スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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末那識

「麒麟、そろそろお前は遡上に備えて役割を決めた方がいいんじゃないか?」

こっちの世界で言うサーモンランの時期がボクにも近づいて来て、役割を決めなければいけない時期になった。

そんなことを決めるのはボクのポテンシャルが高いからで、オオモノシャケになれない普通のシャケなら考える必要はないものだ。

オオモノシャケになれるヒトでもだいたい担当できるのは1種類。ヘビ・テッパン・カタパット・ナベブタ・グリル・ハシラ・キンシャケの7種類も担当できうるボクの方がよっぽどおかしいって事になる。

それは、シャケの世界じゃ無かろうが誇るべき悩みだって言うのかもしれないけれども、そのときそれを感じれる感性じゃなかった。

「……ボクは、コジャケでいる」

「どうしてだ? お前はそんな小物で収まる器じゃないのに」

「ボクは確かにオオモノシャケになれるだけの実力があるのかもしれないけど、演習と実戦は別のものだと思う。まずは隊列に従って慣れておきたい」

それは嘘だ。

ボクが遡上しようとしたときにはもうアイボー達のほうでサーモンラン……ボク達シャケに対する狩猟が行われていて、オオモノシャケは進化や稼働に必要な金イクラを持っていることから狙われやすいことは知っていた。

ボクがやりたいことを、生きて世界と対話するということをしたいならオオモノシャケになるのは自殺行為だ。

だから、ボクはコジャケでいることにした。

その噂はあっという間に広がって、ボクの存在は浮き彫りになった。

意外かもしれないけれどボクに対する仲間の反応は賛否両論。

「教えに反している」とか「麒麟は群れを乱すクーデターを起こそうとしている」とかいうある程度予想がついた批判から、「麒麟はその能力を発揮するために準備している」とか、「将来は軍師となるために観察するための賢い選択」とかの賞賛までいろいろだった。

そうやって遡上への時が少しずつ近づいてきていたその時、そんな様子を聞きつけたらしい家族がボクは何をしたいのかを聞いてきた。

 

「世界と生きて対話するために旅に出る?」

「うん、長老から阿頼耶識とか業力の話を聞いたんだけど、納得がいかなくて」

どうしようか考えたけれど、家族にはボクの考えをはっきり言うことにした。

せめて家族には反対されてもボクの考えを知っていて欲しかったからだ。

「……深く考えたことが無かったが、小さな頃から叩き込まれた考え方を今更変えられる気もしないな。言いたいことは解るが納得はできない」

パパは小さい頃から教えを信じていて、そのために努力をしてバクダンになって、戦果を残すことに力を注いでいた。

戦果が善業に変わるという考え方をしていたから、仮に生きて世界と対話できる方法が有るのなら、それはパパの一生を否定することになる。当然の反応なのかもしれない。

「難しいことはわからないけれど……その新しいものを見つけたい感覚はわかるわ。私が厨房に立っているのだってあなたと似たようなものだから」

それに対してママは難しい教えに少し疑問を持って、戦う以外に善業を積む方法はないのか考えた。

答えとしてはいつ死ぬかわからない、これから出撃する人達にご飯を腹一杯食べてもらうことって思って行動した。

結果的にそれは死にに行くヒトへは士気向上に、死んだもの達には意志を汲み取った弔いになっている。

「……やっぱり、変なことを言ってる自覚はあるよ。他のヒトの言う才能を棒に振ってるっていうのも理解できる。だけど……」

「……1つ言うが────」

 

「俺はお前の言ってることを理解はできたが納得はできなかった。ただ、これは俺の事じゃなくお前のことだ。俺に余計なことを言う資格はない」

「そうね、これは私の事じゃなくてあなたのこと、あなたの一生だもの。あなたが言うなら私達は良くも悪くも応援するしかできないわ」

 

その言葉は、ボクが外野からどうこう言われていてもそれは自分の事じゃないからと縛らず、応援はするという保証になって、ボクを旅へ押し出す最後の言葉として十分だった。

「……うん、ありがとう」

 

そして、ボクは遡上に乗じて群をはぐれた。

 

「なんだか暖かい家族だね……!」

1ゴウは感動しているみたいで少し声が震えてる。ボクが今考えても確かに暖かいなと思う。

「そうそう簡単な事じゃないよ。理解できるけど納得が行かない状態で応援はするって」

「普通は葛藤するだろうしね~」

シレイと2ゴウも驚きか感動かって取れる反応をしている。

そんな中、アイボーだけは明らかに違う反応をしていた。

 

いいな……そんな親だったら、よかったな……

 

「3号?」

いや……後で話します、続けて

そういったアイボーはボクを切羽詰まったように見る。

それは、アイボーがバンカラ街に向かう時に見せた酷い目だったから、ボクは一瞬ためらったけど話すことにした。

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