スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Like a ghost traveling through nightmares

目が覚めるといやなほどにきれいな夕焼け空が見えた。

空からは虹色をした液体が雨になって降り注いでいて、それが当たった場所から剛毛が生える。

それはひどくおかしなものだが、寝れば悪夢しか見なかった僕はすぐに状況を把握して受け入れる事ができた。

 

この世界は、ケバインクが雨のように降って壊れた世界なんだと。

 

足下を見れば毛玉になってしまった僕がいて、その横でブラストが泣いている。

僕は死んで────いや、この状態であっても意識はあるから死んだというのは語弊がある。自我がなくなってでくのぼうになったというのが正確か。

どうやら身体から出たタマシイとなってこの状況を見ているようだ。

よりにもよって相棒が自分を置いていったと見て泣いているブラストを、だ。

それを黙って見ていることしかできない自分が嫌になって逃げようとするが、こういう夢に限って選択権がなく動けないのがお約束と言うやつだった。

どうしようもなく下を向いていると水たまりをはねるような足音がしたので、その方向を向くと司令がいた。古びた軍帽がいつもの倍深く被せられていて表情はよく見えない。

だが、司令の纏う雰囲気はあの時の兄さんと同じことだけはよくわかった。

「よかった、ワタシだけじゃなかった……夢だとしてもひとりぼっちは寂しいから」

司令はこの状況で壊れてしまったのか、口に気休めを噛んでブラストを見る。

僕にとっては間違いなく夢だが、夢の中の司令にとってはその限りではない。この司令にとってこれが現実かの確証もとれないが、少なくとも正常ではなかった。

司令は泣いているブラストと会話しているが、司令にはブラストの言うことがわからないのだから当然会話が成立していない。それを見ているしかできないのはある種の拷問でもあった。

 

司令はブラストを抱きかかえて、虹の雨が降りしきる中を歩く。

不幸にもこの終末世界を旅する2人には、ケバインクに侵されないだけの耐性があって消えられなかった者達だった。

「ブラスト君、見て。空がきれいだよ」

『……ボクは、そう思えないな』

「そうだね、おまけに雨も降ってるんだから写真撮ってイカッターに上げたら絶対にいっぱいイカすがもらえる……」

そしてどちらにしろ諦めをつけていたから会話の内容もひどいものだった。

司令には見たなりの日常が見えているのか、はたまた現実が見えていて在りし日に逃げているのかしているし、ブラストはブラストで現実を見すぎて嫌気がさしているように見えた。

かつてバンカラ街だった場所も、兄さんと別れたあの海も、今はそんな()()()()()()をあざ笑うように嫌な虹色が染め上げていた。

 

場面が移って、今度はなにかの制御室に司令がいる。その司令は両手にブラストの亡骸を抱えて何かをつぶやいているがよく聞き取れなかった。

ブラストを椅子の横に置いて座った司令は、なにかのコンソールを操作して起動の確認画面を表示する。その画面には警告のようなものが記されているようだ。

「……わかってるよ、コレをやったらワタシは総帥と一緒。あの時のワタシ達を裏切ることになる。わかってる……」

司令は、おそらく起動するところに指を置こうとして躊躇っている。

司令が口から吐くキーワードから、そこが言及だけはあったネルス像なのだと予想した。

「全てを滅ぼしてもみんなは帰ってこない。蘇りなんてもっとない。知ってるよ、そんなこと」

司令は自分を納得させようとして一般論を並べ立てるが、それと同時に画面に一粒の涙が落ちる。

「……でも、寂しいよ。慣れないよ。時間がワタシを置いていくのも、みんながいないワタシだけの世界も……!」

 

そういって司令は、その指を重く落とした。

 

機器が重い音を立てて動き出す。窓からは夕立に光る緑が見えて、これから何が起ころうかと言うことを感づかせる。

それに力が集まって、放たれた一瞬の轟音で目が覚めた。

 

 

 

布団からガバッと起き上がり通信端末の時刻表記をみる、午前4時。

いくら悪夢と割り切っていたってそれらが気持ちの良いもので有るはずもなく、息を上げて冷や汗をかく。

 

……最悪

 

聞いたこともないような冷たい声がしたから横を向くと、起き上がった司令がつぶやいていた。

周りは暗くその顔は見えないが、凍てつく声を発する司令の顔なんて想像つかないし、ついたところできっとろくでもない。

その声は人を見て心に語りかけるそれよりも低く、司令とは無縁とも思える憎しみや呆れ、諦めといった黒い感情がないまぜになっているように聞こえるのだから。

その真意を確認することはできず、だからといってもう一度眠る気にもならず、さっさと装備を整えテントから出ていった。

 

あんな夢は、忘れられるなら忘れるに限る。

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