結構親しい自信があるし、こんな感じに俺の評価を下げる様な事をする理由なんて無いだろ」
俺はゼータを信じてる。これで実は余り好かれていなくて、嫌がらせでやってましたとかだったら、結構心にダメージが入るレベルで信じてる。もし嫌われてたら普通に泣きたくなるな。
「そう言えば特待生ってモテそうだよね」
「は?」
「伯爵家の人間と言うのもポイント高いよね」
「どうした急に」
「しかも学生の身分で既に財団を経営してると」
「何が言いたいんだよ」
「いや別に」
明らかに何かある筈なのにハッキリと言ってこないシド。
「最後にイータはどう?」
「イータ? そもそも研究室から出てこないだろ」
「あー、うん。確かにそうだったね。でも一回スイッチが入ったら普段とは見違える程のスピードで動くよね」
「確かにそうだな。でも俺なんかよりも研究優先するぞ。イータは」
「そうなの?」
「ああ」
俺はそうシドに言いながら数カ月前の出来事を思い出していた。
実験に付き合って欲しいと言われた時にその後直ぐに出ないといけない用事があって断った時の出来事だった。
「ジョーカーは……仕事と私、どっちが大切なの?」
と聞いてきたのだ。普段はイータの事を大切にするけど今回ばかりは手伝えないって伝えたら。
「しくしく。しょせん私は……遊びだったのね」
とか言ってくるもんだから慌てて機嫌を取ろうとして、結局ただ慌ててただけで何も出来ずにいたら。
「フフフ……冗談。そっちの仕事を優先して、どうぞ」
笑えない冗談だなって思って一息ついてたら。
「それはそれとして、私はジョーカーと研究なら……研究の方が、大事だけどね……」
と言われた。普通に心にダメージを負った。
そんな悲しい事があったのだ。
「まあ、イータは俺より研究の方が大切らしいからこんな事はしないだろ」
「へぇー」
「少なくとも七陰の誰かがこんな事をするなんて事は無いだろ」
「そうかもねー」
シドと一緒に考えてみたけど、全く誰がやったのか分からん。
おまけに相手の人物像が無いという点も引っかかるな、まるで相手が居る事だけを伝える目的の様な……いや、気のせいか。
相手がハッキリしていたらそこから犯人を特定できるけど、全く手掛かりが無いと推測も出来ない。
何だか二人ぐらいの人物の手の平の上で転がされている気分だ。
分からない事をずっと考えていてもしょうがない。諦めて普通に誤解を解きながら過ごそう。
他人の評価何て後からでも変える事が出来る。
入学してから二カ月近く経った。
二カ月間何をしていたかと言うと、今後の事を考えて少し動いていた。
まずこの国の第二王女であるアレクシア・ミドガル王女に挨拶しておいた。俺としてはシャドウガーデンは余り王国と敵対関係を築きたくない。今ここの周辺を拠点としてミツゴシを置いていたりするから、リスクのある関係性は取りたくない。
なので彼女の性格を把握しておこうと思ったのだが、彼女相当腹に黒いモノを蓄えていらっしゃるようだ。これはベータと同等レベルかもしれない。
他には今は婚約関連の事情でややこしい事になっている様だ。王族と言うのは大変な存在だ。
本当はこの国で発言力のあるはずの姉のアイリス・ミドガル王女と接点を持ちたかったが、今関わるととんでもない面倒な事に巻き込まれそうだ。
他にも色々調べた人物は何人か居るが、今は重要じゃない。
そんなこの二カ月間やっていた事は置いておいて目の前の状況を認識しよう。
当初は噂のせいか想定していた主人公ロールプレイが出来ないでいたが今は違う。
人の噂も七十五日と言うのか普通に馴染むことが出来ていた。数ヶ月も経つと自然と忘れられ普通に接してくれる様になるみたいだ。
ただ今の状況は馴染むというのは少し違うかもしれない、前世では縁のなかったチヤホヤされる感じ、思ったよりくすぐったい感じがするというね。恥ずかしいというか何というか。
自分から進んでこういう事をやるのはシド以外は誰も知らないとは言えかなり恥ずかしい事をしてると思う。
そんな事を考えながら学園内を四人で歩いている。
四人と言うのは俺とシド、それにシドが連れてきた二人のモブ友達の合計四人だ。
前を歩く二人はフルネームをヒョロ・ガリとジャガ・イモと言う。とても貴族とは思えない酷い名前だな。
