スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Color your "destiny" with your own thoughts

「運命」と言うものがあるならば、俺はそれを恨む。

誰も彼も、最初から最期まで決められた道筋を辿るしかないなら、なぜそんな理不尽で不平等なことになるのか。

辛くて逃げたとしてもそれにまとわりつかれるようでは、それすら織り込み済みだとあざ笑われているようで。

そして、まさに俺がそうだったのだ。

無意識とは言え、バンカラ街に戻ってきたのはそういうことだろう?

 

薄暗い浮島、歪む音響、インクレールと分岐ポイントが多数見える場所。

今回のミッションはインクレールを使いながらゴールを目指すミッションのようだ。

インクレールを起動して道順通りに進む。

道の途中にはルートに干渉しない形でヌリヌリ棒が縦に配置してあり、これからの障害を暗示していた。

「ヌリヌリ棒、あたったら痛そう……」

「……当たったら痛いどころの話じゃありません、1号さん」

少し想像してみて欲しい。1本の細いロープにしがみついて移動している状態で、横から強い衝撃を受ければどうなるのかを。

そのロープがインクの紐に変わったものがインクレールだ。今の俺はこの細いインクの紐にイカ状態でしがみついているだけなのだから、ヌリヌリ棒が直撃したらという事象の結果は推して知るべしだろう。

「とりま、気をつけていかんとね」

2号に注意を促されながらインクレールを渡りきると、目の前には塗れない壁とインクレールが縦に3本ある。それらを起動してジャンプする要領で垂直に飛び移ることで壁を登った。

登った先にゲートのようなヌリヌリ棒が有り、それを抜けると2本のインクレール。上と下で分かれており途中にはそれぞれ引っ込まないヌリヌリ棒がいくつか配置されている。

ヌリヌリ棒の構造的にジャンプでギリギリ超えられるかどうかというところだから、そんな賭けに出るくらいならばおとなしくレールを切り替えていったほうがいい。

インクの紐である以上、インクを泳げないヒトに変形したならレールから外れて落ちて行くし、イカでインクレールの紐は掴めるのだからレールの途中にイカで落ちていっても掴むことができる。

上記の原理でルートを見極めながら対処して、これも渡りきる。

その先の波状に連動して動くヌリヌリ棒に横から叩き出されないよう、タイミングを見て先へ行くと、インクレールと足場がいくつか分かれておいてある浮島へ出た。

「複雑そうだけど、多分インクレールに従えばゴールにたどり着けるんじゃないかな」

確かにインクレールの接続部を見る限りでは前方に続いているし、その先も移動手段としてインクレールを用いるだろうと分かる。

しかし、ミッション開始時に渡されたスプラシューターでは微妙に向こう岸のレール起動部へインクが当たらない。

「……シューターだと射程が届きませんが」

「サブのスプラッシュボムなら届かないかな?」

司令の助言を受けて前方にそれを投げると、前方の浮島に乗って炸裂。インクレールは起動され前に進めるようになった。

その要領で前へ進みながら、このステージの気味悪さについて考えてしまった。

 

このステージの構造上、インクレールから外れて行動することはできず運営の想定したルートを辿るほか無い。

もちろん、そのルート内のどのような要因でミスをするのかも織り込んであるだろう。

このステージでやっていることは、強い権力での押し付け。ある種、()()()()()()()だった。

気味が悪くて当然か。

 

一定周期ごとに引っ込んで出るを繰り返すヌリヌリ棒がルートに配置され、高台からはタコスナイパー2体が目を光らせているから止まることも許されない。

最後のエリアは今までの中で1番の難度に調整されていた。

視線から向けられる殺意にはもう慣れてしまって、死線を抜けながらタイミングを見て後ろに回り込む。進めなくともその場で立ち止まらなければ当たる事はない。

あとはそれらを始末してゴールポイントを解錠、気絶するように帰還した。

 

「『敷かれたレール、何色に染めるか』……引っかかるかな?」

「やっぱりバレましたか、鋭いというか何というか」

3号はまた頭を抱えてた。前もあったからもしかしたらと思ったけど、当たっていたみたいだ。

「おかしいですよ。レールがすでに敷かれていたなら、そこから自分を出そうだなんて不可能です」

敷かれたレールは塗り替えられない。

その言葉の真意はワタシにわかるものじゃない。だけど、それはとても寂しい事だと思った。

「レールを敷けるのは強い権力を持つ人のみで、弱いならそれに従うほか無い。そこで個性とかを出すのは逆らう予兆に見えますよ」

「……レールを敷くってそれだけじゃないと思うな。すっごい大げさに言うと世の流行り廃り(トレンド)も『みんなが作った』レールだと思う」

「それじゃあ、そのレールだったらどうします?」

「トレンドには乗る、だけど自分のエッセンスは忘れずに入れるの。例えばエンブレムを入れるだけでも、ただトレンドを真似したものとは違うと思う。外からじゃ分かりづらいかもだけどね」

「それが『何色に染めるか』って事ですか……」

3号は噛み砕くように何回もつぶやきながら、ふらふらとサイトを歩く。

3号の足は氷にとられて滑って行っているけれど、自分を納得させようとうんうん悩んでいて気付いていない。

 

「カトレア君! 前っ!」

「────────な……!」

 

ブラスト君が異変に気づいてリュックの中のイクラをガブガブ食べて、目の前に迫っているケバインクのコアへ飛び込んだ。

そして、ブラスト君がコアにタッチしたのとカトレア君がインクの壁に激突したのはほぼ同時だった。

ケバインクが砂ぼこりをたてて消えたところから出てきたのは、ヒトの形からは想像できない3号の毛玉。

それを見て一瞬固まっちゃったけど、右目に手を当てて覚悟を決めた。

 

ワタシが望んだからこの力がある。

何かを奪う為じゃなくて、何かを壊す為じゃなくて、何かを守るためにある。

この目に、この手に宿る、すべてを()リ返す力は。

 

ガンタイを外せば、右手が緑色に淡く光って力が満ちる。

心には衝動も満ちてくる。

その衝動を『仲間を助けたい』に塗り替えて、毛玉に優しく手を触れる。

手は淡く光りながら、カトレア君の中に溶けて────────

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