「貴方の能力は...」
ゴクリ、と喉を鳴らす。
一体どんな能力だろう、と様々な想像が頭を駆け巡る。
「『視界に入ったものを取る程度の能力』よ。」
「その能力って強いんですか?」
「悪くはないわね」
「そうですか...」
どんな能力かを聞いた黒崎は、次の瞬間にはもう能力の使い道を考えていた。
「全く、勘弁してよね。どうせあんたが連れてきたんでしょ。」
「あら、分かってたの?」
「当然でしょ。全部あんたの思った通りってわけ?」
「今のところは、ね」
「...とりあえず、能力をまともに使えるようになりたいなぁ」
2人が話し出して暇になったので、黒崎は外の方を見た。
すると、遠くの方から誰かが近づいてくるのが見えた。
「お〜い!霊夢〜!」
その誰かが近づいてきて姿が確認出来るようになると、それが誰かが分かった。
「もしかしてあれは魔理沙か?」
近くに降りてくると開口一番にこう言った。
「よぉ霊夢!遊びに来たぜ!」
「魔理沙。あんた今日も来たわけ?毎日よく飽きないわね?」
霊夢が呆れたように言った。
「あら、魔理沙じゃない」
「げっ、紫もいるのかよ」
紫がいるとわかると魔理沙は露骨に嫌そうな顔をした。
「その反応は少し失礼じゃない?」
「お前は雰囲気が怪しいからな」
「ふふふ」
その言葉を気にしていないといった感じで紫は笑った。
そして魔理沙はこちらに気づいたのか近づいてきてこう言う。
「で、お前は誰なんだ?」
「黒崎祐介です」
名前を聞かれたのでとりあえず自己紹介をする。
「私の名前は霧雨魔理沙、よろしくな!」
魔理沙はそう言うと手を取り握手をしてきた。
「よ、よろしく...」
「なぁ、お前外来人なんだろ?」
「どうしてそれを?」
黒崎は伝えていないはずのことを言われて少し驚く。
「雰囲気でわかるよ、それくらい」
「はぁ...」
「それよりも外のことを教えてくれよ!」
「私も聞きたいわ」
魔理沙は目を輝かせながらそんなことを言う。霊夢は魔理沙ほどではないが興味があるようだった。そして紫は少し遠くの所で話を聞いているような感じだった。
「わかりました、それじゃあまずは...」
そうして黒崎は外の世界の話を始めた。
しばらくすると紫が突然立ち上がった。
「それではそろそろ帰らせていただきますわ」
そうしてスキマを通って帰ろうとした時、黒崎は紫に声をかけた。
「あ、ありがとうございます!」
そう言うと、紫がこちらを見て少し微笑み、スキマの中へと消えていった。
「それじゃあ私も帰るとするぜ!」
そのあとすぐに魔理沙も箒に乗って帰っていった。
そして黒崎は霊夢と二人きりとなった。
それから少しの間沈黙が続いていたが、次の瞬間黒崎が口を開いた。
「霊夢さん、ありがとうございます。こんな自分を泊めてくれて」
「いいのよ。どうせ泊まる所ないんでしょ?ここならその辺で野宿するよりよっぽど安全だから。それと...」
「?」
突然霊夢が黙ったのでどうしたのかと思う。
「霊夢でいいわ」
「えっ」
突然霊夢からそう言われて驚く。
「それと敬語も禁止ね。」
「わかり...いや、わかったよ、霊夢」
少し恥ずかしと思いつつも言うとおりにする。
「そろそろご飯にしましょう。祐介、貴方作れる?」
「ごめん、料理はほとんどやった事なくて...」
「全く、しょうがないわね...じゃあ私が作ってあげる」
そうして霊夢の料理を食べた。
「美味しい!」
「ふふ、それはどうも」
そしてあっという間に食べ終わった。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした。それじゃあ風呂に入っちゃいなさい」
「ありがとう」
お礼を言うと、風呂に入った。
風呂に入りながら色々考えた。
(もう友達のみんなに会えないと思うと少しだけ寂しいな...。)
(それに今頃両親は自分の事探してるのかな。そう考えると申しわけない気持ちが...)