ヒョロはガリ男爵家の次男坊らしい。外見は長細いヒョロっとしたガリガリの男だ。服装に気を使っている様だけど絶望的にセンスが無い。残念な奴だ。
シドが初めに紹介してきた時にいきなり師匠呼びしてきた奴だ。勿論直ぐに黙らせた。
ジャガはイモ男爵家の次男坊だ。小さくて少しごつい感じがしなくもない。ただヒョロと違ってジャガの方は少しだけ面識があった。
クラウン財団の農業改革と言うか、協力して組合とか作りませんかとかそんな話をしに行った時に、一応顔は知っていた。まさか同い年だったとは思わなかったけど。
前までは中堅の貴族だったけど収入が増えて、今は少しは余裕が出来てるらしい。
名前で思ったが、ジャガの方の兄弟にサツマ・イモとか言う名前の人は居たりするのだろうか。もし居るならバッキバキの鹿児島弁で話したりするのだろうか。……まぁどうでもいいか。
訪れた時には居なかったしそんな面白そうな存在は居ないのだろうな。
二人とも初めは俺にビビりっぱなしだったけど(ヒョロは初対面の腹パンで、ジャガは実家がお世話になった影響で)一ヶ月も経つ頃には普通に接してきてくれるようになった。シド以外友人が出来ないと思ってたから普通にありがたい。
でもこの二人そこそこイイ性格をしている。ギャンブル好きだったり謎に自分に自信があったりと見てる分には面白いのだが。
そんなしょうも無い事を考えていると突然ヒョロが振り返り話しかけてきた。
「おい、次のテストで結果が一番悪かった奴は罰ゲームをするのはどうだ。罰ゲームはそうだな、女の子に告白ってのはどうだ!」
「いいですねー、お相手は誰にするんですか?」
「そりゃあもちろん」
そう言うヒョロが指を指した方向にはちょうど告白されているアレクシア王女が居た。そして絶賛告白されている状況だった。しかしアレクシア王女は興味なさそうに立ち去っていく。
告白していた男は振られて花束を落として膝から崩れ落ちてる。可哀想に。
「あの人二個上の特待生の人ですよ。有名な魔剣士の家系で実力も高い事で有名な人なのに」
「ふーんそうなんだ」
そんなジャガの情報に興味なさそうなシド。
だが俺には分かる。手に力が入っているのは見たら分かるし、それなりの付き合いがある俺はコイツの目を見て思った。
――コイツ絶対に何かやらかすつもりだ、と。
そしてテスト結果発表の日。
結論をさっさと言うと俺が一位で次にヒョロ、ジャガときて最下位がシドだ。
コイツ絶対にわざとだろ。
あちゃー負けたか、罰ゲームが怖いなーみたいな顔をしてるけど、俺は分かるぞ。計画通りって眼だけは嬉しそうな感じになっている事が!
こうしてシドは罰ゲームを受ける事になった。一体何を考えての行動なんだか。
その日の晩、普通に寝ようとしてたのに俺の部屋にシドが窓から入ってきた。だから何でみんな何の断りもなく窓から入ってくるんだよ。
「ねぇ、シュウ明日告白する事になったじゃん?」
「そうだな。そういえば何でわざと罰ゲームを受けたんだ?」
「一回やってみたかったんだ。モブとして学園のアイドルに告白してこっぴどく振られるというイベントをッ!」
「はぁ?」
あれか学園のアイドルとかみたいなキャラクターを分かりやすく解説するイベントの事か。いや、それを自分より立場が上な奴がそれを嬉々としてやろうとしてるとか情けなくて涙が出てきそうだわ。
「それにしても今日の昼の彼はイイ感じだったね。まさに僕の目指している姿のモブだよ。彼は」
「あっそう、理由は分かった。だからとっとと帰れ」
「酷くない?手伝ってほしい事があるのに」
「知るか、とっとと帰れ」
「僕がこのイベントをモブとして乗り切る事が出来たら、陰の実力者としての一歩を進める事が出来るはずなんだ」
「そうか、頑張れよ。だから帰れ」
「でも今の所僕一人でこのイベントを乗り切れるかは分からない」
「知らんがな」
「だから今からシュウに告白の練習に付き合って欲しいんだ」
「絶対に嫌だわ」
「ええぇッ⁉」
「ふざけんな、何で野郎に告白されなきゃいけないんだよ」
「イイじゃん別に、最近はそういう事に慣れてるでしょ?」
「えっ、ああ、うん。そうかもな」
実は最近、噂の効果が切れたのか伯爵家とか特待生とかそういう理由なのか絡んでくる生徒が増えた。男子からは彼女を賭けて決闘だとか言って何故か挑まれる機会が増え、女子からは告白を受ける事がちょいちょいある。
