スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
『いっ、隕石の軌道が突如変化して────演算の結果、このままでは……!』
『なにぃ!?』
それは、何の前触れもなく起きた星の悪戯。
直径10キロメートルの巨大隕石が迫り衝突しようとしている。
残された猶予は1週間もありません。
『返して!?』
『……!』
それと同時かつ多発的に起きる、化け物と人の絆を記した石の強盗事件。
その真相を追っていくと、化け物たちの秘めたる力を原料とした強大かつ無限のエネルギーを使って巨大隕石を別空間に飛ばす計画が伝えられました。
『その、忌まわしきテクノロジーを発動させればどうなるのか……別の場所に飛ばされた隕石がどういうことを起こすのか────想像力が足りないよ、はっきり言ってさ』
しかし、その計画には予想もしない欠陥がありました。
同時多発強盗を仕掛けた少女がいうには、それを発動させればこの星は助かるが、別世界──
そして、自分にはそれを避けるための考えがあり先の強盗も策のうちだと。
妄言だと言うしかないような理論ですが、彼女はそういいながら転送装置のキーを握り砕いたからその考えに乗るほかありませんでした。
その方法とは、神竜を呼び出して退けること。
神竜には伝承が存在しました。
──海の神、陸の神による争いや漆黒の
民たちは平穏を願い、そして誰もがこの苦境の晴れることを祈った。
すると、星の雨で墜ちた隕石の一つが七色に光り出し、反応するように宇宙から慈悲を見せた
以来、その神竜への感謝と祈りを一番近い場所で捧げられるように民は熱心になり、雲を突き抜け空をみるような塔を築いた。
名を『空の柱』と言う────
──そして千の刻が過ぎ、再び星の雨が降る。その時の降り様は石の大水であった。
この地上の荒れように海の神、陸の神は再び怒りを露わにし暴れ出す。
民は空の柱で祈りを捧げた。あの神竜が今再び降り立ちその深い慈悲で災厄が振り払われることを願って。
捧げた祈りは宇宙に届き、萌葱色の神竜は再び姿を現すと民はさらなる祈りを捧げた。
その祈りで神竜は姿を変え、更なる祈りにより増した力を以て神々を鎮め、石の大水を砕いて空に去った────
その伝承に従い、迫る巨大隕石を神竜で砕けばどちらの世界も助かると。
少女は神竜を呼び、神竜は少年を認めて宇宙に昇り隕石を砕いて星は救われました。
「それは憧れだったんです。このバンカラにもそれに似た伝承があるからもしかしたらって」
「似た伝承……?」
司令がバンカラの地に伝わる伝承について聞いてきて、俺は司令達がハイカラ地方生まれだと言うことを思い出した。
バンカラ地方に生きるものなら当然のように知っているものだが、そういうのは他の地方に伝わりにくいから当然だろう。
「……『今は昔、バンカラの地に大水あり。天より下りし三つの光、渦を作りて災ひぬぐひ去れり。バンカラの民、三つの神輿をもつてこれを崇め奉るものとせり』ってものです」
「なるほど、ミステリーファイルのあれはそういうことだったんだ……」
「そういえば、ミステリーファイルにも記されてましたね。あれです、僕はそういうのに憧れました……」
「3号?」
「……結局、神竜もいなければ、災いもぬぐい去られませんでしたが」
「ぐっ……いってぇな、最近は母さんに殴られっぱだ」
「兄さん、大丈夫……?」
「オレは大丈夫だ、なんとかしてみせるからさ!」
「また、前みたいになる? お父さんもお母さんももとどおりになる?」
伝承どおりに世界を救った小説の主人公にあてられた8つの僕は、少年のように空へ祈ろうとしました。
「なるさ、してみせるから待ってろよ?」
「うん!」
家庭は崩壊が進み、父が入れていた金が無くなった母は、その拡大解釈されて歪んだ女性解放論で本格的にカルト宗教のようなものを立ち上げ、信者を募っては金を巻き上げ私腹を肥やす状態でした。
その状態でも
そんな中イカとヒトを自在に切り替えられるようになった兄さんは新興スポーツとして名が上がっていた『ナワバリバトル』のテスター──当時はまだルールが競技用への調整段階で、正式に競技となったのはこの次の年──に応募することもなく、トレンドが集中を始めた『ハイカラシティ』を中心にバイトをひたすらしてなんとか家庭を保たせていました。
そのときの真意は、もともとは成り立っていたはずの家族だからって何とかして交渉の機会を狙っていたんだと思います。
そうすると、家にいるのは僕と母だけになってしまうので兄さんはできるだけ僕が傷つかないよう考えて対策しました。
兄さんの部屋にはもともと鍵がありませんでしたが、ホームセンターかどこかで使えそうなものを買ってきて鍵を付け立て籠もれる安全地帯にしてみたり、その中で恐怖に怯えたりすることのないように本の数が増えていたり、何も使わずとも食べられる非常食などが備蓄されるなどあらゆることをして兄さんの部屋は日を追うごとにシェルターとなっていきました。
いつしか僕はそこで寝食をし、本の中に思いを馳せ、夜は窓から見える星に兄さんと共に祈るのが常態化していきました。
週1回、母が『集会』という名目で昼から夜まで家から居なくなる時間がありました。
その時は開放の時間で、僕たちは狭苦しいシェルターから出て外の空気を吸うことが許されました。
「わあ……! ぴょんぴょんする、楽しい!」
「だろ? 貯金しといた甲斐があったってもんだ」
その中でも記憶に焼き付いているのが、兄さんが少しずつ貯めて買ったホッピングマシンを開け初めて跳んだ9つのあの日です。
兄さんはバイトで稼いだお金を母への献金という名目で納めていたそうですが、そのうちのいくらかを隠して貯金することでそれは実現しました。
「これなら空の柱までとどくかなぁ……? 」
「そうだな……工夫すれば届きそうな気もするな、はねた瞬間にスーパージャンプしてみるとか」
「むぅー……それじゃあ僕はまだむりじゃん」
「はは、楽しみは増えるだろ?」
本当はこのホッピングマシンが父によるもので、隣には母が居るのが良かったと思います。
でも、もうすでにそれは実現不可能になっていたのが実際でした。