スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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この30話から34話までは、R15要素にオリジナルキャラへのアンチ・ヘイト、残酷な表現、暴力、身体的精神的虐待、自殺に関する直接的な表現が含まれます。
閲覧の際は注意をお願いします。


Family

僕には家族がいたんです。

僕たち子供にはあまりかまわなかったけれど、家計にお金は入れる大黒柱だったと金遣いが多少荒いが僕たちを気にかけてくれていた、そして僕にとっての心の拠り所で理解者って言っても過言ではなかった兄さんがいたんです。

それが良い親や家族かと言われたら、今考えると多少違うと思いますが唯一の親を疑うなんて事は子供にできるわけが無かったんです。

 

父が出稼ぎ労働者だったのもあり、家にいたのはだいたい僕と兄さんと母でした。

「ブラサリア、カトレア、ご飯よ」

「お、今日のご飯はなに?」

「カレーよ、カトレアも来なさい」

「わーい! ぼく、カレーすき!」

「お兄ちゃんと一緒に手、洗いにいかないか?」

「うん!」

母は少し高級嗜好品の収集癖があって家計が金欠気味ではあったのですが、4つでその事実を知るわけもなく、そのときは料理上手の優しい母に見えていました。

「いただきます!」

「うー、これ、にんじんはいってるよー」

「こらこら、好き嫌いしないの」

「確かになんとなくやわらかすぎるのかもな、でもカロテンっていう栄養がいっぱい入ってて身体にはいいんだぜ?」

「えいようとったらどうなる?」

「お兄ちゃんみたいになれる! やれるか?」

「……ぼく、がんばる!」

「おう!」

兄さん、プラサリア兄さんと僕は6つの年の差があったので僕よりも経験も知識もユーモアもあって、僕にとっては父親代わりと言っても過言じゃ有りませんでした。

「ん、おいしい!」

「やるじゃない、ブラサリア」

「んまーな、オレだって兄ちゃんだし」

僕はそんな兄さんが大好きでしたし、尊敬していました。

そんな兄さんには名前にコンプレックスのようなものを持っていたらしく、僕には自分のつけた『ブラスト』と呼ぶように言っていました。

曰わく、「なんとなく女子っぽいし、地味に長い」とか言って。

なぜそんなことを親ではなく僕に言ったのかその時にはわかりませんでしたが、今考えると兄さんには家族と壁が有ることになんとなく察しがついていて、だから何の隔たりもなく心を許せる僕にそうさせたんだと思っています。

「……またバッグ買ったの?」

「ふふ、これはロッケンベルグのリッチブランドが作った新発売のバッグで、ここの革の感じとかすごくいいのよ」

「持て余したりしてるじゃんって話だよ」

「いいじゃない。あなたにとっての本みたいな物だし、私のおカネをどう使おうが」

「いや、確かにそう、だけど……」

「今日はもう遅いんだしカトレアも寝たんだからブラサリアも寝ちゃいなさい」

「……わかった」

その喧嘩のような一幕を眠れなかったからと寝室からのぞき見てしまって、入ってきた兄さんに申しわけなさそうな顔であやまられた意味を今なら理解できます。

 

「誕生日おめでとう、ブラサリア。今日はオムライスよ!」

「オムライス!? 母さんのオムライスはどのレストランよりも美味しいんだよ! うれしいな!」

シェフを志していたこともあって料理は誰にも負けず、優しかった母。

「────できた! これなーに?」

「これ……もしかしてホッピングマシンか? すげーや! コレ難しかったと思うんだけどさ」

「ほっぴんぐ……?」

「この絵の通りバネがくっついてる乗り物だ。ふつうのジャンプより高く跳べるんだ」

「へ~! ぼくのってみたい!」

読書が趣味で、僕と一緒に新しい世界を見せてくれた兄さん。

「はは、今度お父さんにねだってみるか?」

「いいの!?」

「いい子にしてたら許してくれるだろ? がんばろーぜ!」

「うん!」

「……まあ、それくらいならしてやろう」

出稼ぎ労働者でなかなか会う機会もなく無愛想だったけれど、だからこそときどきあった小さな気遣いみたいなものが染みる父。

一般的な100点満点の家族ではないにしろ、暖かい家族ではあったんです。

……7つの時までは。

 

「……幸せでしたよ、あの時は」

そう口にしてから、その言葉が自虐なのか事実なのか考え始めたことに気がついて、もうだめだなと首を振った。

「今は?」

司令は、おそらくもう答えがわかっている質問を真剣な顔つきでしている。

「決まってるじゃないですか……幸せでもなく、ただ苦しい」

その質問に、ただただそのままの意味で返したのは、その質問の意図がわからなかったからだ。

「その、3号。一体7歳の時に何があったの……?」

2号は不安げにその質問をしたから、事実を述べようとしたが

 

「すべては父が、あの親父が悪いんです」

 

口を突いて出たのは恨みだった。

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