主人公ロールをする中でこういう機会もあるかもしれないとは思っていたけど、実際に経験すると結構恥ずかしい。
だから主人公ポジションはやりたくなかったんだよ。アルファめ、あの時余計な事をしてこなければ今頃俺も一般生徒に擬態できていたのに。
「じゃあ一個目行くよ」
「いや了承してないんだわ」
「ア、アレクシア王女ッ!付き合って下さいッ!……なんか違う」
「話聞けよ」
こうして俺はシドの告白の言葉を夜通し聞かされるという拷問を受ける事になったのだ。クソが。
そして告白する当日俺はいや俺たちはシドの雄姿を見届ける為に草むらの陰に隠れて見守っていた。
ヒョロとジャガは緊張した様子で見ているが俺は違う。
手には熱々のコーヒーを持って余裕の態度でシドを見守っている。雰囲気は弟子の試合を観戦する師匠の様な感じと言ったところか。
別に夜通し告白の練習に付き合わされて寝不足なせいで、テンションがおかしくなって変な事をしている訳では無い。せっかく練習に付き合ったんだからその成果は一応気になるというだけだ。
「ア、ア、ア……アレクシアおうにょッ!」
初めの連続で言うアを普通よりも短く発声し、次の間では最後のアの音程を保ちながら揺らしながら続ける。そしてアレクシアの部分はガタガタに上下に音程を揺らし、そして最後のおうにょの部分でクソダサい活舌を披露する。ここまで完璧じゃないかシド。練習の成果が出ているぞ。
「す、好きですぅ……!」
顔ごとアレクシアから若干背け、背けた顔も少し頬を赤く染める事により気恥ずかしさも演出する事を忘れない。そして膝は生まれたての小鹿の様に震わせる。いいぞここも完璧じゃないか。後は仕上げだけだな。
「ぼ、僕とつ、付き合ってくぁさぃ?」
台詞の内容自体は王道を行くが発音、音程、活舌のブレによりモブっぽさを全力で演出していく。
ラストはあえて疑問形にする事により自身の無さを表現する。パーフェクトだ。練習の結果がしっかり出ている。
流石はシドだ。自分の夢の為になら全力で取り組む姿勢、こんな場面じゃなかったら素直に感心出来たけど、自分の所属する組織のトップがこんな事をしてるから、感心できない。
だがここまで出来たんだ、夜通し強制的だったとは言え付き合った甲斐があったもんだ。
「よろしくお願いします」
「「ん?」」
俺とシドの声が重なる。シドは満足したから、俺は結果を見るまでも無いから帰ろうとしたけど、よろしくお願いいたしますって声が聞こえてきて立ち止まってしまう。
シドなんか出していた手の指だけ持たれてるし。
「えっと、今何て?」
「ですから、よろしくお願いいたしますって」
「あ、はい」
困惑するシドの顔を見た途端俺は思いっきり飲んでいたコーヒーを前で屈んでいた二人に吹いてしまった。
ごめん二人共。でもあんな顔をしたシドを見るのは久しぶりなんだ。
そしてそのままアレクシア王女に連れ去られていったシドを見送った俺は、その場で大爆笑してしまった。
上手くいくように手伝ったけど、上手くいかなかったシドを見るのはいつでも面白い。
ここまで笑ったのは久しぶりだわ。
翌日俺たちは昼を食べる為に食堂に集まっていた。
「おかしくない?」
「おかしいな」
「おかしいですね」
「フフッ、おかしいかもな」
「シュウは何で笑ってるのさ」
「いや、すまんつい、フフッ」
ダメだ笑いが込み上げてくる、抑えきれないな。後でこの事を七陰の皆にも言っておこう。特にベータやイプシロン反応が楽しみだ。
「正直に言ってお前にアレクシア王女と付き合える魅力は無い。俺ですら厳しいレベルだぜ?」
「シド君で行けるなら自分も挑戦してみたら行けたかも知れませんね」
ヒョロとジャガの二人はそう言うがコイツ等はシドが選んだ生粋のエリートモブだ、万が一にもありえないだろう。アレクシア王女が近づいてきた途端置物になるに違いない。
「実際いいもんじゃないよ。絶対に何か裏があるに違いないし、住んでる環境も違うからね」
そうシドは言う。自分で告白の罰ゲームを受けに行ったんだ、自業自得じゃないか。
そう思うが口にはしなかった。
「だろうな。お前は器量は無さそうだし、もって一週間じゃないか?」
「いえ、三日ぐらいが限度でしょう。周りを見てください」
ジャガの言葉を聞いて見渡すと周りの人達が小声で話し合っている光景が眼に入る。会話の内容を聞いてみると。
