スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
それから1ヶ月もしないうちに、ナンタイ山をはじめとしたタコツボバレー周辺の残党調査をする事が決まった。
元司令は「またオオデンチナマズがさらわれたら大変じゃからな」ということだったけど、ワタシはそれよりも自身の行いが正しいかどうかが心配だった。
それを確認するための口実として、「タコの過去を知りたい」といって元司令が持っていた資料や預けていたミステリーファイルに目を通した。
話には聞いていた大ナワバリバトル、わかり合えそうな感覚がしたあの種族を分けてしまった原因が一体どこにあるのか、あの感覚が正しいのか、ワタシは正義なのか悪なのか、わかる気がしたから。
はじめの方に見つけたのはタコ達の生活のこと。
コロニー状に掘られた地下洞窟をヤカン型転送装置で行き来していて、ここ10年はその地下ドームの老朽化が激しいこと。
転送装置の電力消費も激しいから電力不足になっちゃって、だから電力として重宝されるナマズのなかでも一際大きな電力を持つ『オオデンチナマズ』を奪ったみたい。
その次に目にとまったのは種族を分けてしまった大ナワバリバトルのこと。
ワタシ達イカがお気楽なのは100年前(今だと多分107年前)から変わってなくて早起きができなかった結果、緒戦はタコ陣営の圧勝。
早期決戦を狙ってイカ本陣に『戦略タコツボ兵器』で攻め入ったけど、本拠地を叩き潰そうとしたところで兵器のコンセントが抜けて失敗。
4ヶ月くらい戦況は膠着状態だったみたい。
そこからカラストンビ部隊、「旧」カラストンビ部隊が、高い戦闘能力と戦略性、あとガッツを持ってたった1部隊、4人で戦況をひっくり返した。
その時の隊長がNew! カラストンビ部隊元司令のアタリメ、
そうして1年間続いた大ナワバリバトルはイカ陣営の勝利で終わる。
勝った理由はタコ側の電力不足とか、イカとタコの足の数とかいろいろ説があるけど、それはワタシ的にあまり重要じゃない。
重要なのはその結果、タコ達をイカが地上から追放して地下に閉じ込めたことだ。
だから幽閉されたタコ達は狭苦しい地下で、技術を発展させて何とか生きようとした。
恨まれるのも、ワタシ達の大切なものを奪われるのも、当然だったんだ。
だってそれは、かつてワタシ達のじいちゃんばあちゃん世代が彼らにしたことだったから。
そしてなにより、親友に迫害されたなら裏切られたと思うのは別におかしい事じゃない。
「親友……!?」
はじけるように3号が声を上げる。
こういうのは失礼だけれど、反応がその事実を知ったワタシのそれと同じだったから少し面白く見えて、多少の笑みがこぼれた。
「そう、元司令とタコワサ将軍は親友なんだよ。大戦前からね」
「小説の朗読じゃないんです、そんなことが本当にあり得るんですか?」
「現実は小説より~なんて言うでしょ? あり得るんだよ」
「……はぁ」
3号が一通りの反論をしてワタシがそれを言いくるめると、諦めたようにため息をついて黙った。
それを確認してワタシは語りを再開する。
12000年前、地上にいた生物は一部の例外を除いて海に沈んだ。
地上を支配していたホニュウ類の「ニンゲン」が原因で起きた、度重なる環境破壊と海面上昇のせいだ。
それからしばらくして、(だいたい2000年くらい?)イカやタコがヒト型に進化して地上に出た。ワタシ達の先祖はこのころからナワバリバトルしたり、いろんなものを種族間で交換や交流してたみたい。
そして、その種族間交流のリーダーが元司令とタコワサだった。
何回にも渡って交流を重ねた2人は、種族の代表者っていう顔とは別に親友という顔も持つようになった。ワタシの想像じゃなくて実際に本人がそう言ってる。
だから、海面上昇が進み続けてナワバリを奪い合うってなった時、自分達のために親友にホコを向けなくちゃならないし、仲間のために親友の仲間を迫害しなくちゃならないから、恨みたくなくても恨むほかなかったんだと思う。
きっとワタシ達とタコワサの戦いは、『伝説のライブ』の真実は、我慢と恨みの爆発だったんだと思う。
あの戦いで流れた『シオカラ節』
全イカのDNAに刻まれているとか言われるそのリズムで、種族の隔たりなくわかりあえると思ったのは間違いじゃなかった。だって、もともと交流まであった種族同士だから。
タコ達がオオデンチナマズを盗んだ理由はただの報復じゃなかった。タコ達だって苦しい理由があって解決のために盗んだ。
それをワタシは、何も知らなかったワタシがしたことは……
結局このことを知ったワタシには、残党調査が正しいことかますますわからなくなった。