「と、ダメだダメだ!」
考えがどんどんネガティブな方に行ってしまったので頬を叩き、一旦その事は考えないようにした。
そして風呂から上がり、寝る支度をした。
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
霊夢にそう言うと部屋に行った。
しかし、黒崎は寝る前にリュックの中身を確認していた。
「携帯にワイヤレスイヤホンにモバイルバッテリーに教科書に...」
中身は学校に行く時のいつものものだった。
「こんなもんか。まぁ、そろそろ寝るか」
そう言うと黒崎は布団の中に潜った。
(やっぱりまだ信じられない。実はこれは夢で、起きたら普通に家のベッドで目が覚めるんじゃないか?)
そういった不安が頭をよぎった。
(いや、とりあえず寝よう。そういう事は明日考えればいい。)
そう考えると寝るために頭の中を空っぽにして目を閉じた。
「ん...」
目が覚めると、知らない天井が見えた。ゆっくり起き上がり、少しの間考えると昨日の事を思い出す。
「そうか、そういえば...」
目を擦りながら周りを見渡すと、昨日の事が夢では無い事を実感した。
そしてそれと同時にもう2度とみんなには会えないんだと思い、少し悲しい気持ちになった。
「祐介もう朝...ってもう起きてるじゃない。」
すると霊夢が祐介を起こそうと襖を開けた。
「霊夢...」
少し落ち込んでいたのがバレたのか、霊夢はわずかに表情を暗くする。
「...ちゃっちゃと着替えて、朝ごはん食べちゃいなさい」
しかし、すぐに表情を元に戻してそう言う。
「...うん、そうだね」
悲しい気持ちを振り払うと、着替えて朝ごはんを食べるために居間に向かった。
朝ごはんを食べた後は、のんびりしていた。
「これからどうしようかな...」
原作の他のキャラに会いたい気持ちがあるが、そもそも今は原作のどの辺りなのかが分からなかった。
その時、空が突然赤い雲のようなものに覆われた。それを見て黒崎は理解する。
「これはもしかして紅霧異変!?ということはここは原作で言う所の紅魔郷辺りになるのか?」
そんなことを言っていると霊夢が外に飛び出した。
「これは異変ね。祐介はここで待ってなさい」
そう言うと霊夢は飛んで行ってしまった。
「...もしかして暇になった?」
1人取り残された黒崎はそんなことを言った。
「そんなことは無いわ。」
何も無い空間から声がしたかと思えば、そこからスキマが現れてその中から紫が出てきた。
「あっ、どうも。」
少しだけ驚きつつも挨拶をする。
「それで、何の用ですか?」
「簡単な事よ。あなたも異変の解決に参加して欲しいのよ」
「えっ!?」
突然そんなことを言われて困惑をする。この男は弾幕を張るどころか空を飛ぶことすら出来ないのだ。
「いやいや、無理です!そもそもなんで...」
自分なんかが、と言葉を続けようとした時、急に浮遊感を感じた。そしてその浮遊感には覚えがあった。
「!!!」
突然のことに声を上げることなく落ちて行った。
「痛った〜...」
背中の辺りをさすりながら立ち上がると、建物の中にいた。
どこを見ても真っ赤だったので、頭の中にある場所が浮かんだ。
「ここってまさか、紅魔館?」
そのまさかだった。そして急にこんな所に送られた理由を考えたが、分かるはずも無かった。
帰ろうとも思ったが、ここから歩いて帰るのは面倒だと思い、探索することにした。
(これは目が痛くなりそうだな...)
黒崎はそう思いながらも中を進んでいく。
「静かだと言うことはまだ霊夢はここに到着してないのかな?」
霊夢が来たならば館中がボロボロになっているだろうと考えての言葉だった。
それに霊夢が飛んで行った直後にここに送られたため、当然といえばそうだった。
そして少し進んだ所で、突然首の辺りに何か鋭いものが当たった。
「!?」
あまりのことに硬直してしまった。そして恐る恐る振り返ると、そこには...
「貴方は誰ですか?」
こちらにナイフを向けた十六夜咲夜がいた。