Another world trigger   作:@往生堂

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4話(緋山side)

緋山と老人の戦闘は苛烈を極めた。緋山は星の杖による広範囲の斬撃を見切りつつ接近し過ぎずにマンティスで応戦する。互いに射程を持った斬り合いをしているとはいえ国宝と言われる星の杖とノーマルトリガーとではその間合いの差が大きすぎる。

(広範囲ブレードも無数という訳ではなさそうだな。)

緋山は冷静に分析をする。現状相手のトリガーについてわかっていることは、広範囲ブレードは3本、少しタイミングや速度が違うものが混ざっている。広範囲の星の杖の攻撃を理解しつつ現状の本数であればなんとか捌き切れている。

「・・・なるほど。何かしらのサイドエフェクトをお持ちですな。」

老人、ヴィザは緋山の回避や斬撃への処理を見て確信する。

「へぇ、分かるんだ。俺はあんたのトリガーの性能を当てたんだ?あんたも俺のサイドエフェクト当ててみるか?」

緋山は戦闘が始まってすぐに撃破は難しく相打ちを視野に入れなくてはならないことから目標を時間稼ぎへと変更しているために会話を試みる。緋山は近界民を恨んでいるというわけではないので時間を稼ぐ方法を戦闘に絞る必要はない。無傷で時間を稼げるなら会話するのもやぶさかではないのだ。

「恐らくですが、何かしら知覚に影響を与えるものと思いますな。星の杖への処理が的確すぎますし。」

「流石に分かるか。正解、俺のサイドエフェクトは〝強化視覚″で視覚情報を増やすものさ。」

ヴィザは緋山のサイドエフェクトをほぼ把握していると言える。

「玄界の進歩も目覚ましいですな。量産型のトリガーを同時に2つしか使わず多彩でありながら様々な強みを持って戦っている。トリガーの技術は我々に比べかなり劣っているもののそれをカバーする戦術や技術はとても興味深いですな。是非ここは後学のためきちんと手合わせしたいものですな。」

ヴィザは緋山の狙いを理解した上で会話をしていたのだ。こちらの狙いはあくまで時間稼ぎである事も分かっていて会話に乗っていた。それで持って尚戦闘を継続すべきと言って来ている。この手合わせしたいというのがヴィザの本心から来るものなのかは緋山には判断つかない。こちらには緊急脱出がある以上負けて死ぬことはない。相手も同様に負けても問題ないのか或いは負けないという絶対の自信があるのかも定かではない。

(どちらにせよ戦う以外の選択肢はなさそうだ。)

緋山は戦闘の続行を選択した。

(あの老人はこちらのトリガーの同時使用が2個という事にも気づいてる。このことが付け入る好きを生むかも知れない)

緋山は自身のSEが知覚系ということしか悟られておらずトリガーを3つ同時使用ができるところは見せていない。

「グラスホッパー」

緋山はグラスホッパーを踏み距離を取る。星の杖を空中で避けるのは難しくSEとグラスホッパーを全力で使用しつつ距離を取ったが無傷とはいかず、所々トリオンが漏出している。無傷ではない中距離を取った緋山はメテオラを広範囲に撒き散らす。その後グラスホッパーで瓦礫を老人に向けて飛ばしたりしたがそれらは星の杖で斬られほんの一瞬の目眩しにしかならなかった。その一瞬を見逃さず緋山は距離をグラスホッパーで詰め、二刀流スコーピオンで近接戦闘をする。格上のトリガーを使う相手と戦いうだけでなく相手の土俵と言える剣術勝負となればボーダー屈指の実力者である緋山でもそう長くは持たない。その証拠に緋山の左腕が斬られた。

「トリガーの性能にここまでの差がある中これほど戦えるとはお見事ですが勝負ありましたな。」

ヴィザと片腕のみの緋山の戦闘はここで終わると思われたその時、バシュバシュッと音を立てヴィザの背後からバイパーが刺さりヴィザのトリオン体を破壊する。

「正直助かったよ。勝利を確信した瞬間ほんの少し油断してくれて。」

「油断を誘うために左腕を?」

ヴィザは不可解に思う。左右の手でそれぞれスコーピオンを握っており、斬られた直後であってもスコーピオンは手元に残っていた。

(なるほど。)

ヴィザは自身の敗因を見抜いた。

「あなたのサイドエフェクトは視覚を強化するのではなく脳の処理速度を上げるというものというわけですな。」

「その通り、俺があんたに勝つには想定外の一撃を確実に当てることしかなかった。だからサイドエフェクトに関しては一部のみをあたかも全貌であるかのように語ったし、時間稼ぎしたいという意味を持たせるために問答で明かした。」

緋山はメテオラやグラスホッパーによる瓦礫攻撃の目眩しでできたほんの一瞬の隙を距離を詰めるだけに用いたのではない。ヴィザに悟られないほど遠くまで迂回するバイパーを死角から放ちヴィザが油断する隙間まで、彼の背後の上空に待機させていた。

「左腕は油断を誘うためじゃなく純粋に実力不足で斬られた。あの時あんたが勝ちを確信せずにトドメの一撃を放っていれば俺は上空の弾を相打ち覚悟で打ち込むしかなかったが十中八九あんたには防がれて終わったはずだ。」

「戦術や技術のみならず駆け引きまで卓越しているとは。油断をしていた私が言うのもなんですがお見それした。」

「あんたには捕虜に...」

緋山がヴィザの身柄を確保しようとした時ヴィザの背後にゲートが開いた。

「これにて撤退させていただきます。」

そう言ってヴィザは撤退していった。撤退した船の中ヴィザは己を今一度鍛錬しなおそうと心に誓った。

 

「こちら緋山。敵の黒トリガーを撃破、その後身柄を拘束しようとしたところ敵の遠征艇にいるゲートを使う近界民に妨害を受け失敗。撤退を許しました。」

緋山は本部に連絡をする。本部からはそのゲートを扱う敵に関してはアフトクラトルの別の黒トリガー使いによるものだと伝えられた。

「捕虜に関しては迅が1人確保している。緋山は周囲の部隊の援護などをして欲しい。」

「了解。」

こうして黒トリガーを撃破した緋山だったが、彼とヴィザが衝突したことにより遊撃に回った空閑は三雲や雨取を無事に基地まで護送することができた。金の雛鳥が基地へと逃げ切られ、各方面で敗北したアフトクラトルは遠征から引き上げて行ったのだった。彼らには少なくない数のC級隊員が拐われたが市民への被害はゼロだった。その後に開かれたボーダーの会見では、ボーダーの大規模遠征について公表され、多くのスポンサーやボーダー入隊希望者が殺到した。

 

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