スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Spit out the past to know the pain

司令がボスヤカンへ入った後、ワタシと1号は、放心状態になった3号をなんとかシオカラキャンプに連れて行ってテントの中で3号の話を聞こうとしていた。

「司令は3号が苦しい想いをしているって言ってたけど……ホント?」

1号の問いに3号はゆっくりうなずく。

ただ、その後はふさぎ込んでしまってワタシ達が聞き出そうとしてもだんまりな状態だった。

「う~ん、どうしよう……」

「3号、今どんな風に苦しい?」

……出来損ないだって感じがして嫌です。どうあがいても俺は誰かを傷つけるしか脳がなくて

「出来損ない?」

「ぐっ……あ……」

ただ、何にふさぎこんでいるかはわからなくても、その話せないという気持ちはわかるから無理やり聞き出そうなんて思えなかった。

実際にワタシもそれをしたし、誰かに指摘されなきゃ自分が苦しいことはわからないものだから。

ここにもし4号がいたのなら、目の前の3号に言葉で切り込んでいったのかもしれないけれど、それで目を覚まさせるなんて19のワタシがやっとできたことを求めるのはできない。

どうしようかと悩んでいるそのときだった。

「くおっ!」

ブラストくんが声を出して丸まっている3号に潜り込むと、そこから携帯電話をひったくって器用にテンキーを打ち始めた。

「えっと……『アイボーは1回こうなったらしばらく声が聞こえないみたい。なんか、ボクには見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりしてるんだ』……?」

「……それ、幻覚とか幻聴とかじゃ……」

1号が読み上げた文章は想像以上に心配なものだった。

確かに3号には突然顔色を悪くしてうつむいたり、任務中に固まってしまったり、そういう兆しは確かにあった。

まさかそこまでとは思えなかったけれど。

「ブラストくん、アタシ達でできそうなことはある?」

『あの状態になったアイボーは壊れたみたいにいろいろ言うんだ。ボクと一緒に拾ってくれる?』

「わかった! ホ……2号も手伝って!」

「おっけ~」

ワタシ達は少し近寄って3号の声が聞こえるように体勢を低くしながら顔を近づける。

「……俺、本当に人を傷つけるだけはできるよな、最低だ

「人を傷つける……?」

「くお、くおかおくあお」

ワタシは気になったワードを拾って繰り返していく。それをブラストくんが聞いて3号に返している。

なんて言ってるかはわからないけど、きっとこの中で3号のことを一番知っているのは彼だから信じることにする。

「違わない、今回なら司令を傷つけた」

「きっと大丈夫だよ! 司令はそこまで気にしてないはずだから!」

「くおく、くおりおく」

「……そうだとしても、気にするなって言われても……!」

3号はうずくまったままアタマをかきむしる。

しばらくかきむしると力が抜けたようにだらんと腕をたらして、また黙ってしまった。

「……だいじょうぶ?」

だいじょうぶじゃない、だいじょうぶじゃない……

「くお、くありゃすあり?」

どうだいじょうぶじゃないって……わかるだろ、ブラストなら。声が、酷いんだ……

「声って……?」

 

「……お前は生きてる価値がない。男のクセに役立たずで出来損ない。人を苛つかせて傷つける事しかできない……そんな人殺しは、死んだ方がいいって……!

 

空間が凍りついた気がした。

ドラマの通し稽古でもやっているような錯覚になった。

それくらい、3号から出た言葉は悲痛だった。

「3号……!?」

気がつけばワタシは声をあげて3号に近づいていた。

「あっ……!? あああぁ……ああああああああああああああッ!

でも、それを3号は必死に振り払おうと暴れ出してしまって、ワタシは後ろにのけぞってしまう。

「ホタルちゃんっ!?」

「ッタタ……ダイジョブ、心配せんでいいよ」

「くるな、くるな! こないで!」

3号は怯えて大声をだしながら距離をとっている。そこには厚い壁があるように見えた。

「ブラストくん! どーすればいいの!?」

『ボクを持って走って!』

「……わかったっ!」

1号────アオリちゃんがブラストくんをわしづかみにして3号へ全力ダッシュ。

ぶたれるのも構わず3号へ勢いよく抱きついた。

 

()くありこあるらくるりうあらか!(ここにはボクも2人もいる!) けるかくけくかくこ!(幻覚なんかじゃない!)こくか、(ボクを、)くありかこ……(2人を……) けけるかりくあかーーッ!(ちゃんと見ろーーッ!)()

 

 

「……ああ!?」

ブラストくんがカトレア君に語りかけるように何か叫ぶと、我に返った3号は止まってガクンとなった。

「……よかったぁ、止まった……」

顔や腕を殴られたアオリちゃんは、赤くなったところの痛みに耐えながら、それでもニコッと笑って3号を心配していた。

ブラストくんはアオリちゃんの手から離れるとワタシの前に落ちた携帯電話を操作して何かを言おうとしていた。

ワタシはそのディスプレイに表示された文章を読み上げる。

『ボクはアイボーの昔に何があったとか知らないけどさ。死ぬことを肯定しないでよ。そんな死に方、ボクらより悲しいじゃん』

「……それは、どういう……」

『アイボー、ボクはここにくるまで何があったか話すから、アイボーも昔なにがあったか教えてよ。ダメ?』

しばらく3号は黙り込んでいたけど、ブラストくんは何も言わないから、ついに降参して両手を力なく上げた。

「……俺ももう限界だ。その取引に乗るから司令が来たらお前から話してくれ」

ブラストくんがうなずくと、ちょうどごちゃごちゃとした刃物をかかえて司令が帰ってきた。

「ただいま……まだ、整理はついてない感じかな?」

「うん、いろいろあって今からブラストくんが昔のことを語り始めるところ」

「へぇ……聞かせてもらってもいい?」

「くお!」

こうしてシリアスな空気の中、ワタシ達の知らないシャケの世界が語られ始めた。

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