スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
パイプラインを抜けた先は、工業地帯のような見た目をした施設だった。
ケバインクに染まってはいるが、オレンジ色の生産ラインらしきものと貯蔵用であろうタワータンクが配置されている。
「あんしん、ライフ……ファクトリー?」
高性能無線機に許可もなくインストールされたオルタナのインフォメーションシステムがそう告げたから、その見た目に合点がいった。
「何を作ってるんやろね~」
「ここに有るものなら何でも作れちゃいそう!」
1号と2号の会話が聞こえて、俺は頭を痛める。
2人の会話がうるさく耳をつんざいたからではない。
かつての願いを思い出して、その願いの行き着いた先を思い出して「安心を語るなら、安心を作ってくれよ」とつぶやいたからだ。
俺はゼロからイチを作り出すのがどれほど大変か、その身を持って知っているはずだろう。
だから、そのつぶやきが叶うことがないということも、わかっているはずだろう?
「大丈夫? 3号、顔色が悪そうだけど……」
「……心配、しないでください」
俺はなるだけ隊員や司令には顔を見せないようにして、ヤカンに足を踏み入れた。
スペシャルウェポン『カニタンク』
球体ベースに4つの脚、前面にバルカン砲とカノン砲を搭載した多脚戦車とも言うべき兵器。
今回のミッションはそれを使用し、ゴールポイントにたどりつくことが条件だ。
俺はゲートをくぐって搭乗し、ミッションを開始する。
搭載されたバルカン砲で前面にある多数のスイッチを塗って扉を開ける。目の前が開けると稼働する巨大オブジェクトが出迎えた。
「なにこれ!?」
「ヒト型ロボット……をかたどったマトの塊なのかな?」
俺は会話を小耳にはさみながら、そのロボットの装甲をバルカンやカノンで破壊していく。
おそらくはこのロボの装甲を壊しきって骨だけにしなければ、ゴールにたどり着くことができないのだろう。
脚部と腰部の装甲を破壊して、横の金網から上部へ登る。
先ほど俺はカニタンクを『多脚戦車』と表現したが、足をしまえば完全な球体となりイカ状態と同じ事ができるから、壁はたいした障害ではない。
登ってオブジェクトの上半身へ。ロボットの腕部にあたる部分が横に動き続け、ワイパーのように振り払おうとする。
一段下がった金網に潜り込み、タイミングを見計らって懐に潜り込む。
前方からタコミサイルが迫っており、バルカンで撃ち落とせずくらってしまうが、多脚戦車の堅牢な装甲で俺が吹き飛ぶことはなかった。
だからさほどミサイルの方は気にせず腕部、胸部の装甲をはがす。
マトの壊れる音を聞く刹那、俺は思考にふける。
ゼロからイチを作り出すことはとても難しいのに、イチをゼロにするのはとても簡単だ。
このロボットの装甲だっておそらく積み上げるのは大変だったろうし、これだけのマトなら見合った生産コストがかかったはずだ。
しかし今、その想像の足る範囲でもわかる労力の塊を、ミッションのためとはいえ一瞬で破壊している。
それは目に見えないものも同じように壊れるのだから、目に見えるものでも当然そうだった。
顔が開いて固いマトが現れたが、バルカンの集弾とカノンの爆発力があれば訳ないことだったから、手際よくそれを破壊して骨だけにする。
ロボットの腕が上下に稼働するようになったから、上部に登って稼働する手を乗り移ってゴール。
カニタンクのコックピットで俺は気絶した。
「カエデ司令」
「どうしたの?」
「……ものづくりしている身としても、やっぱり何かを作るのは難しいですか?」
俺はミッションが終わって司令に問いかけた。先程の思考が本当に正しいのか、その道のプロに確認を取りたかったからだ。
「ワタシの場合はものによるかな」
「……というと?」
「ワタシはなんとなくのフィーリングで生きてるし、ものを作ることが多いの。だからピンときたものは簡単に作れるし、イメージがわかないと難しい……と思うよ」
予想外な言葉が返ってきたから、続けて独白の後半について聞いてみればそれはまた予想外だった。
「簡単に壊せないよ! だってせっかく作ったんだもん。確かに簡単に壊せるし、もしかしたら簡単に壊れちゃうかもだけど、ワタシはためらうな」
「あのロボットも?」
「あれは……ミッションのために壊さなきゃだけどさ。罪悪感はちょっとあるよ」
ダメだ、おそらく根本的に話が通じてない。
これ以上話してもらちが開かないから「ありがとうございました」と話を切って次へ向かう。
キョトンとしてる司令を見て、いやなやつだと自己嫌悪を抱えた。