スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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The hidden power of emotions

あれから3日、3号は目を覚ましていない。

外見はケバインクに取り込まれる前の姿に変わりないけれど、安心はできない。

大元は破壊、洗脳、死を簡単にできてしまう力なのだから、外見だけで中は取り返しのつかないことになっているかもしれなかった。

もしそうだとしたら、ワタシはとても怖い。

それでも、心配して足踏みしているのは違うからワタシは前へ進んだ。

残されたステージをクリアしたり、ブラスト君と協力してケバインクを消したり、集めたログは4号に送って改ざんしたあと3号のデバイスに流し込んだりした。

そのおかげで完成したオルタナログには、ワタシが信じている力について書かれていた。

 

オルタナの科学者の1人が、イカの体液から液晶を生成することに成功。その液晶は、生物の発する微弱な電気信号に反応して色を変化させることができた。

こうして見る者の脳波を解析し望んだものを映し出せる、夢の液晶が完成した。

夢の液晶の量産が進むと、オルタナの内壁を覆うように液晶が張り巡らされた。液晶は人々の想いを受け、かつて地上で目にしていた景色を映し出す。

地下に囚われてから四半世紀が経過して初めて、人々は再び空を見た。

 

「あの空は、そっか。ニンゲンの想いでできた青空なんだ」

別に驚く事じゃない。ワタシのあれは負の力だけれど、あれだってあのヒトの想いが強くこもったからできたんだ。

それにワタシは、これが想いの力で姿や効果を変えられることはよく知っている。

今でも実際にあるし、ワタシがそうだ。

破壊、洗脳、死のもとを使おうと思えば使いこなせる種族の先祖から、夢の液晶ができるのはおかしい事じゃないと思う。

「なら……ワタシは信じるよ。あの時こめた想いで3号が目を覚ますって」

 

 

 

 

僕は暗闇を歩いている。

暗闇で光の1つも無いけれど「進め」と言われた方向だけは解る。

その声はとても威圧感があって従わなければならない感覚になる。

進め、進め、進め。

すすめ。

 

「進め」が「死ね」に変わった。

足場も歪みはじめて寒さも感じるようになった。

だけど、僕の左腕にある腕輪が虹色に光ると、少し暖かさと「生きろ」という言葉が聞こえるから僕は進める。

死ね、生きろ、死ね、生きろ。

いきろ。

 

ある時を境に腕輪の宝石は砕けてしまった。

声は聞こえなくなったけど、今まで歩いていた道が崩れ始めて立ち止まれなくなった。

右も左もわからないままがむしゃらに走ってそのうち見えた光に突っ切っていく。

光はだんだんと強くなって……

 

 

 

 

「──────!!!

俺の意識は冷や汗とともに覚醒した。

薄暗く、ランタンの柔らかい光が意識を少し落ち着かせる。

ここは、仮眠用のテントの中か? どうやってここまで来た?

直前の記憶をたどると茶色い危険物質に激突したのが最後の記憶。

思い出して背筋が凍る。

なにか強い力を持つ生物に腕を貪られながら引き込まれ、痺れながら次第に感覚を失う。そのまま身体中が包み込まれ不快な感覚に物理的にも精神的にも押しつぶされる。幻覚幻聴が重なって「自分」の存在を考えることができなくなり、思考が消去される感覚をありありと思い出す。

…………ッ

あのインクにやられたら身体が毛に覆われてしまうと思い出し、震えながら起き上がり身体を見るが、特殊インナーが着せられているだけで毛が生えている事はなかった。

……嫌にリアルな夢だった、というだけか?

それにしては引っかかる。

「良かった……! 目が覚めたね……!」

思考にふけっていたところに外の光が差して、入り口から司令や1号2号が入ってきた。

「司令から『ケバインクに突っ込んだ』って聞いてすっごく心配したんだよ!」

「3日間ずっと目が覚めなくて怖かった……大丈夫?」

いきなりたたき込まれた情報で、やはりあの感覚は嘘じゃなかったと確信する。

なら、今この状況は何が起きている?

何であの感覚から帰って来れている?

「……正直混乱してます、いったい何が起きているんですか?」

「あ、えっと……3号がケバインクに突っ込んでじゃったからワタシがなんとかして、目が覚めない間に残ったミッションとケバインクを片付けて……オルタナログ見てたら目を覚ましたから」

「ちょっと待ってください。毛が生えて自我を失ったように思える俺をなんとかした? 司令が?」

その言葉を聞いて1号2号は目を丸くした。

ケバインクがそこまでの脅威だったことを初めて知った顔だ。

しかし、それと対照的に司令は動揺する様子を見せず静かに頷いた。

その様子がひどく冷たく、末恐ろしいと思えて

「……カエデ司令、一体あなたは、何者なんですか……?」

といった声は震えていた。

 

「……この際、話した方が良いかもね。ワタシの過去とか、2人にも話してない秘密とかを」

 

司令はテントの真ん中に座って、ゆっくり語り出した。

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