スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Reality overlaps with distorted hallucinations

深く、長い夢を見ていた気がする。

記憶が途切れる直前にあんなことを語ったからだろうか。

夢の内容なんてものは目が覚めて霧散(むさん)するように消えたから、俺は覚えていない。

ただ、悪寒が走るこの寝覚め方と頬を伝う涙から、心地の良い夢ではなかったという事だけはわかった。

 

オルタナに移り住んでから長い年月が過ぎ、人類は少しずつ増えていった。

老いた科学者たちはオルタナの社会を自分達だけで支えることに限界を感じ、市民の中から特に能力の高いものを選んでオルタナの管理を一部任せることにした。

また、才能のある若者たちを教育し、自分たちの知識と技術を伝えるべく心血を注いだ。

オルタナで生まれ育った科学者たちは優秀で好奇心が強く、いつしか液晶が映し出す作り物ではない、本物の空を望むようになった。

若き科学者たちは、汚染された地球を脱出し新天地を目指そうと老化学者たちの反対を押し切ってロケットを建造し、ついに完成させる。

しかし、打ち上げの最終テストでブースターの試運転を行った際に、強力なエネルギーを浴びたオルタナ内壁の液晶が突如として暴走した。

これにより内壁の一部が崩落し、居住区を直撃。

復旧不可能にまでライフラインを破壊され、人類は呆気なく絶滅を迎えた。

 

「そうだ、事が進むときは突然で、唐突で、あっけなくて……」

そこまで発言して、俺は無意識に呟いていた事を知る。

前のサイトのオルタナログを参照できていなかったから確認すれば、そこには人類滅亡の記録が淡々と記されていた。

その願望のため、積み上げられるだけ積み上がった後唐突に壊れる様は、それはまるで

「…………ダメだ」

結論にたどり着く手前で思考を遮断して、振り切るようにサイト5『あすなろグリーンヒルズ』のミッションに向かった。

 

オルタナで戦っているうちにすっかり定番化した、一本道タイプのステージについた。

特徴を挙げるとするなら、このステージは柱や木箱が多く設置されており見通しが悪いこと。今まで戦ってきたタコトルーパーの上等兵、バイタコトルーパー、インクリングやオクトリングと同じだけの力を持ったタコゾネスという兵士が配備されていることだろうか。

まず、ゲートをくぐって出迎えたのはタコゾネスとバイタコトルーパー2体。

ブラストの力も借りてバイタコトルーパーの気を逸らし、その間にタコゾネスの相手をする。

タコゾネスはトルーパー達と違って知性があるようで、配置された6本の柱を遮蔽物として利用してこちらの攻撃を避けてくる。

それを見てスプラッシュボムで牽制。慌てて出てきたタコゾネスをシューターで撃ち抜く。

ブラストが攻撃に耐えかねてインクタンクのポケットに戻ってきたところでステップし、ギリギリ残ったインクでバイタコトルーパーを下した。

なぜそこまで最適化された動きがなせたのかは正直わからない。単純に練度が上がったというのはありそうだが、それだけでなく嫌な思考を振り切る憂さ晴らしも考えられた。

ともかく、その動きが自然と出て、敵を殲滅したという事実があった。

とはいえ、数の有利と地の利いうものはある。

飛んだ先の浮島ではいくら動きが最適化されていても、遮蔽物による視界不良や投入された15の兵力に1人と1匹で立ち向かうのには無茶があった。

遮蔽物上に配置されたバイタコトルーパーをブラストやボムでいなした所で、視界外から襲ってくるタコゾネスの対応は追いつかず被弾せざるをえない。スーパーチャクチで一掃しようにも発生したインクの渦は木箱を吹き飛ばすのみで、敵に命中する事はなかった。

「ぐ……」

「壁の裏に隠れて深呼吸してみて。戦場の鉄則だよ、3号」

動きは最適化されていようと思考はそうではなく、白と黒がめちゃくちゃに混ざり合う状況では司令の静かな声がより透き通る。

壁裏に隠れ深呼吸をしてみると、遮蔽物のいくつかはインクの乗らないタイル質で構成されていることに気づく。インクが乗らないと言うことは、タコゾネスが上に上ることはないから奇襲の心配はない。

「……あちらが壁を使うならこちらも壁か」

俺は壁から少し視界を出しできるだけ面積を小さくしながら、シューターを構えて敵が来しだい蜂の巣にする。そうすればタコゾネスは対処する間もなく爆散した。

次の島に飛び、そこに置かれていたウルトラショットカンヅメで高台にいるトルーパーを砲撃。ペットボトルの薬莢が2つ落ちて自分の後ろに転がると、高台には黄色の柱が薬莢(やっきょう)分できる。

それは水柱のようで、それは……

「────ッ!」

ダメだ、今はすべての現象がマイナスに見えてしまう。余計なことを考えるんじゃない。

ウルトラショットはあと1発残っていたが、気にせず投げ捨てた俺は地を駆けて敵陣に突っ込む。

当然のように視界外からタコゾネスやトルーパーが襲ってくるがそれはあまり問題ではなく、ブラストを盾にすれば……

 

盾? ブラストを盾にする……?

それは、それは、それは……つまり────

 

兄さんを盾に……する?

僕が?

 

「うっ、うわ……わああぁーーーッ!

 

────絶叫、いや発狂した後の記憶は正直言って薄い。

シオカラキャンプの休憩テントで司令から聞いた話では、その後俺は暴走しブキを投げ捨てて目の前に迫るタコ達に殴る蹴るや絞めて対処していたらしい。

それでステージもクリアしたと。

「3号……」

「……ダメみたいです、司令。俺は現実をしっかりと見れない。視界がことごとく歪んでフラッシュバックして……」

「……苦しいかもしれないけど、あのミッション中どう見えてたかは言える?」

俺は司令の質問に、思い出して頭痛を抱えながら答える。

「全部のことが兄さんに起こった事へ繋がってしまうんです。タコ達の爆発はあの時の水柱になるし、そもそもタコ達は両親になってしまうしブラストだって兄さんになってしまうんです」

「ブラサリア兄さん、だっけ?」

「だから別人……違うな、別の存在だってのにブラストを盾にすることが兄さんを盾にする解釈になって、それは……」

「……そっか、うん。確かにそれはああなっちゃう、のかな」

司令は少し考えた後、こちらを見て言った。

 

「カトレア君は……今ワタシがお兄さんに見える?」

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