「ほら、あれが噂の……」
「嘘ッ!何か普通じゃない?」
「何かの間違いじゃないかな……」
「え、私はありかな……」
「えっ!嘘⁉」
という会話が聞こえてきたり。
「弱みを握って脅したって話だぜ……」
「マジかよ、それは殺さないとな……」
「演習の時に事故に見せかければいけるか……?」
「ここで動かなきゃ男じゃねぇ……」
とか物騒な会話も聞こえてくる。
その後シドは儚く脆いモブの友情を確かめている時、俺は離れた所から何人か引き連れてこっちにやってくる人影を確認した。
「俺はもう食べ終えたから行くわ、頑張れよシド。色々な」
「色々って何のこと?」
俺は面倒ごとを避ける為にさっさと食堂から出ていく。出る前に少し後ろが騒がしかったけど、聞こえないふりをしてそのまま立ち去った。
その後はシドとアレクシア王女のロマンスを尾行して少し観察させてもらった。別にアレクシア王女の事情を知っていたから驚く事は無いけど、やっぱりシドは当て馬として告白を了承されたそうだ。
今思えば少しくらいシドに警告ぐらいしておけばよかったかもしれない。罰ゲームをわざと受けて告白する様な事をするとは想像してなかったから防ぎようが無かったんだけど。
分かった時点でも告白の練習台にされたりと、こっちがまともな状態じゃ無かったし。
あれ? じゃあ全面的にシドが悪いのでは? うん、どう考えてもアイツが悪いな。やっぱり自業自得だ。
それに尾行してるときにシャドウガーデンの皆には報告できないような面白い光景が見れた。
シドがアレクシア王女に金で従わされていた。一枚10万ゼニーの金貨をばら撒かれて、それを犬の様に拾う我らがリーダー。何か見ていて悲しくなってきたな。
俺のシドへの仕送りって5ポチだったのか。
俺はこれ以上自分たちのリーダーの痴態を見ない為に暫くシドに近づかないでおこうと思った。
だが少ししてこの判断がいけなかったものだと後悔することになる。
シドとアレクシア王女が付き合い始めて数週間が経った頃。久しぶりに四人で登校していると、正門前に剣術指南役兼アレクシア王女の婚約者候補のゼノン・グリフィ先生が立っているではないか。ご丁寧に騎士団の連中も一緒だ。何かあったのか?
そう言えばコイツ胡散臭いんだよな、まだ裏を取ってないから何となくそんな気がするってだけだけど。
そんな事を考えながら歩いていると。
「少しいいかな」
そう言いながら俺たちの前に立ち塞がるゼノン先生。そして周りを囲んでくる騎士団員達。
「何か御用でしょうか、ゼノン先生?」
何だか嫌な予感がした俺は三人の前に立つ形でゼノン先生の前に立つ。だが。
「君には用は無いんだ、シュウ・ヤーク君。僕らが用があるのはシド・カゲノー君でね」
「えーっと、僕に何か」
「もう聞いているかもしれないが、アレクシア王女が昨日から寮に帰ってきていないんだ」
……そんな話俺もまだ掴んでないんだけど。えらく早い対応だな。王族に関わる事件だからと言われたらそれまでだが、早すぎる気がするな。まるで前もって準備していたかの様だ。
「そして今朝から捜索をしているとこれが見つかった」
そう言って出してくるのは片方だけのローファーだ。……誰のやつなんだ?状況的にアレクシア王女の物なのだろうけど。
「付近には争った形跡もあってね、騎士団は誘拐事件として調べ始めた」
「そ、そんな……」
シドは悲痛そうな声をあげながら、何か若干喜んでないか? コイツこの状況分かってんのか?
ここまで来たら次に起きる出来事はわざわざ言われなくても分かる。
「容疑者を絞り込んでいくとね、最後にアレクシア王女と会った人物が分かった。君だシド・カゲノー君」
その台詞と同時に騎士団員がシドの周りを囲む。まぁ、そりゃこうなるわな。
「協力してくれるね」
シドは周りの奴らに悟られないように俺にアイコンタクトを取ってきた。
(これアカンやつ?)
(これアカンやつ)
俺のアイコンタクトの返事でシドは諦めたようで、手を後ろにして無抵抗で拘束された。
さて、俺はどう動こうか。まず今ローテーションのベータに報告して、動けるメンバーを集めてもらおう。作戦はそこから考えるか。
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