「めんどくせぇ...」
学校に向かっている途中のその男は黒崎祐介(くろさき ゆうすけ)と言い、至って平凡な男子高校生だ。
「はぁ、早く学校にいかないとな」
コンビニで昼食を買って学校に向かおうとしたその時だった。
「えっ」
突然の浮遊感を感じ、何が起きたのか理解する間もなく次の瞬間には真っ逆さまに落ちていた。
気づけば見たことのない場所にいた。
「ここは...?」
見渡す限り木しか無く、先程までとは全く違う景色に困惑していた。
「さっきまでコンビニにいたよな...?一体どういう事だ?」
この状況では、いくら考えても納得のいく答えを出す事が出来なかった。
「...まぁとりあえずここがどこか知る必要があるな」
その男はとりあえず立ち上がり体についた土を払った。
(にしても、この感じなんか見覚えがある気がするんだよなぁ)
しかしその既視感をあまり気にすることも無く、歩き出した。
「にしても、何も無いな...」
歩き始めてから30分が経過していたが、その森はあまりにも広く、出口を見つける事が出来ずにいた。
それでもこの森から出るために歩き続けていると前の方に誰かがいるのが見えた。
「もしかして誰かいるのか!?」
黒崎は助けを求めようと走って駆け寄るが、次の瞬間にはあまりの衝撃に思わず立ち止まってしまった。
なぜなら...
「貴方、もしかして人間?」
そこにいたのは、ルーミアだったからだ。
「な...なんでこんな所に...」
姿は幼い少女で、目は赤、髪は黄髪のボブ。白黒の洋服を身につけ、ロングのスカートという東方Projectに登場するルーミアの特徴と完全に一致していた。
「じゃあまさか...ここは幻想郷?」
混乱していたが、それよりも今は目の前の少女のことだ。
「まぁ、そうだな」
「じゃあ食べてもいい?」
「駄目に決まってるだろ!?」
当たり前のようにそう言うルーミアに驚きを隠せなかった。
「ふーん...でもお腹すいてるから何か食べるもの持ってない?」
食べ物か...と考えていると右手に持つレジ袋に気づいた。
「これで良ければ」
そしてレジ袋から昼食に食べようと買ったおにぎり2つを取り出してルーミアに渡す。
「これは?」
「おにぎりだよ」
「くれるの?」
「うん」
ルーミアはおにぎりを受け取り、袋を剥いで1口食べた。
「美味しい!」
「それは良かった」
別にそのおにぎりを作ったわけではないが、やはり笑顔で美味しいといわれると嬉しい気持ちになる。
「それにしてもやっぱり可愛いな...」
ふとルーミアの顔を見てみると顔が整っていて、ずっと見ていられるくらい可愛かった。
「...そんなにじっと見られると照れるんだけど」
気づけはルーミアはこちらを見ながら顔を赤くしていた。
「わ、悪い」
急いで目をそらすが、少しして再びルーミアの方に目線を合わせた。
そこにはおにぎりを美味しそうに食べる少女の姿があり、そこからはとても人を食べる妖怪には見えなかった。
「美味しかった!」
「それは良かった」
おにぎりを二つとも食べ終わると満足そうにそう言った。
「それじゃあ、頼みがあるんだけどいいかな?」
「何?」
「この森を出たいから案内して欲しいんだけど...」
「いいよ、じゃあ着いてきて」
そういうと黒崎の左手をしっかりと掴み、歩き出した。
「おぉ...」
そして歩くこと数分、今まで迷ってたのが嘘のようにあっさりと森を抜けることができた。
「やっと出られた!」
喜びで思わずガッツポーズをする。
「ありがとな!」
ここまで案内してくれたルーミアにお礼を言う。
「おにぎりをくれたお礼だよ。それに、あなたといるの楽しかったから。」
「そういえば名前を聞いて無かった」
と、ここまで名前を聞かずにいた事を思い出す。といっても名前は既に知っているのだが、それでも一応聞く事にした。
「私の名前はルーミア。あなたは?」
「黒崎祐介」
「おにぎり、美味しかったよ!それじゃあね、祐介!」
そしておにぎりのお礼を言われて、ルーミアに見送られながらその森を去った。
「さて、まずはどこに行こう...」
博麗神社に行くのが定番な気がしたので、とりあえずそこに向かう事にした。
「それにしても未だに信じられないな...」
日頃から幻想入りしたいとは思っていたがまさか本当に幻想入りしてしまうとは夢にも思わなかった。
「そういえば何か能力とか手に入れてたりするのかな?」
幻想入りした者は大抵、なにか能力を与えられていたので自分にも何か能力があるのではないかと考えた。
「気になるけど、とりあえず博麗神社に行くか」
そう言うと、少し早足になって博麗神社へと向かった。
「はぁ...はぁ...。疲れた...」
長い階段を上りようやく博麗神社に到着した。
目の前に広がる光景はまさに想像した通りの雰囲気だった。
「すみませ〜ん」
大きな声を出すと「は〜い」と奥から気だるそうな声が聞こえてきた。
そして霊夢がこちらにやってきた。
「...」
分かってはいたが、霊夢のあまりの可愛さに思わず黙り込んでしまう。
「どうしたの?」
「はっ!」
霊夢がこちらに手を振ってきた所で正気に戻る。
「あなたは誰なの?」
「黒崎祐介です」
名前を聞かれたので自己紹介をする。
「もしかして外来人?」
「まぁ、はい」
「じゃあ元の世界に帰して...」
「そういう訳にはいかないわ。」
霊夢が話している途中で割り込むように声が聞こえた。
声が聞こえた方を見ると突然スキマが開いて美しい女性が出てきた。
白い帽子のようなものに紫にフリルのついたドレスを着たその女性に見覚えがあった。
「もしかして八雲紫...?」
「あら、私の事を知っているの?」
「まぁ、一応」
紫は微笑みながらこちらを見つめてきたので目を逸らしながら答えた。
「とりあえず上がって、それから話しましょう」
霊夢がそう言うと、中に案内してくれたので靴を脱いで上がる。
「それよりも、帰さないってどういう事?」
霊夢は紫に問いかける。
「どういう事も何も、この男には能力があるから帰す訳には行かないのよ。」
「え!?」
能力、と聞いて思わずそんな声が出る。
「貴方の能力、気になるかしら?」
「はい!」
紫からの問いにすぐに答える。
「それでは教えてあげる。貴方の能力は...」
そして次の瞬間、自分の持つ能力を知る事になった。