スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
『うめたてドリームランド』
パイプラインを抜けた先にあった、今までと違う画一的な地形のサイトをインフォメーションシステムはそう称した。
ここのポエムじみた名付けセンスに毒されたのか、その意味を深く読んでしまう。
この場所は夢を埋め立ててできた悲しみの場所なのか、埋め立てて夢を見た希望の場所なのか。そもそも人間の夢とはなんなのか。
考えても仕方のないことを考えて、続けてその思考が俺の記憶に結びつく。
『オレは大丈夫だ、なんとかしてみせるからさ!』
『また、前みたいになる? お父さんもお母さんももとどおりになる?』
『なるさ、してみせるから待ってろよ?』
『うん!』
「……ッ」
思い出すな、俺自身が埋めた夢のことなんて。
それが帰ってくることなんて、もうないのだから。
悶絶する思考を押さえつけながら、ヤカンへ走った。
もう見慣れた一本道型の構造が目の前に映る。
障害物として低い六角柱がまばらに配置されていて、ゴールは上の方に見える。
柱を伝って上へ上へと登るステージと見て俺は進み出した。
目の前にはタコトルーパーの脚をスプリングに改造したものがいて、こちらを視認するなり飛び跳ねながらこちらに迫ってくる。
俺はシューターを構えて応戦するが、今まで縦方向に大きく動くタコはいなかったため照準をつけようにもすぐ懐に入られ見失う。
上からインクをかけられる前に、インクタンクのポケットからブラストが飛び出して敵にかみついてくれなければ、やられていただろう。
落ち着ける一瞬ができた俺は呼吸を整えてタコを撃ち抜いた。
「あ、危なかったね……今のタコホッパーは」
「ブラストくんナイス~」
「3号、少し難しいかもしれないけれど、相手の動きを読んで撃つと当たりやすいかも」
俺は司令のアドバイスを受けて敵の軌道をよく見る。
スプリングで跳んだタコホッパーの高度は一定で、目標を視認次第その方向に放物線を描きながら迫る。
なら、その軌道に『置く』ようにして撃てば相手は当たってくれるはずだ。
そのねらいでシューターを撃てば予想通り相手は当たりに行った。
その要領でタコ達を倒しつつ、階段状となっている六角柱を登ると一旦明るい場所に出る。
3体のタコホッパーは乗っている足場が六角柱で、こちらより位置が高い優位をとってスプリングでさらに高度を高くする事で、こちらの視界外から同時にインクがかかってくる。
タコホッパーはブキも改造が施されているようで、リロードが長い代わり大量のインクを重力に従って投げる機構に変更されている。
一対多の状況では、ダメージが高い上に広く制圧できるあちらの方が圧倒的有利なのはわかりきったことだった。
防御の限界を受けてスーツがはがれると同時に、ブラストは敵の向こう側に飛んで身体を発光させる。
それがどういう原理かはわからないにしても、確実に敵の目はそちらに向いていた。
だからそれを良いことに俺は予測を用いた射撃で撃ち抜いた。
「すまない、助かった」
「くおるくこお、あくろこくおくあくるる、くおきゃくお」
「『敵が多いから自分を投げて気を逸らせ』? わかった、やれることはしてみるか」
インクで衣服を再生するまでの小休止。ブラストは並外れた嗅覚でこの崖下にタコホッパーが待っていることを察知したから、それらが反応できないギリギリで修復する。
インクでスーツが縫われた事を確認して、1歩前へ。崖下に降りないのはスプリングを持った奴らの方から、崖を越えて来てくれるからだ。
崖を乗り上げてくるタイミングを狙って射線をおいておけば、ほぼ一方的に倒せる。
そして安全を確保し下に降りて、上へ続く柱についたダッシュ板にイカで通過して飛ぶ。
『わあ……! ぴょんぴょんする、楽しい!』
『だろ? 貯金しといた甲斐があったってもんだ』
『これなら空の柱までとどくかなぁ……?』
『そうだな……工夫すれば届きそうな気もするな、はねた瞬間にスーパージャンプしてみるとか』
『むぅー……それじゃあ僕はまだむりじゃん』
『はは、楽しみは増えるだろ?』
「……!!」
今日は一段とフラッシュバックがひどい。
縦に柱を登るステージに黄色いホッピングマシンをもつタコホッパーと、それに結びつくきっかけが多いことに起因しているんだろうがこのタイミングはマズい。
「大丈夫、3号?」
司令が声が聞こえて、自身の身体がフリーズしていることに気がついた。
頭痛はするが、せめてミッションは終わらせないといけない。
「少し、考え事をしただけです」
おそらく司令の洞察力ならば見抜けてしまうような嘘をついて、むりやり前へ進む。
目の前に見える柱にたむろするタコをよけつつ上へ登る。
戦闘を避けているのはフラッシュバックで予測射撃が不可能だと直感的にわかったから、ブラストにヘイトを稼いでもらって走り抜ける。
高いところから降りてくるホッパーにしろ、ゴール前の凹凸地形のホッパーにしろ、ブラストを盾にしてしまえばこちらに意識は向かず素通りできた。
それはさながら過去から逃げるような景色だった。
家を出た瞬間の思考を具現化したような状況だった。
『おかしい……おかしいじゃないか! そんなのは!』
ああ、今日は本当にひどい。
いつもは多少の恐怖を感じるゴールポイントでの気絶すら、今は一瞬の安息に感じられた。