スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
朝の4時半にミッションに向かい、ミッション終わりが6時。朝食も食べず向かったことで腹の虫が鳴いていた。
ささっとシオカラキャンプに戻ればトーストが並べられて僕を待っていた。
「早起きだね、もしかして任務してたの?」
そう明るく聞く1号と対照的に横で心配そうにする2号に、重苦しく辛気くさい空気を醸し出す司令が座ってテーブルを囲う。
「早めに起きてしまって、寝れる気もしなかったので」
「そっか、お疲れさま」
少し疲れたように2号は言ってくれているが司令はだんまりなままだ。
「司令、大丈夫ですか?」
「…………ごめん、考え事してて気がつかなかった」
「司令、やっぱなんか悩んでる?」
2号がそう発言すると司令はそれを言うかどうか迷う素振りを見せたが、結局言うことに決めたようで「変な話だけど」と前置きしてから始めた。
「……ときどきいやな夢を見るんだ。世界が滅んでワタシだけがひとりぼっちで生き残って、世界をもう1度滅ぼすか諦めて消えてく夢を。どっちにしてもハッピーエンドじゃない」
「そんな夢見るの……?」
「……疲れちゃってると変な夢って見るもんなんよ。1号」
疑問を抱いている1号に2号が体験のように語る。確かに経験がない人からすればこの話はすっとんきょうな事かもしれないが、経験があったり慣れていれば「そういうこともある」程度の話だ。
しかしその次の発言はその程度ですませることができないものだった。
「でも、今日見た夢は……いつもならゆっくり滅んでく世界がケバインクでいきなり壊れて……ただの夢じゃないのかもって思うの、おかしい?」
「それは……は?」
「……け?」
その内容が僕の見た悪夢とあまりにも類似点があったからだ。
そんな小説のようなことが起こるなんて思ってもなかったが、実際に有るとすればどうなる?
小説ならば、この後どうなる……?
小説だったならこの夢は何かの前兆で、その後この夢に対応したことが未来で起きるのが相場だ。
だと、すれば
「……僕も、見ました。その夢を」
「3号も見たの?」
「ええ、僕の視点ではありましたけどケバインクの雨でみんな毛玉になって、僕も毛玉になってブラストと司令だけが荒れた街を見ている夢でした」
「……くおるに、くお」
「ブラストも見たのか、同じ夢を」
僕たちが同じ夢を見たことを司令たちに伝えると、司令たちは目を見開いた。
「詳しく聞かせて、もしかしたら本当にただ事じゃないかもしれないから」
司令は珍しく低い声で取り乱しながら机から身を乗り出す。
僕はその真剣な目に負けて、トーストがまずくなること覚悟で悪夢の内容を語ることにした。
「──本当にほとんど同じだ。内容もあって奇妙だけではすませられないね」
司令は疑い深くそう言った。不安から切り出した話題だったのだろうけど、合致率が体感9割以上なら恐怖もする。
「みんなが寂しくなって司令は滅んだ世界を滅ぼして……それを3号が見ていた。後味悪すぎっしょ」
全体的な、おそらく満場一致の感想を2号がつぶやいて全員がそれに同意するようにうなずいた。
「うぅーん……アレ?」
そんな中感情を飲み込めてなかった1号が何かに気づいたような声を出したので、全員の視線を集めることとなる。
「司令はみんながいきなりいなくなって、寂しくなったから世界を滅ぼしちゃったんだよね?」
「……うん」
「……確か、ケバインクってふれた人を強制的にホニュウ類? にしちゃうんだよね。それってもしかして……同じだったんじゃないかな……?」
「アオリちゃん、どゆこと?」
「アタシ思ったんだ。もしかしたらケバインクを作ったのはホニュウ類のヒトで、ひとりぼっちだから友達や仲間が欲しかったのかもって……それだったら似てるなって……」
「……意外とキツいもんね、ひとりぼっちって」
2号は根拠の無いことを言った1号を否定する訳でもなく、まるでその論を体験談のように受け止めた。その視線は遠くをみている。
「ホタルちゃん……」
「なにかあったんですか?」
「ワタシね、実は1号と
2号の言った事に対して僕たちは簡単に想像がついた。ここには何かしらの理由で孤立したことのある集まりだから、おそらくその痛みは共有できるものだ。
そして、僕の経験として悪夢は伊達ではない。
「……こういう悪夢は形を変えて実現するものです。親がトチ狂う夢も兄が消える悪夢も実現しましたから」
「元司令をさらったの、『クマサン』だったよね。もしそうなら、あの夢があのヒトのやりたいことなら止めなくちゃ。寂しさを埋めるために、世界を作り直すために世界を滅ぼしても、寂しさが埋まらないことは知ってるから……!」
司令は一口だけ残っていたトーストを放り込み席を立つ。
僕はそれを見て、1つ決意した。
クマサンが望む結末がいかに破滅的であろうとも、僕はクマサンの心に触れてみたい。
触れて知ってみたい。
兄さんの二の舞だけは、もう御免だ。
壊れてから、後悔することだけは。
僕はトーストを食べ終わると、再び装備を整えてしあわせリサーチラボのボスヤカンに向かった。
僕が、この気持ちを強固なものにするために。