スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Distance to what you want

「クーゲルシュライバー、ね」

私はウデにバンドで固定したスマホを見てつぶやいた。

お姉ちゃんがここ最近ブキの解説を頼むようになった。ブキチさんは話が長いし専門書だと小難しいからだろうか。

「……専門職噛んでる私に聞いても、専門書とさほど変わらないだろうけどさ」

そういいながらメールに返信を打ち込む。

 

スピナー種のクーゲルシュライバーはほかのスピナー種とは違う特徴を持っている。

何よりの特徴は可変機構による射程の変化だ。

詳細は省くが撃ち始めは連射力が高く拡散的だが射程の短い弾が、チャージしたインクが少なくなれば機構が変化して密度は低いが射程が長く集弾率の高い弾が放たれる。

また、その可変機構を採用した恩恵で引き金を引けばリチャージが可能となった、革新的なスピナーだ。

 

そこまでの文言をメールに打ちこんで私は思いついた。

これならばヒーローシューターR+の強化改良案の問題を解決できるかもしれないからだ。

「……つまり、その回転型可変機構の切り替えを出力依存でなくて────」

私はメールを送信して、すぐに作業に取りかかった。行動というのは、思えば早いものだ。

 

長射程を活かしステージを攻略していくステージで、僕はなんとなく選択した「クーゲルシュライバー」を持って進む。

司令が送ってくれた説明文をみる限り可変機構で射程が変化するスピナーで、それを活かして攻略するステージらしい。

ゲートをくぐっていきなり現れたスイッチを狙って射撃すると、確かに撃ち始めの射程では届かないが時間経過で変形して延長されると届くようになる。

そのスイッチが起動して足場が現れる。その先へ進めば横にかかったスロープ状の通路にトルーパー2体の姿が見えた。

トルーパーたちはクーゲルシュライバーの初期射程を見て笑うようにしかけてくるが、カチャッと言う音と共に射程が延長されるのを見てあわてて構えた。

しかし、もう構えた頃には吐き出されたインクが直撃し身体がはじける。

「このブキ、敵の意表をつくこともできるのか……ものは使いようだな」

スロープを登ればまたトルーパーが現れたが、近くには防弾できるバルーンの壁にトルーパーの後ろにあるのはボム風船。

バルーンから少しの顔を出しボム風船を撃てばわけない事ではあった。

チェックポイントを通り抜け、その先の道をふさぐ木箱の壁を壊す。その後ろから出てきた出てきたタコトルーパーは、抵抗する間もなくスピナーの餌食になった。

クーゲルシュライバーのリチャージ機能を使えば、入り口を破壊した建物の中にいた逆さ吊りのタコトルーパーも同じような末路を辿った。

それを合図に建物の壁は開き、スコープレーザーが僕の身体を照らす。

幸いにもバルーンの壁が防弾してくれるから、その後ろで待機しつつインクを回復して引き金を引く。

短射程モードはバルーンに空撃ちし、モードが切り替わったところで横に飛び出てタコスナイパーに連打を叩き込んだ。

スナイパーが乗っていた壁の一段上にガラス壁で遮られたスイッチが寝て見える。

壁といってもその上は通り抜けができるようにされているから、ブキから発射されるインクを落とす曲射を行えば起動できる。

そこでふと、僕は思考に身を任せた。

 

このヤカンは『欲しいものはいつも、遠くにあった』という、相変わらずポエムじみた名前がついている。

だけど、いろいろと考えた後だとこのタイトルたちを頭ごなしに否定できない自分がいた。

特に、このステージに関しては。

 

人は欲深い生き物だと思う。そしてよりにもよって手の届かないものを欲しがる癖がある。

それは僕が生きている経験則からだ。

兄さんは味方

僕たちは平穏な家族

母は使いきれないほどの不労所得を欲しがった。

父は……なんだろうか、わかりたくもないけれど。

ともかく、思考する頭があれば届きもしないものを欲しがる。だからそんな言葉が出る。

おそらく人間も同じだったんだろう。

そして、僕自身はいなくなってしまった兄さんが欲しかった。

だけど当然、兄さんが帰ってくる事はないのだからこの願いは叶わない。だから僕は、僕が壊れないように兄さんになることを決めた。

自分のことを俺と呼ぶようにした。

できるだけつらいことに耐えられるように弱い僕は閉じ込めた。

自分の欲を捨てて生きるための金を得ることに集中した。

まあ、兄さんに成り代わろうとさえしたその結果、気がついたら僕はすっからかんだったわけで、今僕は具体性もない中身を欲しがっているが。

 

思考を終えると、ゴール前にいたタコスナイパーを撃ち抜いていたから、そのままゴールをに触れる。

気絶にもなれて、だいぶ復帰もしやすくなったから帰還までのインターバルは一瞬になっていた。

ヤカンから顔を出して司令にミッション終了をつげれば、司令は少し驚いた顔をしたがすぐに持ち直して僕に聞いた。

「なんかイカしたカオになったね。答え出た?」

「まだ正確なところは出てません。だけど、今はとりあえずあの人の……『クマサン』の真意を知ることに集中します」

「……わかった。それが君のやりたいことならワタシ達は全力でサポートできるよ」

「すみません、お願いします」

「謝らないで、これはワタシ達もしたいって思ってるから。行こう?」

そうして意思を確認した司令は、準備のため僕の腕を引っ張りテントへ向かった。

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