スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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道先案内人

ボクは生きて世界と対話するために群れを抜けた。でも実のところそれ以外は何も考えていなかったんだ。

いや、何もわからないから考えられなかったってほうが説明的には正しい気がする。

世界と対話することは噛み砕けば自分を見つけることになるけれど、どうすれば自分を見つけられるかをボクは知らなかった。

群れからよく言われたのは自問自答だけれど、それは群れを抜ける前に実行していてたどり着けなかったからそのほかを考えるしかなかった。

そしてもう一つ、想定はできていても苦しかったことはシャケのナワバリとのギャップだ。

外のイカタコ達の世界は開放的で自由だった。

自由って言うのはつまり縛られない代わり誰にも守られないってことで、ボクはその時になって初めて恵まれた環境にいたことを実感したんだ。

ぐぎゅるとおなかが鳴ってもご飯にありつける訳ではなかったし、喉がカラカラになっても水は飲めなかった。

いつでも食料班や貯水班からそれらを貰えた『麒麟』の頃とは大違いで、ボクが食いしん坊だったことをここで初めて後悔した。

それを感じながら2週間がすぎた頃に出会ったのがアイボーのカトレア。

アイポーは最初、お腹が空いていたのかボクを食べようとしたけれどボクは食べられる訳には行かなかったから、アイボーに抵抗して振り払った後、近くにあったテッパンのジャンクをアピールしてそれをおカネに変えることを提案して難を逃れることができた。

このとき、シャケのナワバリからそんなに離れてなかったことや近くにタコの質屋が有ったこと、そしてボクが機械慣れしていたことのどれかでも欠けていたら助かってなかっただろう。

アイボーは旅慣れしていてシャケには無いサバイバル技術に旅の動き方、そして外の世界を知っていた。

だから、アイボーについていけばボクは自分を知ることができる、世界と対話できる方法を知れると思ってついていく事にしたんだ。

アイボーは最初、いや割と最近までボクの事をうざったく思っていたみたいだけれど、ジャンクを売ることで生活していたから、ボクのシャケの世界でしごかれた目と鼻がとっても役に立っていたみたいで追い払う事はしなかった。

それがわかってからアイボー呼びをし始めたんだ。

 

結局9ヶ月一緒にいるけれど、世界と対話するどころか1人の心さえわかりきってはいない。

でも、それはとても難しいことなんだと割り切っているし、それがやりたいことだから放り投げることは絶対にしないで旅を続けるつもりだ。

1人ではできないことでも、アイボーとならできるはずと信じてるから。

 

俺を、ただの、人殺しを……お前はそんな風に捉えていたのか

最初に出た言葉はアイボーの感想で、何となくその声は震えていた。

アイボーは時々自虐したりはするけれど、流石に今回は酷すぎて心配になる。

「ブラストくんって思った以上にたくましいね!」

前の言葉を聞かなかったのか拾っていないのか、1ゴウはそんなほめ言葉をボクにかける。

「あんなに独特で殺バツとした世界があったのも驚きだし、そこから自分の考えで抜け出そうなんて強さの塊なんよ」

と具体的な感想を述べる2ゴウもアイボーの台詞はスルーした。それにどんな意図があるのかを読みとることはできない。

「ワタシが思ってるよりもずっと、ブラスト君は自分のことをしっかり考えていて、人を見ているんだね。びっくりしたよ」

シレイは淡々と感想を述べて、話が終わったかどうかの確認をとったから、ボクはそれに頷いてアイボーの話を聞く方向に移った。

そのときのシレイの変わりようは一瞬ながらすごかった。

ボクに向けられていた目は好奇心なのに、アイボーに向けたのは優しくも力強い目だった。

「……次はカトレア君だね。ワタシ的にも『呪い』とか『人殺し』とか気になるけれど、話せそう?」

シレイの声もそれに引っ張られて優しく強い声になってる。

「…………そういう話、だものな。うん、時間はかかりますよ」

「ゆっくりでもいい、感情が爆発しちゃってもいい。ワタシは最後まで聞くから」

「大丈夫! どんな話でも笑ったりしないよ!」

「こういうのは吐き出しちゃうのが1番やからね」

「……お前もか?」

『もちろん!』

大丈夫、アイボーのどんなトゲでも受け止められるから大丈夫。

そんなことを口から伝えると、アイボーは大きく息を吐いてぽつぽつと話し始めた。

 

……()には、家族がいたんです

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