スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Take action to avoid making mistakes

サイト2『あんしんライフファクトリー』の調査も終わり、俺はフレームの運搬作業のためにシオカラキャンプにいた。

「……っと、ここで良いですか?」

「ありがとー! 助かるよ」

シオカラキャンプの横に体よくあるステップに、フレームらしきパーツを置いて一息つく。

こういうパーツは後々役に立つだろうという司令の提案で、ひとまずこのステップに安置する事にした。

すりみ連合がこのサイトまで乗り込んできた前例があるといえ、撃退したばかりなのだからすぐに攻め込んでくる可能性は低いだろう。

しかし本命、アタリメ老人の行方については結局わかっていないなと懸念したところで無線にノイズが入った。

 

『────たし……応答されたしーーー!!

 

「元司令、無事ですか!?」

「おじいちゃん! 今どこ!?」

「おうおう、つながったわい。ワシは無事じゃ。ここは……暗くてようわからんが狭い部屋のようじゃ!」

「身動きはとれますか?」

「なんとかの、脱出の手だてがないか探してみるわい」

「わかりました、何かあったならすぐに連絡してください、こちらもなんとか探してみるので」

そういって俺は無線機のスイッチを切って足を蹴り出す。

しかし蹴り出した足が前に進む事はなく、もつれて冷たくない雪に倒れ込んだ。

「カトレア君!?」

「3号、大丈夫!?」

倒れ込んだ身体を起こそうとするが、沈むような重さを持っていて持ち上がらない。

早く行かないと、手遅れになってしまうかもしれないのに。何故、いつもいつもそういうときに身体が動かないのか。

「動け、動けよ……!」

這いつくばって雪を掴む。しかし手が地面につくことはなく、雪玉が潰れるのみで前に進めない。

「身体が限界なんね……!? 1号、ちょいと手伝って!」

「う、うん! わかったっ!」

その場から動けずじたばたとする俺を、2人は抱きかかえて一際大きなテントに連れ込んだ。

 

テントの中は遮光処理が施されており、外とうって変わって静かな暗闇だった。

広さと言えば、5人横になれる程度には広く中には簡易的な寝具と食卓が見えた。

「カトレア君、調子はどう?」

「……身体が重くて動けない、眠気もする」

「ごめんね、カトレア君すごいがんばってたし、オルタナの空ってずっと青空が映し出されてるから限界来てるの気付かなくて」

司令はテントに入るとランタンか何かをつけてテントを閉める。

そうすれば柔らかい光が暗闇を満たした。

「……休まないとだめですか?」

「今はそうして、大丈夫。元司令はすごい人だから多分次の連絡も来る」

意識が途切れ途切れになり始める。

ああ、寝たくなんか無いのに。

寝たら目の前が暗くなって怖いから。

───────……

俺が最後、なんと言ったかは俺自身分からない。

 

 

そばに……いて……ください……

カトレア君はつぶやきながら目を閉じた。

その声はとても切実で、小さい頃オバケが怖いって言ってお母さんと寝る事をねだったワタシみたいだった。

それが重なって、カトレア君のためにもここにいてあげよう、仕事のことは忘れようと思ったんだ。

「お母さんも、こんな感じだったのかな」

オルタナログを確認する。

そこには確実にカトレア君が突き止めてくれたここの事実が示されていたから、「頑張ったね」と声をかけたけど聞こえてるかな。

 

生き残った人類は、同じ過ちを繰り返さぬよう聡明な科学者達をリーダーとした。

科学者達は人類の生活を支えるシェルターとして大空洞を整備し、その地を第二の地球『オルタナ』と名付け、かつての地球に似せようとした。

オルタナの建造過程においては最新技術の巨大3Dプリントなどを用いることで、地上に存在したものの複製を作り文明を再現していった。

また、知識や技術が二度と喪失しないように強固な情報管理システムの構築に着手。

オルタナで行われた活動を自動でアーカイブ化する自律思考型記録コンピューター『Intelligent Recording Computer of Alterna』を開発。運用を開始した。

 

「同じ過ちを繰り返さないように、かぁ」

ワタシは噛みしめるようにその文章をつぶやいた。

かつて、ニンゲンが争って滅んだからワタシ達に希望を託したけど、結局ワタシ達も同類だったから滅ぼすと叫んだヒトがいた。

ワタシ達は未来と希望と可能性を守るため、そのヒトを倒した。それを思い出したんだ。

「大切なものは目に見えなくて、失って初めて気付いて、過去にしがみついたりニセモノで埋め合わせたりする……あのヒトもそうだったのかも」

今考えればあの像だって、ここの3Dプリンターで作られた『モアイ』って像と意味は変わらないんだと思う。

そんな1人ぐるぐる回る思考を断ち切ったのは、カトレア君のうめき声だった。

目は閉じているけど顔は力が入って歪んでいる。うなされているのかもしれない。

だからそれをお母さんがしてくれたように抱きしめて、言葉をかけながら背中を柔らかくたたく。

カトレア君の身体はとても細くてシャーペンの芯みたいだ。ワタシが着ていたスーツが緩いのもうなずける。

ここにくる前はちゃんと食べていたのかも心配になるウエストは冷えていて、早くスーツを作らなきゃいけないとも思った。

「……大丈夫、カトレア君は今1人じゃないよ」

……ブラスト、しれい、やだ……おいてかないで

「ここにいるよ。おいていかない」

「────…………」

ワタシも眠くなったから、カトレア君から離れないように彼を抱き枕のようにしてワタシは意識を落とした。

 

 

 

「私、暇じゃないんだけどな?」

私はお姉ちゃんから届けられた半壊状態のヒーローシューターR+を見てため息をついた。

こちらも予期せぬ事情で多忙なのだけど、だからといって限界をつげて店を閉める訳にはいかないし、依頼を断るわけにもいかなかった。

「まあ、受けた仕事はやらないとね。それがお姉ちゃんから受けた仕事ならなおさら」

仕事の片手間、私は半壊したヒーローシューターR+を初期性能に戻すことに注力した。

 

 

 

俺が倒れるように寝てからほとんど1日が経過していた。

俺が起きるまでの24時間弱で何があったのか、俺のスーツは寸法を合わせて完成しており、半壊状態だったヒーローシューターもオルタナ落下前に戻っていた。

「……すみません、俺が動けないうちにここまで整えてもらって」

「3号、調子は大丈夫?」

「ええ、もう大丈夫です。いつもよりかは睡眠もとれましたから」

「無理はしないでね?」

「…………はい」

返事を渋った理由は分かっている。

無茶を通してでもやらなければ、全てが手遅れになる。

俺の目が届く範囲で、俺のせいで取り返しがつかなくなったなんてことは、もうやっちゃいけないんだ。

ここにライフラインを築き上げた人類は、過ちを繰り返さないよう科学者をリーダーにしたり『I.R.C.A.』を構築したりした。

失ったものはもう戻らないが、だからといってそれは未来まで投げ出す口実にはなり得ないし、未来に向かって糧にするべきだ。

俺はそう思ったからサイト3へと急いだ。

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